戯れ言たれる侏儒
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SWEDEHEART

戯れ言たれる侏儒 / 2009.11.29 00:28 / 推薦数 : 0

第82回米国心臓協会学術集会(AHA2009Orlanndo,Florida,November14-18,2009))
での発表をとりあげた以下の記事で勉強しました。

発表者はKarolinska University Hospital,(Stockholm, Sweden)のKarolina Szummer 氏です。

この記事のコメンテーターは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長です。

##心筋梗塞後のスタチン使用は腎機能低下患者のほぼすべてで生命予後を改善する: Swedish Web-system for Enhancement and Development of Evidence-based care in Heart disease Evaluated According to Recommended Therapies (SWEDEHEART)からのデータ
Statin Use After Myocardial infarction improves survival in nearly all with renal dysfunction: data from the Swedish Web-system for Enhancement and Development of Evidence-based care in Heart disease Evaluated According to Recommended Therapies(SWEDEHEART)

スタチンは心筋梗塞後の二次予防として推奨されており,Pravastatin Pooling ProjectやCARE,TNTなど複数の試験の後付け解析において,軽度~中等度の腎機能不全症例でのスタチン投与の恩恵が報告されている。
その一方で,血液透析患者においてスタチンの心イベント一次予防効果を検討した試験(AURORA,4D)では恩恵は示されていない。
この発表ではスウェーデンにおける冠動脈疾患患者の大規模データベース解析により,心筋梗塞後の二次予防としてのスタチン投与の影響を腎機能との関連が検討された。
その結果,1年間のスタチン投与により,腎不全/透析症例を除くほとんどの腎機能低下患者で全死亡が改善された。

#5万例以上のデータを傾向スコア分析により解析
■SWEDEHEARTはスウェーデン全国71病院の冠動脈医療部門で,連続症例のみを登録したデータベースで,今回の研究では2003~06年に心筋梗塞入院後,死亡せずに退院し,クレアチニン値データの存在する5万3,094例のデータを解析した。
退院時のスタチン服用患者は全体の72.3%(3万8,363例)で,非服用患者は27.7%(1万4,731例)であった。
 
■MDRD簡易式を用いて推定糸球体濾過量(eGFR)を算出し,腎機能低下レベルにより,正常(eGFR≧90:患者の比率22.5%),軽度低下(同60~89:46.6%),中等度低下(同30~59:26.5%),重度低下(同15~29:3.2%),腎不全(同<15または透析例:1.1%)の5段階に分類した。
平均eGFRは73±28mL/分/1.73m2で,腎不全群の51.5%が透析を受けていた。
 
■ベースラインの患者背景と入院中の治療・合併症データから48の変数を選択し,ロジスティック回帰モデルを作成して,スタチン投与状況に関する傾向スコアを推定した。
得られた傾向スコアと退院時の投薬状況により補正したCox回帰モデルにより,退院時のスタチン投与と1年間の生命予後との相関を検討した。

#全体的に1年死亡率が低下
■腎機能別の背景比較では,腎機能低下の重症度が進むにつれ,男性の割合と喫煙者の割合は低下傾向にあり,年齢,合併症,心血管イベントの既往は増加傾向にあった。
スタチン投与群と非投与群での背景比較では,スタチン投与群のほうが若齢で男性の比率が高かったが,合併症と心血管イベントの傾向に関してはばらつきが見られた。
傾向スコアによる調整後,スタチン投与群と非投与群の背景はほぼ同等となった(表)。

■退院時のスタチン投与率は,腎機能低下の重症度が進むにつれ低下する傾向にあった(軽度低下群から順に,84%,77%,58%,44%,52%)。
調整前の1年死亡率は,腎機能低下の重症度が進むにつれ増大したが,いずれの腎機能分位でも,スタチン投与により改善された(図1)。

傾向スコアと退院時の投薬状況で調整後の1年死亡率は,腎機能低下軽症群から重症群まではスタチン投与により改善され,軽症であるほどその恩恵は大きかったが,腎不全群での恩恵は不明瞭であった(図2)。
全体では退院時のスタチン投与により,生命予後が30%改善された(ハザード比:0.70,95%信頼区間:0.66~0.75,P<0.001)。

■腎機能低下を認める心筋梗塞入院既往者のほとんどで,退院時のスタチン療法により全死亡に関する恩恵が認められた。
腎不全群における恩恵は不明瞭であるものの,退院時にスタチン投与を開始していない患者が,中等度腎機能低下症例で40%,重度低下症例で50%以上存在しており,これらの患者にスタチンを投与することで,全体的な生命予後の改善が見込まれる。
(Szummer氏)

<佐藤幸人部長のコメント>
■心血管イベントの2次予防のためにスタチンは投与されるが,透析患者が対象となった場合,その効果は認められないという結果が最近アトルバスタチンの4D試験(N Engl J Med 2005; 353: 238-248),ロスバスタチンのAURORA試験(N Engl J Med 2009; 360: 1395-1407)から報告された。

Atorvastatin in patients with type 2 diabetes mellitus undergoing hemodialysis.
N Engl J Med. 2005 Jul 21;353(3):238-48.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16034009

Rosuvastatin and cardiovascular events in patients undergoing hemodialysis.
N Engl J Med. 2009 Apr 2;360(14):1395-407.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19332456

■腎機能が悪いとスタチンの心血管イベント抑制効果は弱いのかという疑問のもとで,今回の発表がなされたが,腎機能別に見てもベースラインの腎機能にかかわらず,生命予後効果は認められた。
したがって,二次予防の観点からは腎機能にかかわらずスタチンを投与すべきということになる。

■もうひとつ,腎機能に着目したスタチンの話題として,スタチンに腎保護作用はあるかという点がある。
安定狭心症患者に対するアトルバスタチンの高用量投与を検討したTNT試験(N Engl J Med 2005; 352: 1425-1435)のサブ解析では,慢性腎臓病(CKD)患者においてアトルバスタチン投与がeGFRを改善することが報告されている(Clin J Am Soc Nephrol 2007; 2: 1131-1139)。

Intensive lipid lowering with atorvastatin in patients with stable coronary disease.
N Engl J Med. 2005 Apr 7;352(14):1425-35.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/15755765

Effect of intensive lipid lowering with atorvastatin on renal function in patients with coronary heart disease: the Treating to New Targets (TNT) study.
Clin J Am Soc Nephrol. 2007 Nov;2(6):1131-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17942759

■スタチンのアルブミン尿改善作用を示したものとして,メタ解析を行ってアルブミン尿改善効果を報告した論文があるが(Ann Intern Med 2006; 145: 117-124),このメタ解析では生存率への影響は検討されていない。

Meta-analysis: the effect of statins on albuminuria.
Ann Intern Med. 2006 Jul 18;145(2):117-24.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16847294

■最新のCKD患者における前向き試験のメタ解析では,スタチン群ではプラセボ群と比較して副作用の増加を伴うことなく,心血管イベントの抑制が見られ,蛋白尿の減少も見られたが,GFRの改善と全死亡の改善は認められないという結果であった(BMJ 2008; 336: 645-651)。

Effects of statins in patients with chronic kidney disease: meta-analysis and meta-regression of randomised controlled trials.
BMJ. 2008 Mar 22;336(7645):645-51.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18299289

■したがって,現在,海外では,スタチンの腎保護作用はある可能性が高いが,結論を出すには早すぎ,今後CKD患者を対象とした前向き大規模試験が必要であると考えられている(J Am Coll Cardiol 2008; 51: 2375-2384)。
Managing dyslipidemia in chronic kidney disease.
J Am Coll Cardiol. 2008 Jun 24;51(25):2375-84.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18565393


「あるお店」へのアプローチ 2009.11.25撮影  


「いただきます!」 2009.11.25撮影  


<きょうの一曲>
Bruckner 7th, Adagio - Jochum, RCO (1/3)
http://www.youtube.com/watch?v=NZL6bNqBNwM&feature=related

Bruckner 7th, Adagio - Jochum, RCO (2/3)
http://www.youtube.com/watch?v=qmhnLGidTCo&feature=related

Bruckner 7th, Adagio - Jochum, RCO (3/3)
http://www.youtube.com/watch?v=45HVlZ2ICGA&feature=related

 

その他
ふくろう医者の診察室 
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 井蛙内科/開業医診療録(3)
~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。
               

 

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