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高血圧から慢性心不全への進展におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の役割と新しい展望 その1(1/2)
司会
松崎 益徳 氏 山口大学大学院 器官病態内科学 教授
出席者
John J.V.McMurray 氏 BHF Glasgow Cardiovascular Research Centre & Western Infirmary, Glasgow, Scotland, UK
斎藤 能彦 氏 奈良県立 医科大学 第一内科 教授
小室 一成 氏 千葉大学大学院 循環病態医科学 教授/大阪大学大学院 循環器内科学 教授
川名 正敏 氏 東京女子医科大学附属 青山病院 循環器内科学 教授
室原 豊明 氏 名古屋大学大学院 循環器内科学 教授
筒井 裕之 氏 北海道大学大学院 循環病態内科学 教授
小川 久雄 氏 熊本大学大学院 循環器病態学 教授
高血圧から慢性心不全への進展におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の役割と新しい展望
ALOFT試験で示された高血圧合併慢性心不全に対するアリスキレン投与の優れた忍容性と有効性
松崎
■最近、ALOFT試験において,慢性心不全患者に対するDRIアリスキレン投与の忍容性と有効性の高さが示されました。
本日は,本試験の統括責任者であるMcMurray先生をお招きしています。
RAASをDRIで阻害することの意義を,ALOFT試験のデータに基づきながら討論したいと思います。
McMurray
■DRIはRAASの大本にある律速酵素レニンの働きを阻害するわけですから,RAASというカスケードの阻害という点では理想的な薬剤であると考えられます。
しかし問題は,経口可能で有効なDRIがないことでした。
そうしたなかで初めての経口DRIとして登場したのがアリスキレンです。
これまで広く使われてきた,ACE阻害薬とARBは作用部位は異なりますが,共通して言えることはRAAS阻害によりフィードバックループが形成される結果,代償的にレニン産生が亢進し,これがRAASを刺激してしまうということです。
しかし,DRIではこのような問題が起きません。
良好な降圧効果(図1)のほかにも,食塩制限下の健常人における検討では,DRIがACE阻害薬よりも腎血流を増加させるとのデータも得られています(Fisher ND, et al : Circulation 177(25): 3199-3205, 2008)。
これは腎血流低下が問題になる心不全にとって非常に興味深いことです。
一方,心不全に対して非経口DRIの急性血行動態に与える影響を検討した小規模の臨床試験が2つあり,有用性を示すデータが得られていましたが,さらに詳しい検討が必要とされていました。
そうしたなかで行われたのがALOFT試験です。
ALOFT試験は,ACE阻害薬またはARBおよびβ遮断薬で治療を受けている慢性心不全患者に対してアリスキレンを上乗せすることによる忍容性と有効性を検討したものです。

■対象は,安定したNYHA心機能分類II~IV度(1か月以上)で,高血圧(既往または新規診断)があり,安定量のACE阻害薬またはARBおよび投与可能であればβ遮断薬の投与を受けており,血漿BNP値100pg/mL以上の18歳以上の患者です。
なおACE阻害薬とARBの両方が投与されている患者は除外されました。
■対象は302例で,2週間のプラセボによるrun-in後,対照群(146例)とアリスキレン群(150mg/日,156例)に無作為に割り付けられました。
追跡期間は12週間です。
主要評価項目は安全性・忍容性,二次(有効性)評価項目はBNP値などを始めとした各種生化学や心エコーでの値です。
ご承知のように,BNP値やNT-proBNP値が心不全の病態や予後評価のよいマーカーであることが種々の臨床試験のデータによって裏付けられています。
■患者背景ですが,対照群は平均年齢68歳,血圧128/76mmHg,駆出率31%,ACE阻害薬使用84%,ARB使用14%,アルドステロン拮抗薬使用34%,β遮断薬使用95%であり,アリスキレン群は平均年齢67歳,血圧130/78mmHg,駆出率31%,ACE阻害薬使用83%,ARB使用16%,アルドステロン拮抗薬使用33%,β遮断薬使用94%でした。
■その成績ですが,まとめると次のようになります。
(1)大部分の患者がβ遮断薬の投与を受けていたにもかかわらず,アリスキレンは血漿レニン活性を効果的に阻害した,(2)ACE阻害薬またはARB,アルドステロン拮抗薬で治療を受けている患者において,DRIアリスキレンの追加投与は,忍容性が良好であった,
(3)アリスキレンは,血漿NT-proBNP値,血漿BNP値および尿中アルドステロン値を減少させるなど,良好な神経体液性作用を示した(図2),
(4)心不全におけるアリスキレンによる代替治療あるいはACE阻害薬またはARBへの上乗せ治療の役割は,さらに検証する価値がある。


松崎
■駆出率は両群とも31%ということですから大半は収縮不全患者ということですね?
McMurray
■約80%が駆出率40%以下の収縮不全でした。
#DRIの作用機序を巡って
斎藤
■DRIは,RAAS活性化で最も重要な働きをしているレニンの働きを阻害するという特徴を持っています。
心筋細胞におけるレニンの発現はあまり多くはないので,これは特に全身のRAASにおいて重要であることを強調したいと思います。
DRIがACE阻害薬やARBによるフィードバックループ形成を阻害する点も,併用を考えたときに大きなポイントになると考えます。
また最近,糖尿病性腎症のモデル動物を使った検討で,アリスキレンが糸球体・尿細管・腎皮質血管における(プロ)レニン受容体の発現を減少させた,との論文が出ました(Feldman DL, et al : Hypertension 52 : 130-136, 2008)。
これはDRIの作用機序を考えるうえで,非常に興味深い報告です。しかし一方,同論文ではヒトのメサンギウム細胞を用いたin vitroの検討で,アリスキレンはレニンの(プロ)レニン受容体への結合を阻害しなかったこと,レニン誘発性のERK1および2の活性化を抑制しなかったことも述べています。
松崎
■小室先生は,ARBのなかにはAT1受容体に対してインバースアゴニスト(逆作動薬)として作用するものがあることを報告しています。その視点からDRIの作用機序を考えると,どうなりますか。
小室
■確かに一部のARBは,アンジオテンシンIIに依存しないかたちで受容体の活性化を阻害するインバースアゴニストという特性を持っています。
アンジオテンシンIIに依存しないでRAASを阻害するという点では,DRIもそうだと思います。
いずれにせよDRIの作用機序には,レニン抑制によるアンジオテンシン I 産生抑制,(プロ)レニン受容体活性化抑制,などの機序が考えられます。
これはACE阻害薬やARBとはまったく違った作用機序です。
高血圧合併慢性心不全におけるDRIの有用性
川名
■欧州の心不全ガイドライン(ESC2008)によると,Val-HeFT,CHARMなどで示された有効な治療戦略があるにもかかわらず,慢性心不全患者のうち50%以上が4年で死亡し,心不全で入院した患者の40%が1年以内に死亡するか再入院するとしています。
これは日本でも同様の状況です。
この問題に応えるためには,心不全治療薬の作用機序に戻って考える必要があります。
(プロ)レニン受容体は,心臓・腎臓・脳などに豊富に発現しており,循環血中のプロレニンやレニンと結合して,プロレニンの活性化を促進しています。
この結合は,ERK1や2などのMAPキナーゼなどの活性化に関連したセリンやチロシン残基リン酸化に伴い細胞内シグナル伝達を誘導します。
これは,プロレニンやレニンの(プロ)レニン受容体への結合が,アンジオテンシン非依存性に細胞内シグナル伝達を活性化することを意味します。
したがってレニンは,(プロ)レニン受容体を介してアンジオテンシンやアルドステロンがもたらす作用とは異なる追加作用を発揮していると考えられます。
ここで問題なのは,ACE阻害薬やARBを使ったときに,レニン活性の反応的増加が生じるという点です。
その結果,レニン自体の抑制が重要な目標と考えられるようになりました。
■高血圧を合併した糖尿病性腎症を対象とした臨床試験AVOIDでは,至適降圧治療+最大推奨用量のARB(ロサルタン)にDRIを追加することで,対照群よりも主要評価項目(早朝尿中アルブミン/クレアチニン比の減少率)が20%有意に低下しました(Parving HH, et al : N Engl J Med 358 : 2433-2446, 2008)。
これはARBでは阻止できない機序がDRIで阻止できたことを意味しています。
ですから,慢性心不全治療においてもACE阻害薬やARBにDRIを上乗せすることの意義は大きいと推測されます。
また,単剤でも降圧効果において十分期待できます。
出典 Medical Tribune 2009.12.24,31
版権 メディカル・トリビューン社
(一部改変)
<番外編>
高リスク患者における経カテーテル大動脈弁植込み術の死亡率は経大腿的、経心尖的留置ともに同程度
■経カテーテル大動脈弁植込み術(TAVI)による死亡率は、経大腿的アプローチ、または経心尖的アプローチのいずれを用いた場合も同程度であり、非常にリスクが高く手術困難な重度大動脈(弁)狭窄患者にとって、両アプローチは実施可能な代替手法であるとの研究論文が、「Journal of the American College of Cardiology」オンライン版1月20日号に掲載された。
■カナダ、ラバルLaval大学(ケベック市)のJosep Rod?s-Cabau氏らは、手術リスク、ポーセレン大動脈(porcelain aorta)、虚弱を理由に経大腿的アプローチまたは経心尖的アプローチによるTAVIを受けた重度大動脈狭窄患者345人のアウトカムを評価した。
手技的アウトカムおよび30日後アウトカムを評価し、患者を中央値8カ月間追跡調査した。
手術リスクスコア算出による予測値とアウトカムを比較した。
■その結果、全体的な死亡率は10.4%、経大腿的アプローチによる死亡率は9.5%、経心尖的アプローチによる死亡率は11.3%であった。
追跡調査期間における全体的な死亡率は22.1%であった。
遅発性死亡率の予測因子は、周術期敗血症(ハザード比3.49)、血液循環補助の必要性(同2.58)、慢性腎疾患(同2.30)、肺高血圧症(同1.88)、慢性閉塞性肺疾患(同1.75)であった。
試験集団内で、ポーセレン大動脈または虚弱患者のアウトカムは同程度であった。
■著者らは「ポーセレン大動脈および虚弱患者など、手術リスクが非常に高い患者、または手術が禁忌となる患者の治療に関して、経大腿的アプローチおよび経心尖的アプローチなどのTAVIプログラムによる死亡率は、手術リスク算出による予測値と同程度であった」と述べている。
出典 HealthDay News 2010年1月21日
原文
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/j.jacc.2009.12.014
Transcatheter Aortic Valve Implantation for the Treatment of Severe Symptomatic Aortic Stenosis in Patients at Very High or Prohibitive Surgical Risk
J Am Coll Cardiol, doi:10.1016/j.jacc.2009.12.014 (Published online 20 January 2010)
<きょうの一曲>
キースジャレット ケルンコンサート
http://video.fc2.com/content/キースジャレット%E3%80%80ケルンコンサート/20090903aRDU96Zy/

その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。