戯れ言たれる侏儒
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STICH

戯れ言たれる侏儒 / 2009.06.04 00:30 / 推薦数 : 0

第58回米国心臓病学会(ACC)で注目を集めたSTICH試験を勉強しました。
                           
このSTICH試験は冠動脈バイパス術(CABG)に左室形成術(SVR)を追加する有用性が示されなかった臨床試験です。
動脈病変はバイパス可能だが、心筋梗塞により心機能が低下した患者さんを対象に、バイパス手術のみの群と、バイパス手術+心室形成術の群を比較しています。

チームバチスタの存在意義が問われる(?)結果となりました。

以下は心臓血管研究所(東京都)のスーパーバイザー須磨久善先生の解説を交えた記事です。

<須磨久善 関連サイト>
第27回 心臓外科医 須磨久善-その3-外科医にとって最も重要なのは手先の器用さではなく想像力
http://codezine.jp/article/detail/2176


SumaCV
http://www.cvi.or.jp/suma/SumaCV.html

須磨久善
失ったはずの未来を与える「神の手」
http://diamond.jp/series/amadeus/3/

 

左室縮小が不十分で左室形成術の有用性が示されなかったSTICH
左室駆出率(LVEF)35%以下の心不全を伴う冠動脈疾患(CHD)に対し,CABG単独よりも左室形成術(SVR)を加えたほうが予後の改善をもたらすという仮説を検証したSTICHは,予測に反し,総死亡,心臓関連入院の頻度がCABG単独群と同程度という結果だった。
須磨氏は「左室縮小率が不十分だったことがSVRの有用性を示せなかった原因」と厳しく指摘した。

参加施設の質に疑問が
試験に参加したのは23か国96施設で,今回CABG+SVR群に登録されたのは501例。
1施設当たりのSVR施行例を平均すると5.2例となる。
「SVRはまだ一般化されていない難易度の高い手術。CABGや弁置換術などの一般化された手術では施設間の手術成績は均一と考えられるが,SVRは経験豊富な施設と初めて行う施設で結果が大きく変わる可能性がある」という。
「これまでに報告のあったエキスパートがいる施設と,世界中から寄せ集められた試験参加施設が同じレベルとは考えにくい」とも指摘する。
 
日本では,1996年くらいからDor手術,バチスタ手術などのSVRが積極的に行われるようになり,関心が高まってきた。多くの学会のシンポジウムで取り上げられるなど,注目度も高く,日本のSVRの完成度は高くなってきている,と同氏は評価する。
 
同試験の術後30日までの死亡は,CABG群5%,SVR併用群6%だった。
同氏は「SVRに慣れない施設が行うと死亡率が増加するのではないかと懸念していたため,むしろ安堵した」と言う。ただし,その後の追跡で総死亡+心臓関連入院率が50%を超えている点については,同氏が把握している割合よりはるかに高いと指摘する。
試験デザインの段階から縮小率が考慮されていない

今回,SVRの有用性が示されなかった点について,須磨氏は「左室の縮小率がわずかだから」と指摘する。
自身の200例超の経験や他施設の報告では,左室収縮末期容積係数(ESVI,正常値は約30mL/㎡)が100mL/㎡以上とかなり拡大した左室を40mL/㎡以上縮小させており,これを縮小率で表すと40%程度であるという。
これまでの海外からの主要な報告では少なくとも30%は縮小させていた()。

これに対し,今回は,縮小させたESVIがわずか16mL/㎡で縮小率も20%を切っている。

縮小率が30〜40%ないと効果が期待できないとする報告(Ann Thorac Surg 2006; 82: 1721-1727)もあることから,試験デザインを考える段階で縮小率の設定がなかったことに疑問が残るという。
 
同氏は「SVRが有効な症例は心筋の瘢痕化が進み,心拡大が著しい,心不全が進行した症例。逆に言えば,拡大は進んでいても,筋肉には厚みがあり,まだ"生き生きとしている心臓"ではCABGだけで十分に改善できる」として,今回の対象であるLVEF 35%未満,ESVIが60mL/㎡以上の患者のなかには,CABGのみで十分改善できる患者が多数いたのではないかと指摘している。
 
最後に,同氏は「心不全の治療は多領域の連携が求められる。
内科も外科も,カテーテルもペースメーカーも,あらゆる治療法を駆使してこそ重症患者を救うことができる。
そのなかで,SVRが求められ,有用性が示されてきた。"薬が効く心臓に戻す"ことが手術の目的であり,術後も内科との連携がきわめて重要」と述べ,この試験の内容をよく吟味したうえでの次の展開を注視しているという。

 

 

<コメント>
厳密な適応下でないと治療成績の改善は見られない。
high risk症例に対しては、バイパス手術時に左室形成術を付加しても成績を少なくとも悪化させることはないとも言えます。
適応を最適化することが大切ということでしょうか。

出典 Medical Tribune 2009.5.28(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<参考文献>
Coronary bypass surgery with or without surgical ventricular reconstruction.
N Engl J Med. 2009 Apr 23;360(17):1705-17
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19329820

 

<注>
Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure(STICH)

「屏風と黒い椅子」 油彩 20P
http://www.nichido-garo.co.jp/exhibition/2009/05/post_90.html
 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

 

 

 

 

 

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