戯れ言たれる侏儒
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2005年とちょっと前の記事ですが、気になった内容だったのでもう一度読んでみました。

兵庫医科大学循環器内科の増山理教授と国立循環器病センター心臓血管内科の後藤葉一医長へのインタビュー記事です。
##拡張期心不全への対応を考える
従来,心不全では左室収縮機能の指標である左室駆出率(EF)が低下していると考えられてきた。
しかし近年,EF正常の心不全患者が少なからず存在することが明らかとなった。
慢性心不全に占める割合は報告により約30〜50%,重症心不全が少ない一般病院に限るとさらに高率との見方もある。
 
このように収縮機能が正常に保たれている心不全は拡張機能障害によると考えられ,拡張期心不全あるいは拡張不全と呼ばれる。生命予後は収縮機能障害による心不全(収縮期心不全または収縮不全)に比べて良好とする報告がある一方,同等とする報告も見られる。
しかし,いずれの報告も健常者よりは明らかに悪い。
しかも,急性増悪による再入院率が高いことが指摘されており,QOL低下や医療費の増大も問題となる。
また,高齢者に多く認められることから,特にわが国では今後,増加が危惧される。
診断法,治療法の確立が強く望まれるところだ。
 

#〜診療の現状/頻度〜
#EF正常だからと放置・見過ごされる例が少なくない
■70歳代の女性が息苦しさや倦怠感を訴えて来院。
胸部X線で軽度の肺うっ血が認められたことから,心不全を疑ったが,EFは約60%ある。
利尿薬を処方したところ,2〜3日で症状が軽快したので治療完了とした−。
 
■このようなケースは従来,かなり多かったと見られる。
しかし,現在はEFが正常というだけで,症状軽快後,放置してよいと考えるのは早計と言わざるをえない。
拡張期心不全の可能性を念頭に検査を追加するか,循環器専門医の受診を勧めるべきであろう。
ただし,臨床的有用性の高い診断基準が示されていないこともあり,実際には放置されている症例あるいは見過ごされている症例は今も少なくないと推測される。

#拡張機能評価の難しさが研究進展の足かせに
現在,拡張期心不全は「左室収縮性が保持されている,または障害されていても軽度であり,それによって心不全症状を説明することができず,おもに左室拡張機能障害により心不全症状を呈していると考えられるもの」(増山教授)といった形で定義されているが,前述のように臨床的有用性の高い診断基準はいまだ確立されていない。
EFは40〜50%以上とする場合が多いが,特に規定があるわけではない。
また,病態や発症メカニズムに関しても不明な点が多く残されている。
したがって,根本的な治療法も見出されていないのが現状だ。
 
#拡張期心不全の存在が明らかになったのは,決して最近のことではない。にもかかわらず,収縮期心不全に比べて研究が大幅に遅れたのは,臨床における拡張機能評価の難しさが足かせとなったからだと言われる。
 
■しかし,1990年代末になり,拡張期心不全の予後が少なくとも良好でないことがわかり,なんらかの治療の必要性が示唆された。
以来,拡張期心不全を対象としたさまざまな研究が開始されるようになり,最近,その成果が徐々に得られつつある。

#〜心不全全体の30〜50%,地域一般病院ではより高率〜
■慢性心不全に占める拡張期心不全の割合は,欧米,わが国ともほぼ30〜50%と報告されている。
ただし,調査する対象や施設によって異なるという指摘もある。実際,若年者よりも高齢者,入院患者よりも外来患者,循環器専門の施設よりも地域一般病院で高い傾向が見られる。
具体的には,65歳以上で63%(図1),地域一般病院で50〜55%などと報告されている。
 

高齢者における拡張不全の頻度(Cardiovascular Health Study)

■心不全の専門医が比較的多く参加したわが国の多施設共同登録観察研究JCARE-CARDの中間解析(解析対象数約1,300例)では,慢性心不全患者に占める拡張期心不全(EF 50%以上)の割合は23%と報告された。
地域住民を対象とした海外の疫学調査では,同様に43%あるいは51%という割合が示されている。
 
■いずれにしても,拡張期心不全がもはや珍しい病態でないことは明白だ。
欧米やわが国における心不全ガイドラインでは既に,「収縮不全」,「拡張不全」というように,項目を分けて論じられている。循環器科医はもとより,循環器を専門としない医師にも広く認識されるべき疾患と言えよう。

#〜メカニズム〜
#左室肥大と線維化の進展が発症に深く関与
■増山教授らは2000年,高血圧性心疾患から拡張不全に移行する動物モデルの作製に世界で初めて成功した。
Dahl食塩感受性ラットを 7週齢から高食塩食で飼育すると,約13週齢で左室ストレス上昇を抑制するために代償性左室肥大(左室重量増加)が起こり,19〜20週齢では左室収縮性は保持され,左室拡大も認められないものの,13週齢時に比べて左室肥大がさらに進行し,線維化の亢進も加わって心不全に移行するというモデルである。
 
■この拡張不全モデルを用いた実験から,種々の興味深い知見が得られた。
第1に,代償性肥大にはレニン・アンジオテンシン(R-A)系やエンドセリン系は関与せず,カルシウム・カルシニューリン系が関与すること。
第2に,代償性肥大に引き続いて起こる過剰な左室肥大と左室線維化の進展が拡張期心不全の発症に深くかかわっており,降圧効果を示さない少量のR-A系抑制薬により左室肥大および線維化が抑制されたことから,左室肥大,線維化におけるR-A系の関与が明らかにされた(図2)。


拡張不全モデルの線維化,左室壁肥厚に対するARBの抑制(増山教授による)
 
■拡張不全が収縮不全と最も異なるのは,左室拡大が認められない点である。
同教授らは,収縮不全モデルでは拡張不全モデルに比べ,細胞外マトリックスの分解に寄与するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9の発現が亢進していたことから,MMP-9発現亢進の程度が左室拡大の有無を規定する重要な因子であることも示唆した。

#弛緩障害にphospholamban リン酸化障害が関与
■一方,左室肥大の進行とともに最初に認められる拡張機能障害が左室弛緩障害である。
同障害は,収縮期に細胞質内で増加したカルシウムイオンのsarcoplasmic reticulumへの再取り込みの障害に基づくとされており,再取り込みの過程はおもに,sarcoplasmic reticulum Ca2+-ATPase 2a(SERCA2a)とその調節因子であるphospholambanにより規定されている。
 
■増山教授らは,拡張不全モデルでは,SERCA2aによるカルシウムイオンの取り込みに必要なphospholambanのリン酸化レベルが低下していることを確認した。
また,低下したphospholambanのリン酸化レベルはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)により回復し,拡張機能障害が軽減された。
 
■これらの成績から,拡張不全における左室弛緩障害の発現にはphospholambanのリン酸化障害が重要な役割を果たしていることを指摘した。

出典  MT Pro 2005.11.24
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
慢性心不全ガイドライン(1998-1999年度合同研究班報告)
http://www.jcc.gr.jp/banner/guideline/guide02.pdf

急性重症心不全治療ガイドライン(1998-1999年度合同研究班報告)
http://www.jcc.gr.jp/banner/guideline/guide04.pdf

慢性心不全に対するARBのインパクト
〜拡張不全の治療戦略を考える〜
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?Keywords=

拡張不全&perpage=0&order=0&page=0&id=M3843161&year=2005&type=total

出典  MT Pro 2005.11.24
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
昨年9月の

高感度トロポニン
http://blog.m3.com/reed/20090914

というブログに対して医学生からコメントをいただきました。
コメント欄では字数制限があるのできょうのブログを使って返事を書きました。
やりとりは以下のようです。

#コメント
主なマーカーに、トロポニンIとTがありますが、なぜトロポニンTがより使用されているのでしょうか。
「トロップT」という簡単な検査機器もありますよね。
アミノ酸配列くらいしか違いがなさそうですが、Tを推奨する理由が何かあるのですか?

#コメントについての回答
心筋トロポニンに対する評価は,2000年に改訂された欧州心臓病学会/米国心臓病学会(ESC/ACC)の急性心筋梗塞診断基準に記載されたのを機に高まっています。
(Circulation 2007; 116: 2634-2653)

血中心筋トロポニン測定は現在,急性心筋梗塞の標準的な診断法であり,欧米のバイオマーカーガイドラインでもclass I,エビデンスレベルAです。
(Circulation 2007; 115: e356-e375)

そして、胸痛発症後数時間で高感度トロポニン陰性なら,心筋梗塞をほぼ否定できるという臨床的意義がありそうです。

要するに、トロポニンIでもトロポニンTでもどちらでもいいようです。
但し、トロポニンTは腎機能では高値となるために、トロポニンIがより優れていると最近では言われているようです。
従って質問に対する答えは、二者択一をするということになればトロポニンIということになります。

個人的な話になって恐縮ですが、私は心筋虚血に伴う心筋細胞傷害が心筋トロポニンTより早い時点で検出可能なH-FABPを使用しています。
(高感度ではなく)従来の心筋トロポニンTは数日を経た心筋梗塞の診断には有用かも知れません。
しかし、それでは余り意味がないような気がします。

蛇足になりますが、急性心不全で心筋トロポニン値の上昇の程度と院内死亡率を検討した論文でも心筋トロポニンI値、T値のいずれも相関が認められたということです。
(N Eng J Med 2008;358:2117-2126)

<関連サイト>
トロップT センシティブ
http://www.nihonkohden.co.jp/iryo/products/hematology/05_trop/501525.html

トロポニン I 測定キット
http://www.funakoshi.co.jp/node/14807

日常診療で役立つ診断キット(第二回)
http://opa.umin.jp/info/04_06/news4..htm

心筋梗塞を15分で診断 診断キットが普及
http://www.47news.jp/feature/medical/news/0106kit.html

心筋トロポニンで急性心筋梗塞をチェック
http://www1.odn.ne.jp/nikken_kitakyu/02_nihon_kensa_toroponin.htm

<自遊時間>
毎週水曜日は午後から休診で、いわば息抜きの日です。
単調な毎日の中にも水、土、日と祭日は自分を取り戻す安息日というわけです。

じっくりTVが観れるのもこんな日です。
一番TVを観る時間が多い食卓には最近まで20インチのTVを置いていました。
最近外付けHDで気軽に録画が出来るT社のRシリーズというTVに興味が沸き、年末に少し大きめのTVを購入しました。
1.5Tで録画すればかなりの長時間にわたっていとも簡単に衛星放送などのまったりした海外の風景やクラシック音楽などの番組がデジタルできれいに録画できます。
4台のHDまで増設が可能(LAN接続のHDを使えば計8台まで)で結局HDは4台購入し、計6.0T分の録画が可能となりました。

昨日の安息日の水曜日の夜には、一杯やりながら2009.9.17サントリーホールで演奏されたズビン・メータ指揮/ウイーン・フィルのベートーヴェン交響曲第7番を聴きました。
随分昔にこのオーケストラが来日した際に同じ題目(指揮はドホナーニ)を聴きに行ったことがあります。
私の愛聴盤はアバド/ウイーン・フィルで、確かアバドのデビューアルバムです。

リズムの饗宴(ワーグナーは「舞踏の祝祭」と呼んだ)とも言われる第7番。
ウイーン・フィルはいつも完璧です。
それにしても、この圧倒的な迫力。
奏者の構成はそんなに大掛かりではありません。
アンコールで演奏された2つのポルカ(「軽い足どり」「雷鳴と電光」)では管楽器が追加されましたが第7番のほうがスケールが大きい音楽というのは何故なんでしょう。

ピアノをもとにこれだけの激しいリズムと素晴らしいオーケストレーションをするベートーヴェン。
凄過ぎます。

さてサントリーホールの当日の聴衆には出来ないことがあります。
それは一杯やりながら、しかも至近のポジションで無料で鑑賞できること。

違うか。
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2009
Daiwa House Special
ズービン・メータ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/sponsor/090915.html


<きょうの一曲>
Beethoven:交響曲第7番「第1楽章」1/2
http://www.youtube.com/watch?v=5vSYlKG7XOo

Beethoven:交響曲第7番「第1楽章」2/2
http://www.youtube.com/watch?v=eP-5nb0XdMo&feature=related

Beethoven:交響曲第7番「第2楽章」1/2
http://www.youtube.com/watch?v=Yz4rXnwxKG4&feature=related

Beethoven:交響曲第7番「第2楽章」2/2
http://www.youtube.com/watch?v=aRoc5uUjc44&feature=related

Beethoven:交響曲第7番「第3楽章」
http://www.youtube.com/watch?v=7pPN6v4Y-tg

Beethoven:交響曲第7番「第4楽章」
http://www.youtube.com/watch?v=INe1G1Tbb78&feature=related

(コメント;フルトヴェングラーの音源がこんなにいい音で記録されていおるのには感激しました)


交響曲第7番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/交響曲第7番_(ベートーヴェン)


 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
               

 

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