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##3枝病変にはバイパス術を 冠動脈疾患治療に関する議論が再燃
薬剤溶出ステント(DES)の使用成績が期待通りではなかったことが契機となり,冠動脈疾患に対する至適治療を巡る議論が再燃している。
ベルン大学病院心血管外科のThierry Carrel教授らは「バルーン拡張術適用症例の増加とともに,不適切と考えられる症例にまで同術が適用されるケースも増えており,依然として治療選択に関する患者への十分な情報提供がなされていない」とTherapeutische Umschau(2009; 66: 293-300)で指摘した。
#左主幹部狭窄もバイパス術が基本
最新の知見から,特に重度の冠動脈疾患患者(左主幹部狭窄または3枝病変を有する患者)では,外科的血行再建が長期的観点からは優れていることが明らかにされた。
Stent or Surgery Trial(SoS試験)では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)群に比べて冠動脈バイパス術(CABG)群で術後6年生存率が有意に高く(死亡率:10.9%対6.6%),再介入を余儀なくされた症例も明らかに少なかった。
過去2年間に実施された6件の大規模試験でも,3枝病変患者について同様の結果が得られている。
ただし,Carrel教授は「PCIよりCABGのほうが優れているかどうかは術後数年経過後に初めて評価可能となるが,選択患者を対象とした前向き比較試験の多くでは,その点の検討が不十分なままである」と研究上の問題点についても指摘している。
外科的手技が優れている理由は明らかで,単一の病変を対象とするカテーテル治療とは異なり,バイパス術では標的とした領域内で発見された新規病変に対しても処置を施すことができ,確実に血行を再建できる。
長期成績も良好で,例えばバイパス血管として内胸動脈を使用した場合の開存率は,手術の10〜15年後でも90%を上回っている。
これらのデータを根拠として,欧米のガイドラインでは,左主幹部狭窄が認められる患者に対するPCIの適用は,CABGが絶対禁忌の場合に限ることを明記している。
#インフォームド・コンセントが重要
しかし,医療現場ではこうしたガイドラインの勧告内容が遵守されないことも多く,欧州では左主幹部狭窄患者の約3割にPCIが施行されている。
しかも,これらの多くは3枝病変などの危険因子を抱えた患者である。
Carrel教授は「現在ではPCIもCABGも安全性に関してはほぼ同等で,術後早期死亡率はCABGでも0.6〜1%程度にとどまっている。したがって,もはや手技の安全性を理由にPCIを選択することはできない」と強調している。
治療選択肢が複数存在する場合には,いずれの方法についてもその長所と短所を詳しく説明し,患者が自身の考えで決断を下すことができるようにしなければならない。
同教授は「例えば,冠動脈造影検査を受けた患者が冠動脈インターベンションを専門とする心臓内科医の意見だけを聞いた場合,果たしてそれで十分なインフォームド・コンセントが保証されるのかどうか疑問である。心臓内科医と心臓外科医の双方が参加する学際的な症例検討会を導入する必要がある」と主張している。
出典 Medical Tribune 2009.10.22
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
SYNTAX試験 3枝病変・左主幹部病変に対する治療
http://blog.m3.com/reed/20090225/SYNTAX___3_
■完全血行再建率はCABG群のほうがPCI群よりも有意に高かった。
退院時処方ではPCI群で抗血小板薬の使用が有意に多かった。
CABG群では15.0%が人工心肺不使用であり,97.3%に動脈グラフトが使用された。
PCI群では14.1%がPCIを2期的に行う必要があり,63.1%が分岐部病変であった。
■観察12か月後において,総死亡,総死亡+脳卒中+心筋梗塞については両群間に差が認められなかった。
しかし,主要心脳血管イベントの発生はPCI群で有意に高率であった。
その理由はおもに,再インターベンションの施行率がPCI群で有意に高かったことによる
■一方,脳卒中にだけ注目すると,CABG群で発症率が有意に高かった。
症状を伴ったCABG群のグラフト閉塞率(3.4%)とPCI群のステント血栓症(3.3%)の発生率は同等であった。
■病変部の複雑さを示すSYNTAXスコア別に解析した結果では,CABG群では病変部が複雑になりSYNTAXスコアが上昇しても主要心脳血管イベント発生率は変化がなかったが,PCI群では病変が複雑になるにつれ主要心脳血管イベント発生率が上昇し,CABG群との間に有意差が認められるようになった。
■LMT病変の患者だけで検討すると,12か月後の主要心脳血管イベント発生率はCABG群13.7%,PCI群15.8%と両群間で同等であった。
PCI群では再インターベンション施行率が有意に高かったが,これはCABG群で脳卒中発症率が有意に高かったことで,危険度が相殺されたことによる。
■LMTのみに限ると主要心脳血管イベント率に差が認められておらず,LMTのみの患者ではPCIが簡便ですぐれている可能性が高い。
またQOLの観点からは脳卒中の発症は重要であり,さまざまな試験においてCABG群で常に有意に発症頻度が高いことは考慮されるべきである(2%以上)。
そういう意味では今回もCABG群,PCI群ともに一長一短という結果とも取れる。
■病変がLMT単独,もしくはLMT+1枝病変であれば,PCIの成績はCABGのそれに劣るものではなかったり,また糖尿病を持っているかどうかで分けて見てみると,糖尿病のない患者では同じようにPCIの成績がCABGに劣っていなかったことなど,病変,患者の持つバックグラウンドなどを考慮すれば,PCIは許容される部分がある。
■最終的にはPCIのCABGに対する非劣性は認められず,DES時代の現在でもLMT,多枝疾患の冠動脈疾患患者のスタンダードな治療としてはCABGに優位性があることが証明される結果となった。
■デバイスや技術の進歩が速いPCIの分野ではエビデンスが実情に追い付かないという側面がある。
■PCIは狭窄部位,閉塞部位に直接挑む治療であるのに対して,CABGは病巣部に手を付けず別の血流路を創るという全く別の治療法である。
■現段階でPCI側が追い風としているのが多枝病変を対象としたオープンラベル試験のARTS IIである。
このARTS IIはもともとはベアメタルステント(BMS)とCABGのRCTであるARTS I と似通った症例にDESを施行した群との比較のため,症例背景も違い単純比較はできないが,3年目まですべての項目で差がなく,一般的には,PCI がバイパスに追い付いたことを示す成績と解釈されている。
■シロリムス溶出ステントを用いたSIRIUS試験の成績をもとに,糖尿病合併例ではPCIが適さないとされているが,既に理論的にその知見を否定することが可能だという。
SIRIUS試験は18mmのステントしかなかった当時の研究だが,種々の長さのステントを選択できるようになって以降はPCIの劣勢を指摘するデータはあまり見られない。
要はステントがしっかりと動脈硬化巣をカバーできているかが重要であり,血管超音波ガイド下のDES留置がびまん性を除いた糖尿病症例に有用である。
■ハイリスクの代表として透析患者が挙げられるが,透析に関しては,わが国のJapan PMSやJ-CypherからDESの成績が良好でないことは明らかである。
このため,現時点ではCABGで治療されるべきと言えるが,透析患者に対するCABGは感染症や脳卒中の頻度が高いのも事実で,透析に関しては現状では内科・外科ともによい答を出せない状況と捉えるべきである。
CABGかDESか(LMT病変)
http://blog.m3.com/reed/20081118/CABG_DES_LMT_1
j-Cypher registryの解析結果
■LMT群と非LMT群を比べると,LMT群では高齢者やショック,心不全,腎不全,Euro score高値を有する症例が有意に多かった。
■死亡率は,これら併存疾患で調整する前はLMT群で有意に高かったが,調整後は差がなくなった。
LMT病変に対するPCI施行例の予後を規定するのはおもに併存疾患であり,デバイスの影響は小さいことが示唆された。
■LMT群の成績をサブ解析すると,分岐部やtwo stentingは,補正後死亡率には有意な影響を及ぼさなかったが,標的病変再血行再建(TLR)率を有意に高くすることがわかった。
ステントテクニック(T-stenting,culotte法,crush法)によるTLR率の差は認められなかった。
■DESは,再狭窄がMACEにつながりかねないLMT病変の治療法として高い有用性が期待されている。
しかし,現時点では長期にわたって抗血小板薬を服用しなければならず,ステント血栓症を起こした場合には致命的になる可能性が高い。
「CABGかDESか」を追求する際には,ベアメタルステント(BMS)も含めて検討すべきである。 LMT病変へのBMS植え込みでは,CABGリスクが低くかつ解剖学的に植え込みに適した症例で良好な長期予後が期待できる。
その他
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」~2009.10.15
http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)2008.12.10~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。