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昨日の後半です。
腎動脈ステント留置術,理解の高まりが適用拡大の鍵
腎動脈ステント留置術は内科治療や外科治療(腎動脈バイパス術)と並ぶ,腎動脈狭窄症(renal artery stenosis;RAS)に対する治療法の1つである。
冠動脈ステント留置術に比べて,同術の施行はきわめて限定的で,わが国では年間数千例しか施行されていない。
その理由としては,腎動脈ステント留置術そのものの問題もあるが,むしろRASの病的意義が臨床家によく理解されていないために,RASの診断がきちんとなされていないことのほうが大きいようだ。
山下副院長は「RASに対する腎動脈ステント留置術の有用性は明らかなので,臨床家には,もっと積極的にRASを診断する努力を求めたい」と語った。
腎機能低下と腎萎縮を伴いつつ,経時的に進行
RASは,アテローム動脈硬化症などにより腎動脈の内腔が狭くなることによって起こる。
線維筋性異形成症,大動脈炎症候群などによっても起こるが,ほぼ90%は動脈硬化症が原因とされる。
RASは腎血管性高血圧や虚血性腎症の原因になるが,腎動脈の狭窄がかなり高度でも無症候性に経過するケースもある。
もちろん,高血圧と腎症および無症候性腎動脈狭窄は,それぞれ一部がオーバーラップしており,「RASはこれらすべてを包含した疾患概念として捉える必要がある」と山下副院長。
RASを無治療のまま放置すると,たとえ血圧がコントロールされていても,また無症候であっても,狭窄は進展していく。
そして,これに伴い確実に腎機能は低下し,腎は萎縮する。
腎血管性高血圧や虚血性腎症が心血管イベントの原因となり,生命予後を悪化させることはよく知られている。
しかし,最近では,RASそのものが,左室機能不全や慢性腎不全,心不全よりも強力な予後悪化因子であることが指摘されている。
さらに,狭窄が高度であればあるほど予後が悪く,片側狭窄よりも両側狭窄のほうが予後不良であることなども報告されている。
診断法として有用性高い腎動脈ドプラ法
RASは冠動脈狭窄症や頸動脈狭窄症に比べて特徴的な症状に乏しいため,患者自身が疑い,受診することは難しい。
また,これまでは腎血管性高血圧が疑われても,RASの診断が難しいため,RASが積極的に検索されることは少なかった。
しかし,RASは従来考えられていたよりも,かなり高頻度に循環器疾患患者に潜在していることがわかってきた。
山下副院長は,以前に心臓カテーテル検査を行った連続289例において,腹部大動脈造影によりRASの潜在頻度を検討している。
その結果,狭窄度50%以上を有意狭窄と定義した場合,289例中21例(7%)にRASが潜在していたという。
片側性が18例(6%),両側性が3例(1%)で,罹患冠動脈枝数別に見ると,1枝,2枝,3枝病変のおのおの5%,10%,9%にRASが認められた。
なお,高齢,高血圧症あり,冠動脈疾患ありの3つが,独立したRASの関連因子として同定された。
RASを疑うべき因子としては,表1のような項目が挙げられている。
これらの項目のうち1つでも該当すれば,RASが潜在する高リスク群として積極的にスクリーニングする必要がある。

RASのスクリーニグの主体は画像診断で,なかでも有用なのは腎動脈ドプラ法である。
同検査では腎動脈の狭窄そのものを描出できることもあるが,おもに腎動脈の血流速度を測定することから腎動脈の存在を判定できる。
CTアンギオグラフィー法,MRアンギオグラフィー法でも非侵襲的にRASを描出できるが,前者にはX線被曝,造影剤使用など,後者には低解像度などの欠点が指摘されている。
心臓カテーテル検査や末梢動脈造影時に同時に腎動脈造影を行うことを"drive-by angiography"と呼んでいる。
これに関しては,増加造影剤(注;造影剤の使用量が増えること)あるいはX線被曝の問題から反対する意見もある一方,RASの臨床的意義を考慮すると有用性は高いとして,許容する意見も根強くある。
しかし,エコーによる検査が確立している現在,同施設ではエコーによるスクリーニングをおもに行っている。
RASの診断法としては,亢進しているレニン-アンジオテンシン系を検出する機能的検査もある。
しかし,同検査はRASのスクリーニング法としては感度,特異度とも不良で,推奨されない。
専用ステントの開発などにより適用拡大の傾向
RASは進行性であるため,保存療法には限界があり,いずれかの時点で血行再建術が必要になる。
その方法としては腎動脈ステント留置術が第一選択とされるが,その手技成功率は98%前後と高く,再狭窄率も15〜20%にとどまると報告されている。
腎動脈ステント留置術は長らく適応未確立のまま施行されてきたが,2006年にようやく末梢動脈疾患の一部という形で,米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)から診療ガイドラインが示されている(表2)。

腎動脈ステント留置術が長らく適応未確立であったことの理由の1つとしては,腎動脈ステント留置術の手技が難しく,周術期合併症を伴うことが多かったことが挙げられる。
この合併症があるために,これまで標準的手技による同術の症例集積は難しかった。
したがって,同術の有用性を証明し,その適応を確立するための臨床試験も組みにくかったと言える。
腎動脈ステント留置術の手技が難しいのは,腎動脈が腹部大動脈からほぼ直角に分岐しているので,ステントを安全に通過させることが難しいためである。
同術では当初,四肢動脈ステント留置術などと共通のステントが用いられていたため,8Frの大径ガイディングカテーテルとの併用が必要であり,そのため大動脈壁の損傷,解離,腎動脈閉塞などの合併症の発生率が高かった。
しかし,その後,6Frの小径ガイディングカテーテルとの併用が可能なステントが開発されたため,合併症の発生率は激減している。
わが国でも2009年4月に小径ガイディングカテーテルとの併用が可能な腎動脈専用ステントが薬事承認され,6月から使用可能になっている(図3)。

現在,米国において腎血管性高血圧患者1,000例以上を対象に,降圧薬単独治療群と腎動脈ステント留置術併用治療群の2群間で,腎機能障害や心血管病発症の抑制効果について比較検討する前向き無作為化試験CORAL※3が進行中だ。
結果は数年以内に発表されることになっているが,山下副部長は「この試験により,腎動脈ステント留置術の予後改善効果が証明されることへの期待は高い」と言う。
腎動脈ステント留置術が,再狭窄の抑制に加えて長期予後改善効果が明らかになれば,今後,同術が大きくクローズアップされることは間違いない。
しかし,そうなれば,同術の適応があるにもかかわらず多くの患者が放置されている現状は,なおさら速やかに改められなければならない。
同副部長は「差し当たっては,難治性高血圧患者などのなかにRASが潜在していないかどうかを,積極的にスクリーニングするところから始めて欲しい」とあらためて訴えた。
※3 Cardiovascular Outcomes in Renal Atherosclerotic Lesions
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=0&order=1&page=0&id=M42300761&year=2009
出典 Medical Tribune 2009.7.23、30
版権 メディカル・トリビューン
<きょうの一曲> 波
Gal Costa - Wave
http://www.youtube.com/watch?v=rduKvPcMg9c&feature=related