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ちょっと以前(2007年)のことになりますが、NEJMに発表されたCOURAGE試験は一大センセーションを巻き起こしました。
NEJM 2007;356:1503-16
この内容は2007年のACCでも発表されています。
PCIは日進月歩で進歩しています。
少し前のデータがそのまま現在にも当てはまるかは開業医の私にはわかりません。
そして、人種差や各国の医療レベルも関係しているので海外のデータを鵜呑みにするのは危険かも知れません。
COURAGE試験
Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation
ちょっと前の日循専門医医誌を整理していて「用語解説」のコーナーで「COURAGE試験」が解説されているのが目にとまりました。
循環器専門医第15巻第2合007.9 P304
東京医大第二内科 近森大志郎先生
そこで、この機会に少し振り返ってみました。
結論は、
最適な内科的治療を受けている慢性安定狭心症に経皮冠動脈インターベンション(PCI)を施しても死亡・心筋梗塞・その他の重大な心血管イベントのリスクは低下しない
というものです。
慢性安定狭心症およそ2300人(2287人)が最適な内科的治療(集中的な薬物治療とライフスタイルの改善、optimal medical therapy)に加えてPCIを施すグループと最適な内科的治療のみを実施するグループに無作為化されました。
平均4.6年間の追跡調査の結果、死亡または心筋梗塞の発現率はPCI実施グループでは19%、最適な内科的治療グループでは18.5%でした。
要するに、PCI群で有意な予後改善効果が証明されないというショッキングな結果でした。
しかし、ここで重要なことは内科的治療で十分な冠危険因子のコントロールがされていたことです。
(BP124/72mmHg以下、LDL-C75mg/dl以下、HbA1c7.1%)
つまり、内科的治療をしっかり行えばPCIによる改善の余地は少ないということも出来、内科的治療の重要性が浮き彫りにされたということになります。
最適な内科的治療グループに比べてPCI実施グループの方が狭心症の有病率は低くなっていましたが、その差は5年時点では有意ではなくなりました。
さらに興味深いのは、内科的治療グループの32%でも追跡期間中に血管の再疎通を確認できた、ということです。
本邦でも、慢性安定狭心症に対するPCIの有効性を示唆するJ-SAP試験が報告されました。
しかし、この試験は症例数が少なく内科的治療が厳格でないという指摘がされています。
どうやらJ-SAP試験から、人種差云々でOURAGE試験と相反する結果が出たと結論づけるのは早計のようです。
COURAGEというトライアルの名称は、主任研究員のWilliam Bodenが「どのような困難な状況に置かれても動揺しない思考力と意思の強さであることこと」を意図して命名されたというエピソードがあるようです。
また、この発表でPCI件数が10%以上低下したとWall Street Journal が伝えたと近森先生が書かれています。
この記事を読んで、ezetimibeのENHANCE試験でのゴタゴタを思い出しました。
自由経済国家アメリカの医療の側面を見る思いです。
ENHANCE試験のもう一つの側面
http://medicineblog.blog32.fc2.com/blog-entry-11.html
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=COURAGE試験&perpage=0&order=0&page=1&id=M41290241&year=2008&type=allround
Medical Tribune 2008.7.17
<コメント>
ENHANCE試験については、安定冠動脈疾患にPCIを実施しても、予後が改善されない、というのはPCIが実施され始めた頃から言われていたことです。
どうしてNEJMに掲載されるようになったのか、Neuesは何なのか
という疑問の向きもあります。
いつも思うことですが、NEJM誌はimpact factorが高いことでつとに有名です。
しかし各専門領域の専門誌(例えば循環器領域のJACCやCirculation誌)でacceptされなくてNEJM誌で掲載されることがあるのではないかと考えてしまいます。
正しい統計処理がされた大規模臨床試験はNEJM誌のお気に入り分野かも知れません。
要するに米国では対費用効果が大きな問題となっているということでしょうか。
<関連サイト>
JSAPとCOURAGE
http://blog.m3.com/reed/20080322/JSAP_COURAGE
COURAGE研究サブ解析
http://blog.m3.com/reed/20071218/COURAGE_
PCIの初回治療後の再治療率
http://blog.m3.com/reed/20081127/PCI_
リスク安定型狭心症患者に対する治療戦略
http://blog.m3.com/reed/20081030/1
経皮的冠動脈インターベンションは橈骨アプローチが最善か
http://blog.m3.com/reed/20081022/1
無原則なPCIは社会の脅威に
http://blog.m3.com/reed/20080422/_PCI_
PCI,CABGの長期成績
http://blog.m3.com/reed/20090303/PCI_CABG_
Evidence-Based Coronary Intervention その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080914/Evidence-Based_Coronary_Intervention_
Evidence-Based Coronary Intervention その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080915/Evidence-Based_Coronary_Intervention_
冠動脈疾患治療の在り方を
http://blog.m3.com/reed/20090312/1
Effect of PCI on Quality of Life in Patients with Stable Coronary Disease
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/7/677
(24ヶ月まではPCI群で有意にADLがよいが36ヶ月では、有意差がなくなっている)
A Meta-Analysis of 17 Randomized Trials of a Percutaneous Coronary Intervention-Based Strategy in Patients With Stable Coronary Artery Disease
J Am Coll Cardiol, 2008; 52:894-904
http://content.onlinejacc.org/cgi/content/abstract/52/11/894
■PCI-based invasive strategy may improve long-term survival compared with a medical treatment-only strategy in patients with stable coronary artery disease
Evidence-Based Coronary Interventionを目指して
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=COURAGE試験&perpage=0&order=0&page=0&id=M41370861&year=2008&type=allround
Medical Tribune 2008.9.11
■この成績から,安定冠動脈疾患には内科的治療だけで十分だと考えるのは早計であろう。
なぜなら,内科的治療群の約3分の1は経過中にPCIを受けており,その実態は「選択的PCI施行群」と呼ぶべき集団だからだ。
すなわち,COURAGE試験によって示されたことは,狭心症や心筋虚血の所見が明確な患者に対して症状改善を目的にPCIを行うのは妥当だが,適応が明確でないPCIは患者には利益をもたらさないということである。
PCI施行医はまず,十分な内科的治療を行い,PCIを施行するにあたっては,これまで以上にその必要性を考慮することが大切である。
2009.7.19
<番外編 その1>
2009年7月21日、Novartis(ノバルティス)社は、血圧目標レベルを達成するのに複数の薬剤が必要と思われる患者の最初の治療にTekturna HCT (aliskiren and hydrochlorothiazide) を使用することがアメリカFDA(米国食品医薬品局)に承認されたと発表しました。
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=34765
Tekturna HCT
http://www.drugs.com/tekturna-hct.html
■Tekturna HCT is a combination of hydrochlorothiazide and aliskiren.
■Aliskiren (Tekturna) i is a direct renin inhibitor.
<番外編 その2>
Novartis社 高血圧治療薬・Rasilezが日本で承認された
■ 2009年7月8日、Novartis(ノバルティス)社は、高血圧治療薬として直接的レニン阻害剤・Rasilez(ラジレス錠150mg;aliskiren、アリスキレンフマル酸塩) が日本で承認されたと発表しました。
http://www.biotoday.com/view.cfm?n=34564