戯れ言たれる侏儒
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スタチンと心不全

戯れ言たれる侏儒 / 2010.01.23 00:00 / 推薦数 : 2
スタチンが心不全患者の予後を改善するというデータが,国内外のさまざまな観察研究から明らかにされています。
しかし,最近行われた2つの前向き試験ではポジティブな結果が得られなかったようです。
いずれもロスバスタチンの試験ですが、その一つは虚血性心不全を中心としたCORONAで、もう一つは非虚血性心不全を含めたGISSI-HFです。
現在国内ではPEARL(Pitavastatin Heart Failure)studyが進行中です。
PEARL Study
http://pearl-study.com/
以下は、スタチンが心不全に有効であるということを前提とした研究で、それにはdrug effectがあるというものです。
検討されたスタチンは、ロスバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチンの3剤です。
 

スタチン系薬剤の心不全へのベネフィットは薬剤の種類により変化する
■スタチン系薬剤のベネフィットは投与される薬剤によって変化しやすいことが、メタ解析から示された。
■10件の無作為化試験の統合データにより、一般にスタチン系薬剤は死亡率を減少させないが、左室機能を改善し、心不全による入院を減少させることも示唆された。
■American Journal of Cardiology誌12月15日号で発表されたメタ解析には、加重平均年齢69.2歳の患者10,192名が含まれ、ロスバスタチン10mg~40mg、アトルバスタチン10mg~40mg、シンバスタチン5mg~10mgまたはプラセボのいずれかが投与された。
■University of Virginia Health System(シャーロッツビル)のDr. Michael J. Lipinskiらは、全体的分析において、スタチン療法は心不全増悪による入院を有意に減少させ(オッズ比0.67)、左室駆出率(LVEF)を4.2%上昇させた(p=0.004)、と報告している。
しかし、スタチン系薬剤により総死亡、心血管死亡、心臓突然死のリスクは低下しなかった。
■後付解析からは、心不全による入院の減少はアトルバスタチンにおいて特に顕著であり、駆出率の改善はアトルバスタチンまたはシンバスタチンのみで認められたことが示された。
■またアトルバスタチンは、プラセボに比べて総死亡を有意に減少させたことも(オッズ比0.39、p=0.004)、結果から示されている。
■対照的に、ロスバスタチンには、心不全増悪による入院または死亡の減少、収縮機能の改善との関連性はなかった。
■「心不全ではスタチン系薬剤のクラス効果はなく、それ故に心不全患者は、アトルバスタチンやシンバスタチンといった、ロスバスタチン以外のスタチン系薬剤からベネフィットを得る可能性があることを、我々の研究は示唆している」とDr. Lipinskiは電子メールでロイターヘルスに述べた。
■ロスバスタチンと違い、シンバスタチンおよびアトルバスタチンは脂溶性で、「心臓からの脂溶性スタチンの取り込みの大きさは、LVEFへのベネフィットを説明する手がかりとなるかもしれない」と同氏らは指摘している。
■「このメタ解析における本知見は、仮説を生み出すものである」とDr. Lipinskiは述べており、「他のスタチン系薬剤の影響を評価するため、大規模多施設共同無作為化プラセボ対照試験が必要であることを、我々は確信している」と補足した。
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/daiichisankyo/news2.php?mode=jpview&num=200912230039193
Am J Cardiol 2009;104:1708-1716.
出典 ロイターヘルス(REUTER MEDICAL NEWS)
版権 ロイター社

 
 
<関連サイト>
以下は第73回日本循環器学会のコントロバーシー「スタチンは心不全患者の予後を改善するか?」(座長=群馬大学大学院臓器病態内科学・倉林正彦教授,北海道大学大学院循環病態内科学・筒井裕之教授)の内容です。
 
コントロバーシー「スタチン」 RCTでは否定されたが根強い期待感
日本のPEARLの結果に注目
■スタチンは抗脂質異常症作用に加え,抗炎症,抗酸化,血管内皮機能改善など,多彩な作用を併せ持つ。
さらに,スタチンが作用するメバロン酸代謝経路の代謝物(GGPP)が各種シグナル伝達機構を介して心不全発症に関与することから,スタチンによる抗心不全効果の可能性も推測されていた。
実際に,1994年に発表された4Sのサブ解析で心不全発症率の低下が報告され,これを契機に研究が急速に進展した。
■コントロバーシーではまず,佐賀大学循環器・腎臓内科の野出孝一教授がこれまでの知見を紹介。
4S以外の各ランダム化比較試験(RCT)のサブ解析や後ろ向きの各種観察研究でも心不全患者の予後を改善する成績が得られているが,ここ1〜2年で報告された2件のRCTでは,ポジティブな結果が得られなかったとした。

エンドポイントによっては有効
■ポジティブな結果が得られなかったCORONAだが,後付けの解析を行うとエンドポイントによっては予後改善が認められるとしたのは広島大学大学院循環器内科学の木原康樹教授。
また,2件のRCTの解釈に当たっては,ロスバスタチンという水溶性スタチンについて検討されたものであること,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)をはじめ,多種の薬剤を併用する心不全患者ではスタチンの効果が表面化しにくいことなどを考える必要があるとも指摘した。
■秋田大学循環器内科学・呼吸器内科学の伊藤宏教授も,入院などのソフトエンドポイントに関してはスタチンの有効性が認められることを示唆した。
さらに,スタチンと類似した作用も持つARBをスタチンと併用する意義を検討する前向き試験HF-COSTER(Heart Failure Cotreatment of Statin and ARB)で,左室駆出率,B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などにおいて有意な改善が認められたことを報告した。
 
脂質面から抗心不全作用の可能性
■金沢医科大学循環制御学の梶波康二教授は,脂質の観点からこれまでの報告を考察。スタチンによる抗心不全作用が患者の脂質レベルによって異なることから,その作用に脂質が少なからず関与している可能性を指摘するとともに,こうした脂質の面から,CORONA,GISSI-HFがスタチンによる抗心不全作用を決して否定するものではないとの見方を示した。
■一方,スタチンによる抗心不全作用があるとすると,今後その恩恵を受けやすい患者を明らかにしていく必要がある。
同教授は,PROVE-IT TIMI22(Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy-Thrombolysis in Myocardial Infarction 22)試験の対象患者を,細胞内輸送にかかわるキネシン様蛋白KIF6の遺伝子多型の有無で分けたサブ解析において,多型を有する群でスタチンによる予後改善効果が有意に大きかったというデータを紹介。
スタチンを用いた他の大規模試験でも同様の結果が再現されていることを踏まえ,「今後,スタチンの抗心不全作用が得られやすい患者を遺伝的なサロゲートマーカーから解明する研究が進展していくだろう」と述べた。
さらに私見として,若年,虚血性,特定の脂質プロフィール(LDLコレステロール高値,トリグリセライド低値,HDLコレステロール高値),軽度心機能低下などの因子に関しても,スタチンの抗心不全作用を検証していくことが望まれるとした。
出典 Medical Tribune 2009.4.23,30
版権 メディカル・トリビューン社
 

<番外編 その1>
スタチン治療、目標到達型よりテーラーメイドが優れる

■スタチンによる冠動脈疾患(CAD)予防に関して、個人の5年間のCADリスクに基づいたテーラーメイド治療と米国コレステロール教育プログラム(NCEP)IIIガイドラインによる目標到達型治療を比較し、質調整生存年(QALY)で検証。
その結果、前者の方が標準的に用いられている後者よりもCAD予防に優れていることが示された。
Optimizing Statin Treatment for Primary Prevention of Coronary Artery Disease
Hayward RA et al. Ann Intern Med. 2010;152(2):69-77
http://www.annals.org/content/152/2/69.abstract

 
<番外編 その2>
早期再分極パターン、心臓死リスクを有意に上昇
http://www.m3.com/news/THESIS/2010/01/05/10081/
■本研究では一般住民10864名(平均年齢44歳)を平均30年間追跡し、早期再分極パターンの有病率と心臓死の関係を検討。
その結果、標準心電図において下壁誘導の早期再分極パターンが見られた場合、心臓死リスクが有意に上昇していた。
Long-Term Outcome Associated with Early Repolarization on Electrocardiography. NEJM. 2009;361:2529-2537
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/361/26/2529

 
<きょうの一曲>
Ave Maria (アベマリア) - Caccini
http://www.youtube.com/watch?v=QFt3EbW0l14
 
 
 
その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。                
 
 
 
 
 

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