戯れ言たれる侏儒
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経口III群薬

戯れ言たれる侏儒 / 2009.09.15 00:28 / 推薦数 : 3

第73回 日本循環器学会 (2009.3.20〜22、大阪)でのファイアサイドセミナー8の記事で勉強しました。
経口III群薬を不整脈治療にどのように使用するかという内容です。

 

概略は、杏林大学医学部第二内科の池田隆徳先生が不整脈治療においては「心臓突然死の予防」と「β遮断作用」がキーワードであり、近年のガイドラインに基づいた治療戦略ならびにⅢ群薬の使い分けや副作用について解説されたというものです。

 

 

 

不整脈治療に関する近年のガイドラインでは、生命予後に影響を与える心室性不整脈の治療の1つとしてⅢ群抗不整脈薬が推奨されている。
Ⅲ群薬に属するアミオダロンとソタロールは、イオンチャネルや交感神経受容体への作用機転が異なる経口薬であることから、臨床の場では患者の症状・病態に合わせた治療薬の選択が重要となる。

不整脈診療において経口III群薬をどのように使いこなすか?
本邦および欧米のガイドラインにおけるIII群薬の位置づけ

不整脈治療に関しては現在、国内外でいくつかのガイドラインが発表されており、いずれにおいても、自覚症状をもたらしQOLおよび生命予後に影響を与える不整脈を改善することの重要性が記されている。
このうち生命予後に影響を与える不整脈としては、心室細動(VF)および心室頻拍(VT)が挙げられる。
日本循環器学会(JCS)の「不整脈薬物治療に関するガイドライン」(2004)では、高リスクのVFおよび持続性/多形性VTに対し、まず植え込み型除細動器(ICD)の使用を吟味した上で抗不整脈薬の併用を考慮すべきとされている。
一方、非持続性/単形性VTや心室期外収縮の場合は、最初から薬物療法の必要性を検討することとなる。
薬物療法を行う際、心機能が正常(左室駆出率[LVEF]50%以上)でかつ心筋梗塞(MI)の既往がなければ、多くの薬剤が使用できるが、MIの既往がある場合はIb群薬が第1選択となり、第2選択としてはIII群薬ソタロールが主となる。
心機能低下が中等度以上(LVEF40%未満)に低下していれば、MIの既往の有無にかかわらずIb群薬などに続き、第2選択としてIII群薬アミオダロンが推奨される。
JCSでは心臓突然死をいかに予防するかという観点から、2005年に「心臓突然死の予知と予防法のガイドライン」を発表した。
ここでは、きわめて危険性の高いVFおよび持続性VTに対する第1選択をICDとしており、その次に抗不整脈薬併用が推奨されている。
ただし上記の2004年のガイドラインとは異なり、抗不整脈薬としてはIb群薬が姿を消し、ソタロールとアミオダロンのみが挙げられている。
欧米における心室性不整脈と心臓突然死に関するガイドラインでは、ICDの適応でない心室性不整脈ないしICD患者における頻回作動の抑制において薬物療法を考慮する点が、日本のガイドラインと異なっている。
薬物療法に関してはβ遮断薬の使用を優先することが特に強調されており、III群薬はその次に位置づけられている。

β遮断作用はMI患者の生命予後改善および心臓突然死予防に有効
欧米でβ遮断作用が重視される理由は、心臓突然死の発現メカニズム(図1)により説明できる。
不整脈の「発症機序」である局所巣状興奮の多くは異常自動能によるもので、これは交感神経活動の抑制、すなわちβ受容体遮断により抑制される。
一方、発症した興奮の「維持機序」であるリエントリー(旋回興奮)を抑制するには、Kチャネルの遮断が必要となる。
つまり
欧米では、「維持」抑制よりもまず「発症」抑制に重点を置いているといえる。

図1 心臓突然死の発現メカニズム


β遮断作用を持つ薬剤の有用性は、臨床研究でも確認されている。
β遮断薬はMI後の累積死亡率をプラセボに比して有意に減少させ、また、MI患者の急性期死亡および長期予後を改善する。

さらに大規模試験のメタ解析では、β遮断薬がMI後の突然死発生率を42%減少させている(p=0.002)。

従来、心不全に対するβ遮断薬使用は禁忌と考えられていたが、様々な大規模臨床試験において、β遮断薬による心不全患者の生命予後改善効果が認められ、サブ解析の結果からVF抑制効果も示された。
これらの研究結果を踏まえ、池田氏は不整脈治療においてβ遮断作用が果たす役割を3つにまとめた。

すなわち心臓突然死の予防、生命予後の改善、そして自覚症状やQOLの改善に対する効果である(図2)。



図2 β遮断作用が果たす役割とは


ソタロールの臨床使用におけるβ遮断作用はβ遮断薬に匹敵
こうしたβ遮断作用は、抗不整脈薬を選択する上でも重要な意味を持つ。
(経口)III群薬のうち、アミオダロンは複数のチャネルおよび複数の受容体を遮断する作用を有する。
一方、ソタロールはチャネルにおいてはKチャネルのみ、受容体においてはβ受容体のみを遮断するという特徴がある。
Kチャネル遮断作用に関しても、アミオダロンが様々なサブタイプを遮断するのに対し、ソタロールは急速活性型(IKr)のみを抑制する(表1)。



表1 III群薬の作用機転の違い


ソタロールのβ遮断作用は同一用量のプロプラノロールの約1/3であるが、通常の投与量がプロプラノロールの3~6倍であることから、臨床的にはプロプラノロールと同等あるいはより大きなβ遮断作用を示すと考えられる。
アミオダロンのβ遮断作用について比較したデータはないものの、ソタロールのおよそ1/5程度であると推測されている。

米国で実施されたOPTIC studyでは、β遮断薬、ソタロール、アミオダロン+β遮断薬の3群におけるICD作動発生率が比較された。

池田氏によれば、本試験においてアミオダロンにβ遮断薬が併用されたのは、米国では不整脈治療として必ずβ遮断薬を使用すべきとされており、かつアミオダロンのβ遮断作用が弱いためであった。
また本試験におけるICD作動発生がβ遮断薬群、ソタロール群、アミオダロン+β遮断薬群の順で多くみられたことからは、不整脈予防においてβ遮断作用と抗不整脈作用の双方が必要であることが推測された。


不整脈「発症」の機序に強く作用するソタロール
池田氏は、III群薬のうち経口薬であるソタロールとアミオダロンの使い分けにおいては、作用機転の違い、患者の臨床的な背景および副作用を考慮して決定すべきと考えている。
まず作用機転からみると、不整脈「維持」に関わるリエントリーの抑制効果は、複数のチャネル遮断作用を有するアミオダロンの方がソタロールよりも強いと考えられる。
しかし不整脈「発症」に関わる交感神経活動の抑制(異常自動能の抑制)作用は、強いβ遮断作用を有するソタロールの方が強力である。
臨床的背景に関しては、患者のLVEFが40%以上であれば冠動脈疾患の既往があってもソタロールを使用し、LVEF40%未満であれば疾患の有無にかかわらずアミオダロンを選択する(図3)。
また副作用の回避を念頭に置くと、気管支喘息、高度徐脈および腎機能障害を有する患者にはアミオダロンが適切であり、肺疾患、甲状腺疾患および肝機能障害を伴う患者にはソタロールの使用が望ましい。



図3 経口III群薬の使い分け


ソタロールを用いた治療については、池田氏自身が高い効果の得られた症例を経験している。
動悸およびめまいを主訴とする症例1(15歳男性)は、頻拍時の心電図により右室流出路起源の特発性持続性VTと診断され、24時間ホルター心電図を施行したところ、日中のみで心室期外収縮・VTが頻発していた。
池田氏らがSicilian Gambitの概念を適応して(図4)、まず不整脈の機序について検討した結果、この症例では交感神経(異常自動能)の抑制が必要であり、その標的因子はβ受容体遮断と考えられた。
また同時に、不整脈を持続させるリエントリーの抑制、すなわちKチャネルを標的とした治療も必要であった。
同氏らは日中、つまり交感神経が亢進している際にVTが出現する本症例の特徴から、β受容体遮断を優先すべきと結論し、ソタロール160mg/日を朝晩2回に分けて投与したところ、交感神経活動がきわめて良好に抑制され、心室期外収縮・VTは消失した。



図4 Sicilian Gambitの概念


別の患者(症例2、67歳男性)は、陳旧性MIでLVEF48%を示し、持続性VTにより救命センターに運ばれた。
静注用III群薬ニフェカラントを投与して効果が得られた後に用量を漸減したところ再度VTが発生したため、ニフェカラントを再開し、ソタロール(80mg/日から開始して160mg/日まで増量)を加えた後に漸減を図った。
ここでソタロールを選択したのは、本剤が有効性を示したニフェカラントと同様にIKrチャネルのみを遮断することに加え、β遮断作用を持つことによりMI後の生命予後改善が期待されると考えたためであった。
この症例も、ソタロールの投与によりVTの抑制に成功した。

http://www.carenet.com/cardiology/jcs2009sota/text_01.html
http://www.carenet.com/cardiology/jcs2009sota/text_02.html

出典 Care Net.com
版権 株式会社ケアネット

 

不整脈診療において経口III群薬をどのように使いこなすか?
http://www.carenet.com/cardiology/jcs2009sota/text_01.pdf

 

<関連サイト>
[PDF] 抗不整脈薬の使い方
http://www.shi-heart.org/pdf/kouen/t_jisseki/no15.pdf

抗不整脈薬
http://ja.wikipedia.org/wiki/抗不整脈薬#III.E7.BE.A4
III群
■活動電位持続時間を延長させる薬物である。
殆どのものがカリウムチャネル遮断薬であるが、それ以外の作用機序のものも含まれる。
他の抗不整脈薬が無効である場合の第二選択として用いられることが多い。
アミオダロン(アンカロン®)、ソタロール(ソタコール®)、ニフェカラント(シンビット®)などがある。

アミオダロン(アンカロン®)
肺毒性、甲状腺機能異常といった副作用が強いが薬効は他の抗不整脈を卓越している。
非専門医が用いるのは危険である。

ソタロール(ソタコール®)
肺機能障害がありアミオダロンが使いにくい時に用いられる薬。

Sicilian Gambit 不整脈薬分類
http://www.gik.gr.jp/~skj/drug/Sicilian-Gambit.php3

最近の不整脈薬物療法
http://www.gik.gr.jp/~skj/lecture/anti-arrhythmic-drugs.php3

抗不整脈薬 anti arrhythmic drugs
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/shinkin/medicine/medicine-1-1-2.html

[PDF] 抗不整脈薬による催不整脈作用
http://www.jshp.or.jp/banner/oldpdf/p43-11.pdf

 

 

 

 

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