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Focus/より詳細で客観的な冠動脈狭窄病変の評価を
解剖学的評価としてのOCT,生理学的評価におけるCFR,FFR
冠動脈狭窄病変の診断は,狭窄の有無や重症度を形態学的に判定する解剖学的評価と,狭窄に起因する心筋虚血の有無やその程度を客観的に判定する生理学的評価によってなされている。
解剖学的評価の従来からの方法は冠動脈造影(CAG)だが,近年では血管内超音波(IVUS)や血管内視鏡などが加わり,評価の精度は著しく向上した。
さらに,光干渉断層法(OCT)も登場し,プラークの性状が詳細に評価できるようになってきた。
機能的評価の方法には負荷心電図や心エコー,核医学検査などがあるが,これらは解剖学的評価と同時に施行することが困難で,緊急時の診断には生かせないという欠点があった。
しかし,最近ではドプラガイドワイヤ(DGW)や圧ガイドワイヤ(PGW)が開発され,解剖学的評価と同時に生理学評価を行うことが可能になってきた。
DGWやPGWで求めた冠血流予備能(CFR)や心筋血流予備量(FFR)という生理学的指標は,冠動脈狭窄病変の診療を,より客観的なものにすることが期待されている。
OCTの特性と有用性,およびCFR,FFRの概念や臨床適用について,和歌山県立医科大学循環器科の赤阪隆史教授と,東京医科大学循環器内科の田中信大講師に聞いた。
不安定プラークの性状のより詳細な把握を可能にするOCT(赤阪 隆史 教授)
赤阪教授は,冠動脈病変の新しい解剖学的評価法であるOCTについて,その高い解像度が不安定プラークの詳細な評価を可能にするだけでなく,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応の決定や治療効果の判定にも有用であるとしている。
さらにDGWを用いて求めたCFRは,冠微小循環を含む冠循環全体として血流が十分に保たれるかどうかを示す指標であり,PCI後の予後予測にも生かすことができることを示した。
OCTの最大の特徴はIVUSの10倍の高い解像度
OCTは約1,300nmの波長の近赤外線を用い,その干渉効果を利用して冠動脈の断層像を描出する画像診断法。OCTの最大の特徴はその高い解像度で,IVUSの解像度が100~150μmであるのに対し,OCTは10~15μmと10倍優れている。
そのため,IVUSでは不可能であった血管の内膜・中膜・外膜の判別が可能で,プラークの性状や線維性被膜の厚さなども同定できる。
OCT画像では,動脈壁の線維性組織は高信号の均質な像として描出される。
一方,脂質を多く含む部分は低信号で境界不鮮明な像,石灰化部分はやはり低信号であるが境界明瞭な像として描出される。
赤阪教授は「OCTはIVUSに比べて,脂質を多く含む部位の判別に優れており,脂質コアを有する不安定プラークの観察により適している」と言う。
不安定プラークの組織学的特徴として,
(1)陽性リモデリングを呈し,
(2)偏在性の動脈硬化巣で,
(3)脂質に富んだ組織で,壊死したコアを有し,
(4)薄い(<65μm)線維性被膜に覆われ,
(5)その一部は破裂しているか潰瘍の形成が認められ,
(6)破裂や潰瘍に伴って形成された血栓が付着しており,
(7)線維性被膜またはその近傍にマクロファージの集簇が認められる
などが指摘されている。
同教授は急性心筋梗塞30例を対象に,虚血再灌流後にそれぞれ血管内視鏡,IVUS,OCTにて病変部を観察し,各画像による不安定プラークの特徴の検出率を比較した。
その結果,プラークの破綻と潰瘍は,血管内視鏡では対象の47%と3%,IVUSでは40%と0%に認められたのに対し,OCTでは73%と23%に認められ,血管内視鏡やIVUSに比べてOCTは,プラークの破綻や潰瘍の検出力に有意に優れることが示された(図1)。
また,同じ検討から,OCTは血栓の検出力にも有意に優れることが示された。
新生内膜形成の的確な評価も可能に
OCTによる冠動脈壁構造の評価は,治療効果の評価にも有用である。
薬剤溶出性ステント(DES)留置6か月後の検討では,新生内膜形成が認められても100μm以下のものが64%を占めており,これらはIVUSでは観察されず,OCTでのみ観察が可能である。
DES留置後は,新生内膜形成の抑制が遅発性のステント血栓症を引き起こす可能性が指摘されており,その予防のための抗血小板薬投与が欠かせない。
しかし,それをいつまで続けるかの正確な判断ができないことが大きな問題となっている。
「OCTを用いた新生内膜形成の鋭敏な評価は,この問題を解決する決定的な手がかりを提供する可能性がある」と同教授。
OCTは,ステント留置後のフォローアップ期間におけるステントの圧着不全,ストラットの不整合配置,組織のはみ出し,ステントのエッジ裂開などの評価においても,高い有用性を発揮する可能性があるという。
OCTでは赤血球があると光が遮断されるため,観察時に血流を30秒間ほど遮断する必要がある。
このための手技の煩雑さが欠点とされていたが,そうした煩雑さを解消した次世代のOCTも開発されつつある。
冠動脈狭窄疾患に対するOCTは,わが国では2007年9月に使用が認められ,2008年10月からは保険適応も得られた。
現在,わが国では100台程度が導入され,20台程度が常時稼働しているものと思われる。
同教授は「OCTは冠動脈壁のより詳細な観察を可能にしたが,それだけに画像の読み取りにも新しい知識と技術が必要。しかし,多くの医師がこの知識と技術を習得したとき,冠動脈狭窄病変の診療はまた一歩,進展しているものと思われる」としている。
CFRは微小循環を含む冠循環全体の血液供給能を示す
DGWは,心外膜冠動脈内の血流速度を測定できる超音波探触子(12MHz)を装着した,直径0.014インチの細径のワイヤである。
超音波探触子はワイヤの先端に装着されており,前方に約30度の角度で超音波パルスドプラビームを発信し,冠血流速波形をリアルタイムに記録する。
DGWで記録された冠血流速パターンを分析することにより,種々の疾患の病態生理や冠循環動態を知ることが可能となる(図2)。
CFRとは,心筋酸素需要の増大に対応して冠血流量を増大させうる能力を表す指標で,安静時に対する最大反応性充血時の冠血流量の比として求められる。
最大充血は冠細小動脈を最大拡張するパパベリンやアデノシンなどの薬物を負荷し,薬物負荷最大充血で代用している。
ここで計測部の血管径が変化しなければ,血流量と血流速は直線相関することから,CFRは最大充血時/安静時の時間平均冠血流速比で求めることができる。
CFRは健常例では4.0程度で,微小循環障害がなければ40~50%狭窄から低下し始め,有意狭窄(>75%)では2.0未満となる(図3)。
赤阪教授は臨床例において,CFR 2.0をカットオフ値に設定した場合,CAG上の狭窄率70%以上の狭窄病変をどの程度の精度で診断することができるかを検討している。
その結果,冠微小循環障害のない症例では感度92%,特異度92%で狭窄病変の診断が可能であり,CFRが臨床における虚血診断に有用であることが証明された。
ただし,CFRは心外膜冠動脈に明らかな狭窄病変がなくても,心肥大や糖尿病などの冠微小循環障害を来す疾患がある場合には低下する。
すなわち,「CFRは単に心外膜冠動脈狭窄病変による冠血流障害の程度を表す指標ではなく,心外膜冠動脈と冠微小循環を合わせた冠循環全体として血流が十分保たれるか否かを示す指標と言える」(同教授)。
DGWにより求めた冠動脈狭窄率やCFRを用いて,PCIの効果判定を行うことが可能である。
DEBATE研究では,解剖学的評価である径狭窄率と生理学的評価であるCFRをそれぞれ単独で用いるより同時に用いるほうが,経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の予後予測により優れることが示され,PTCA後の径狭窄率36%未満でかつCFR 2.5超の症例は,再狭窄率,半年以内の心事故発生率が低いことが明らかにされている。
DGWで記録された冠動脈血流速波パターンを分析することで冠循環動態を詳細に知る方法としては,CFR以外にもいくつかの方法が提唱されている。
同教授は「今後もこの方面でのさらなる進展が期待される」と結んだ。
心筋虚血の評価,PCIの適応や効果判定に有用性の高いFFR 田中 信大 講師
冠動脈病変の生理学的評価法で得られるFFRは,狭窄以外の因子の影響を受けずに,狭窄による心筋虚血を特異的に評価することが可能な指標だ。
田中講師は,FFRの臨床適用について,心筋虚血の評価にとどまらず,PCIの適応決定や効果判定,予後予測などにおいても有用性が高いことを示した。
冠微小循環障害の影響を排して虚血を評価するFFR
CFRは虚血の診断に有用であるが,その臨床適用に当たっては,冠微小循環障害により影響を受けることを理解しておく必要がある。
これに対し,冠微小循環障害の影響をなるべく排して,心外膜冠動脈狭窄に特異的に起きている虚血を評価するために考案された指標がFFRである。
FFRは,狭窄病変が存在しない状況で最大冠拡張時に本来流れるべき血流が狭窄病変のためにどの程度障害されているかを示す指標で,最大冠拡張時の狭窄遠位部圧/近位部圧の比で概算される(図4)。
狭窄遠位部圧と近位部圧は,0.014インチの細径のワイヤの先端から3cmの部位に圧センサーが装着されたPGWを用いて,狭窄部を安全に通過させながら同時に記録することができる。
狭窄病変の全くない正常血管であれば,FFRは1であり,FFRが0.60であれば,その血管が正常であった場合に得られる最大血流量の60%の血液を供給しうる(60%の血液しか供給しえない)ということを意味している。
FFRによる虚血のカットオフ値としては,0.75未満が虚血と評価されている。
Pijlsらは,このカットオフ値をPCIの適応決定に応用することの妥当性を,DEFER試験により検討している。
同試験の対象はPCIを予定されていたが,非侵襲的な負荷試験により明らかな虚血陽性の所見がないか,あるいは単純に負荷試験が行われておらず,虚血の証明がなされていない325例。
あらかじめPCI施行群と非施行群にランダムに割り付け,その後,登録時に測定したFFR値により,0.75未満であればPCIを施行(Reference群)。
同0.75以上の場合は,PCI施行群ではPCIを施行し(Perform群),非施行群ではPCIを施行せず経過観察(Defer群)とした(circulation 2001; 103: 2928)。
結果は,Reference群では狭心症の自覚症状は有意に高率に消失したが,心血管イベントは他の2群に比べて高率に生じた。
しかし,Defer群とPerform群の2群間では,無イベント生存率,自覚症状の消失率に全く差はなかった。
この結果について,田中講師は「術前に虚血が証明されていない症例に対しては,FFRを計測することにより,どのような病変を治療すべきか,あるいは,どのような病変は治療せずに経過観察しても安全かということが判断できることを示している」と評価している。
慢性の冠動脈疾患患者の場合,PCIを施行することの利益に疑問を投げかけるような成績がいくつか報告され,話題となっている。
例えば,安定冠動脈疾患に至適薬物療法のみを行う場合と,PCIを追加した場合の効果を比較したCOURAGE試験(次ページ参照)でも,PCIを追加することの利益の上乗せは小さく,しかも,時間の経過とともに利益が見られなくなることが報告されている。
同講師は「虚血を伴わない冠動脈病変へのPCIは予後を改善しないどころか悪化させる可能性もある。
こうした症例をPCI施行前にスクリーニングするために,FFRの計測による虚血の評価はきわめて有用」と言う。
多枝病変でFFRの有用性はさらに高まる
狭窄が多枝にわたる場合,FFRの有用性はさらに高まる。多枝病変で1枝に高度狭窄を有し,他枝に中等度狭窄を有する場合,負荷心筋シンチグラムを施行しても,高度狭窄領域の灌流異常が強く出現し,中等度狭窄領域の灌流異常が検出困難になることがある。
そのような場合,その領域の虚血が本当に生じないという判断は,これまでなら高度狭窄を解除後にもう一度負荷心筋シンチグラムを施行しなければならなかった。
しかし,狭窄部位ごとに虚血の評価が可能なFFRであれば,そうした必要はなくなるわけである。
これまでCAGのみで多枝病変と評価されてきた症例を,Sant' AnnaらはCAGにFFRを加えて再評価した結果,3→2枝,2→1枝,1→0枝というように評価を改めるべき症例が,実に全体の58%に及んだと報告している。
つまり,CAG上では狭窄を来していても,FFR上では有意な虚血を来していない症例が,それだけ多いと言える。
これら多枝疾患の治療方針をFFRに基づいて決定すると,CAGガイドで行われた場合よりも予後を改善するというランダム化比較試験(FAME study)がToninoらによって報告されたところである(図5)。
FFRは,PCI終了時における拡張効果の判定にも有用である。
Bechらは,FFR 0.90以上でPCIを終了すれば,同0.90未満の症例に比べて再狭窄を約50%減らすことが可能であるという成績を示し,0.90以上を目標とすることを推奨している。田中講師らの検討でも,FFR 0.90以上の症例は0.90未満の症例に比べて,慢性期心血管イベントの発生が有意に少ないことが示されているという。
DESが登場した現在においても心筋虚血の証明されていない病変へのPCIが有益であるというエビデンスはない。
こうした状況下において,同講師は「FFRはエビデンスの代替とするに最も信頼のおけるものではないか」と考えており,「これまで得られたFFRに関する知見に基づいて治療方針を決定していくFFR based interventionを推進していくことが,冠動脈狭窄病変のよりよい治療につながると考えている」と結んだ。
出典 Medical Tribune 2009.2.26(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
昨日、CTCA(128列)を依頼した患者さんが検査の帰りがけに当院に寄りました。
今年の3月に1回限り労作時に狭心症状があった56歳の男性です。
その時点でマスター負荷心電図とホルター心電図を行いprobableと考えた症例です。
本人のご都合もあり検査が昨日になってしまったという経過です。
結果はRCA優位で近位部に石灰化を伴う中等度の狭窄病変。
LMTからLAD近位部にかけて非常に強い石灰化。
CXは異常なし。
LMTを2枝病変とカウントすれば3枝病変ということになります。
コメントは当然のことながらCAGが必要とのことでした。
LMT病変は主治医の私としては冷静さを失います。
このような症例はどのようにPCIを行うのでしょうか。
もちろんCAGの結果次第ですが。
CTCAの普及によりCAG以上に石灰化病変がクローズアップされたような気がします。
インターベンションを実際にやっておられる先生方の印象はいかがでしょうか。
<医学雑誌 斜め読み>
心臓突然死の予見と予防 その2
東邦大学医療センター大橋病院
杉 薫 教授
日本医事新報 No.4284 2006.6.3 P57~70
■ICD装着例の基礎疾患が陳旧性心筋梗塞であるのは米国では80%以上、日本では25%。
日本では特発性心室細動や心筋症(HCM、DCM、ARVD)が多い。
<参考>
不整脈源性右室異形成(ARVD)とは?
http://www.gik.gr.jp/~skj/arrhythmia/ARVD.php3
■先天性Q延長症候群
Romano-Ward症候群
Jervell-Lange-Nielsen症候群
<参考>
QT延長症候群
http://www.udatsu.vs1.jp/qt.htm
8.QT延長症候群
http://www.udatsu.vs1.jp/LQT.htm
■Romano-Ward症候群
聴覚も話す方も障害はなく、普通に生活している方で、ただ、遺伝子的にKチャンネルあるいはNaチャンネルなどの、いくつかの遺伝子の異常がある。
治療はⅠ型、Ⅱ型でβ遮断剤を用い、Ⅲ型のみNaチャンネルブロッカーを用いる。
■特発性心室細動
Burgada症候群
その他として
○特にQ延長がなく心電図も正常で、RR間隔が短くなったり長くなったりという間隔で心室細動を起こす
○QRS波の後半にOsborn波があって、心室細動を起こす
○運動で心室頻拍頻拍を起こしそのまま心室細動に移行
<参考>
J-waveとは?
http://www.udatsu.vs1.jp/Bru_3.htm
(Osborn waveはJ-waveの別名)
Brugada型心電図がJ波の顕著化によることを述べたNierregaardの研究
http://www.udatsu.vs1.jp/Bru_2.htm
その他
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
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