戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2012/05 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

< 心房細動とアスピリン・クロピドグレル併用... | メイン | 第73回日循学会・トピック「急性心筋梗塞... >

従来、循環器領域の治療は降圧剤、脂質改善剤といったように「各論的」な治療が行われて来ました。
その治療目的は動脈硬化の進展抑制(願わくば退縮)であり心血管イベントおよびハードエンドポイントとしての心血管死の回避でした。
糖尿病の治療薬もしかりです。
いわば動脈硬化といった巨象に対して、言葉は悪いのですが「群盲象を撫でる」といった感もあります。

私自身、抗動脈硬化剤と呼称する薬剤がないことに少なからず疑問をもっており、そういった薬剤の出現を切望していました。

きょう勉強した記事は、一歩前進して血圧値や脂質値にあまり拘泥せずに降圧薬3種類とスタチン,アスピリンの合剤である「ポリピル」の活用はいかがかといったような現実的な話もあり興味深いものでした。

この薬剤については2009.4.27に

TIPS試験 5剤配合カプセル
http://blog.m3.com/reed/20090427
 

としてとりあげました。

「米国における1980~2000年の冠動脈疾患疾患死減少の説明」の図もインパクトがありました。
 

第73回日本循環器学会特集  特別講演

動脈硬化進展の鍵握る"炎症"
「仮説」から臨床応用の時代へ

炎症は動脈硬化性プラーク進展の病態メカニズムに深くかかわっている。
特別講演でハーバード大学Brigham and Women's病院(ボストン)心血管部門のPeter Libby教授は,Th1サイトカインのインターフェロン(IFN)γが肥満脂肪組織における炎症反応を促すなどの最新知見を明らかにするとともに,臨床へのトランスレーションとして昨年11月に発表された大規模臨床試験JUPITERの成績を紹介。
動脈硬化における炎症の概念が「仮説」から治療に臨床応用される時代を迎えたことを示した。

肥満脂肪組織における炎症にIFNγを介した適応免疫が関与
Libby教授らは,動脈硬化性プラークの進展における炎症の役割にいち早く注目,初期病変から破綻,血栓形成へと至るすべての過程で,炎症が重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。
 
では,何が動脈硬化進展における炎症の引き金を引くのか。

肥満は炎症を促すが,同教授らは肥満と心血管リスク上昇とのリンクに着目,脂肪組織での炎症におけるT細胞の関与,なかでも適応免疫の重要なメディエータであるTh1サイトカインIFNγの作用について検討した。
 
まず,高脂肪食で飼育した肥満マウスの内臓脂肪組織では,低脂肪食群に比べてCD4+,CD8+T細胞など炎症性細胞が増加,同組織のT細胞ではIFNγの産生が有意に亢進していた。
 
分化したマウス脂肪前駆細胞3T3-L1をIFNγで刺激し,転写プロファイリングスタディを行ったところ,多数のCCおよびCXCケモカインと受容体や,炎症反応,脂肪酸代謝,糖代謝,脂質代謝にかかわる遺伝子ファミリーのmRNA発現増加が判明した。
発現したケモカインのなかで同教授らが注目したのは,IFNγによって誘導される活性化T細胞のみに発現する受容体CXCR3のリガンドIP-10,Mig,I-TACである。
実際,ヒトアテロームに集簇するCD4+リンパ球は,CXCR3を発現する。
 
マウス内臓脂肪組織の培養実験では,IFNγはIP-10,Mig,腫瘍壊死因子(TNF)αの発現を有意に亢進。
IFNγ欠損肥満マウスの白色脂肪組織では,野生型肥満マウスに比べケモカインMCP-1,RANTESなどのmRNA発現が有意に低かった。
 
興味深いことに,同一食のIFNγ欠損マウスと野生型マウスの間で体重や脂質プロファイルに変化はなかったにもかかわらず,高脂肪食のIFNγ欠損マウスでは野生型に比べ耐糖能の改善が認められた()。

 


この結果は予期せぬものであったが,適応免疫が肥満における血管リスク増大に関与することを示す重要なエビデンスの1つであるという。
 
一方,抗炎症性アディポカインとして注目されているアディポネクチンは,リポ多糖体で刺激されたヒトマクロファージにおけるIP-10,Mig,I-TACのmRNA発現を有意に阻害した。
またApo E欠損マウスでは,アディポネクチン欠損は血漿IP-10レベルを上昇,動脈硬化病変へのT細胞の集簇を来し,動脈硬化の進展を促すことが判明。
アディポネクチンが,適応免疫の調節によって動脈硬化の進展にかかわる炎症を抑制している可能性が明らかになった。

 

CRPを指標とした治療で心血管イベント抑制もたらす
Libby教授も共著者の1人であるJUPITERでは,従来スタチンの適応と考えられなかったLDLコレステロール(LDL-C)は130mg/dL未満だが,炎症マーカーの高感度C反応性蛋白(hsCRP)が2mg/L以上と高く,心血管疾患,糖尿病の既往がない1万7,802例において,ロスバスタチンがプラセボに比べて1次評価項目の主要心血管イベントのリスクを44%有意(P<0.00001)に減少。
サブグループ解析では一貫して実薬群でリスク減少が認められ,hsCRP>2mg/L以外に危険因子を伴わない群でもイベントの有意な抑制が認められたという。
 
こうした成績から,同教授は「JUPITERが示したエビデンスは,CRPによる炎症状況の評価を活用した治療の臨床での有用性を支持するものだ」との見解を示した。

 

地球規模で心血管疾患の半減が可能
危険因子への介入が不可欠
特別講演でマクマスター大学(カナダ・ハミルトン)循環器部門のSalim Yusuf教授は,世界52か国が参加した国際症例対照研究INTERHEARTの成績などを踏まえ,ライフスタイル修正をはじめとした危険因子の是正,現在可能なEBMの実践向上や,発展途上国などでの治療へのアクセス改善などの重要性を強調。
そうした取り組みにより,今後25年以内に,地球規模で心血管疾患を半減できると指摘した。

危険因子がAMI発症の90%を説明
心血管疾患は,世界の死因の首位を占めるが,先進国での発症は1950年ごろから減少に転じており,98年には心血管死の78%,発症の86.3%は,低~中間所得国で生じている。
 
Yusuf教授らが,日本を含む世界52か国の約2万7,000例を対象に実施した急性心筋梗塞(AMI)の症例対照研究INTERHEARTでは,
(1)脂質異常症(ApoB/ApoA-1比高値)
(2)喫煙
(3)糖尿病
(4)高血圧
(5)腹部肥満
(6)心理社会的因子
―がAMIのリスク増大に,

(7)野菜・果物の毎日の摂取
(8)運動
(9)適度のアルコール摂取
―はリスク減少に有意に関連し,これら9つの因子が発症の90.4%を説明することが明らかになった。
 
INTERHEARTの結果は,心血管疾患の予防アプローチを再考させるものであり,「健康」には遺伝的な資質に加えて,ライフスタイルや社会的因子の関与が大きく,世界中で同様の原則に基づいて予防アプローチを実践できることが示された。
 
一方,14万人を対象に,都市部と農村部の危険因子や心血管疾患の変化を検討中のPURE StudyのPilot Studyでは,BMI,収縮期血圧(SBP),LDL-Cなどの分布は,インドでも都市部では欧米並みに高値側にシフトしており,農村部に比べて冠動脈疾患が2倍近く多いことが判明した。
 
では,何が心血管疾患の危険因子を惹起するのか。
これには,喫煙におけるたばこの価格をはじめ,政策,住環境,所得などの社会的因子の関与が大きい。
 
実際,ポーランドでは1990年ごろから政策的な乳製品(バター)の供給減少と,それに伴う植物油,野菜や果物の摂取増加により,増加の一途にあった心血管死が急減した。

同教授は「がん死の増加はプラトーに達したが,がんの場合は減少するまでに時間がかかるためだと考えられる。
がんと心血管疾患の根本的な原因は同じであり,中心となる規定因子を変えられれば,心血管疾患だけでなく多くの疾患が防げる」との持論を展開した。

 

心血管疾患の予防と治療にもエッセンシャルドラッグが必要
これまでの知見から,禁煙,SBP 20mmHg低下,LDL-C約39mg/dLの低下により,心筋梗塞のリスクを6分の5減少可能と推定され,危険因子の修飾は世界中で75~90%の心血管疾患を防ぎうると考えられる。
 
米国では1980~2000年の20年間に,冠動脈疾患死が約50%減少した。
内訳を見ると,肥満や糖尿病などの危険因子悪化,血圧下降などの改善を加味した危険因子の変化による減少が44%,治療による減少が47%となり,これらによって冠動脈疾患死減少の91%を説明できる()。
 

 


しかし,危険因子の改善や治療は十分に実施されているとは言えない。
例えば,AMI後の二次予防について,適格例の60%に実施できれば,2倍の冠動脈疾患死が防げる。
 
地球規模で心血管疾患を抑制するための方策としてYusuf教授は,
(1)遺伝子研究推進なども含め,危険因子とその原因の理解と修正
(2)EBMの実践向上や発展途上国などでの治療へのアクセスの改善などによる心血管疾患の治療向上
(3)生涯にわたる予防的アプローチ
(4)降圧薬3種類とスタチン,アスピリンの合剤である「ポリピル」の活用などで予防・治療を実践しやすくする
―などを挙げた。

同教授は「心血管疾患の予防と治療にもエッセンシャルドラッグ(必須医薬品)が必要であり,世界中の人々がそれを入手できるようにしなければならない」とし,「さまざまな方策を取ることによって,今後25年以内に世界中で心血管疾患の半減が可能である」との見解を示した。


出典 Medical Tribune 2009.4.23,30(一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

 

<きょうのCD> 

ブーレーズ/マーラー:交響曲《大地の歌》
ブーレーズ/マーラー:交響曲《大地の歌》


http://www.universal-music.co.jp/classics/release/dgbest100/cd_title/uccg70076.html
東洋的な美と厭世観が漂う《大地の歌》は死を予感し始めたマーラー晩年の心境を示す傑作で、中国の詩を独訳したテキストによる6曲の管弦楽伴奏の歌曲によって構成された交響曲です。
作曲家が最後に到達した簡潔で透明な筆致の冴えは特筆すべきもの。
ブーレーズの音楽づくりは近年ますます冴えを見せその表現は深みを増していますが、ここでも緻密なスコアの読みによる透明感溢れる演奏を聴かせています。

マーラー 「大地の歌」
http://classic.music.coocan.jp/sym/mahler0.htm

マーラー:大地の歌/ブーレーズ [DG]
http://www.musicking.co.jp/mt/trb_cla/archives/02_cd/dasliedvondererde_boulez.php

ブーレーズ VPO マーラー 大地の歌
http://blogs.yahoo.co.jp/mahler8989/25449600.html

マーラーの「交響曲」
http://www8.plala.or.jp/bone_trom/my_music/symphony.htm#daichi

 

固定リンク | コメント (0)

コメント

コメントはまだありません。

コメントを書く

ニックネーム*
メールアドレス*
URL
内容*
※「利用規約」をお読みのうえ、適切な投稿をお願いします。