戯れ言たれる侏儒
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MUCHA試験

戯れ言たれる侏儒 / 2010.01.03 00:35 / 推薦数 : 1

これまでに、慢性心不全の予後改善効果が認められているβ遮断薬はカルベジロール、メトプロロール、ビソプロロールの3剤であり、β1受容体遮断の確実さ、長時間作用型、脂溶性という共通点があります。
その3剤の中でカルベジロールは日本人慢性心不全患者を対象にした臨床試験MUCHAで有効性が確認され、唯一国内で慢性心不全の適応症が承認されています。

きょうは、このMUCHA試験(Multicenter Carvediol Heart Failure Dose Assessment)をとりあげておさらいをしました。

筒井 裕之 教授 北海道大学循環病態内科学
森本 剛 講師 京都大学医学教育推進センター
山下 武志 部長 心臓血管研究所研究本部
横井 宏佳 部長 小倉記念病院循環器科

これらの諸先生方の座談会からです。

##MUCHA試験
■MUCHA試験は,心不全に対するカルベジロールの有効性をわが国で初めて証明し,それまでβ遮断薬が禁忌とされてきた心不全への適応が承認されるきっかけとなった試験(第III相試験)です。
5年も前の試験ではありますが,11月開催の米国心臓協会(AHA)学術集会のLate Breakingで取り上げられるJ-CHF(Assessment of Beta-Blocker Treatment in Japanese Patients with Chronic Heart Failure)試験の基盤となる試験です。(筒井)

■対象は,虚血性・非虚血性を問わずニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II〜III度で左室駆出率(LVEF)40%以下の心不全患者174例で,当時の標準治療にプラセボもしくはカルベジロール5mgまたは20mgをadd-onするプラセボ対照試験です。
5年前の治験ですので,1次評価項目が全般改善度になっているのですが,死亡もしくは心血管系の入院というハードエンドポイントも見ており,カルベジロール高用量群ではプラセボ群より有意に低下していました。
しかし,イベントの内訳を見ると,プラセボ群では12例すべてが入院で,死亡は0なのですが,カルベジロール5mg群では4例中2例,20mg群でも4例中1例が死亡です。つまり,死亡に対する抑制効果は認められていなかったのです。(筒井)

■今度のJ-CHF試験では,日本人におけるカルベジロールの効果をハードエンドポイントで検証しようというのが目的の1つです。
また,MUCHA試験では,全般改善度でもLVEF増加率の比較でも,低用量より高用量で高い効果が認められましたが,低用量5mgでも効果は十分にありました。
一方で,実際のわが国におけるカルベジロールの平均用量は8mg程度です。
したがって,実際に用いられている5mgや2.5mg,あるいはもっと少ない1.25mgでも効果があるかどうかを検証することがJ-CHF試験のもう1つの目的です。(筒井)

■実際,中等度以上の心不全の場合,20mgを飲むのはきついですよね。
状態がいい人しかランダム化できないような気がします。
(山下)

■20mgを服用できそうにない人は試験対象者から外れてしまいます。(筒井)

■そもそも,なぜ5mgと20mgという用量設定だったのでしょうか。また,1:1:2の割り付けで20mg群に倍の人数が割り当てられている理由もわかりません。
もう1つ気になったのですが,LVEFの測定データは主治医にブラインドされていたのですか。(森本)

■カルベジロールの用量は当然ブラインドされていますが,LVEFの結果は主治医がわかります。(森本)

■そうすると,その情報が入院の判断に影響すると思うのです。「この人はLVEFが悪いから入院させよう」というように。戻さないことの倫理性との兼ね合いが難しいところだと思うのですが,そのあたりは少し弱いのではないかと思います。(筒井)

出典 Medical Tribune 2009.11.26
版権 メディカル・トリビューン

<コメント>
他の座談会でもそうでしたが森本先生は冴えきっています。


<関連サイト>
J-CHF試験
http://blog.m3.com/reed/20091215/J-CHF_
■カルベジロールの治験段階に実施されたMUCHA試験(第III相試験)において,プラセボ群と比べてカルベジロール投与群では,用量にかかわらず1次評価項目の全般改善度が有意に高くなっていたが,その効果は5mg/日,20mg/日で用量依存性に示された。

ESC心不全ガイドライン
http://blog.m3.com/reed/20081130/ESC_
■左室収縮能が低下した慢性心不全の治療薬としてACE阻害薬,β遮断薬は禁忌がない限り全例に投与し,入院患者の場合,入院中から始めるべきである(class I,エビデンスレベルA)。
■β遮断薬について以前から議論されていることの1つに,「心不全が悪化して再入院した場合,投与量をどうするか」という問題があるが,「コントロールが困難な心不全悪化中は一度β遮断薬を減量または中断することは可能であるが,心不全症状が安定した後,再び徐々に増量していく」と記載された。
β遮断薬の投与量については,心不全症状の悪化,症状のある血圧低下,徐脈が見られない限り増量すべきとされた。

慢性心不全におけるβ遮断薬療法その2(2/3)
http://blog.m3.com/reed/20071221/1
■心臓交感神経活性は全身の交感神経活性に先んじて亢進することが分かっている。
■心臓交感神経活性の亢進は、心筋細胞での活性酸素産生の増加を介して心毒性に作用するほか、β受容体シグナル伝達系の変化を介して心機能のさらなる低下をもたらす。
すなわち、不全心が不全心を増悪するといえる。 
■β遮断薬は、左室リモデリングを抑制するのみならず、拡大した左室を小さくし、LVEFの増大をもたらす(リバース・リモデリング)。
■心臓交感神経活性の持続的亢進は心筋細胞の病的変化(遺伝子発現の変化)をもたらし、ひいては左室機能を低下させる。
β遮断薬によるLVEFの改善には心筋細胞の質的変化を伴うことが示されている。
心不全のもとをたどれば不全心にある。
ACE阻害薬やARBは主に血管系にその効果を発揮する。
これに対してβ遮断薬は左室の心機能を改善させる方向に働く。
これがβ遮断薬が慢性心不全の予後を大きく改善させる理由と考えられる。
■カルベジロールは血管拡張作用や抗酸化作用などの特徴を併せ持つために導入しやすいという特徴を考えると、心不全に対するカルベジロールの効果はβ遮断薬のClass Effectとは言えないであろう。

出典 NIKKEI MEDICAL 2007.12
版権 日経BP社

MUCHA
http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002326.html
■本試験は本邦で実施された治験である。5mg/日の低用量群でも20mg/日の高用量群と大差のない有効性が認められたが,左室駆出率の改善はMOCHA試験と同様に用量依存性に増大がみられたため,やはり20mg/日まで増量するのが望ましいと考えられる。20mg/日でも欧米の投与量の約1/2であり,日本人は少用量でも有効であることを示している。


 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
               

 

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