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肥満は周知のように血管病(CVD)危険因子です。
成人のBMIと死亡率の関係については「Uカーブ」を描き,BMIが低くても死亡率が高まることが報告されています。
第82回米国心臓協会学術集会(AHA2009Orlanndo,Florida,November14-18,2009))
での発表をとりあげた以下の記事で勉強しました。
##肥満は長期的な心血管死亡リスク,低体重は非心血管死亡リスクの独立した予測因子:Framingham Offspring Cohortより
http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2009.cgi/html/16_1466.html
出典 Medical Tribune Congress News Wave 2009.11.24
版権 メディカル・トリビューン社
この発表はフラミンガム子孫コホートにおける死亡とBMIとの関係を検討したものです。
低BMI層における死亡率の上昇は非CVD死亡の増加に基づくものであり,低BMIはCVD死亡の危険因子ではないという結果でした。
コメンテーターは兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長です。
#極端な低BMI層での総死亡率上昇の原因は非CVD死亡の増加
■フラミンガム子孫コホートに対する観察研究は,1970年代初めに開始された。
今回の検討では,同コホートのうち登録時に癌に罹患していなかった4,609人が対象とされた。登録時の年齢は20〜59歳,51%が女性,CVD罹病歴のある人は1.4%であった。
追跡期間中央値は33年(最長36年)であり,その間に258人(うち女性74人)がCVDにて死亡し,770人(同306人)がCVD以外の原因にて死亡した。
■これらの人々の年齢・性,収縮期血圧値および降圧治療,脂質値(総コレステロール・HDLコレステロール),喫煙習慣の有無,糖尿病の有無,CVD既往歴の有無について補正したFine & Gray競合リスクモデルを用い,CVD死および非CVD死とBMIとの関係を検討した。
■その結果,正常体重層(BMI 20〜25kg/m2)におけるCVD死亡リスクを1とした場合,過体重層(25〜30kg/m2)と肥満層(>30kg/m2)のハザード比(HR)はそれぞれ1.18,1.46と上昇,低体重層(<20kg/m2)のHRは0.81と低下し,BMIとCVD死亡率の間には有意な直線性(linearity)が認められた(P=0.037,linear trend検定)。
■一方,非CVD死亡とBMIの間には直線性は認められなかったが,低体重層のHRは1.44と有意に高かった(P=0.026 vs. 正常体重層)。
すなわち,CVD死亡率はBMIの増加に依存して直線的に上昇する一方,非CVD死亡はBMIのきわめて低い一帯でのみ高くなる。
したがって,両者を併せた総死亡のグラフは図のような「Uカーブ」を描くが,低BMIがCVD死亡の増加をもたらすわけではないことが明らかとなった。

#BMIを是正しても他の危険因子が是正されなければ大きなリスク低下は望めない
■次にPencina氏らは,自らが考案したNet Reclassification Improvement(NRI)という指標を用い,CVD死亡リスクの予測因子にBMIを加えることによって,予測精度がどのように変化するかを評価した。
NRIとは,新たな危険因子候補(この場合はBMI)以外の危険因子の存在状況に基づいて判定されたCVD死亡リスクのカテゴリーが,新たな危険因子候補を加えることによってどう変化するのかをみるものである。
以下 結果は略(表 参照)
■この数字は,CVD死亡の危険因子としてのBMIの独立性は低いことを意味する。さらに,非CVD死亡に対して行った同様の解析では,NRIはほとんどゼロに近く,非CVD死亡の危険因子としての独立性はきわめて低いことが示唆されたという。
■以上により,BMIの増加は将来のCVD死亡リスクを直線的に高めるとともに,極端な低BMIは非CVD死亡リスクを高めるが,たとえこれらの因子が改善されても,併存する他の危険因子が改善されない限り,大きな効果は期待できないことが示唆された。
<佐藤部長のコメント>
■一般住民を対象にした場合,肥満は高血圧,糖尿病,脂質異常症,睡眠時無呼吸,ある種の癌,心血管病変の下地となると考えられている。
■一方で一度心血管病変を発症すると,疫学的に今度は低体重が予後不良因子となるという逆転現象が観察され,obesity paradoxと呼ばれている。
Obesity and cardiovascular disease: risk factor, paradox, and impact of weight loss.
J Am Coll Cardiol 2009; 53: 1925-1932
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19460605
The obesity paradox: fact or fiction?
Am J Cardiol 2006; 98: 944-948
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16996880
■心不全について考えてみると,心不全の発症リスクは肥満の程度が重くなるにつれて増すことが一般住民のデータにより確認されている。
Obesity and the risk of heart failure.
N Engl J Med 2002; 347: 305-313
http://www.medical-tribune.jp/cgi-local/aha2009.cgi/html/16_1466.html
■末期心不全患者は,低体重,低栄養状態となり,癌患者のようにカヘキシー(悪液質)になるために,低体重のほうが予後不良という一見逆の結果になる。
Prognostic importance of weight loss in chronic heart failure and the effect of treatment with angiotensin-converting-enzyme inhibitors: an observational study.
Lancet 2003; 361: 1077-1083
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/12672310
■このような背景からBMIと死亡について循環器領域では混乱が認められている。
本発表では,低BMI層における死亡率の上昇は非CVD死亡の増加に基づくものであり,低BMIはCVD死亡の危険因子ではないことが確認された。
■今後,このような質の高い母集団での長期観察が混乱の解明には必要である。
また,欧米での肥満はBMI 30以上を対象にすることが多いが,日本人はBMIが25程度から耐糖能異常が始まるといわれており,日本人での同様の検討が必要である。
その他
ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
井蛙内科/開業医診療録(3)~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
井蛙内科/開業医診療録~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
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