戯れ言たれる侏儒
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< 日本版SYNTAX その3(3/3) | メイン | 心房細動を予測するリスクスコア >

ABSORB試験

戯れ言たれる侏儒 / 2009.03.31 00:18 / 推薦数 : 0

兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人先生の「ABSORB試験」に関する記事で勉強しました。

 

生体吸収性エベロリムス溶出ステントの2年後成績
ABSORB試験より

研究の背景:
現在のステントには金属製で永久的に存在するがゆえの欠点
薬剤溶出性ステント(DES)の登場により,ステント留置部位の再狭窄率は減少し,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の再施行率も著しく低下した。
しかし,
DESには
(1)遅発性ステント内血栓形成の可能性がある,
(2)冠動脈の収縮,拡張といった生理的反応を抑制する,
(3)将来冠動脈バイパス術(CABG)を行う必要が生じたときに,ステント部位が切開,縫合できない,
(4)ステントのためにマルチスライスCTでの非侵襲的評価が永久的に不可能になる
―などの欠点がある。

これらの欠点はステントが金属製で永久的に存在するということに起因する。
そこで,PCIの直後には血管壁を支え急性冠動脈閉塞を予防するが,慢性期にはステント自体が消失する,生体吸収性ステントの開発が行われた。

今回,生体吸収性エベロリムス溶出ステント(BVS)の2年後の臨床成績がABSORB試験として報告された(Lancet 2009; 373: 897-910 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19286089)。
なお,BVSは,ポリL乳酸でできたポリマーの支持体に,エベロリムスを含有したポリD,L乳酸がコーティングされている。

研究のポイント:
リモデリングなく,プラークも減少
対象は安定,不安定,または無症候性の冠虚血があり,3.0×12mmもしくは3.0×18mmのステント治療が適している新規単一病変の患者。
急性心筋梗塞,左冠動脈主幹部病変,2mm以上の側枝がある場合は除外された。

26例にBVSが植え込まれ,イベント評価,血管造影,通常の血管内超音波(IVUS)による評価に加え,光干渉断層計(OCT),バーチャルヒストロジー,パルポグラフィ,さらにはマルチスライスCTスキャン,薬剤による血管反応の評価も行われた。
抗血小板薬はアスピリン75mg/日とクロピドグレル75mg/日を用い,クロピドグレルは6か月以降中止可能とした。

その結果,BVS植え込み後2年の時点で,死亡,標的病変再血行再建(TLR),ステント内血栓症は1例も認められず,非Q波心筋梗塞が1例認められたのみであった。
18か月目にはマルチスライスCTによる血管内腔の評価が可能であり,平均径狭窄率は19%であった。

定量的冠動脈造影(QCA)による評価では,6か月後では再狭窄と判定された2例が,その後病変部が退縮して有意狭窄でなくなるという現象が見られた。
また,2年の時点でQCAによる遠隔期のステント内腔縮小は0.48mm,ステント内径狭窄率は27%であったが,いずれも6か月後の時点と差が認められなかった。

OCTでは,ステンとストラット数は2年の時点で34.5%消失したことが確認され,6か月の時点で確認された一部のステントストラットの血管壁への圧着不良は認められなかった。

2年後のIVUSによる評価では,血管径のリモデリングは認められず,6か月の時点と比較してプラークの減少が認められた。
また,メテルギンとアセチルコリンを使用した後,冠動脈造影を行う方法では,ステント部でも冠動脈の収縮または拡張反応が認められた。

佐藤幸人先生の考察:
ステント内血栓症や慢性期再狭窄予防の点では有用か
生体吸収性ステントの研究は最近10年間で行われており,Igaki-Tamaiステントとして報告されたポリL乳酸でできたポリマー素材(Circulation 2000; 102: 399-404 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10908211)と,マグネシウムによる素材が報告されている(Lancet 2007; 369: 1869-1875 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17544767)。
しかし,これらには薬剤は載せられておらず,再狭窄率はベアメタルステント並みに高率であった。

今回のABSORB試験では,薬剤溶出性の生体吸収性ステントが使用されており,再狭窄の程度はベアメタルステントとDESの中間くらいが予想されていた(Lancet 2008; 371: 899-907 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18342684)。
今回はその2年後の追跡結果であり,5年後の追跡も予定されている。

PCIに使用するステントに求められる要件として,
(1)手技的に病変部に到達しやすい,
(2)血管を支える力が強い,
(3)ステント内血栓症を生じない,
(4)慢性期再狭窄が少ない
ことが挙げられる。

BVSでは(3),(4)については期待が持てるが,(1),(2)については今後も開発の余地があると思われる。
実際,今回発表された成績では, 6か月の時点ではステント自体の血管壁への圧着不良が一部のステントストラットに認められている。
この原因はステント自体,最初から支える力が弱いことや,ステントが消失してゆくことでステントが支える力が弱くなることなどが考えられる。高圧拡張にステントが耐えられるかの検討も必要である。

また,今回の病変は単純で,簡単な病変での検討であったが,リアルワールドでは石灰化病変やびまん性病変,分岐部病変が多く,病変部へステントが到達できるかという問題がある。

ポリマー素材としての利点には,マルチスライスCTがステント後も行え,冠動脈内腔の評価が可能ということもあるので,素材は同じでステント構造を変更する検討がなされているようである。

その他,個人的に興味ある点としては,薬剤に対する血管内皮の反応性が保持されている点が挙げられる。
狭心症,虚血性心疾患という病態が,血管径,再狭窄率だけで規定されているとは考えにくく,冠動脈径が臨機応変に拡張したり収縮したりする反応そのものが,生体に求められている生理的機能だと思うからである。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090307.html?add_point
出典 MT pro 2009.3.18
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
生体吸収性エベロリムス溶出ステントの2年成績: ABSORB試験
http://www.tcross.co.jp/MedicalNewsFolder/09032501.html
Serruys P, et al. The Lancet. 2009; 373: 897-910

 


梅原龍三郎 噴煙

<循環器一口メモ>
■一般的に、自動能亢進による心房頻拍には、頻拍の開始時と停止時にwarming up,cooling-down現象が見られたり、オーバードライブサプレッションが見られるといった特徴がある。
■失神とwide QRS tachycardiaを認めた場合、心室頻拍に加えて心房頻拍も念頭におく。
出典 Nikkei Medical 2009.1
 

<参考>
A-V nodal reentrant tachycardia vs accelerated A-V junctional rhythm in acute inferior myocardial infarction.
http://www.chestjournal.org/content/74/5/570.full.pdf+html

<自遊時間>
今年2月に医師国家試験を受けた我が子の成績開示が葉書で届いていたようです。
私の受験の頃と違って至れり尽くせりです。
さて明日は4月1日。
いよいよ医師としてのスタートを切るために研修病院(研修医の寮)に旅立って行きました。
親からしてみると、我が子の学生から社会人への一区切りの感傷的な瞬間の筈でした。
しかし、こちらの外来診察中の午前中に何の挨拶もなく行ってしまいました。
親の教育がよくないのか。
はたまた現代っ子ってこんなもんなんでしょうか。

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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