心臓病学会の機関誌に「不安定プラーク」の記事がありました。
正直言って開業医の私には、興味と理解力を超えるものがあります。
しかし、CAGで狭窄度を評価し待機的PCIを行う現在の方法では生命予後改善効果に限界があることが分かってきた現在においては、「プラークの性状」を把握することは、(特にACSでは)重要になって来ているようです。
この特集では5人の専門医が症例提示と解説を行っています。
それぞれの症例は治療に苦労されただけのことはあって、検査やPCIの施行に至るまでの熟慮された思考過程を「考察」で伺い知ることができます。
私はこう考える 「不安定プラークの診断は可能だったか」
J Cardiol Ipn Ed Vol.3 No.3 2009 P230~262
<関連サイト>
急性冠症候群の診療に関するガイドライン(2007 年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_yamaguchi_h.pdf
■血栓は赤血球主体の赤色血栓,血小板主体の白色血栓,その混合である混合血栓に分類され,治療戦略をたてる上での有力な情報がもたらされる .Mizuno K, Satomura K, Miyamoto A, et al: Angioscopic evaluation of coronaey-atery thrombi in acute coronary syndromes. N Engl J Med 1992; 326: 287-91
出典 Medical Tribune 2006.9.28
版権 メディカル・トリビューン社
■一方粥腫は,繊維性被膜が薄く脂質コアの多い黄色粥腫と繊維性被膜が厚く脂質コアの少ない白色粥腫に分類され,冠動脈硬化の進行程度や破裂し易い粥腫(不安定粥腫)の推測がある程度可能とされる.Uchida Y, Nakamura F, Tomaru T, et al: Prediction of acute coronary syndromes by percutaneous coronary angioscopy in patients with stable angina. Am Heart J 1995; 130: 195-203■しかし現時点では,冠動脈内視鏡を急性冠症候群の診断目的だけに施行することの有用性は証明されていない.〜カラー蛍光血管内視鏡による急性冠症候群発症の予知〜
冠動脈プラークのコラーゲン線維や酸化LDLを可視化
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=不安定プラーク&perpage=0&order=0&page=0&id=M39391041&year=2006&type=allround
循環器学研究振興財団 内田康美理事長
■なぜプラークが破綻するのか,また閉塞性血栓を形成するのか。
この点については「その1つは器質的機序,もう 1 つは機能的機序がある。どちらがその症例に関与しているのか,または関与する可能性が強いのかを評価する方法を編み出す必要がある」と言う。
■しかし,残念ながら,いまだに血管内視鏡による破綻しやすいプラーク(不安定プラーク)の同定,すなわちACSの予知の方法は確立されていない。
■これまでに冠動脈プラークは破綻所見の認められない単純(通常型)プラークと複雑プラークに分類され,その色調から白色プラークと黄色プラークに,さらに光の反射具合から黄色プラークは光を反射しにくいプラークと反射するプラークに分類されている。
単純プラークでもその直前に血栓を伴う型があることを内田理事長らは見出した。
■これまでに行われた研究から,黄色のプラークを覆っている線維性皮膜が極端に薄いプラークが,破綻を来しやすい不安定プラークではないかと考えられている。
同理事長らの行ったprospective studyでは黄色プラークのうち,光を反射するプラーク群でACSの発症がきわめて高率であるという結果であった。
しかし「このプラーク群の全例がACSを発症しないのはなぜか。また一方で,白色プラーク群のなかでも発症する例があるのはなぜかについては明らかにはできなかった」と言う。
■その原因を解明するには,
(1)安定プラークから不安定プラークへの変化のプロセス
(2)不安定プラーク誕生の機序
(3)閉塞性血栓形成のプロセス
(4)それによる症状の顕在化の機序
―を明らかにする必要がある。
「プラークの破綻に先行して,なんらかの機能変化や構造変化が起こり,血栓形成には内皮細胞の機能的あるいは器質的な障害が先行するはずである。それにはプラークのより微細な評価法の確立が不可欠だが,現在の血管内視鏡ではそれは同定できない」と話す。
■動脈硬化性冠動脈プラークは,おもにコラーゲン線維により崩壊から守られている。
また,マクロファージはコラーゲン線維を破壊し,プラークを不安定化させる一方,それ自体,酸化LDLなどの脂質を取り込み泡沫細胞となる。
したがって,これらの物質を検出することにより,不安定プラークとその進行性を診断できる。
■同理事長らはヒト摘出冠動脈を用いて,その蛍光と組織学的変化との関係を調べた。
その結果,励起波長360nm,受光波長414nmで,コラーゲン線維のみが青色の自家蛍光を発した。
また,この条件下での自家蛍光から,ヒト冠動脈プラークは青色,緑色,黄色に分類された。
組織学的には,青色ではコラーゲン線維が豊富で脂質やマクロファージは存在せず,緑色ではコラーゲン線維も脂質も豊富だがマクロファージは見られず,黄色ではコラーゲン線維が欠如し脂質とマクロファージが豊富に存在した(表)。
カラー蛍光と冠動脈プラークの組織学的な変化■同理事長は「青色と緑色のプラークは安定であり,黄色が不安定で進行性であると判断された。
コラーゲン線維の検出は,不安定プラークの診断に有用であると考えられた」と説明する。
■カラー蛍光血管内視鏡によりプラークに存在する酸化LDLの画像化(本文を参照下さい)
■カラー蛍光血管内視鏡を用いてプラーク内でのコラーゲン線維の欠如や酸化LDLの存在を検出することにより,不安定プラークとその進行性の診断が可能になる。
■近年,スタチン系薬またはフィブラート系薬などによる抗動脈硬化療法によって,不安定プラークの安定化がもたらされることが内視鏡的に確認されている。
同理事長は「カラー蛍光血管内視鏡で早期に不安定プラークが検出できれば,適切な治療でACSの発症が予防できるだろう」と予測している。光干渉断層撮影装置で冠動脈の不安定プラークを検出
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=不安定プラーク&perpage=0&order=0&page=0&id=M3821011&year=2005&type=allround
■ハーバード大学の准教授でマサチューセッツ総合病院(MGH,ともにボストン)心疾患・心血管臨床研究部のIk-Kyung Jang部長らは,光ファイバーカテーテルを用いた光干渉断層撮影装置(OCT)により,各種心疾患患者において冠動脈の不安定プラークの特性を同定することに成功し,詳細をCirculation(2005; 111: 1551-1555)に発表した。
■OCTは光ファイバーカテーテルから出力した赤外光により,血管の高解像度断面像が得られる。
■不安定プラークの 3 大特性は,
(1)脂質の沈着
(2)脂質プールを覆う薄い線維性被膜
(3)マクロファージと呼ばれる免疫細胞の浸潤
−と考えられている。
■OCT画像は,心筋梗塞群とACS群のほうが安定狭心症群よりもプラーク中の脂質量が多く,線維性被膜が大幅に薄いことを示していた。
全体的には,心筋梗塞群の72%とACS群の50%に不安定プラークが認められたが,安定狭心症群では20%にすぎなかった。
■これは,不安定プラークの基礎を成す構造変化の研究を,初めて生体で可能にした方法で,これまでに報告された剖検の結果を裏づけるものである。
出典 Medical Tribune 2005.5.26
版権 メディカル・トリビューン社 【ダイジェスト版】 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2005_yoshikawa_d.pdf
■プラークが不安定(vulnerable)であると診断できる確定的なIVUS 所見は存在しないが,十分な線維性被膜の形成を伴わない低エコー輝度プラークは,不安定な動脈硬化性病変の可能性があると推測される。
急性冠症候群の既往のある症例ではIVUS で潰瘍形成が認められる
ことがあり(プラーク潰瘍),しばしば潰瘍断端に破綻した線維性被膜の遺残物を伴う(プラーク破綻)。 第70回記念
日本循環器学会・学術集会ランチョンセミナー
動脈硬化性疾患の発症機序と予防対策
−臨床エビデンスを含めて
一注目されるEPAによる動脈硬化の進展抑制一
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=不安定プラーク&perpage=0&order=0&page=0&id=M3930761&year=2006&type=allround
■冠動脈イベントのリスクを持つ患者では,不安定プラークが蓄積しているものの,血管の外側へのリモデリングにより,内腔の有意な狭窄が認められないことが少なくない。
しかし現在,狭窄のない不安定プラークを検索する診断技術は確立していない。
このことからも、リスクを持つ患者の重篤なイベントを予防するには,プラークを安定化させる必要がある。
■ハイリスク患者に対しては,糖尿病,高脂血症,高血圧の厳格なコントロール,高脂血症にはスタチンなどの投与に加え,EPA製剤の追加投与が,冠動脈イベントのさらなる抑制につながると考えられる。
■不安定プラークの特徴の一つであるマクロファージの浸潤が,EPA群で対照群に比べ有意に低下した(図 2)。
続いて佐田氏は,プラーク不安定化を抑制するEPAのさまざまな機序を示した。毛細血管の新生は,プラークの不安定化に関与すると考えられている(図 3)。
この新生血管は,病変内に炎症細胞や白血球を動員していると思われる。マクロファージは,プラークの線維被膜を分解するMMP(マトリックス分解酵素)を産生するほか,脂質を取り込み,泡沫化,壊死するため,プラーク線維被膜が菲薄化,プラーク内脂質が増加し,プラークが不安定化する。in vitroの研究では,EPAが血管内皮細胞の増殖抑制を介して,この血管新生を抑制することが報告されている。
■また佐田氏は,自身の研究で,EPAで前処置したヒト単球系細胞では,アラキドン酸による前処置のものと比較して,プラークの線維被膜を分解するMMP-2とMMP-9の発現が有意に抑制されることを明らかにしている(in vitro)。
■さらに,EPAによる前処置が,炎症細胞の凝固能亢進を抑制すること,血管内皮細胞のアポトーシスを抑制することを示している(in vitro)。
■EPAは不安定化したプラークを安定化させる。 
冠動脈内の黄色プラーク数で急性冠症候群の高リスク症例を検出
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=不安定プラーク&perpage=0&order=0&page=1&id=M39341041&year=2006&type=allround
出典 Medical Tribune 2006.8.24
版権 メディカル・トリビューン社
大阪けいさつ病院心臓センター循環器科の平山篤志部長
■近年,急性冠症候群(ACS)の原因が冠動脈内の黄色プラークの破綻とそれに続く血栓形成であることがわかってきた。
一方,ACSは冠動脈狭窄度が軽度の部位でも発症することが判明し,ACS発症予防の鍵は狭窄度ではなく,黄色プラークであることが注目され,その検出と評価が課題となっている。
■ACSの責任病変における黄色プラークの存在を疾患別に調べると,急性心筋梗塞(AMI)で93%,不安定狭心症では95%と高頻度であったのに対し,梗塞の既往がない労作性狭心症では47%と有意に少なかった。
このことから,破綻するプラークは黄色調を帯びていると考えられた。
■AMIの多くは冠動脈狭窄度の軽度な部位で起こることから,軽度狭窄例を調べると,狭窄率50%以下の部位の96%に黄色プラークが認められた。
しかも,線維性被膜が厚く脂質コアの小さなプラークは白く観察され,脂質コアが大きくなり線維性被膜が薄くなるに従い黄色調が強くなったことから,黄色が濃くなると破綻する可能性が高いと考えられた。
■そこで,黄色調をgrade 0(白色)〜 3(濃黄色)の 4 段階に分類し,血管内視鏡施行例で検証した結果,grade 3 の最も黄色調が強いプラークが血栓の下にある頻度が高く,黄色調が濃いほど不安定であることが示唆された。
■黄色調が強いプラークは確かに不安定だが,プラークの形成から破綻までの経時的変化が不明であるため,どのプラークが破綻するのかを同定することは困難だ。
(新たなイベント発生部位に発生数か月前に血管内視鏡を施行できた症例を見ると,イベント発生部位は必ずしも黄色調が強いわけではなかった)
■黄色プラークが破綻し血栓が形成されても血管を閉塞するには至らない,いわゆるsilent plaque ruptureが,AMI例で起こっている頻度が高い。
しかし,症状が現れないためプラークが破綻したことを検証することはできない。
■プラークが大きくても線維性皮膜が厚ければ破れない,
逆に大きさはわからなくても線維性被膜が薄いとプラークが大きくなるに従い黄色調が強く見え,破綻しやすいと考えられる。
しかし,破綻しても血管を閉塞しなければイベントは起こらない。
したがって,黄色プラークはすべてが不安定プラークではなく,不安定になりうる素質があるプラークと言える。
■AMI回復期の連続20例の冠動脈を血管内視鏡で観察したところ,黄色プラークが責任血管だけでなく,非責任血管の95%にも存在することが認められた。
■黄色プラーク数はACS発症群のほうが多く(図1,2),血管当たりの黄色プラーク数が2個以上存在する群のACSイベント発生リスクは,0 または 1 個存在する群の2.2倍(図 3 ),5 個以上存在する群では3.8倍にものぼった。 
血管内視鏡による黄色プラークの描出 
48歳男性・AMI再発例 ■血管内視鏡による黄色プラークの診断はVulnerable patient,すなわちACSイベントの高リスク症例の検出に有用である。
■黄色プラークの色調はACSイベントの発生の有無で有意差は見られなかった。
また,血管内視鏡検査からACSイベント発生までの時間は両群間,また狭窄度50%以上と未満でも有意差はなかった。
■多変量解析の結果,「黄色プラークの数」と「多枝病変」がACSイベントの独立した危険因子であることが判明した。
■これまで心筋梗塞は局所の疾患と言われていたが,今や局所だけでなく,全身の非常に多くの部位から起こりうることから,全血管的な疾患と捉え,全身的な治療を行う必要がある。
■冠動脈造影を施行する人に対して血管内視鏡検査を行うことで,患者が自身のACSイベントリスクの大きさを知ることができる。
また,黄色プラークが描出された画像所見を実際に目にし,さらに治療により黄色プラークが減ったことを確認できれば,治療に対するモチベーションやコンプライアンスの向上につながることが期待できる。黄色プラーク数によるACS発症率の比較
プラーク形成と破綻のメカニズムhttp://www.kawamura-cvc.jp/hyperlipid.html 
急性冠症候群(ACS)発症の原因となるのは「豊富な脂質コア」が「薄い線維性被膜」に覆われているプラークであり、ポジティブ・リモデリングがACS発症リスクを増大させる。
IVUSによる研究では、不安定狭心症例でポジティブ・リモデリングが多く見られ,逆に安定狭心症(労作時狭心症)ではこうしたリモデリングが見られないという所見とも一致する。 
急性心筋梗塞の68%は、責任冠動脈の狭窄度は50%以下(運動時無症状)である。
急性心筋梗塞を起こした責任冠動脈の狭窄病変を調べたFusterらの報告では、激しい運動でも無症状である50%以下の狭窄が68%、安静時は無症状である50%から70%の狭窄が18%であった。
心筋梗塞の発症原因は、冠動脈内プラークが破綻し、血小板血栓による急性冠動脈内閉塞であると疫学的な証明がなされ、急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome, ACC)の新しい疾病概念が一般化した。