戯れ言たれる侏儒
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スタチンと糖尿病

戯れ言たれる侏儒 / 2010.02.26 00:03 / 推薦数 : 2

スタチンを最も多く処方するわれわれ循環器医にとってきわめて重要な報告がありました。

#Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials
The Lancet, Early Online Publication, 17 February 2010
http://www.lancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2809%2961965-6/fulltext
■Statin therapy is associated with a slightly increased risk of development of diabetes, but the risk is low both in absolute terms and when compared with the reduction in coronary events.
■Clinical practice in patients with moderate or high cardiovascular risk or existing cardiovascular disease should not change.
<コメント>
抄録を読む限りstatins としか記載されていません。
class sise-effectなのかdrug sise-effectが一番知りたいところです。
もし数種類のスタチンでの解析であり、アトルバスタチンのみが糖尿病の悪化を来たし、他のスタチンでは問題ないと仮定します。
今回のように有意差が出たという結果は、アトルバスタチンのバイアスがかなり働いていたことになってしまいます。
これは問題です。
一方、Lancet誌では冷静な対応を呼びかけています。
#スタチン投与、糖尿病発症リスク微増も従来どおりの使用推奨:Lancet
http://doragon-tears.at.webry.info/201002/article_1446.html
ARBと降圧利尿剤の合剤が市場に出回るようになりました。
心ある先生方は降圧利尿剤による催糖尿病性を危惧しています。
スタチンも同じような可能性があるということになると・・・。
数年前からアトルバスタチンについて、糖尿病の悪化が一部で問題とされて来ました。
その火の粉が他のスタチンにも広がって来たようです。


Health Day Newsでも詳しく紹介されていました。

#糖尿病発症リスクの軽度増加にスタチンが関連
スタチン療法は糖尿病リスクの軽度増加に関係するが、冠動脈イベント発症リスクの有意な低下は糖尿病発症リスクを上回るとのレビュー記事が、「The Lancet」オンライン版2月17日号に掲載された。

英グラスゴー大学のNaveed Sattar氏らは、被験者91,140人が参加した無作為(ランダム)化比較対照スタチン試験13試験のメタ分析を実施した。
平均4年間の追跡調査期間に、スタチン群の被験者2,226人および対照群の被験者2,052人が糖尿病を発症した。

スタチン療法は糖尿病発症リスク増大に関係し(オッズ比1.09)、高齢者を対象とした試験において糖尿病発症リスクが最も大きかった。
メタ分析の結果は、患者255人に対する4年間のスタチン投与が、糖尿病患者1人が増加につながるが、スタチン投与によってLDLコレステロール濃度が1 mmol/L減少するごとに、本患者集団において主な冠動脈イベントが5件減少することも分かった。

著者らは「スタチンによる圧倒的な心血管イベント減少効果を考慮すると、スタチン療法が推奨される患者においては、短期中期的な心疾患イベント減少効果が糖尿病発症のわずかな絶対リスクを上回る。したがって、中等度または高度の心血管リスクもしくは心血管疾患を有する患者に対しては、スタチン療法の臨床適応を変更する必要はないと提案する。しかし、心血管リスクが低い患者または心血管イベント減少効果が不明の患者に対してスタチン療法を考慮する場合は、糖尿病リスクが増大する可能性を考慮すべきである」と結論している。

本リポートでの臨床試験は、製薬業界の研究助成金による支援を受けている。著者数人は、スタチン製造販売会社との財務関係を報告している。

出典Health Day News 2010.2.17

Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials
The Lancet, Volume 375, Issue 9716, Pages 735 - 742, 27 February 2010
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61965-6/abstract

<関連サイト>
#糖尿病合併例にどのスタチンを使うべきか
アトルバスタチンでの血糖上昇を示唆する報告も
■AtがPrに比べて血糖コントロールを悪化させる可能性がある(高野達郎、山川正ら. J Atherosclerosis Thrombosis.2006;13:95-100.)
■アトルバスタチン投与でHbA1cが5.9%→6.8%
出典 NM online 2010.1.12
版権 日経BP社

#メタアナリシス:スタチンは糖尿病発症リスクを高める
http://intmed.exblog.jp/10007346/

#スタチン使用で糖尿病リスクが9%上昇
http://generalmedicine.info/modules/d3pipes/index.php?page=clipping&clipping_id=2783


まあ、こういったことを念頭に置いて糖尿病患者にはスタチンを処方しましょう、ということなのでしょう。

実は、一昨日の夕方、ピタバスタチンを発売している製薬メーカーのMRさんを相手に話(講演?)をする機会がありました。
その際にアトルバスタチンとは異なり、「当社のスタチンはこういった問題はない」というコメントがありました(豪語していました)。

一方、糖尿病患者に積極的にスタチン投与を奨励する論文がLancet誌に出ていました。
もっとも少し古い論文ではありますが・・・。


<糖尿病とスタチン 関連サイト>

糖尿病患者へのスタチン治療メタアナリシス:より広範なスタチン治療を! http://intmed.exblog.jp/6679378/

糖尿病患者におけるスタチン治療の心血管イベントに対する有効性(CTT)
Cholesterol Treatment Trialists' Collaboration: CTT Collaboration
meta-analysis
血管イベント高リスクの糖尿病患者にはスタチン系薬剤による治療を考慮すべきである。
Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators: Efficacy of cholesterol-lowering therapy in 18,686 people with diabetes in 14 randomised trials of statins: a meta-analysis. Lancet. 2008; 371: 117-25.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18191683?dopt=Abstract

以下は寺本民生先生のコメントです。

スタチンの動脈硬化性疾患予防効果,総死亡予防効果については,この14のメタ解析の結果が明確に示した。
この試験により,ほぼスタチンの治療意義を確立したと同時に,それまであった癌に対する懸念や脳出血に対する懸念も払拭した。
このような大規模な調査になると,いわゆる層別解析の意義が出てくる。
つまり,層別してもそれなりの例数が確保できるため,統計学的検討に耐えうるということになるのである。
本試験でも約18,000例の糖尿病患者が対象であり,糖尿病でない約7万例との比較になっている。
その結果,糖尿病におけるスタチンによるLDL-C低下効果は,糖尿病でないものと比較すると優るものではないが,ほぼ同等であることが示された。
しかも,冠動脈疾患の既往,性別,血圧,喫煙,腎機能,BMIなどを考慮しても,同様にスタチンの有効性が示された。
さらに,2型糖尿病ではLDL-Cの低下効果は,ほぼthe lower, the better に近いということで,欧米のガイドラインもそのように変更することを勧めるというコメントは興味深い。
今後,わが国も含めて真摯に考える必要があろう。


##スタチン治療は多くの糖尿病患者に有用(2008.2.7掲載)
心血管イベントのリスクを低減させる
■糖尿病患者の多くはコレステロール低下薬であるスタチン系薬剤(スタチン)による治療を考慮されるべきである――。
これは英医学誌「Lancet」1月12日号に掲載されたスタチンに関する臨床試験成績のメタ分析による結論。
英国とオーストラリアの研究者らは、スタチンが年齢、性差、他の臨床的特性、心血管疾患の既往歴の有無に関わらず、糖尿病患者の広範囲にわたって主だった心血管イベントのリスクを低減させることを明らかにした。
研究では、スタチンのLDLコレステロール(悪玉コレステロール)低下効果を検討した14の無作為化試験において、糖尿病患者1万8,686例、非糖尿病患者7万1,370例を対象にメタ分析を行った。
■平均追跡期間4.3年中に、糖尿病患者のうち3,247例が心血管イベントを発症。また糖尿病患者では、LDLコレステロール値が1mmol/L 低下するごとに全原因による死亡率(all-cause death)は9%低下していた。
非糖尿病患者でも、同様に13%低下していた。
また、糖尿病患者では、LDLコレステロール値が1mmol/L 低下するごとに主な心血管イベント発生率も20%低減しており、非糖尿病患者でも同様の低減傾向が認められた。

■研究者らは「今回のメタ分析は、心血管疾患の既往歴のない人も含めて、広範囲の糖尿病患者において、心血管イベントに対するスタチン治療の便益を示すものであり、また非糖尿病患者においても、同様のことが認められた。小児など心血管イベントの低いケース、あるいは妊娠中などスタチンの適応外のケースでない限り、糖尿病患者の多くはスタチン治療を考慮されるべきである」と結論付けている。

■ただし、英バーミンハム大学臨床薬理学のBernard Cheung教授は「スタチンの開発は現代医学における最も輝かしい成果の1つだが、我々は禁煙や健康的なダイエット、日常的な運動といったライフスタイル(生活習慣)の改善が重要であることを忘れてはならない」とコメントしている。
(HealthDay News 2008.1.11)

http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=1148


<番外編 その1>
コレステロール嘘とプロパガンダ (単行本)  翻訳本 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200707/503811.html

コレステロールに薬はいらない! http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047100668/cicada17-22/

「コレステロールに薬はいらない」だって?
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047100668/cicada17-22/
(この本についてのブログを紹介します)

<コメント>
これらの本の内容をチェックしたわけではないのでコメントは差し控えます。

「悪玉コレステロール」、低すぎると逆に死亡リスク増大
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/03/post_3282.html

が参考になります。


浜崎智仁
http://spysee.jp/浜崎智仁/1230212/

コレステロール仮説の崩壊(2):富山大学和漢医薬学総合研究所教授・浜崎智仁さん
http://report.seiko-masuoka.net/?cid=51444

<番外編 その2>
What are mg/dl and mmol/l? How to convert? Glucose? Cholesterol?
http://www.faqs.org/faqs/diabetes/faq/part1/section-9.html#ixzz0gYhsbHQy

mmol/L表示に関して・・・
HDL・LDL   mmol/L → mg/dL 39で掛ける
トリグリセリド mmol/L → mg/dL 89で掛ける
血糖 mmol/L → mg/dL 18で掛ける
クレアチニン μmol/L → mg/dL 88で割る

<コメント>
Lancet誌を繙く際には非常に役立つ情報と思われます。


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コメント

コメント一覧

先生こんばんは。
大変遅くなってしまいまして恐縮です。コメントさせていただきます。

アトルバスタチンなど(ロスバスタチンでもそのような報告あり)では確かに糖尿病悪化の報告がありますね。

私の考えですが、心血管イベントは糖尿病だけで起こるものではなく、血糖・脂質・血圧の全てが適正に管理されなければ防げないものと考えています。ですから、やや乱暴かも知れませんがスタチンで耐糖能がやや悪化したとしてもそれでしっかりLDL-Cを下げておき、糖の管理は独立してやればいいと思っています。結果的に全てが目標クリアできてしまえばよいのではないかと考えています。
written by drarbeit / 2010.03.08 23:30

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