戯れ言たれる侏儒
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CoSTR 2010 その2

戯れ言たれる侏儒 / 2010.02.13 00:38 / 推薦数 : 1

昨日に続きCoSTR関連の記事で勉強しました。
Medical Tribune誌の
「新春インタビュー 2010 トレンド展望」
というインタビュー記事です。


心肺蘇生と緊急心血管治療のための科学と治療の推奨にかかわる国際コンセンサス(International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science with Treatment Recommendations;CoSTR)の改訂作業が大詰めを迎え,10月下旬にCoSTR 2010として発表される予定だ。
同コンセンサスは,蘇生法の理論や手技に関する最新の知見を集大成したものであり,国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が科学的根拠に基づき5年ごとに改訂を行っている。
2006年にILCORの正式メンバーとなったアジア蘇生協議会(RCA)の会長で,今回のeditorial board member(監修委員)でもある日本蘇生協議会(JRC)の岡田和夫会長にCoSTR改訂の経緯や改訂内容の展望,日本にとっての意義について聞いた。

##CoSTRは各国ガイドラインの原本
――そもそもCoSTR(コスター)とはどのようなものでしょうか。
■蘇生法のガイドラインは2000年に米国心臓協会(AHA)主導のものがつくられましたが,国際的なコンセンサスとしてILCORとAHAが対等の立場で作成されたものがCoSTR 2005です。
蘇生法のガイドラインは世界各地域・各国で作成されていまが,CoSTRは一定の科学的根拠をもとに作成されており,それらのガイドラインのいわば原本のようなものです。
各国のガイドラインでは,国情に合わせた修正が行われますが,CoSTRの記載内容から逸脱するものはつくれないことになっています。

――2006年にRCAがILCORの正式メンバーになって以降,初めてのCoSTR改訂ですが,日本にとってどういう意味があるのでしょうか。
■CoSTR 2010の内容は4月にダラスで開かれるeditorial boardミーティングで固まる予定ですが,その後はlock onされ,監修委員のみで最終調整を行います。
CoSTR 2005のとき,日本はILCORの正式メンバーではなかったので正式発表されるまで内容を知ることができませんでした。
しかし,AHAや欧州蘇生協議会(ERC)はlock onでもeditorial boardなので流れが見え,CoSTR 2005の発表後,すぐにガイドラインも発表されました。
今回は私がeditorial boardのメンバーですので,CoSTR 2010の発表後,それほど間を置かずにJRCのガイドラインを出せると考えています。

――今後のスケジュールを教えてください。
■2月に最後のタスクフォースミーティングがダラスで開かれます。CoSTRでは一次救命処置(Basic Life Support;BLS),二次救命処置(Advanced Life Support;ALS),小児救命処置(Pediatric Life Support;PLS),新生児救命処置(Newborn Life Support;NLS),急性冠症候群/心筋梗塞(ACS/AMI),実施(Implementation),教育(Education)-の7つのタスクフォースを立ち上げ,それぞれの主題別にワークシートを議論して完成させます。
そのミーティングには日本人の先生も25人参加しています。

――会議の様子を教えてください。
■企業との利害の抵触(conflict of interest;COI)の表明を遵守させ,内容が参加者の個人的利害によって左右されないよう注意が払われています。
昨年11月にオーランドで行われたタスクフォースミーティングではワークシートは400題にもなり,そこでほぼ内容の90%が固まりました。

#BLSの重要性と質の高い胸骨圧迫を強調
――今回の改訂の重要なポイントは何でしょうか。
■BLSを重視しなければならないということ,これが一番重要なメッセージです。
議論の中心は,
(1)緊急通報
(2)心肺蘇生(CPR)
(3)自動体外式除細動器(AED)施行
(4)ALS
―から成る救命の連鎖(chain of survival)のうちの(1),(2),(3)に集中しています。

――成人における胸骨圧迫と人工呼吸の比率についてはどうでしょうか。
■2000年のガイドラインでは15:2でしたが,CoSTR 2005で30:2になりました。
胸骨圧迫の質を上げるには中断しないことが大切だからです。
また,呼吸を入れすぎない(過換気をしない)という点も重要です。
胸骨圧迫をしても心臓が正常に働いているときの4分の1程度の心拍出量なので,それに見合った換気量でよいわけです。

――この比率や換気量は今回も変更されますか。
■最終的にどうなるかはまだわかりません。
ただ,現在は30:2ですが,これを50:2や100:2でもよいという意見や論文があるのも事実です。
また,換気量も現在は1回700ccとされていますが,胸骨圧迫で心拍出量が少ないときに,さらに過換気により胸腔内圧が上がり,静脈環流が低下する悪影響が来るためです。
具体的な数字がどうなるかはわかりませんが,過換気を抑制すべきとの記述は記載されるでしょう。

――2008年にAHAは市民に対して胸骨圧迫のみのCPRを推奨しました。
日本でもその有用性を示唆する研究が発表されていますが…。
■決着点が見えていないのが現状です。
ただ,胸骨圧迫のみでよいとする研究は観察研究であり,ランダム化比較試験(RCT)のデータでない点には注意が必要です。
欧州も胸骨圧迫のみのCPRに対しては反対もしくは慎重な姿勢を維持しています。

――胸骨圧迫onlyは,バイスタンダーCPRの実施率を上げるための次善策として推奨されているという印象も受けるのですが。
■そのような意味での意義はあると思います。
北欧諸国はバイスタンダーCPRの実施率が高いのですが,残念ながら米国や日本は実施率が低く,何もしないで救急隊の到着を待つのみという場合が少なくありません。
胸骨圧迫onlyでも何もしないよりははるかによいですし,人工呼吸なしであれば,抵抗感が少なく訓練もしやすいのでバイスタンダーCPR実施率の上昇につながるかもしれません。

#機械式CPR装置の有効性は未確定
――CPR firstという点についてはどうでしょうか。
■傷病者が目の前で倒れたときは,AEDが近くにあれば,すぐに使用して除細動を行い,次にCPRに移ります。
AEDは日本に20万台あり,手元にある機会が増えてきました。
しかし,目撃がなく時間が経過した状況ではCPR firstです。心筋に酸素を送ってからAEDを行うと,心室細動の振幅や周波数が上がり,除細動されやすい波形に戻るからです。
除細動1回で心拍が戻ることが多いですが,心拍出量が少なかったり,脈の触れない無脈性電気活動(PEA)や心停止であることが多いので,胸骨圧迫の中断時間を短縮するためにすぐ胸骨圧拍を行います。心電図波形はチェックしません。

――機械式CPRはどう位置付けられるのでしょうか。
■例えば,救急隊員などが搬送しながら胸骨圧迫を同時に行うのは難しく,そういう状況下で機械式CPRは使用されます。
日本では治験が行われている最中です。
海外でも進行中のRCTがありますが,有効性についてはまだ結論は出ていません。

――低体温療法についてはどうでしょうか。
■救命の連鎖はこれまでの4鎖(前述(1)~(4))から最近では連鎖の(5)として心停止後症候群(post cardiac arrest syndrome)も提唱されています。
低体温療法は,心臓は動き出したが意識や脳機能が戻らないという悲劇を避ける手段として非常に期待されています。
近年,多数のエビデンスも蓄積されてきており,従来の「やったほうが望ましい」よりも踏み込んだ,「やるべきだ」というニュアンスの表現になるものと思われます。

――小児に関する記述はいかがでしょう。
■小児に関しても以前はPALSと呼ばれていましたが, A(advanced)が抜けてPLSと分類されています。
意識を失った子供が眼前にいるとき,まず必要なのは一次救命処置です。
BLSの強調は小児についても変わりません。気道閉塞だけでなく心停止対策も強調されています。

――小児に対する胸骨圧迫の深さについても議論があるようですが。
■米国では胸厚の半分まで胸骨圧迫せよとなっていますが,日本では胸郭がつぶれてしまうので,3分の1まででよいとなっています。
しかし,深さと回数が重要なことには異論がありませんので,基本的には現行からの大きな変更はないでしょう。

#一般向けのマニュアル作成も検討
――BLSの普及には一般の人々に対する訓練や啓発活動がますます重要になると思われますが。
■日本でもこれまで,救急医療財団による医療従事者用指針と一般用の指針というのが別々につくられていました。
今回はCoSTRのお墨付きのあるJRCのガイドラインがすぐにつくられ,そのガイドラインをもとに,一般向けの指針というものを救急医療財団と協議してつくる段取りです。

――CoSTR 2010への期待を再度お願いします。
■過去10年,CPRの科学と蘇生法を普及させる努力が続けられ,AEDの設置台数も飛躍的に増加しました。
しかし,救命率は思ったほど改善されておらず,日本における退院救命率は4~5%程度です。CoSTR 2010の発表により, BLSの重要性が再認識され,バイスタンダーCPR実施率の改善に役立つことを期待します。

出典 Medical Tribune 2010.1.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

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