戯れ言たれる侏儒
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RE-LY試験

戯れ言たれる侏儒 / 2009.09.05 00:07 / 推薦数 : 0

「心房細動診療にパラダイムシフトをもたらす」と評価されたRE-LY試験の結果を山下武志先生が解説した記事で勉強しました。
このRE-LY試験は31回欧州心臓病学会(ESC Congress 2009)で発表され,同時にN Eng J Med 8月30日オンライン版に掲載されたものです。
山下先生は「少なくともワルファリンよりさまざまな点で優れているという予想外の結果」と評価しており,この新規経口トロンビン阻害薬dabigatranが日本に導入されれば,心房細動診療の考え方が大きく変革し,心房細動による脳卒中減少への貢献が期待できるということです。

 

日本に導入されれば,心房細動診療が変革
ワルファリンに優れる“予想外”の結果を示したdabigatran

非劣性試験という前提条件を覆すほど低かったイベント発症率
(1)非劣性試験として行われた試験であったが,1次評価項目である「脳卒中と全身性塞栓症」の発症率は,dabigatran 150mg×2/日群のほうがワルファリン群より有意に低率で,110mg×2/日群でも非劣性が証明された。

予想外の結果だった。
非劣性試験は,非劣性を証明するためだけでも多くの症例数を要する。
これは,対照薬であるワルファリンにおけるイベント発症率が十分に小さいことに起因する。
ワルファリンよりイベント発症率が小さくなることはないだろう,という前提条件を覆すほどに,イベント発症率がきわめて少なかったのであり,dabigatranは予想以上に有効な薬剤と位置付けることができる。

(2)dabigatran群の用量設定は盲検化されているが,ワルファリン群の投薬についてはオープン化されている。この背景が結果に影響した可能性はあるか。
すでにオープン試験の限界が十分に理解されている時代に計画されているので,バイアス排除の工夫がなされており,イベントは盲検化されて評価されているなど,エンドポイントに情報バイアスがかかりにくくなっている。
唯一の情報バイアスは,dabigatran群で多い脱落にあるが,ITT解析での1次評価項目における有効性のインパクトは大きく,これは試験解釈上問題にならないと言える。

効果を減じることなく脳出血が劇的に減少
(3)dabigatran群の高用量では,一次評価項目に優位性が認められているが,脳出血リスクも低率だった。低用量でも,一次評価項目は非劣性で,脳出血リスクは有意に低下していた。
これが驚くべき点だ。
これまで,出血は効果の別の側面であると捉えられてきたが,この常識を覆してしまった。
少なくとも,胃腸からの出血を除けば安全性は確実に高いと言えるだろう。
特に効果を減じることなく(高用量では効果が上回っているにもかかわらず),重篤な副作用である脳出血を劇的に減少させたことは特筆すべき。

胃腸障害,心筋梗塞が多かった点は問題となるか?
(4)一方,副作用の胃腸障害がワルファリン群の2倍あり,脱落率はdabigatran群で多くなっていたが,どのような意味があるのか。
胃腸障害,あるいは胃腸からの出血は致死的になることは少ないことから,現在本質的な問題にはならないだろう。
胃腸障害はコンプライアンスの面で不利になるが,対処法はこれから考えることもできる課題だ。

(5)心筋梗塞の発症リスクが,ワルファリン群のほうが低い傾向にあった。この点は臨床的にどのような意味があるのか。
まだ発症数が多くなく,年率0.2%程度の差。逆に,ワルファリンが心筋梗塞を減少させている可能性もあり, 解決すべき課題だが,臨床応用を否定する根拠にはなりえないだろう。

(6)この試験の結果を受けて,心房細動の抗凝固療法はどのように変わると考えられるか。
試験では対象から除外されている,出血リスクが高い患者群や腎機能が低下している,または肝障害のある患者に対する治療戦略はどうか。
少なくとも,現在ワルファリンでうまくコントロールされている患者,腎障害,肝障害のある患者,超高齢者を除く,ほとんどの心房細動患者の診療にパラダイムシフトが生じると思う。

ツールとして,ワルファリンより脳卒中を減少させることができる(高用量),あるいは効果を減じることなく出血性副作用を減少させることができる(低用量)ものが手に入ったわけである。しかも,食事・薬物の相互作用を考えたり,あるいはモニタリングしたりする必要がないとなると,使用しない理由が見当たらない。
今回の除外基準にあたっている患者については今後の課題としてとらえていくべき問題であり,まず除外基準に抵触しない患者からその診療は大きく変化していくものと思われる。

2つの用量が存在することは福音
(7)dabigatranの用量(150mg×2/日,110mg×2/日)をどう考えていくべきか。
結果的に,この2つの用量が用いられたことが,この臨床試験の信用性を高めている。
きれいな用量反応が認められているからだ。
現時点で断言はできないが,次のような患者背景に即したきめ細やかな診療を提供できる可能性がある。
●CHADS2スコア2点以上は脳卒中リスクが高いので高用量を,1点以下は大出血リスクを下げることを念頭に低用量を用いる
●同様に高齢者では腎機能低下があること,出血性事故も多いことから低用量を用いる
●過去に胃潰瘍などの既往があれば低用量を用いる

高用量は,脳卒中を減少させて出血はワルファリンと同等。
低用量は,脳卒中はワルファリンと同等であるが大出血は少ないという特徴があるので,基本は高用量であるとしても,患者背景に応じてリスク・ベネフィットを考えながら投与量を決定することができる。
これが1つの用量であれば,患者背景を無視した医療に陥りやすく,個人的には2つの用量が存在することは福音だと思っている。

この薬物が認可されれば,現在の心房細動診療の考え方が大きく変革され,結果的に医師・患者の考え方や利便性が向上し,心房細動の脳卒中減少に貢献してくれると思う。
唯一問題点として挙げると, (1)胃腸障害, (2)1日2回服用 という患者コンプライアンス低下の側面があるが,現在のワルファリンの持つ問題点と比較すれば十分に小さな問題にすぎないと考えられる。
もちろん,今後新しく開発される薬剤には,これらの点の改善が求められるかもしれない。

出典 MT pro 2009.9.1
版権 メディカル・トリビューン社  

 
ワルファリンに代わる新規経口抗凝固薬dabigatranが登場
第31回欧州心臓病学会でRE-LY試験の結果発表 心房細動患者の脳卒中予防に,ワルファリンと新規経口抗凝固薬dabigatranを比較した大規模臨床試験(第III相試験)RE-LY※では,dabigatran150mgの効果がワルファリンより優れていることが示された。
スペイン・バルセロナで開かれている第31回欧州心臓病学会(ESC Congress 2009)のHot Lineセッションで8月30日,マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)教授のStuart J. Connolly氏が報告した。

 

大出血は110mg群で有意に少ない

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者では脳塞栓症リスクが高いため,その予防としてワルファリンによる抗凝固療法が必要だが,ワルファリンは頻回の血液凝固モニタリングで投与量を調節しなければならず,また患者もビタミンK含有食品(例えば日本人なら納豆)の摂取制限を課せられるなど,医師・患者双方にとって負担が大きい。
さらに,ワルファリンには他剤との相互作用があるが,心房細動患者に多い高齢者は複数の薬剤を服用していることが多く,この点も問題となる。
これらがネックとなって,ワルファリン適応のある患者の半数が現実には投与を受けていないとされる。
このワルファリンに代わる新たな薬剤が待ち望まれていたなかで,トロンビンを直接阻害する経口抗凝固薬dabigatranが開発された。
RE-LYはdabigatranとワルファリンの脳卒中予防効果を比較したもので,心房細動の臨床試験としては史上最大規模の1万8,000例余りを登録。
対象は
(1)dabigatran 110mg×2/日群,
(2)同150mg×2/日群,
(3)ワルファリン(目標とする国際標準比:INR 2.0~3.0)群
―にランダムに割り付けられ,最低1年追跡された(中央値で2年)。
1次評価項目である「脳卒中(脳出血を含む)または全身性塞栓症」の発症率は,dabigatran 110mg群1.5%/年,同150mg群1.1%/年,ワルファリン群1.7%/年で,dabigatran 150mg群はワルファリン群と比較して発症率が有意(P<0.001)に低く,優位性が証明され,同110mg群もワルファリン群に対する非劣性が確認された。
安全性評価項目である大出血はdabigatran 150mg群ではワルファリン群と同程度だったが,同110mg群ではワルファリン群より有意に少なかった。
肝機能に関しては,ALTやASTが正常上限の3倍超に上昇した割合に3群間で差は認められなかった。

 

心房細動患者の脳卒中予防にパラダイム・チェンジ

Connolly氏は「dabigatranはいずれの用量でもワルファリンと比べて有益である。
150mgのほうが脳卒中予防効果は高く,より安全なのは110mgのほうだ」と結論した。
Dabigatranはワルファリンのような血液凝固モニタリングおよび用量調節は不要であり,この点で臨床的有用性が高い。
作用機序が異なるため,ビタミンK摂取制限も必要ない。他の薬剤との相互作用も少ないとされる。
Discussantとして登壇した聖ジョージ大学(ロンドン)教授のA. J. Camm氏は「dabigatranは心房細動の抗凝固管理に“パラダイム・チェンジ”をもたらすものだ」と強調した。

なお,dabigatranは人工関節置換術後の患者における静脈血栓塞栓症予防を適応として既に40か国以上で承認済みで,広く使用されているという(わが国では未承認)。


http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0908/090851.html?ap Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0905561

 

<きょうの一曲> The Beatles - Something (1969) http://www.youtube.com/watch?v=XDTi_La94Uo&NR=1    

 

 

 

その他
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
 「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~
http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)
があります。

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