戯れ言たれる侏儒
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ALLHAT・10年追跡結果

戯れ言たれる侏儒 / 2009.12.27 00:13 / 推薦数 : 0

第82回米国心臓協会学術集会(AHA 2009)のALLHATに関する記事で勉強しました。

ALLHATは高血圧治療における降圧の重要性を改めて示した試験です。
今となってはあまり耳にしなくなった試験ですが、当時は一大センセーションを起こしました。
その後もサブ解析がいろいろ出たことは先生方のご存知の通りです。

この試験は脳卒中の予防でCa拮抗薬が利尿薬を上回る傾向を示した点も注目されました。
2000年に報告されたWHO/ISHメタ解析において、Ca拮抗薬の脳卒中予防効果は利尿薬・β遮断薬治療に比べ有意に優れていたという結果が出ていましたが、ALLHATも同様の傾向でした。
そういった意味ではCa拮抗薬の脳卒中予防効果は確立したといって良い試験でした。

##〜ALLHAT〜
##10年追跡でも心血管死抑制に降圧薬間の有意差認めず
高リスク高血圧患者の冠動脈性心疾患(CHD),心血管疾患(CVD)の抑制には,カルシウム(Ca)拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,α1遮断薬などの新規降圧薬でも利尿薬を超えられないとの予想外の結果が論争を呼んだ空前の大規模臨床試験ALLHAT※。
2002年に終了した同試験の通算10年に及ぶ長期追跡結果が,当地で開かれた第82回米国心臓協会学術集会(AHA 2009)において退役軍人局医療センター(テネシー州メンフィス)のWilliam Cushman教授から発表された。
1次評価項目の心血管死をはじめ,新規降圧薬による予後改善効果は,今回も利尿薬に勝る結果ではなかった。

#心不全抑制は利尿薬がCa拮抗薬をしのぐ
ALLHATの対象は,55歳以上,1つ以上の冠危険因子を有する北米の高リスク高血圧患者4万2,418例。
主解析ではCHDを1次評価項目として,利尿薬クロルタリドン(C群)との比較でCa拮抗薬アムロジピン(A群),ACE阻害薬リシノプリル(L群),α1遮断薬ドキサゾシン(D群)のイベント抑制効果に差があるか,二重盲検で検証した。

その結果,D群では中間解析から心血管死,脳卒中,心不全などの有意な増加が判明,3年の追跡で早期終了された。
平均5年の追跡による主解析では,1次評価項目には有意な群間差が認められなかったものの,C群に比べA群で心不全〔ハザード比(HR)1.38〕,L群で脳卒中(HR 1.15),心不全(HR 1.20)の有意な増加が明らかになった。

今回の10年時解析では,A群,L群で5年,D群では心血管死増などによる早期終了のため3年の治療による長期効果が検討された。
試験終了後のイベントデータは,行政データベースから取得。試験終了後の血圧,治療薬の情報はなかった。
解析対象は,死亡率についてはカナダ人を除く4万1,719例,死亡率と罹患率の複合評価項目については2万7,246例。

C群に対する各評価項目のHRを見ると,今回の1次評価項目の心血管死はA群1.00〔95%信頼区間(CI)0.93~1.06〕,L群0.97(同0.90~1.03)となり,D群とともに群間に有意差は認められなかった。
総死亡,CHDも同様に薬剤間に有意差はなかった。

一方,心不全による入院・死亡リスクはA群でHR 1.12(95%CI 1.02~1.22,P=0.01)と10年後もC群に比べて有意に高く,L群(HR 1.00),D群(HR 1.07)では試験終了時に認められた有意差が消失していた。
脳卒中による入院・死亡のHRは,A群0.99,L群1.04,D群1.02,CVDもA群1.03,L群0.99,D群1.03で,試験終了時に認められた有意な群間差は消失していた。

試験終了後に限ると, L群でCVDのHRが0.90(95%CI 0.82~0.98)と軽度だが有意な減少へ転じていた。

これらの成績を踏まえ,Cushman教授は「通算10年の解析結果は主解析の結論を追認するもので,サイアザイド系利尿薬は,なおほとんどの高齢高血圧患者で第一選択薬として優先されるべきだ」と述べた。

試験終了後の使用薬に関するデータがなく,今回の結果には早期終了したD群をはじめ,薬剤変更の影響が考えられるが,同教授は「利尿薬を第一選択薬としたことで,5年間の試験期間には有益性も認められ,10年後も心不全ではその効果が持続しており,不利益は生じていない」と述べた。

指定討論者のミシシッピ大学(ミシシッピ州オックスフォード)のDaniel W. Jones氏は「血圧下降は最も重要であるが,心血管保護を来す降圧薬はいくつかあり,副作用の可能性,コスト,服薬上の不便などが最小限のアプローチで降圧を図るべきだ」との見解を示した。

現在,来春予定の高血圧診療ガイドライン第8次報告(JNC 8)素案発表に向けて,改訂作業が進められている。今回の結果から,第一選択薬として利尿薬優先が堅持されるのか,動向が注目される。

※Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial
[2009年12月17日(VOL.42 NO.51) p.22]
出典 Medical Tribune 2009.12.17
版権 メディカル・トリビューン

<ALLHAT関連サイト>
ALLHATが明らかにしたCa拮抗薬の有用性
http://www.carenet.com/hypertension/allhat/matsumoto/index.html
「ALLHAT」研究の性、年齢、人種別サブ解析が公表−−ASH学会
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/247701.html
上原譽志夫-降圧治療の新しいエビデンスはわが国に何をもたらすかー
http://www.lifescience.jp/ebm/opinion/200305/index.html
ALLHATに基く降圧治療FAQhttp://www.gik.gr.jp/~skj/ht/ALLHAT-FAQ.php3
Antihypertensive and Lipid Lowering Therapy to Prevent Heart Attack Trial
http://www.novartis.co.jp/ebm/navigator/16ALLHAT.html
ALLHAT」研究結果が医師の処方動向に大きく影響、利尿薬が急増、RA系抑制薬が急減−−加研究
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/284886.html
特別講演
ALLHAT:最大規模の高血圧臨床試験/日本人患者のために何がいえるか?
http://www.gclew.com/gakkai/26th_jsh/contents/1031_1.php
高血圧患者の主要心血管イベント発生に対するドキサゾシンとクロルタリドンの無作為化ニ重盲検実薬対照試験(ALLHAT)
http://ds-pharma.jp/medical/gakujutsu/view/articles/d_00128.html

<番外編 その1>
同じく
第82回米国心臓協会学術集会(AHA 2009)
の記事からです。

#日本のiPS研究論文がCirculation年間ベスト
基礎科学論文賞を受賞
京都大学再生医科学研究所/iPS細胞研究センターの楢崎元太氏,山下潤准教授らの「Directed and Systematic Differentiation of Cardiovascular Cells From Mouse Induced Pluripotent Stem Cells」がCirculationの年間ベスト基礎科学論文賞を受賞し,AHAにおいて表彰された。

楢崎氏らは,マウス胚性幹(ES)細胞を用いて構築した系統的心血管細胞分化誘導法を,マウスの皮膚細胞から樹立した人工多能性幹(iPS)細胞に適用することにより,内皮細胞や壁細胞,心筋細胞などを系統的に誘導し,立体的に培養することで,血管構造を形成することや拍動させることに成功し,同誌(2008; 118: 498-506)で報告した。

同氏らは,ヒトiPS細胞に発展させた研究を進めているという。

出典 Medical Tribune 2009.12.17
版権 メディカル・トリビューン


<番外編 その2>
#PPARγ遺伝子の変異が血圧に影響
ノースカロライナ大学(ノースカロライナ州チャペルヒル)病理学・実験医学のOliver Smithies教授らは,ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γ遺伝子の変異による発現の量的変化が血圧に影響するとProceedings of the National Academy of Sciences, USA(2009; 106: 19084-19089)に発表した。

#遺伝子側に潜在的誘因
インスリン抵抗性,高血圧,肥満を含む複数の徴候によって特徴付けられるメタボリックシンドロームは,心血管疾患の罹患と死亡の危険因子である。

脂肪細胞の分化と脂質代謝を制御している核内受容体型転写因子のPPARγは,インスリン抵抗性の分子標的で,PPARγを活性化させる薬剤がインスリン抵抗性改善薬として注目されている。
このPPARγ遺伝子発現に影響する遺伝子変異は,メタボリックシンドロームの潜在的誘因となる可能性がある。

Smithies教授らは,マウスの遺伝子を操作し,PPARγが通常の28〜182%のさまざまなレベルで発現する350匹超の変異マウスと,280匹超の同腹の野生型マウスの血圧を比較した結果,PPARγ発現レベルの2倍の増加(または減少)が,血圧を2.8 mmHg低下(または上昇)させることを示した。

PPARγ遺伝子の3'-非翻訳領域をβ-グロビン遺伝子のそれと代替させることによって転写産物を安定させたPPARγ mRNAの定常レベルが182%のマウスは,同腹の野生型マウスよりも低い血圧を示した。

一方,PPARγ遺伝子の3'-非翻訳領域へmRNA不安定化配列を挿入したマウスでは,PPARγ mRNAが減少し,血圧上昇傾向が観察された。

同教授らは「ヒトのPPARγ遺伝子のいくつかのバージョンによるさまざまな発現レベルが,高血圧とその結果である心疾患のリスクを高めている可能性がある」と述べている。

出典 Medical Tribune 2009.12.17
版権 メディカル・トリビューン

<きょうの一曲>
諏訪内晶子 Cristal
http://www.youtube.com/watch?v=x6kuyiEWINU&feature=related

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
               

 

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