戯れ言たれる侏儒
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高血圧から慢性心不全への進展におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の役割と新しい展望  その2(2/2)
ALOFT試験の成績からDRIに期待すること
室原 
■ALOFT試験では患者の約99%がACE阻害薬かARBによる治療を受けており,約95%がβ遮断薬の治療を受けています。
さらに約35%弱にはアルドステロン拮抗薬が投与されていました。
こうした患者に対するDRIの追加投与により,BNP値が61pg/mL減少しました。Val-HeFTではACE阻害薬にARBを追加していますが,34pg/mL減少に止まっています。
BNP値は予後の良好なマーカーですから,このことはDRIが慢性心不全患者のイベント発生率や死亡率を改善することを示唆していると思います。
また,今回,有意差は得られませんでしたが,DRI追加投与により血漿アルドステロン値が減少する傾向がみられています。
これはACE阻害薬やARB投与でしばしば体験するアルドステロン・ブレイクスルーがDRIでは改善できる可能性を示唆しています。

斎藤 
■ALOFTやVal-HeFTにおける試験開始前のBNP値はどれくらいでしたか?その値が大きいと,減少率も大きくなります。

McMurray 
■ALOFTでのBNP値は平均約291pg/mL,Val-HeFTは約181pg/mLでした。
確かに,試験開始前の数値が高いほど減少率が大きくなる可能性があるので,その点も考慮に入れる必要があると思います。

松崎 
■ALOFT試験を踏まえてATMOSPHEREという慢性心不全を対象にした大規模臨床試験が組まれています。

McMurray 
■ATMOSPHEREは,NYHA心機能分類II~IV度,駆出率35%以下,血漿BNP値150pg/mL以上,1年以内に心不全による入院歴のある慢性心不全患者約7,000例が対象です。
検討は,エナラプリル群(10mg,1日2回),アリスキレン群(300mg,1日1回),エナラプリル+アリスキレン群(20mg+300mg)の3群の間で行われます。
主要評価項目は心血管死+心不全による入院です。先ほど成績をご紹介したALOFT,そしてATMOSPHEREも「ASPIRE HIGHER」と呼ばれるアリスキレンの臨床試験プログラムの一環です。

松崎 
■ATMOSPHEREには日本も参加します。参加できて,非常に光栄です。
アリスキレンの投与量は150mgを1日1回と,欧米の半分量を使います。

筒井 
■初めに心不全治療の現状について,少しデータを紹介したいと思います。米国メイヨークリニックからの報告では,1987-1991年,1992-1996年,1997-2001年の3期間を比べたところ,収縮不全の予後は次第に改善されています。これはACE阻害薬,ARB,β遮断薬などのエビデンスのある心不全治療薬の普及によると思われますが,5年間生存率は約40%にとどまっています(Owan TE, et al : N Engl J Med 355 : 251-259, 2006)。
日本においてわれわれは,JCARE-CARDという慢性心不全の増悪のために入院治療を要する患者を対象とした登録観察研究を行っていますが,退院後の1年死亡率は,収縮不全・拡張不全ともに約8%でした。
退院後の1年間における心不全悪化による再入院が約20%に認められました。
収縮不全患者の大部分にはACE阻害薬やARBが投与されており,β遮断薬は62%に投与されています。
エビデンスに基づいた薬物療法が実施されている現在でさえ,いまだ心不全患者の予後は満足のいくものではないことがわかります。
このような現況ですから,アリスキレン単独,エナラプリル単独,両薬剤併用の収縮不全に対する大規模臨床試験ATMOSPHEREへの期待は大きいものがあります。
収縮不全に対してアリスキレンはACE阻害薬の代替薬となりうるか,あるいは併用薬として有用か,などに対する解答が得られるものと思われます。また,松崎先生からもご紹介があったように,世界各国が参加するATMOSPHEREには日本も参加することになっています。
登録予定の210例の日本人データも興味あるところです。

最大規模の心臓・腎臓臨床試験プログラムASPIRE HIGHER
McMurray 
■ASPIRE HIGHERプログラムでは,ユニークな作用機序を持つアリスキレンが,ACE阻害薬やARBを超える臓器保護を促進する力を備えているかどうかを評価するため,大規模・中短期臨床試験からなる35,000例を対象としたアリスキレンの心臓・腎臓予後確認試験です。

小川 
■ASPIRE HIGHERのうちALOFT,AVOID,ALLAY,AGELESSが既に終了しています。ALLAYは高血圧のある左室肥大患者460例(BMI 25kg/㎡以上)を対象に左室肥大(左室筋重量)の減少効果を評価した臨床試験で,アリスキレンのARB(ロサルタン)に対する非劣性が示されましたが,アリスキレン+ARB併用のARBに対する優越性は得られませんでした(Solomon S, et al : ACC 2008)。
AGELESSでは,高齢者収縮期高血圧患者901例を対象にアリスキレンとACE阻害薬(ラミプリル)の降圧効果を比較した臨床試験ですが,アリスキレン単独投与はACE阻害薬単独に比べて有意な降圧効果との成績が得られました(Duprez D, et al : AHA 2008)。ASPIRE HIGHERのうち,ATMOSPHERE,APOLLO,ALTITUDEの3つが大規模臨床試験ということになります。
APOLLOは高血圧の有無にかかわらずほかの心血管系リスクを有する高齢者,ALTITUDEは心血管系および腎イベントのリスクが高い2型糖尿病患者を対象としたものです。

McMurray 
■最近,「急性心不全を対象とした比較的短期の臨床試験ASTRONAUTも加わりました。

小川 
■さらに増えたわけですね。
私の専門は冠動脈疾患なので,ASPIRE HIGHERのなかでも左室機能が低下した急性心筋梗塞を対象としたASPIRE,左室機能が維持された急性冠症候群患者を対象としたAVANT-GARDE,冠動脈疾患患者の粥状態硬化を血管内超音波検査(IVUS)で評価するAQUARIUSなどに特に興味を持っています。

DRIのよい適応やARBとACE阻害薬の使い分け
斎藤 
■DRIの作用機序から考えて,まずよい適応となるのは血漿レニン活性が高い患者です。
重症心不全患者,若年性高血圧患者,悪性高血圧による心不全患者などがこれに相当します。
(プロ)レニン受容体は腎臓に多く発現していますので,プロレニン活性が亢進するとされる糖尿病性腎症もよい適応になると思います。
高血圧や腎機能障害があり,COPD(慢性閉塞性肺疾患)や閉塞性動脈硬化症(ASO)を有している患者にβ遮断薬を投与する際には末梢血流低下などに対する配慮が必要ですが,β遮断薬の代替薬としてDRIが使用できる可能性があると思います。

小室 
■ARBとACE阻害薬の作用機序にはいろいろな違いがあることが,in vitro実験から示されています。
臨床的にも,一部のARBはACE阻害薬より降圧効果が強い,ARBはACE阻害薬よりもアルドステロン・ブレイクスルーが少ないとも言われています。
しかし一番の違いは有害事象で,ACE阻害薬では咳嗽や血管性浮腫などが認められますが,ARBではこうした有害事象はほとんど認められません。
ですから,患者ごとにこうした有害事象の有無を考慮して使い分けるのが,基本的な使い分けに対する考えだと思います。

松崎
■慢性心不全患者の予後は依然として不良であり,われわれは新しい治療ツールを必要としています。DRIであるアリスキレンはその期待に応えてくれるものと思われます。

出典 Medical Tribune 2009.12.24,31
版権 メディカル・トリビューン社
(一部改変)

 

<自遊時間>
先生方は昨夜のNHK TV「プロフェッショナル 仕事の流儀」は観られましたか?


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