戯れ言たれる侏儒
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心不全とスタチン

戯れ言たれる侏儒 / 2009.05.24 00:42 / 推薦数 : 1

最近、「心不全とスタチン」というテーマの講演会を聞きました。
相変わらずのメーカー協賛の講演会なので、positive dataに終始しました。
このテーマについては、2009.5.8の当ブログでもとりあげましたので少し復習してみました。

第73回日本循環器学会・コントロバーシー「スタチン」
http://blog.m3.com/reed/20090508/_73_
■スタチンは抗脂質異常症作用に加え,抗炎症,抗酸化,血管内皮機能改善など,多彩な作用を併せ持つ。
■さらに,スタチンが作用するメバロン酸代謝経路の代謝物(GGPP)が各種シグナル伝達機構を介して心不全発症に関与することから,スタチンによる抗心不全効果の可能性も推測されていた。
■実際に,1994年に発表された4Sのサブ解析で心不全発症率の低下が報告され,これを契機に研究が急速に進展した。
■4S以外の各ランダム化比較試験(RCT)のサブ解析や後ろ向きの各種観察研究でも心不全患者の予後を改善する成績が得られているが,ここ1〜2年で報告された2件のRCTでは,ポジティブな結果が得られなかった。
■いずれもロスバスタチンの試験で,虚血性心不全を中心としたCORONA,非虚血性心不全を含めたGISSI-HFとも明らかな予後改善効果が認められなかった。
■この2件のRCTの解釈に当たっては,ロスバスタチンという水溶性スタチンについて検討されたものであること,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)をはじめ,多種の薬剤を併用する心不全患者ではスタチンの効果が表面化しにくいことなどを考える必要があるという指摘もある。
■虚血性で軽度の心不全が中心の日本人における知見が期待されるが,現在,500例を対象としたRCT,PEARL(Pitavastatin Heart Failure)study(研究代表者=千葉大学・小室一成教授)が進められており,その結果が注目される。
■これまでの報告の解析では、スタチンによる抗心不全作用が患者の脂質レベルによって異なることから,その作用に脂質が少なからず関与している可能性も指摘されている。
■PROVE-IT TIMI22試験の対象患者を,細胞内輸送にかかわるキネシン様蛋白KIF6の遺伝子多型の有無で分けたサブ解析において,多型を有する群でスタチンによる予後改善効果が有意に大きかったというデータがある。
#スタチンは高齢心不全患者の死亡率下げる
#1〜3年死亡率が約2割減、米国の大規模観察研究
米国で平均79歳の心不全患者5万人超を対象とした観察研究の結果、スタチンが1年、または3年死亡リスクを約2割減らすことが明らかになった。
スタチンが心不全リスクを下げる可能性は既に臨床試験で示されている。
しかし、一般にそうした試験の被験者には、症候性または重篤な心不全患者は含まれていない。
米Yale大学のJoAnne Micale Foody氏らは、通常は臨床試験の対象から除外されるような、より高齢の心不全患者にもスタチンが有効なのではないかと考え、平均年齢79歳のメディケア受益者5万4960人を対象に大規模な観察研究を実施した。得られた結果は、スタチンが1年死亡リスクを20%、3年死亡リスクを18%低減することを示した。
詳細は、Circulation誌2006年2月28日号に報告された。

これまでにも、スタチンが虚血性、非虚血性心不全患者の死亡率を減らすと報告した研究は数件あったが、いずでも小規模だった。
そこで著者らは、米国の救急病院に入院し、心不全と診断された5万4960人のメディケア受益者を対象に、スタチン治療と死亡率の関係を調べた。
これは、Centers for Medicare and Medicaid Servicesが進めている、心不全患者に対する治療の質の向上を目的とするNational Heart Care(NHC)プロジェクトの一環として行われた。

米国の全州で患者を登録。65歳以上のメディケア受益者で、1998年4月から1999年3月、または、2000年7月から2001年6月までに入院し、心不全と診断されて退院した中から、必要なデータが揃っており、スタチンが禁忌でない5万4960人を分析対象とした。既往歴は、糖尿病が40%、高血圧が64%、冠疾患(CAD)58%など。

退院時にスタチンを処方されたのは16.7%のみだった。処方頻度が有意に高かったのは、より年齢が若い人、男性、高脂血症患者、心臓内科医に担当された患者、大学の付属病院で治療を受けた患者、心筋梗塞歴のある人、冠動脈バイパス術を受けた人、糖尿病などの合併症がある患者など。

Cox比例ハザードモデルによる解析を実施した。
退院時のスタチン処方は、1年死亡率と3年死亡率を有意に下げた。
3年死亡率は、スタチン投与群では48.5%、非投与群では62.2%だった。
年齢、性別、人種、人口統計的特徴、臨床的特徴、治療、担当医の専門分野、病院の性質などで調整後のハザード比は、1年死亡で0.80、3年死亡は0.82でいずれも有意に低かった。

CADの既往の有無にかかわらず、スタチン治療は死亡率を低減した。
ただし、既往ありの患者の1年死亡のハザード比は0.84(0.80-0.87)、既往なしでは0.88(0.84-0.93)で、両者に有意差はなかった。

また、スタチンの効果は患者の年齢にかかわらず一定だった。年齢に基づいて患者を3分したところ、65〜74歳、75〜84歳、85歳以上の1年死亡の調整済みリスク比はそれぞれ0.84、0.80、0.78。
3年死亡についても0.83、0.82、0.83でいずれも有意に低かった。

本研究により、高齢の心不全患者でも、スタチン治療で短期的、長期的な死亡率が下がることが明らかになった。
心不全の死亡率は高いにもかかわらず、現在のところ、スタチンが処方される患者は少ない。
今回の結果は、心不全治療の補助療法としてスタチンが有効であることを示唆した。
今後、心不全患者を対象に、スタチンのアウトカムに対する影響を調べる無作為割付試験が必要だ、と著者らは述べている。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200604/500070.html

英文
Statins and Mortality Among Elderly Patients Hospitalized With Heart Failure
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/113/8/1086
(Circulation誌Webサイト)

<関連サイト>
CORONA Study
http://blog.m3.com/reed/20090307/CORONA_Study

至適治療を受けている慢性心不全患者に対する
スタチン追加療法の新たな知見
-米国心臓協会学術集会にて発表、CORONA試験-
http://www.shionogi.co.jp/ir/news/detail/071106.pdf

<参考サイト>  2009.5.26追記
ACC/AHA心不全ガイドライン
http://www.co-dio.jp/m_guideline/acc_aha.html
<コメント>
スタチンは
ACC/AHA2005 Guideline Update for the Diagnosis and Management of Chronic Heart Failure in the Adult
では心不全治療の推奨薬剤には入っていません。

<自遊時間>
■ちょっと前の新聞記事で、タクシーを巻き込んだ自動車事故が載っていました。
驚いたのはタクシー運転手の年齢です。
なんと76歳。
昨日、講演会に出ましたが、その時の帰りに乗った運転手さんがまたまた後期高齢者のような方でした。
ちょっと前まではそんな方はいなかったのですが、世の中どうなってんでしょうか。
女性運転手には驚きませんが、高齢者は正直言って少し怖いです。

■「心不全とスタチン」の講演会はかなりバイアスがかかっていました。
negative dataのCORONA試験は一切紹介されませんでした。

演者はメーカー協賛とはいえ「光と影」をきちんと紹介していただきたいものです。
われわれ開業医の多くは、そこまでは勉強していないので演者の話を鵜呑みしてしまいます。
案の定、アンサーアナライザーシステムでは、聴講後「心不全患者にスタチンを処方する」という質問に対して「イエス」の回答が「目論見通り」大幅に増えていました。

<きょうの一曲>  青春の光と影
ジュディ・ コリンズJudy Collins/Both Sides Now青春の光と影
http://www.youtube.com/watch?v=lIfDIrhfz4o&hl=ja

 

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