戯れ言たれる侏儒
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高感度トロポニン

戯れ言たれる侏儒 / 2009.09.14 00:58 / 推薦数 : 0

N Engl J Med (2009; 361: 858-867,2009; 361: 868-877)に高感度心筋トロポニンの論文が2報同時掲載されました。
きょうはこの論文を兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人部長が解説した記事で勉強しました。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19710484
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19710485

 

心筋梗塞の早期診断に有用な高感度トロポニン
N Engl J Med に同時掲載の2論文から
研究の背景:
従来のトロポニン測定系では,検出限界に近い低値の評価は困難
心筋トロポニン測定系は,骨格筋と交差しない心筋特異的な抗体を用いているのが特徴である。
心筋トロポニンに対する評価は,2000年に改訂された欧州心臓病学会/米国心臓病学会(ESC/ACC)の急性心筋梗塞診断基準に記載されたのを機に高まっている(Circulation 2007; 116: 2634-2653)。

また2007年,Circulation(2007; 115: e356-e375)に国立臨床生化学検査アカデミーから,急性冠症候群(ACS)と心不全領域におけるバイオマーカーのガイドラインが発表され,ACSの診断において,トロポニン測定を診断補助に用いることはclass I,エビデンスレベルAと記載された。

これらの診断基準,ガイドラインの中で心筋トロポニンの基準値は,それぞれの測定試薬における「健常者の99パーセンタイル値」とされてきた。
さらに,数値の相対的な散らばりを表す指標である変動係数(coefficient of variation; CV)※の値が小さいほど測定系が正確だが,「健常者の99パーセンタイル値におけるCVが10%以下」である測定試薬が一般に推奨されている。

この点から見ると,従来のトロポニン測定系ではCVが大きく,検出限界に近い低値の評価は困難であった。
しかし,今後臨床に普及する高感度トロポニン測定系では低値でも測定精度が高く,心筋梗塞患者のさらなる早期診断,リスク評価に期待がもたれている。

研究のポイント:
90%の感度,特異度を示す

Reichlinらは,718例の心筋梗塞を疑わせる胸痛を主訴に救急室を受診した718例を対象に,バイオマーカーを受診時,6時間後,9時間後と測定した(N Engl J Med 2009; 361: 858-867)。
臨床診断は総合的になされ,心筋梗塞17%,不安定狭心症16%,冠動脈以外の心疾患13%,非心疾患46%,不明8%であった。

その結果,Abbott Architect高感度トロポニンI,Roche高感度トロポニンT,Roche高感度トロポニンI,Siemens高感度トロポニンI Ultraの4つの高感度測定系はいずれも従来のトロポニンよりもROC解析における曲線下面積(AUC)が広く(0.94〜0.96),急性心筋梗塞の診断においてすぐれた感度と特異度(いずれも約90%)を示した。

また,従来のトロポニン測定系では胸痛発症時から数時間以内の検出能力は弱いとされていたが,高感度測定系ではいずれも発症2~4時間以内でも感度,特異度に優れることが示された()。

一方,Kellerらは,1,818例について検討を行い,22.7%が急性心筋梗塞と診断された(N Engl J Med 2009; 361: 868-877)。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19710485

その結果,Siemens高感度トロポニンI UltraのROC解析におけるAUCは,胸痛発症後3時間から0.95以上であり,感度90.7%,特異度90.2%。
さらに,陰性的中率(negative predictive value:NPV)も約95%と良好であった。特に発症12時間後では100%陽性であった。

健康人の99パーセンタイル値である0.04ng/mlをカットオフ値とすると,カットオフ値以上の数値を示した患者の30日後のハザード比は1.96 (95%信頼区間1.27〜3.05, P=0.003)であり,予後予測指標でもあった。

佐藤幸人部長の考察:
胸痛発症後数時間で高感度トロポニン陰性なら,心筋梗塞をほぼ否定できる
このように急性心筋梗塞患者において,高感度トロポニン測定系は低値部分が正確であるために早期診断,リスク評価に非常に有用である。
特に,従来のトロポニン測定系では発症後数時間の超急性期の検出力が弱かったが,高感度測定系では入院時からの検出が可能となった。
この点は臨床的に強調できる点である。

また,陰性的中率は97~99%であり,総合的に考えると胸痛発症後数時間の時点で高感度トロポニンが陰性であれば,心筋梗塞をほぼ否定できることになる。
また,Kellerらの論文(N Engl J Med 2009; 361: 868-877)により急性心筋梗塞患者のリスク指標にもなることが証明された。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19710485

われわれの施設では,約15年間にわたってトロポニンのデータを取り続けているが(Circulation 2001; 103: 369-374, Heart 2004; 90: 1110-1113, Int J Cardiol 2008; 126: 171-176),今年から高感度トロポニンT(Roche)と高感度トロポニンI(Siemens)を導入し,日々の臨床に活用している。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19710485

確かに低値部分がたいへん正確であるため,研究用としては,心不全のリスク評価,治療効果判定にも応用可能と考えている。

今後の展望として,潜在性微小心筋障害の検出を目的に検診,一般住民への応用や,高血圧患者での応用も視野に入れている。

ただし,重要な注意点として,論文中にも明記されているように,それぞれの測定系で検出限界値,健康人の99パーセンタイル値,10%CV値が異なることが挙げられる。
さらに,同一検体をそれぞれの測定系で測定した場合,絶対値自体も異なるため,測定結果を解釈するうえでは今後,「どの測定系」を用いた数値であるのかが必要となる。

※CV(%)=SD(標準偏差)÷平均値(mean)×100(%)

出典 MT pro 2009.9.3
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
73回日本循環器学会・急性冠症候群
http://blog.m3.com/reed/20090519/73_

 

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はじめまして。医学科2回生です。
いま学校で、「基礎病態演習」というグループ学習に取り組んでいます。
私のグループは、心筋梗塞の基本的な知識を、主に生化学的な分野から学ぶことを目標にしています。
その過程で、心筋梗塞を診断するいくつかのマーカーがあると知ったのですが、
どうしてもわからないことがあります。
主なマーカーに、トロポニンIとTがありますが、なぜトロポニンTがより使用されているのでしょうか。
「トロップT」という簡単な検査機器もありますよね。
アミノ酸配列くらいしか違いがなさそうですが、Tを推奨する理由が何かあるのですか?
まだまだ勉強不足でおはずかしいですが、もしろしければ、お返事をいただけるとありがたいです。
written by sa.m / 2010.01.10 18:11
医学生 sa.m 君へ。

質問有り難う。
私は一般開業医で回答するのに適役かどうか自信がありません。

しかし、ブログに論文を転載した責任上、何らかの返事をしなければいけないと思い少し勉強してみました。

疑問に十分答えられたかは疑問ですが、字数制限の制約もあるので2010.1.14のこのブログで触れましたので見て下さい。


拡張期心不全への対応 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20100114


私なりにいい勉強が出来ました。
またコメント下さい。

written by 戯れ言たれる侏儒 / 2010.01.13 19:49

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