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日本人地域住民で低LDLコレステロール(80mg/dL未満)が脳出血の死亡リスクを増加:9万人を超える茨城県観察研究のエビデンス
低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値が高いほど、脳実質内出血による死亡リスクは低下することがわかった。
LDL値が140mg/dL以上の人は、80mg/dL未満の人に比べ、性別・年齢補正後の脳実質内出血による死亡リスクがおよそ半減するという。
大阪大学の野田博之氏らの研究で、明らかになった。
LDL値と脳実質内出血リスクの関係を調べた研究は、珍しいという。
9万例超のコホート研究、LDL値100mg/dL以上で脳実質内出血死亡のハザード比0.48
同氏らは、1993~2003年にかけて、40~79歳の男性30,802例、女性60,417例について、調査を行った。
被験者には、調査開始時点で脳卒中や冠動脈性心疾患の病歴はなかった。
おもな結果は以下のとおり。
●追跡期間中の脳実質内出血による死亡:264例
●心血管疾患リスク因子を補正後、LDL値が80mg/dL未満の人に対する、脳実質内出血による死亡に関するハザード比は、以下のようだった。
・LDL値80~99mg/dLで0.65(95%信頼区間:0.44~0.96)
・LDL値100~119mg/dLで0.48(95%信頼区間:0.32~0.71)
・LDL値120~139mg/dLで0.50(95%信頼区間:0.33~0.75)
・LDL値140mg/dL以上で0.45(95%信頼区間:0.30~0.69)
●高トリグリセリド血症の人を除外しても、LDL値140mg/dL以上のLDL値80mg/dL未満の人に対する同ハザード比は、0.48(95%信頼区間:0.31~0.74)と、大きな変化はなかった。
●時間依存性共変量を入れたハザードモデルによる分析後も、同ハザード比は0.53(95%信頼区間:0.34~0.81)と大きな変化はなかった。
(自治医科大学 循環器科 苅尾七臣教授のコメント)
本研究により、大規模なに日本人地域住民において、LDLコレステロールが80mg/dL未満が、100mg/dL以上の集団よりも、独立して2倍以上の脳出血のリスクになることを示した意義は大きい。
LDLレベルは80mg/dL未満で脳出血の死亡リスクが増加しているが、LDLコレステロール値が100~119mg/dL群、120~139mg/dL群、140mg/dL以上の3群ではリスクに差がない。
したがって、LDLコレステロール値が高ければ高いほど脳出血の死亡リスクが低下するわけではなく、ある一定の基準以下に低下している『低LDLコレステロール血症』が問題であることを示している。
現在、我が国で発症する脳卒中全体のうち、脳出血の占める割合は、約1/4程度である。
残りの虚血性脳卒中の約1/3ずつを、ラクナ梗塞、アテローム血栓性梗塞、塞栓症が占める。
高LDLコレステロール血症は虚血性心疾患のリスクとなるのみならず、虚血性脳卒中の中でもアテローム血栓症に起因するアテローム血栓性脳卒中のリスクになることが知られている。
今回の研究は観察研究であり、自然経過で低下したLDLコレステロールの脳出血リスクと、スタチン投与により低下したLDLコレステロールの脳出血リスクは同じではない。
欧米人に比較して、脳出血が多いとされる日本人において、今後、スタチン投与によりLDLコレステロールが80mg/dL未満に低下した場合、脳出血が増加するかどうかが示される必要がある。
我が国の脂質異常患者を対象にしたスタチン投与を行ったJ-LIT臨床試験では、LDLコレステロール、中性脂肪が高く、HDLコレステロールが低いほど脳梗塞が増えた。
しかし、これらの脂質レベルは脳出血にはあまり大きな影響はなく、高血圧と年齢が、脳出血のリスクとして重要であった。
したがって、臨床的にはLDLコレステロールが80mg/dL未満の高齢者高血圧患者では血圧管理をより徹底すべきであろう。
出典 Care Net.com2009/05/25(月)
版権 (株)ケア・ネット
文献
Low-density lipoprotein cholesterol concentrations and death due to intraparenchymal hemorrhage: the Ibaraki Prefectural Health Study.
Noda H et al. Circulation. 2009; 119: 2136-2145.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19364982?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum
Comment in:
Circulation. 2009 Apr 28;119(16):2131-3.
<コメント>
文中の
「LDLコレステロール値が高ければ高いほど脳出血の死亡リスクが低下するわけではなく、ある一定の基準以下に低下している『低LDLコレステロール血症』が問題であることを示している。」
冠動脈疾患とLDL-Cに関して、「lower the better」ということになっています。
しかし、ある程度以上の勉強をしている臨床医はその結論には懐疑的です。
一方、脳出血とLDL-Cに関して、「higher the better」ではないんだという結論もなかなか面白く読ませていただきました。
冠動脈疾患とLDL-Cについて「lower the better」がもし真実と仮定しても、この論文は是非スタチンの講演会で、演者は取り上げて欲しいものです。
さもなくば、少しは勉強している開業医からでさえも演者は「御用学者」のレッテルを貼られてしまいますよ。
文中の
「今回の研究は観察研究であり、自然経過で低下したLDLコレステロールの脳出血リスクと、スタチン投与により低下したLDLコレステロールの脳出血リスクは同じではない。」
この言葉も非常に示唆的です。
「臨床的にはLDLコレステロールが80mg/dL未満の高齢者高血圧患者では血圧管理をより徹底すべきであろう。」
これはちょっと腰砕けになっています。
血圧の話を持ち出されると、それまでになってしまいます。
正常血圧に限定しても、極端な低LDLは脳出血のリスクファクターになるはずです。
卑近な例で申し訳ないのですが、私の身内も正常血圧のまま、低LDLそして低蛋白血症で脳幹部出血で落命しました。
家森先生は以前から、低蛋白血症で脳出血が起こりやすくなると力説してみえますが、低蛋白血症と低LDLはまた別問題かも知れません。
<きょうの一曲>
平井堅 - キャンバス
http://www.dailymotion.com/video/x4j80s__music
ジャン=クロード・アレンバック ひなげしの花 リトグラフ
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p156396032
<自遊時間>
昨夜、エカードがらみの勉強会に顔を出しました。
ECARDは
Effective 効果的な
CARD 切り札
Reduced 減らした
Diuretic 利尿薬
という由来だそうです。
そのことだけ頭に刻んで帰路につきました。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。