戯れ言たれる侏儒
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第82回米国心臓協会学術集会(AHA2009Orlanndo,Florida,November14-18,2009))
での発表をとりあげた以下の記事で勉強しました。

発表者は福井心臓血圧センター福井循環器病院循環器科/内分泌科
村上達明先生です。

この記事のコメンテーターは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長です。


アンジオテンシンII受容体拮抗薬服用2型糖尿病患者において長期のチアゾリジン系薬投与が糖尿病の改善の程度にかかわらず冠動脈の血管運動を改善する

インスリン抵抗性改善薬は抗動脈硬化作用を有することが示唆されており,村上氏らはチアゾリジン系薬(TZD)が冠動脈の血管運動を改善し,2型糖尿病患者の冠攣縮性狭心症を抑制したことを過去に報告している。
しかし,その長期の抗動脈硬化作用については明らかではなかったため,同氏らは1年以上の長期試験を実施し,TZDがアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与中の2型糖尿病患者でも,HbA1Cの改善とは独立して血管運動を改善したことを明らかにした。

 

冠動脈の冠血流予備能や血流依存性血管拡張反応を測定
村上氏らは,冠動脈造影を施行し,ARBを投与中の2型糖尿病患者22例を対象として,今回の研究を実施した。対象患者を無作為にTZD投与群とTZD非投与群に分け,TZD投与群にはトログリタゾン400mg/日またはピオグリタゾン30mg/日を1年以上投与し,TZD非投与群にはTZDなしの治療を1年以上実施した。
 

重症の冠動脈疾患患者やインスリン療法中の糖尿病患者,重症の肝・腎疾患患者などは対象から除外している。患者背景は,年齢,性,心筋梗塞の既往,糖尿病家族歴,喫煙,高血圧,肥満,高コレステロール血症のいずれにおいても,両群間に有意差を認めなかった。
 

治療期間の前後で,左冠動脈のATP負荷による冠血流予備能(CFR)や血流依存性血管拡張反応(FMD)を,定量的冠動脈造影や冠動脈内ドプラガイドワイヤによって測定した。

 

TZD投与群ではHbA1Cの低下にかかわらず血管運動が改善
TZD投与群では治療期間の前後において,血糖,HbA1C,インスリン,トリグリセライド,HDLの各値に有意な改善〔P<0.05,paired-t検定(以下同)〕が認められたが,TZD非投与群では有意な変化はなかった。一方,心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧,平均血圧は両群とも有意な変化がなかった。
 

ATP負荷によるCFRは,TZD投与群では有意な改善(P=0.020)が認められたのに対し,TZD非投与群では有意な変化は認められなかった。また,ATP負荷によるFMDもTZD投与群でのみ有意な改善(P<0.001)が認められた(図1)。

 

TZD投与群におけるCFRやFMDの変化を,HbA1Cの低下が0.5%以上だったレスポンダーと0.5%未満だったノンレスポンダーに分けて解析すると,HbA1Cの低下にかかわらず血管運動が改善していることがわかった(図2)。

 

 

ARBを服用している2型糖尿病患者において,TZDの長期投与が糖代謝の改善とは独立して冠動脈の血管運動を改善することが示唆され,村上氏は「2型糖尿病患者の冠動脈疾患治療にTZDが有益である可能性がある」と述べた。

 

<佐藤幸人先生のコメント>
■演者らは以前,チアゾリジン薬であるトログリタゾンを用いて同様の検討を行っている(Am J Cardiol 1999; 84: 92-94)。

Effects of troglitazone on frequency of coronary vasospastic-induced angina pectoris in patients with diabetes mellitus.
Am J Cardiol. 1999 Jul 1;84(1):92-4
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10404859

■そのなかで,スパズムを伴う糖尿病患者において内皮機能の改善が認められ,狭心症の頻度が減少したことから,インスリン抵抗性の改善が内皮機能障害の改善に関連すると考察している。
現在トログリタゾンは,肝障害の副作用から販売中止となっており,本発表はインスリン抵抗性を改善するチアゾリジン薬としておもにピオグリタゾンのデータであると思われる。
■ピオグリタゾンは2型糖尿病患者における心血管イベント抑制効果(総死亡+非致死性心筋梗塞+脳卒中)を検討したPROactive試験においてプラセボと比較して有意に複合エンドポイントを低下させた(Lancet 2005; 366: 1279-1289)。

Secondary prevention of macrovascular events in patients with type 2 diabetes in the PROactive Study (PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial.
Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16214598

■そのなかで非致死性心筋梗塞,急性冠症候群,冠動脈血管再建術の初発イベントはピオグリタゾン投与によりそれぞれハザード比0.83,0.78,0.88と抑制されており,冠動脈イベントを減少させた。
■グリメピリドとの比較試験であるPERISCOPE試験(JAMA 2008; 299: 1561-1573)では,2型糖尿病患者において,冠動脈の超音波検査所見にて有意に動脈硬化の進行が抑制された。

Comparison of pioglitazone vs glimepiride on progression of coronary atherosclerosis in patients with type 2 diabetes: the PERISCOPE randomized controlled trial.
JAMA. 2008 Apr 2;299(13):1561-73.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18378631

■ピオグリタゾンのどのような作用機序が心血管イベント抑制につながるのか今後の検討が待たれ,血糖改善効果によらない作用機序の1つとして本発表は意義深い。
http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2009.cgi/html/08_5252.html

 

<きょうの一曲>
Stand Alone サラ・ブライトマン×久石 譲
http://www.youtube.com/watch?v=mYiOfsqUexY

NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』オリジナル・サウンドトラック
http://www.emimusic.jp/st/compi/sakanoue/

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
               

 

 

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