戯れ言たれる侏儒
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第73回日本循環器学会(大阪・2009.3.20~22)でのシンポジウム「冠動脈疾患」の記事で勉強しました。

 

CHDの長期予後改善目指す治療の現状
わが国の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は年間約20万件。冠動脈バイパス術(CABG)の10倍以上行われており,冠動脈疾患(CHD)治療の中心的な存在と言える。
しかし,薬剤溶出ステント(DES)によってもCABGを上回る成績が得られていない長期予後に関して,各治療法の意義をより積極的に検討し,改善策を確立する必要性がある。
シンポジウム「冠動脈疾患の治療戦略~PCIかCABGかあるいは薬剤治療か?」(座長=東北大学大学院循環器病態学・下川宏明教授,京都大学大学院心臓血管外科・坂田隆造教授)では,わが国の新しい研究データが示され,注目を集めた。

~左主幹部AMIに対するPCI~
生存退院例の予後はCABGと差なし

左冠動脈主幹部急性心筋梗塞(LMCAMI)症例の30日死亡率はPCI群がCABG群より高かったが,生存退院例の長期予後は差がなかったとするデータが,大阪大学大学院循環器内科学の宇佐美雅也氏らにより明らかにされた。

30日死亡率はPCIで2倍以上
LMCAMIは多くないが,予後が悪い。
宇佐美氏によると,大阪急性症候群研究会(OACIS)に登録された急性心筋梗塞(AMI)約8,000例の検討で,LMCAMIは全体の2.2%にすぎないが,院内死亡率は50%,長期観察(平均2年半)での死亡率も57%と,AMI全体の6%,11%に比べて著しく高い。生存退院例に限っても長期生命予後は不良だ。
しかし,ランダム化比較試験(RCT)が難しいこともあり,適切な治療法などの検討は十分行われていない。
 
同氏らは今回,2006年12月までにOACISに登録されたLMCAMI 178例を対象に,急性期治療と予後との関係を検討した。急性期治療は全例に再灌流療法が行われ,132例(74%)にPCI,40例(22%)にCABGが選択された。
PCI群とCABG群の患者背景を比べると,PCI群でより高リスク症例(ST上昇型,クレアチニンキナーゼ高値,経皮的心肺補助使用など)が多かった。
治療法を来院時のKillip分類別に調べると,心不全のない I 度ではPCIとCABGがほぼ半々だったが,II~IV度の心不全例では86%がPCIだった。
 
30日死亡率はPCI群42%,CABG群18%と,PCI群で2倍以上有意に高かった。
PCI群で高リスク症例が多かったことの影響と考えられた。
しかし,生存退院例の長期観察では,両群の退院後死亡や退院後死亡+心不全よる再入院+再梗塞に有意差は認められなかった。

~LMT例除く多枝例へのCABG~
PCI例より長期予後が良好
左冠動脈主幹部(LMT)病変例を除く多枝CHD患者の生存率は,PCI施行例よりもCABG施行例で良好な傾向を示し,特に糖尿病合併例,低左心機能例,高齢者でその傾向が強いとする多施設共同レジストリ研究CREDO-Kyoto(Coronary Revascularization Demonstrating Outcome Study in Kyoto)の結果が,神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科の古川裕氏から報告された。

5,000例以上を3年半追跡
CREDO-Kyotoは,わが国の実地診療における冠血行再建術の現状や長期成績を明らかにする目的で,ベアメタルステント時代に当たる2000?03年に全国30施設で初回冠血行再建術(PCI,CABG)を施行された9,877例(AMI除く)の経過を平均3.5年間追跡した研究(2年以上の追跡率96%)。
今回は,LMT病変例を除く多枝疾患患者5,420例(PCI群3,712例,CABG群1,708例)で両治療を比較した。
 
両群の生存率は,背景因子で補正しない場合には差がなかったが,補正後はCABG群で良好な傾向が認められた(P=0.06)。サブ解析すると,糖尿病合併例,低左心機能例(左室駆出率40%以下),75歳以上例において,CABG群の生存率がPCI群を上回った。
75歳で分けてサブ解析を行うと,75歳未満例では背景による差が明確ではなかったが,75歳以上例では糖尿病合併例,低左心機能例においてCABG群の生存率が良好だった。
なお,退院時の処方薬剤と予後との関係を見ると,抗血小板薬,スタチン,硝酸薬が良好な予後と関連していた。
 
古川氏は「冠血行再建術が低侵襲を志向するなか,PCIよりもCABGに適した症例を正しく選択することが重要」と述べるとともに,「すべての冠疾患患者に対して,スタチン,アスピリンを中心とした二次予防のための薬物療法が必須である」と強調した。

~わが国のOPCAB長期予後~
on-pump CABGとそん色ない
京都府立医科大学心臓血管・呼吸器外科の夜久均教授らは,同科でoff-pump CABG(OPCAB)を施行した約700例の長期予後を検討。
on-pump CABG施行例とそん色ない成績が得られたことを報告した。

欧米ではon-pumpより不良
わが国では近年,OPCABが急速に進歩,普及し,CABG全体の約6割を占めるまでになった。
一方,欧米ではその割合は1割程度でしかなく,グラフト開存率や長期予後はon-pump CABGに比べて悪い。
グラフト開存率はon-pump CABGではほぼ100%だが,OPCABではそれより約10%低いというデータも報告されている。
しかし,動脈グラフトを積極的に用い,開存率も高いわが国に,欧米の報告をそのまま当てはめることはできない。
 
夜久教授らは,2008年までの10年間に同科で行った単独CABG例をOPCAB群(707例)とon-pump CABG群(259例)に分けて検討した。
グラフト開存率は両群とも約97%と高かった。
OPCAB群はon-pump CABG群に比べ,年齢が高く,脳血管障害合併例や腎機能障害合併例が多く,緊急手術例は少なく,左心機能はやや良好だった。
早期成績を比較すると,OPCAB群では心筋逸脱マーカーが低く,人工換気時間が48時間を超える症例,輸血量,術中脳血管障害が少なく,集中治療室(ICU)入室日数が短かった。さらに長期予後を検討したところ,全死亡,心臓死,PCI施行,主要心血管イベントのいずれも両群とも良好で,有意差は見られなかったという。

~低リスク安定CHD~
最初からPCIを行ったほうが予後良好
低リスク安定CHDの治療は,わが国では一般的に最初からPCIを行うが,欧米では薬物療法を先行させる。
岐阜大学第二内科の西垣和彦准教授は,わが国のランダム化比較試験(RCT)であるJSAP(Japanese Stable Angina Pectoris) studyで,最初からPCIを行ったほうが予後良好とする成績が得られたと同シンポジウムで報告した。

狭窄度高い病変を安定化か
安定CHDは,左冠動脈主幹部(LMT), 左冠動脈前下行枝(LAD)近位部または3枝病変で生命の危険性が高い高リスク例と,それ以外の1~2枝病変などの低リスク例に分けられ,後者が約8割を占める。高リスク例に対しては日本,欧米とも,CABGまたはPCIと薬物療法が行われる。
一方,低リスク例の治療は,欧米では薬物療法から開始し,改善がない場合にPCIの追加が推奨されている。
最近のRCT(COURAGE)でも,当初からのPCIによる予後改善は認められないと報告された。
これに対して,日本では最初からPCIを行う施設が多いが,その根拠はこれまで不十分であった。
 
西垣准教授によると,JSAP studyでは,全国78施設から登録された低リスク安定CHD患者384例をランダムに,各種薬物療法を先行させる群と最初からPCIと薬物療法を行う群に分け,予後を3.3年にわたって観察した。
その結果,死亡では差がなかったが,死亡と急性冠症候群(ACS),脳血管障害(CVA)あるいは緊急入院を組み合わせると,いずれもPCI+薬物療法群の予後が薬物療法先行群に比べて良好であった()。

 


 
こうした結果が得られた理由について,同准教授は「先行PCIがPCIのターゲットとなる比較的狭窄度の高い病変を安定化させたためではないか」との見方を示した。

~糖尿病合併例へのOPCAB~
特に腎障害例で長期予後不良
岩手医科大学心臓血管外科の岡林均教授は,約1,600例のoff-pump CABG(OPCAB)施行例の分析から,糖尿病合併例,特に腎障害を有する症例における生命予後がきわめて不良であることを指摘した。

透析例ではさらに予後不良
岡林教授は,これまで多数例にOPCABを実施しているが,近年「治療成績をより向上させるには,外科医も関連疾患や薬物療法に決して無関心ではいられない。
特に,予後の悪い糖尿病合併例の治療でその意識が強くなった」という。
 
今回,2006年秋まで在籍していた小倉記念病院(福岡県)におけるOPCAB 1,604例(男性1,163例,女性441例,平均年齢68歳)の長期成績を糖尿病の有無などにより比較。糖尿病合併は752例(47%)。心臓手術のリスク評価指標Logistic Euro Scoreは約6点で高リスク例が中心だった。
 
まず,5年生存率を見ると,糖尿病群80.7%,非糖尿病群87.0%と,糖尿病群で有意に悪かったが,心臓死,心事故では有意差はなかった。
そこで,さらに糖尿病の治療や合併症について調べたところ,インスリン使用糖尿病群は全死亡および心臓死において,非糖尿病群に比べて予後不良だった。
また,腎障害を有する糖尿病群ではいっそう悪化し,非糖尿病群に比べ全死亡が39%,心臓死が19%,心事故が27%高率。透析例ではさらに予後不良であった。
 
以上から,同教授は「関連各科との協力による糖尿病やその合併症に対する治療,特に腎機能温存が長期予後改善に重要である」とした。

~冠攣縮性狭心症の多施設観察研究~
薬物療法とその継続の重要性を示唆
冠攣縮の病態を全国規模で明らかにする目的で進められている冠攣縮研究会(CSA)による多施設共同レジストリ観察研究の中間解析結果が,東北大学大学院循環器病態学の安田聡・准教授から報告された。

減量・中断でイベント9倍
同研究は,全国66のCSA参加施設から登録された冠攣縮性狭心症症例の心血管イベント発生などを観察するもの。2007年9月~08年12月に1,525例(男性1,166例,女性359例,年齢65±11歳)が登録された。
処方薬はCa拮抗薬が92%と圧倒的に多く,以下,硝酸薬49%,抗血小板薬47%,スタチン32%,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)24%,β遮断薬4%。Ca拮抗薬処方例では単独処方例と硝酸薬との併用例がほぼ半々であった。
 
平均34か月の観察で認められた心血管イベントは87例(6%)。内訳は狭心症再発入院68例,非致死的心筋梗塞8例,心臓死6例,心不全入院5例。心血管イベントの回避率は6年で93%。発生率を患者による薬剤の減量・中断の有無に分けて検討すると,減量・中断あり群では46%で,なし群の5%に比べて約9倍有意に高率だった。
 
この成績から,安田准教授は「冠攣縮性狭心症の治療における薬物療法とその継続の重要性があらためて示唆された」と述べた。
さらに,
心血管イベントの発生は器質的有意狭窄(75%以上)がある群では10%と,ない群に比べて2倍有意に高かった。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view/perpage/1/order/1/page/0/id/M42170791/year/2009

 

 

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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