戯れ言たれる侏儒
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LMTと分岐部病変

戯れ言たれる侏儒 / 2010.02.07 00:30 / 推薦数 : 2

左冠動脈主幹部(LMT)への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の選択は,灌流域が広いため施行中の事故が致命的になりうる部位です。
そのため,LMTへのPCIは専門家の間でもニュアンスが異なる見解が示されているようです。

このLMT病変や難易度の高い分岐部病変に焦点を当てたライブ・デモンストレーション・ミーティングの記事がありました。

The 2nd SENDAI/NEW TOKYO LIVE〔代表世話人=新東京病院(千葉県)・中村淳副院長(心臓血管センター長),仙台厚生病院循環器内科・井上直人主任部長〕(舞浜市)で,国内外から160人の専門家と670人の参加者が集まったということです。

きょうはその記事で勉強しました。

##The 2nd SENDAI/NEW TOKYO LIVE
##LMTと分岐部病変に焦点を当てたライブ・デモを開催
同ミーティングのシンポジウム「DO WE NEED A GUIDELINE FOR LMT PCI??」(座長=京都大学循環器内科・木村剛教授,日本医科大学心臓血管外科・落雅美教授,韓国Asan Medical Center・ Seung-Jung Park氏)では,日本の現状を反映させたLMT病変のガイドラインが必要という点でコンセンサスが得られた。

##日本のPCIの現状を反映させたガイドラインの作成が必須
■LMT病変の治療の核となるガイドラインは,現在日本に存在しないが,日本のPCIのレベルは諸外国と比べても高い水準にあることが報告されている。

■帝京大学循環器内科の一色高明教授は,日本での大規模な治療レジストリー調査など,信頼性の高いデータに基づいたガイドラインが作成されるべきであると講演した。
#エビデンスとガイドラインのアップデートが重要課題
ガイドラインは,専門家がエビデンスを集約させ,その解釈についてコンセンサスを得て,それを指針として呈示するものである。
■一色教授は「医療現場で医療の方向性を制限したり,一定の方向に向かせることを意図するものではない」としたうえで,現在のPCIガイドラインの問題を指摘した。

■まず,日本のPCIガイドラインとしては,2000年に「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(冠動脈バイパス術の適応を含む)―待機的インターベンション―」が日本循環器学会など8学会合同で発行されて以降,改訂がなされていない。

冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(冠動脈バイパス術の適応を含む)―待機的インターベンション―
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2000_fujiwara_d.pdf

■2004年に承認された薬剤溶出ステント(DES)については全く触れられておらず,現在改訂作業中だ。
進歩が著しいPCIの領域で,ガイドラインを頻回にアップデートさせていくことは必須と言える。

■また診療報酬の手引きに「PCIはガイドラインに沿って行われた場合にのみ算定できる」と記載されるなど,診療報酬算定の要件として使用されている向きがあるが,それは本来の目的ではない。
さらに,ガイドラインの解釈が行政や法曹界と医学界とで乖離していることも憂慮されている。
例えば,LMT病変はClass IIIで「禁忌」とされているが,なんらかの事故が発生した場合,法曹界ではこの記載をもとに不利に扱われる可能性もある。
一色教授は「医学界全体の問題として認識すべき」と強調した。

■現状でのPCIの治療成績はどうか。
同教授は,最大拡張圧,後拡張バルーンを使用し正確に拡張する頻度,ステント血栓症の発症率など,技術的な面で日本の成績は海外と比べて良好であることが報告されていると報告。
この理由としては,日本での血管内超音波(IVUS)の施行率の高さ,特にLMT病変のステント留置における施行率の高さが考えられるという。

■冠動脈バイパス術(CABG)とPCIの治療選択肢についてはどう考えるべきか。
LMT病変に対するPCIは,初期成績に加えて慢性期の成績も向上している。
特に,LMT入口部・体部では,1本のステントで治療された症例の再狭窄やステント血栓症は少ない。
左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)の分岐部病変については技術やデバイスの進歩で高い初期成功が得られるようになったが,2本のステントが必要な症例では再狭窄やステント血栓症はやや多くなる。
LMT病変に多枝病変が加わった症例の予後はCABGが上回っている。

■米国心臓協会(AHA)では最近,LMT病変をClass IIIからClass II bに変更したが,日本のPCIの現状を正確に反映したガイドラインを作成するためには,「まずは日本人を対象とした大規模なLMT病変の治療レジストリを行うことが必要」と同教授は強調した。さらにLMT病変の治療に当たる施設要件や術者の技術的要件を考慮することも必要であるとして,同教授は「日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)で,そうした要件も踏まえた推奨ができることが理想的」と締めくくった。

##LMTのPCIを安全かつ有効に行うには条件整備が必要
■LMT病変に対してPCIが行われる場合,術者には特に高い意識と技術が求められるが,日本では約2,000の施設が各施設の基準で行っているのが現状で,安全性や有効性の面で疑問の声も上がっている。
代表世話人の中村副院長は,LMT病変に対してPCIを有効かつ安全に行うためには条件整備を行うことが肝要であるとして,インターベンショニストが持つべきコンセンサスの内容を提言した。

#術者に求められる高い意識と技術
■ベアメタルステント(BMS)の時代は再狭窄の発生率が高く,長期的な開存は期待できなかった。
そのため「技術的にはどのような症例でも,LMTの慢性完全閉塞病変(CTO)で左室駆出率(LVEF)が20%以下の場合でもPCIを行うことはできる」と話す中村副院長も,当時はCABGを選択して心臓外科に患者を託すことが多かったという。
DESが登場した当初,LMT病変とCTOの長期的な成績はまだ良好とは言えなかったが,その後の技術とデバイスの進歩に伴って,PCIの成績がCABGの成績に近付いた。

■しかし,LMT病変が難関であることに変わりはない。他の部位のPCIに比べて最も近位部の病変であるだけに灌流域が広く,いったんPCI中に何かが起こると致命的になりうるし,また再狭窄が発生すれば,それも急性心不全,突然死へとつながる可能性があり,それらに細心の注意を払わなければならない。

 さらにPCIには,長期的な耐久性や分岐部の成績が劣る点など,課題も残されている。またLMT分岐部病変において,最初から2個のDES留置を目指すようなステント留置の方法よりも,なるべく1個のステントで終了とし,必要と判断したときにのみ2個目のステントを留置するProvisional Stenting法のほうが,長期臨床成績は優れているようである。そして,LMT病変にPCIを選択するのは,CABGで得られると予測される結果に近いか,同等と考えられる場合である。PCIを選択する場合,同副院長は「必ず患者に良好な結果をもたらすという覚悟が術者にできていなければならない」と強調した。こうした覚悟が持てるのは,熟練した技術と経験を有する術者のみであることにほかならない。

 日本では現在約2,000の施設でPCIが行われている。現時点ではLMT病変に対するPCIについて,核となるガイドラインは存在しない。そのため施設により技術レベルや基準が異なっているのが現状だ。安全かつ有効なPCIを行うために必要な患者側の条件として,インフォームド・コンセントが確実に行われていることが重要であり,PCIを行う術者や施設側の条件として,同副院長は表の項目を挙げた。また,「LMT病変へのPCIに関するガイドラインを考える場合,患者,術者,施設の条件を満たしているか否かによる層別化が必要ではないか。すべての条件を満たして治療が行われた場合に初めてLMT病変に対する最良の治療を提供することができる」とまとめた。

##内科と外科で集学的に適応を決定することが理想
LMT病変に対する治療法の選択は,PCIとCABGの特性と予後を正確に把握したうえでなされなければならない。座長の落教授は,内科と外科が個々の症例について適応を合同で検討する重要性を訴え,そのためには現実的で有用なデータが必要と話した。

#PCIかCABGかの論争は不必要
CABGはこれまでに3回の激しい逆風の時代を経験した。1970年代後半のCABGの死亡率の高さを内科医から強く非難された時代,85年以降BMSが登場してPCIが普及した時代,2004年以降のDESが登場した現代である。

■しかし,落教授自身はこれまで一度もCABGが消滅すると危惧したことはないという。
PCIは「血管内治療」,CABGは「血管外からどの血管にも自由にアプローチできる治療」であり,役割が異なるためだ。
また長期的な転帰には,PCIではさまざまな因子が関与するが,CABGでは基本的にはバイパスした血管(グラフト)の開存性のみが関与する。
CABGを行える機会は一度に限られるものの,グラフトが複数本必要な症例でも問題はなく,質の高いグラフトを選択して手術を行うことができれば患者のQOLは非常に高くなり,長い生命予後が期待できる。

■同教授らは人工心肺を使用しないoff pump術で,グラフトに両側の内胸動脈を用いてCABGを行っている。
2004~08年にこの手術を行った285例の94%で心イベントが発生していない。
同教授が26年前にCABGを行った当時48歳だった患者は,74歳になった現在も全く症状がないまま元気に過ごしている。
最近のマルチスライスCTの所見でも全く問題はなかった。

■同教授は,今回のミーティングに出席できなかったオックスフォード大学のDavid P. Taggart氏の言葉を次のように紹介した。PCIとCABGを比較したランダム化比較試験(RCT)はこれまでに15件あり,「死亡率は同等」で「再血行再建術の施行率はPCIのほうが高い」という結論が示されている。これらのRCTでは1枝または2枝の病変が対象の65%を占めていたり,LMT病変が含まれていなかったりするなど,CABGで生存のベネフィットが得られると考えられる症例が除外されている。
これらのRCTをもとに「PCIとCABGの生存のベネフィットは同じ」と強調してきた結果,先進国でPCIが盛んに行われる現状につながった可能性がある。

■PCIとCABGのどちらが正しくよい治療法かという点について論争を続けるのではなく,「内科と外科が合同で検討し,PCIの適応かCABGの適応かを決定していくことが重要」と落教授は強調した。
適応の決定には,現実的で説得力を持つ有用なデータが必要だ。そのためにも京都で行われた大規模なレジストリ,CREDO-Kyotoの東日本版の実現に同教授は期待感を示した。
両データにより全国的なレジストリ調査が整えば,「RCTよりも日本の現状を反映した説得力のあるデータになると考えられる」と同教授は説明した。

出典 Medical Tribune 2010.2.4
版権 メディカル・トリビューン

<関連サイト>
冠動脈手術の生命予後改善効果に関するエビデンス
http://jscvs.umin.ac.jp/jpn/new_skill/1.html
(東京大学医学部心臓外科 大野貴之先生が諸文献をアカデミックにまとめてみえます)

冠動脈の分類について ー左冠動脈ー
http://tomochans.exblog.jp/2974153/

左冠動脈主幹部の急性完全閉塞における心電図の特徴
http://www.ttmed.com/Articles.aspx?ID_VD=MeIi%2Fh1VtPo%3D&ID_CNT=GrrZHkre8mAb1%2FKTv7OtDw%3D%3D>s=ru5GCTtWYN7kNkF2JwZ9Eh%2BiPbFv8QuQLQsLac1c4bTdKKvRY9T5ng%3D%3D

左主幹部、分岐部の治療
http://tomochans.exblog.jp/page/148/

~誰にでもわかる心臓のお話~
http://www.sanyudo.or.jp/a_hospital/library/zyunkan/heart.html
(素晴らしいイラストがついています。患者さんへの説明に利用させていただきます。)

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