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兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤幸人先生の「ABSORB試験」に関する記事で勉強しました。
生体吸収性エベロリムス溶出ステントの2年後成績
ABSORB試験より
研究の背景:
現在のステントには金属製で永久的に存在するがゆえの欠点
薬剤溶出性ステント(DES)の登場により,ステント留置部位の再狭窄率は減少し,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の再施行率も著しく低下した。
しかし,DESには
(1)遅発性ステント内血栓形成の可能性がある,
(2)冠動脈の収縮,拡張といった生理的反応を抑制する,
(3)将来冠動脈バイパス術(CABG)を行う必要が生じたときに,ステント部位が切開,縫合できない,
(4)ステントのためにマルチスライスCTでの非侵襲的評価が永久的に不可能になる
―などの欠点がある。
これらの欠点はステントが金属製で永久的に存在するということに起因する。
そこで,PCIの直後には血管壁を支え急性冠動脈閉塞を予防するが,慢性期にはステント自体が消失する,生体吸収性ステントの開発が行われた。
今回,生体吸収性エベロリムス溶出ステント(BVS)の2年後の臨床成績がABSORB試験として報告された(Lancet 2009; 373: 897-910 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19286089)。
なお,BVSは,ポリL乳酸でできたポリマーの支持体に,エベロリムスを含有したポリD,L乳酸がコーティングされている。
研究のポイント:
リモデリングなく,プラークも減少
対象は安定,不安定,または無症候性の冠虚血があり,3.0×12mmもしくは3.0×18mmのステント治療が適している新規単一病変の患者。
急性心筋梗塞,左冠動脈主幹部病変,2mm以上の側枝がある場合は除外された。
26例にBVSが植え込まれ,イベント評価,血管造影,通常の血管内超音波(IVUS)による評価に加え,光干渉断層計(OCT),バーチャルヒストロジー,パルポグラフィ,さらにはマルチスライスCTスキャン,薬剤による血管反応の評価も行われた。
抗血小板薬はアスピリン75mg/日とクロピドグレル75mg/日を用い,クロピドグレルは6か月以降中止可能とした。
その結果,BVS植え込み後2年の時点で,死亡,標的病変再血行再建(TLR),ステント内血栓症は1例も認められず,非Q波心筋梗塞が1例認められたのみであった。
18か月目にはマルチスライスCTによる血管内腔の評価が可能であり,平均径狭窄率は19%であった。
定量的冠動脈造影(QCA)による評価では,6か月後では再狭窄と判定された2例が,その後病変部が退縮して有意狭窄でなくなるという現象が見られた。
また,2年の時点でQCAによる遠隔期のステント内腔縮小は0.48mm,ステント内径狭窄率は27%であったが,いずれも6か月後の時点と差が認められなかった。
OCTでは,ステンとストラット数は2年の時点で34.5%消失したことが確認され,6か月の時点で確認された一部のステントストラットの血管壁への圧着不良は認められなかった。
2年後のIVUSによる評価では,血管径のリモデリングは認められず,6か月の時点と比較してプラークの減少が認められた。
また,メテルギンとアセチルコリンを使用した後,冠動脈造影を行う方法では,ステント部でも冠動脈の収縮または拡張反応が認められた。
佐藤幸人先生の考察:
ステント内血栓症や慢性期再狭窄予防の点では有用か
生体吸収性ステントの研究は最近10年間で行われており,Igaki-Tamaiステントとして報告されたポリL乳酸でできたポリマー素材(Circulation 2000; 102: 399-404 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/10908211)と,マグネシウムによる素材が報告されている(Lancet 2007; 369: 1869-1875 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17544767)。
しかし,これらには薬剤は載せられておらず,再狭窄率はベアメタルステント並みに高率であった。
今回のABSORB試験では,薬剤溶出性の生体吸収性ステントが使用されており,再狭窄の程度はベアメタルステントとDESの中間くらいが予想されていた(Lancet 2008; 371: 899-907 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18342684)。
今回はその2年後の追跡結果であり,5年後の追跡も予定されている。
PCIに使用するステントに求められる要件として,
(1)手技的に病変部に到達しやすい,
(2)血管を支える力が強い,
(3)ステント内血栓症を生じない,
(4)慢性期再狭窄が少ない
ことが挙げられる。
BVSでは(3),(4)については期待が持てるが,(1),(2)については今後も開発の余地があると思われる。
実際,今回発表された成績では, 6か月の時点ではステント自体の血管壁への圧着不良が一部のステントストラットに認められている。
この原因はステント自体,最初から支える力が弱いことや,ステントが消失してゆくことでステントが支える力が弱くなることなどが考えられる。高圧拡張にステントが耐えられるかの検討も必要である。
また,今回の病変は単純で,簡単な病変での検討であったが,リアルワールドでは石灰化病変やびまん性病変,分岐部病変が多く,病変部へステントが到達できるかという問題がある。
ポリマー素材としての利点には,マルチスライスCTがステント後も行え,冠動脈内腔の評価が可能ということもあるので,素材は同じでステント構造を変更する検討がなされているようである。
その他,個人的に興味ある点としては,薬剤に対する血管内皮の反応性が保持されている点が挙げられる。
狭心症,虚血性心疾患という病態が,血管径,再狭窄率だけで規定されているとは考えにくく,冠動脈径が臨機応変に拡張したり収縮したりする反応そのものが,生体に求められている生理的機能だと思うからである。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090307.html?add_point
出典 MT pro 2009.3.18
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
生体吸収性エベロリムス溶出ステントの2年成績: ABSORB試験
http://www.tcross.co.jp/MedicalNewsFolder/09032501.html
Serruys P, et al. The Lancet. 2009; 373: 897-910

梅原龍三郎 噴煙
<循環器一口メモ>
■一般的に、自動能亢進による心房頻拍には、頻拍の開始時と停止時にwarming up,cooling-down現象が見られたり、オーバードライブサプレッションが見られるといった特徴がある。
■失神とwide QRS tachycardiaを認めた場合、心室頻拍に加えて心房頻拍も念頭におく。
出典 Nikkei Medical 2009.1
<参考>
A-V nodal reentrant tachycardia vs accelerated A-V junctional rhythm in acute inferior myocardial infarction.
http://www.chestjournal.org/content/74/5/570.full.pdf+html
<自遊時間>
今年2月に医師国家試験を受けた我が子の成績開示が葉書で届いていたようです。
私の受験の頃と違って至れり尽くせりです。
さて明日は4月1日。
いよいよ医師としてのスタートを切るために研修病院(研修医の寮)に旅立って行きました。
親からしてみると、我が子の学生から社会人への一区切りの感傷的な瞬間の筈でした。
しかし、こちらの外来診察中の午前中に何の挨拶もなく行ってしまいました。
親の教育がよくないのか。
はたまた現代っ子ってこんなもんなんでしょうか。
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
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第8回日本心血管カテーテル治療学会
〜外科から〜 日本版SYNTAXの実施を
東京女子医科大学心臓血管外科学の西田博講師は,SYNTAXの結果を受けて今後の展望をコメントし,外科で既に実施されている全国的な登録調査が内科でも実施されることが望ましいとしたほか,将来日本版SYNTAXが実施されることへの期待を述べた。
同講師は,まず欧州の国別PCIとCABGの実施率を人口比で示し,ここに日本のデータをプロットした。
PCIはドイツ,フランスに続いて上位に位置するのに対し,CABGはほぼ最下位であり,諸外国と比較しても低率であることが示された(図2)。
同講師は,SYNTAXが発表されるかなり前から日本では冠動脈疾患高リスク症例に対してPCIが選択されており,これは「日本の内科医の"先走った"先見の明,あるいは自律性の欠如」ではないかと指摘した。
次に,SYNTAXを解析し,一次エンドポイントに含まれている脳血管障害が,CABGのほうがPCIより有意に多かった点について触れた。
同講師は,off-pump手術の割合が欧米に比べ格段に高い日本では脳血管障害の発症率はSYNTAXにおける発症率より低くなっているはずであると指摘し,さらにCABGで使用するグラフトについても,内胸動脈グラフトの使用が多いため,グラフト閉塞も低率であると考えられるとした。
同講師は「SYNTAXに参加するようなレベルの高い施設で得られるデータを世界,あるいはわが国のすべての医療現場に当てはめるには,個々の国で全国調査を行い,その結果と擦り合わせる必要がある」と主張した。
日本では,日本胸部外科学会が,国勢調査とも言える全症例調査を1984年から実施しているが,CABGの実施件数は2002年をピークに減少が続いている。
この調査は95%の高い回収率となっており,日本のCA BG全体の状況を表していると考えられるが,待機的手術の成績は30日死亡率が0.86%,院内死亡が1.5%と良好だった。
SYNTAXでは,off-pump手術の割合が15%程度であったのに対し,日本では61%を超えており,3枝病変やLMT病変においてもoff-pumpの割合が6割となっていた。
また,動脈グラフトの使用率についても,SYNTAXでは18.9%だったが,日本の調査では3枝病変で29.9%,LMT病変で38.2%と多くなっていた。
同講師は「SYNTAXに日本の施設が参加していたら,これらの割合はさらに上がるはず」としている。
このように,外科で全症例を対象にした調査を行う環境は整っており,内科でも日本心血管カテーテル治療学会,日本心血管インターベンション学会の再統合に加え,循環器専門医制度とリンクするなどのなかば義務化した調査体制が整えば,「冠動脈疾患診療を考えるうえで医療の質の向上だけでなく,診療報酬の適正化を訴えるうえでも貴重なデータベースが構築されるのではないか」としている。
こうした背景から,同講師は「欧米の報告を評論し合うよりも,日本版SYNTAXを実施すべく外科と内科が協働すべき時代ではないか」と意見を述べた。
出典 Medical Tribune 2009.3.5 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
循環器内科医に対して結構辛口コメントです。
読んでいただいてありがとうございます。
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第8回日本心血管カテーテル治療学会
CREDO-Kyoto
国内レジストリー調査で生存率に明らかな差はない
■高リスク病変に対するPCIが特殊な欧州に対して,日本ではPCIが多く選択されている。
このため,座長の木村准教授らは,日本独自の調査が必要としてPCIとCABGのレジストリー調査であるCREDO-Kyotoを実施した。
■調査には30施設が参加し,2000年〜02年に急性心筋梗塞を除く初回血行再建術施行例9,877例が登録された。
PCIの82%にはステントが使用されており,CABGの94%に内胸動脈が使用されていた。
解析対象は,左冠動脈主幹部(LMT)と1枝病変を除外したPCI 3,712例とCABG 1,708例であった。
患者背景の比較では,PCI群では80歳以上の割合が2倍と全体的に高齢傾向であった。
また,CABG群では心不全や脳卒中の既往患者が多かったが,脳卒中は詳細な術前検査のために検出率が高くなったと考えられた。
■施行30日後の生存率は,CABG群98.9%,PCI群99.2%と両群ともに良好だった。
4年生存率も両群間で差はなく,CABG群89.8%,PCI群88.1%だった(図1)が,多変量解析では総死亡,心血管死ともにCABG優位の傾向であった。

年齢別の解析では,75歳以上で心血管死だけでなく非心血管死もPCI群で高い傾向にあったことから,同准教授は「PCI群で高リスク症例が多いという患者選択バイアスが反映されているのではないか」と指摘した。
一方,75歳未満の患者については両群で差がなく,3枝病変,糖尿病に限定しても同様の結果であった。
■個々のイベント別に解析した結果では,施行後1年以内の心筋梗塞発症率はPCI群のほうが有意に高かったが,それ以降は両群がパラレルに推移していた。
一方,脳卒中に関しては急性期でCABG群の発症率が有意に高くなっており,その後はパラレルに推移していた。
CREDO-Kyotoが行われた時期はDESがまだ登場しておらず,ベアメタルステントが使われており,PCIの再血行再建率の高さが問題となっていた。
これを反映するように,4年後の再血行再建回避率はCABG群の88.7%に比べ,PCI群では48.7%と4年間でほぼ半数が再血行再建を受けることが明らかとなった。
■同准教授は,観察研究の場合,治療の選択バイアスや評価し切れない交絡因子を考慮すると,導かれたわずかな差で結論付けることは難しいとの感想を述べ,CREDO-Kyotoからは,「PCI,CABGのそれぞれの治療後の生存率に大きな差はないと言えるのではないか」とまとめ,「SYNTAXの今後の追跡で1年以降の生存率の差がどうなっていくかに興味が持たれる」と述べた。
出典 Medical Tribune 2009.3.5 (一部改変)
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<自遊時間>
2009.3.27のブログで急性下壁梗塞を見逃した失敗談をお話しました。
うっ血性心不全の腎機能悪化と静脈うっ血 http://blog.m3.com/reed/20090327
急性肝炎として紹介入院となったので、結果的には患者さんには大きな迷惑はかけませんでした。
しかし入院先の担当医には笑われたことと思います。
大恥です。
気になってカルテをもう一度見直してみました。
ご本人の訴えは「嘔吐、腰痛、食思不振、口の中がにがい」と全く胸部症状はありません。
心電図検査は思いもつきません。
下壁梗塞の消化器症状は有名ですが、見事なまでの消化器症状です。
検査項目も以下の項目がすべてで、CK、LDHが検査セットから欠落しています。
ASTはALTに比べ不相応な上昇で何だか変だなと思い「最近お酒をたくさん飲みましたか」と尋ねてしまいました。
本当はそこで気がつかなければならなかったのですが。
検査成績
AST 405
ALT 63
γ-GTP 18
TC 225
TG 44
CRP 0.32
WBC 9200(核左方移動を伴う)
読んでいただいてありがとうございます。
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第8回日本心血管カテーテル治療学会
待たれる日本版SYNTAX―冠動脈疾患のPCI,CABG選択を討議
2008年に発表された経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の大規模なランダム化比較試験(RCT)であるSYNTAX(The Synergy between PCI with Taxus and Cardiac Surgery)は,冠動脈疾患の治療選択において指標となりうるランドマーク試験として(本紙2008年10月9日号既報,NEJMオンライン版),発表後にこの結果を受けた討議が盛んに行われている。
京都市で開かれた第8回日本心血管カテーテル治療学会(会長=京都大学循環器内科・木村剛准教授)のシンポジウム「グレートディベート:SYNTAX以降のPCI/CABG選択」〔座長=木村准教授,ヘリオス・ジークブルク心臓センター(独ジークブルク)・Eberhard Grube氏〕では,国内外の内科外科双方のシンポジストが見解を述べ,今後の試験や調査の在り方が論議された。
以下は国内のシンポジストのコメント。
〜内科から〜
今後はより詳細な病変別の比較を
千葉大学冠動脈疾患治療部の小林欣夫講師は,SYNTAX発表前の関連試験の報告を概説し,PCIはCABGと比べて再血行再建術の頻度が上回るものの,病変別の詳細な検討では,薬剤溶出ステント(DES)登場以降,PCIの成績が劣る病変は限定されてきている傾向を示した。
■1996年に報告されたBARI試験は,多枝病変が対象のRCTである。
PCIにはバルーンが多用されている時代であり,CABGと比較して死亡率には差がなかったが,再血行再建術はPCIのほうが多かった。
さらに,糖尿病患者では,生命予後もCABGのほうが有意に良好な結果であった。
■次に,ステントが主となる時代になって実施されたのがARTS試験である。
結果はBARI試験と同様で,死亡率と心筋梗塞の発症率には差がないが,再血行再建術はPCIのほうが多かった。
糖尿病患者を対象としたサブ解析では,症例数が少ないため有意差は認められなかったが,死亡率はPCIのほうが高い傾向だった。
■その後,DESが登場してから,米ニューヨーク州のレジストリー調査における3枝病変に関する解析で,CABGのほうが予後良好とする結果が報告されたが,同講師は,RCTではないため,治療選択バイアスを考慮する必要があると指摘した。
また欧州の報告では,病変別の解析で見ると,分岐部病変などの特定の病変を除くとDESの成績はCABGに肉薄してきており,今後CABGとPCIの比較を行う場合には,左前下行枝(LAD)や3枝病変といった従来のくくりでは不十分であり,病変別の詳細な解析が必要とした。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M42100141&year=2009
出典 Medical Tribune 2009.3.5 (一部改変)
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<自遊時間>
昨夜はつい飲み過ぎてしまいました。
実は昨日の午後2時は医師国家試験の発表でした。
普段はどうでもいいことなのですが、わが子がインターネットにかじりついて合否をチェックする後ろ姿につい感情移入をしてしまいました。
飲み過ぎはその結果です。
医者として4代目の誕生。
仏壇に報告。
すいません、つまらない話でした.
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うっ血性心不全の腎機能悪化には、心拍出量の低下よりも静脈うっ血が直接的に関与?
重度非代償性心不全の人に起こる腎機能の悪化は、心拍出量よりも、静脈うっ血が関与していることが判明した。
これまでは、心拍出量の低下が、こうした患者の腎機能悪化の主な原因であると考えられていた。
米国Cleveland ClinicのWilfried Mullens氏らの研究で、明らかになった。
腎機能悪化群で入院時中心静脈圧が有意に高値
Mullens氏らが試験対象としたのは、重度非代償性心不全の入院患者145例。
被験者に、肺動脈カテーテルを挿入し、集中内科治療を行った。
腎機能悪化の定義は、血清クレアチニン値が0.3mg/dL以上とした。
被験者は、平均年齢57歳、心係数平均1.9 L/min/㎡、左室駆出率は平均20%だった。
おもな結果は以下のとおり。
●腎機能悪化が見られたのは、40%にあたる58例だった。
●腎機能悪化が見られた群の入院時の中心静脈圧は、平均18(標準偏差7)mmHgで、見られなかった群の平均12(同6)mmHgに比べ、有意に高かった(p<0.001)。
また、集中内科治療の後でも、中心静脈圧は腎機能悪化群で平均11(同8)mmHgに対し、そうでない群は平均8(同5)mmHgと、高かった(p=0.04)。
●腎機能悪化の割合は、中心静脈圧が8mmHg未満に抑えられた群では、有意に低率だった(p=0.01)。
●中心静脈圧と腎機能悪化との関与は、収縮期血圧や肺毛細血管楔入圧、心係数、糸球体濾過量の値にかかわらず、存在した。
[監修者 自治医科大学 循環器科 苅尾七臣教授のコメント]
本研究は、これまでの概念とは異なる視点より臨床病態をとらえた点に、高い新規性がある。
すなわち、重症心不全でしばしば合併する腎機能の悪化は、低心拍出量による腎灌流が低下することによるとされていた。
しかし、本研究の仮説は、心不全による中心静脈圧の上昇により、腎静脈うっ滞により、腎機能障害が進行するというものである。
これまで、この仮説は、動物実験で確かめられていたが、ヒトで確かめられた点に新規性がある。
本研究では、心不全患者で中心静脈が入院時に上昇しており、治療経過中に中心静脈上昇が持続した群で、最も腎機能が悪化した。
しかし、入院時に心係数が低下しており、治療によりそれが改善しても、腎機能の改善にはつながらなかったことから、腎機能の悪化には腎臓低灌流よりも、静脈うっ滞の方がより重要としている。
日常診療においても、重症心不全の治療経過で血行動態が改善しても、腎機能の悪化が進行していくことがよくある。
心エコーで下大静脈の拡張や呼吸性変動の消失などの所見を確認して、その病態に静脈うっ滞が実際に関与しているかどうかを確かめてみたい。
Mullens W et al. J Am Coll Cardiol. 2009; 53: 589-596.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19215833?ordinalpos=74&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum
出典 Care Net.com 2009.3.16
版権 (株)ケアネット
中川一政 百日草
http://www.oida-art.com/buy/detail/5048.html
<番外編> 失敗談2連発
今週立て続けにミスがありました。
その1
Adams Stokes発作による失神を外出中に起こし、翌日の月曜日に当院を受診し、翌火曜日にある病院に紹介した60代の男性。
昨日の木曜日に病院から返事のFaxが届きました。
内容は「ご指摘のごとくS.S.S.に伴う失神発作と思われます。PMIを前提に諸検査を勧めていきます。尚、収縮雑音が聴かれましたので心エコー検査も予定します」
ドキッ。
当院には高血圧で通院中の患者ですが、一度も聴診器をあてたことがありませんでした。
昨日ホルターの結果を聞きに患者さんが来院されたのでおそるおそる聴診しました。
案の定、LevineⅢ°のはっきりした雑音を心尖部を最強点として聴取されました。
mid-click,late sysytolic murmurのようでひょっとしてMVPSかとも思いましたが、病院のファイナルアンサーが楽しみでもあり怖くもあります。
胸部レントゲンもそういえば最近とっていません。
リウマチ性MR,DCM,HCM,心サルコイドーシス、心アミロイド-シス・・・。
頭が混乱しそうです。
その2
昨日の午前中来院された70代の女性。
日曜日に日帰りの旅行に行き、しんどくて旅行から帰って1日中寝ていたということで火曜日に来院されました。
何を聞いてもしんどいの一言。
至急で検査をオーダーして点滴をして帰って貰いました。
水曜日に来院され、生化学の検査でGOT優位の肝障害。
アルコールも飲まない人なのに何だか変だなと思いながら、本人が日頃通院中の大学病院の消化器内科に「肝障害」として紹介しました。
木曜日に返事が届き、その内容を見てびっくり。
穴があったら入りたいような結果が書かれていました。
「CK,LDHも上昇し、心電図でⅡ、Ⅲ、aVFにST上昇がみられることより急性下壁梗塞と診断し循環器内科へ転科していただきました」
当院でオーダーした検査項目は「炎症セット」でCKもLDHも含まれていない内容です。
胸痛もなかったため、もちろん心電図もとっていません。
この大学病院は以前講師として勤務していたことがあり、現教授も昔からよく知っている先生です。
きっと今頃医局やポリクリ・教授回診(幸い春休み中)でネタにされていると思われます。
患者負担を思うあまり、最小限の検査を心がけた萎縮診療のなせるわざともいえますが、こんなわけで恥ずかしさは「その1」の2倍です。
先生方も「下壁梗塞」にはご注意下さい。
読んでいただいてありがとうございます。
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急性心筋梗塞患者にEBM治療進化がもたらす可能性:MONICAプロジェクト
1980年代中盤から比べて90年代前半に治療を受けた急性心筋梗塞患者は、予後が改善し長期生存していることが、世界保健機構(WHO)のMONICAプロジェクト(心血管疾患の傾向と決定因子のモニタリング)下にある、オーストラリア、パースの住民を対象としたコホート群の調査から報告された。
西オーストラリア大学Tom Briffa氏らによる1984~2005年の追跡調査結果は、BMJ誌2009年2月7日号(オンライン版2009年1月26日号)に掲載されている。
1984~1993年の心筋梗塞後28日間生存者4,451例を12年間追跡
■MONICA住民コホート追跡調査は、心筋梗塞後28日間生存者の長期生存の傾向を調査すること、またイベント中もしくは直後に受けるEBM治療および冠動脈血行再建の影響を調べることを目的に行われた。
■対象は、MONICA判定基準にのっとり確定した「(1)1984~1987年」「(2)1988~1990年」「(3)1991~1993年」の間に入院治療を受けた4,451例の急性心筋梗塞患者で、12年間の追跡調査が行われた。
主要評価項目は、オフィシャルな死亡記録および病院死亡記録から求めた全死因死亡。副次評価項目は、心血管疾患による死亡。
90年代受療患者の補正相対リスクは80年代中盤受療患者と比べ26%減
■「(3)1991~1993年」コホート群の心筋梗塞後28日間生存者は、「(1)1984~1987年」コホート群に比べて、退院後12年のイベント数が絶対値で7.6%減、相対リスク(死亡未補正)は28%減となっていた。
「(2)1988~1990年」の生存との比較では違いはなかった。
■また「(3)1991~1993年」コホート群の生存改善傾向は、人口統計学的因子、疾患リスク因子、重症度、合併症で補正後も維持され、補正相対リスクは26%減だった。
しかし、さらに入院時治療およびイベント発症12ヵ月以内の冠動脈血行再建施行で補正後は、改善傾向は明確ではなく、その影響は確認できなかった。
■Briffa氏は、「1984~1993年の間の心筋梗塞後28日間生存者は増大した。
この改善は、入院時およびイベント後12ヵ月以内の進化したEBM治療(抗血小板薬、血栓溶解、βブロッカー、冠状動脈血行再建)と関連しており、そうした治療の変化が、おそらくオーストラリアにおける、虚血性心疾患による死亡率の継続低下に寄与するであろう」と結論、EBM治療は12年以上の生存に寄与している可能性を示唆している。
Briffa T et al. Long term survival after evidence based treatment of acute myocardial infarction and revascularisation: follow-up of population based Perth MONICA cohort, 1984-2005. BMJ. 2009 Jan 26;338:b36. doi: 10.1136/bmj.b36.
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=7558
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HDL-CとLDL-Cのどちらが虚血性心疾患と関係が深いか。
日本人のデータですが、HDL-Cの方が関与が大きいという論文を最近よんだこともあり、当然HDL-Cに軍配があがると思っていました。
しかし、きょう勉強した記事ではそうでもなさそうだという内容でした。
民族差もあるということでしょうか。
HDLコレステロールは動脈硬化を予防するのか?
HDLコレステロール(HDL-C)を増やすことが虚血性心疾患を予防する、とのエビデンスについてはなお論争が続いている。
システマティックレビューの一部解析(2001年までに公表されたスタチン治療に焦点を当てた無作為化試験の解析)では、HDL-Cと患者アウトカムの相対リスク減とに有意な関連を見いだすことはできなかったが、McMaster大学(カナダ)臨床疫学・生物統計学部門のMatthias Briel氏らは、スタチンに限らずすべての脂質異常症の治療薬に関連した無作為化試験を対象に、HDL-C値と、全死亡、虚血性心疾患死および同イベント(虚血性心疾患死と非致死的心筋梗塞)との関連について、最新の系統的なシステマティックレビューとメタ回帰解析を行った。
出典 BMJ誌2009年2月28日号(オンライン版2009年2月16日号)
108の無作為化試験、参加者29万9,310人分のデータをメタ回帰解析
■Briel氏らは、2006年10月までに、分野専門家とのコンタクトで追補されたMedline、Embase、Central、CINAHL、AMEDからスタディ選択を行った。2チームが独立して、無作為化試験の適格性(心血管リスクを減じるための脂質改善の介入が検討された試験、HDL-Cと死亡率や心筋梗塞の関連を独立した治療群で検討した試験、少なくとも6ヵ月治療や参加者フォローが行われた試験)を評価し選択。
■評価者は標準化されあらかじめ用意されたフォーマットを用いて、各論文から関連情報を取得し、脂質と臨床アウトカムの加重リスク比の変化のデータを解析した。
■メタ回帰解析は、108の無作為化試験、参加者(心血管イベントリスクを有する)29万9,310人のデータを含み行われた。
HDL-C増大よりもLDL-C減少を
■LDL-C値補正後全解析の結果、HDL-Cの変化と、リスク比(虚血性心疾患死、同イベント、全死亡)との関連は認められなかった。
この結果は、HDL-C値にほとんど変化がなかった(<1%)試験でも同様だった。
■また、LDL-CおよびHDL-Cの変化が、LDL-C単独の変化によるもの以上に、アウトカムに影響を与えることは確認できなかった。
■逆にHDL-C値および薬剤クラス補正後LDL-C指数が10mg/dL(0.26mmoL/L)減少した場合の相対リスク減は、虚血性心疾患が7.2%(95%信頼区間:3.1%〜11%、P=0.001)、同イベントは7.1%(4.5%〜9.8%、P<0.001)、全死亡は4.4%(1.6%〜7.2%、P=0.002)だった。
■これらからBriel氏は、「入手可能なデータの解析結果は、単にHDL-Cの増大が虚血性心疾患死、同イベント、全死亡を減らすことにはならないことを示唆するものだった。
この結果は、脂質異常症介入の主要な目標はLDL-C減少にあることを支持するものである」と結論した。
Briel M et al. Association between change in high density lipoprotein cholesterol and cardiovascular disease morbidity and mortality: systematic review and meta-regression analysis.
BMJ. 2009 Feb 16;338:b92. doi: 10.1136/bmj.b92.
出典 Care Net.com 2009.3.13
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<関連サイト>
HDL-C値を高めてもアテローム病変は進行
ILLUSTRATE試験の解析結果より
HDL-C値の上昇が、冠動脈のアテローム性病変の進行を抑制するのだろうか。
トルセトラピブの投与によりHDL-C値が有意に上昇した患者のアテローム性病変の変化を評価したところ、病変の進行の度合いは、偽薬群と同等であることが報告された。
米国Cleveland ClinicのSteven E. Nissen氏らの研究結果で、詳細はNEJM誌2007年3月29日号に掲載された。
■トルセトラピブは、コレステロールエステル転送蛋白質阻害薬(CETP阻害薬)で、HDL-Cレベルを高める薬剤だ。
50%超の、HDL-C値上昇も報告されているが、臨床開発の最終段階に行われた大規模臨床試験ILLUMINATEにおいて、有害な心血管イベントの増加と全死因死亡率上昇が認められたため、Pfizer社は開発中止を決定した。
著者らは今回、ILLUMINATEに先駆けて行われた臨床試験ILLUSTRATEのデータを報告した。
前向きの無作為化試験は、二重盲検方式で、2003年10月-2004年8月に北米と欧州で行われた。
■対象は、血管造影により冠動脈に20%以上の狭窄が1カ所以上認められる、などの条件を満たした18-75歳の患者1188人。
ベースラインで血管内超音波検査を実施。
全員にアトルバスタチンを投与し、LDL-C値が15mg/dL(0.39mmol/L)から100 mg/dL(2.59mmol/L)の間になった時点で、無作為にアトルバスタチン+偽薬(597人)、または、アトルバスタチン+トルセトラピブ60mg(591人)に割り付けた。
■24カ月後、病気の進行状態を血管内超音波検査により評価。
77%に当たる910人の患者(アトルバスタチン単剤群446人、トルセトラピブ併用群464人) が検査を受けた。
■それぞれのグループのベースラインと24カ月後のコレステロール値を比較したところ。
アトルバスタチン単剤群に比べ、トルセトラピブ併用群の相対上昇割合は61%、LDL-C値の相対減少割合は20%だった。
ベースラインの血圧の平均値は、両群共に120/73mmHg。
いずれも24カ月後には血圧が上昇、収縮期圧は、単剤群では2.0mmHg、併用群では6.5mmHg上昇していた(P<0.001)。
■主要エンドポイントに設定されたアテローム容積率の変化は、単剤群で0.19%上昇、併用群では0.12%上昇で差なし(P=0.72)。
また2次エンドポイントは、標準化したアテローム総容積の変化。併用群では9.5立方ミリメートルの減少、単剤群では6.3立方ミリメートルの減少で、わずかだが併用群のほうが良好だった(P=0.02)。
しかし最も深刻な病変部10mm区間を選んで、ベースラインと24カ月時のアテローム容積を比較したところ、やはり有意差はなかった(P=0.12)。
■有害事象も比較。主要な心血管イベントの発生率は同等だった。しかし、併用群では、有害事象として報告された高血圧の頻度が多く(23.7%と10.6%)、140/90mmHgを超えた患者の頻度も高かった(21.3%と8.2%)。
15mmHgを超える血圧上昇が持続した患者の割合は、併用群9.0%、単剤群3.2%だった。
■トルセトラピブは、HDL-C値の上昇とLDL-C値の低下、そして血圧上昇をもたらしたが、冠動脈のアテローム動脈硬化の進行は予防できなかった。
効果が見られなかった理由として、著者らは、血圧上昇がHDL-C上昇の効果を打ち消した可能性、アテローム性動脈硬化の治療や予防においてCETP阻害は有効なアプローチではない可能性などを挙げている。
■今回得られた結果は、心血管疾患予防を目的とする薬剤開発に携わる人々に、大きな課題を提示した。
アテローム性動脈硬化の進行を実際に阻止するためには、どの経路を標的とすればよいのか。
これを明らかにするためには、さらなる研究が必要だろう。
原題は「Effect of Torcetrapib on the Progression of Coronary Atherosclerosis」
http://content.nejm.org/cgi/content/short/356/13/1304
NM online 2007.4.4
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200704/502927.html

中川一政 バラ
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LDL-C/HDL-C比は冠動脈疾患の新たな指標として有用
■かなりの数のAMI/ACS患者が低LDL-Cで、対照被験者と比べてHDL-C値が低く、LDL-C/HDL-C比が高いことが分かった。
■LDL-C/HDL-C比はCHDの第一次予防に対する新たなターゲット指標になると考えられる。
■LDL-C/HDL-C比を下げるには、HDL-C値を集中的に上げ、かつ、LDL-C値を下げる治療の両方が、特にHDL-Cが低い場合に必要である。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/esc2008/200809/507675.html
NM online 2007.9.2
<自遊時間>
政府の医療政策のミスに起因する都市部や大病院への医師の集中。卒後研修制度の実施による医局制度の実質的な崩壊が原因であることは明らかです。
それまではこの問題が顕在化することはなかったわけですから。
「各県に医科大学」ということで新設された国立単科医科大学も、多くの医学生は都市部出身で卒後は都市へUターンしてしまい卒後の地方への定着は画餅に帰しています。
そんな中、医師を将棋の駒のように配置しようという動きが出てきています。彼らの無策、失策の尻拭いを我々がさせられようとしているのです。
先生方も同様でしょうが、私もこういった動きに対してはたして合法性があるのか、すなわち違憲性があるのではないかと疑問に思ってきました。
(ある意味、裁判員制度にも疑問をもっています)
さて、新着のMMJ誌に関連記事が見つかりました。
ことわざデータバンク 医師には、職業を選択する自由が日本国憲法第22条1項によって保障されている。
医師という職業を選択する自由には、当然に、医師という選択した職業を遂行する自由も含まれるが、これう事業活動(医業の自由)という。
医師の配置制限は、医師の基本的人権を制限するものである。したがって、それが「公共の福祉」の要請だというためには、十分に必要性があり、かつ十分に合理性がなければならない。
ちなみに、最高裁判所は昭和50年に、薬局開設許可に地域的制限・距離制限をしていたことに対し、日本国憲法第22条1項に違反するという違憲判決を出したことがあった。
法律の世界では有名な判例である。
それと類似する「医師の配置制限」を設けようというのであれば、よほどその必要性と合理性を検証しなければならない。
出典 MMJ March Vol.5 No.3 2009
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ESCが新ガイドラインを発表
急性心筋梗塞/再灌流療法の重要性を強調
欧州心臓病学会(ESC)特別委員会は,ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の管理に関する新しいガイドラインを策定し,European Heart Journal(2008; 29: 2909-2945)に発表した。
新ガイドラインは,一刻も早い治療開始だけでなく,心臓への血流回復により生存率を向上させる再灌流療法の重要性を強調している。
さらに,地域の救急医療システムや最適な施設への速やかな搬送が治療を成功に導く鍵であるとしている。
STEMIの管理と心電図所見について解説
■同特別委員会の委員長を務めたFrans Van de Werf教授(ベルギー・ルーベン)は「新ガイドラインは心筋梗塞の管理において重要な役割を果たすもので,これを広く取り入れ,適用することで心筋梗塞患者の生存率は大幅に改善するであろう」と述べている。
■新ガイドラインは,STEMIの管理とその心電図(ECG)所見について解説している。
■急性の冠動脈イベントの約3分の1がSTEMIと診断される。
また,正確な数は不明であるが,心筋梗塞患者の30〜50%が病院に到着する前に死亡し,その大半は発症から数時間以内に死亡する。
近年,心筋梗塞死亡率はほぼ横ばい状態が続いているが,院内生存率は1960年代の75%から現在の95%へと著明に改善した。
この院内生存率の改善の背景には,冠動脈疾患集中治療室(CCU),冠動脈インターベンションや血栓溶解療法など新たな手技の導入がある。
■新ガイドラインと2003年版のガイドラインとのおもな相違点は,
(1)救急システムを取り上げた
(2)速やかな再灌流療法の施行が強調された
―ことである。
■再灌流療法は,経皮的冠動脈インターベンション(PCI,バルーン血管形成術やステント留置)または血栓溶解療法により行われる。
一次PCIは2時間以内に施行
■管理の鍵となるのは,以下の医療チームとの最初の接触(FMC)後の早期診断とリスク評価である。
(1)一次PCIはFMCから2時間以内に施行できるなら,望ましい治療法である
(2)PCIを2時間以内に施行できない場合は,FMC後,入院前または入院中に血栓溶解療法を速やか(30分以内)に行う
■新ガイドラインは「一次PCIは血栓溶解薬の前投与または同時投与なしに行う冠動脈インターベンションで,熟練したチームによる迅速な施行なら望ましい治療選択肢である」としており,「PCI施行までの時間が短いほどアウトカムは改善するため,FMCからバルーン血管形成術までの時間は全症例で2時間以内でなければならない」としている。
ただし,一次PCIは,心臓インターベンションプログラムの確立した病院でのみ施行されるべきであると付記している。
■また,血栓溶解療法が成功した場合も,大半の患者に対してルーチンに冠動脈造影を行うことが推奨されている。
さらに冠動脈造影を行うことで冠動脈と心筋の状態が評価でき,長期リスクと以後の治療が決定されるとしている。
救急システムも生存率改善の鍵
■Van de Werf教授は,現在,すべての病院もしくは地域に新ガイドラインで推奨しているような救急ネットワークやPCIの可能な施設が整備されているわけではないことを認めている。
■実際,今回の登録データから,欧州では現在も全STEMI患者のおよそ20〜30%は再灌流療法を受けていないことが示されている。しかし,同教授は,新ガイドラインの遵守によりSTEMI患者の生存率を劇的に改善させることは可能だと示唆している。
■迅速な搬送,必要に応じた除細動や早期血栓溶解療法,ECGによる診断,病院への緊急要請などを担う救急車も生存率改善の鍵を握っているとされる。
■新ガイドラインは,救急車は電話要請から15分以内に患者のもとに到着できること,12誘導心電計を備えることを推奨している。
■そのほか,一次救命処置(basic life support;BLS)の手技を医学部のカリキュラムに組み込むことも推奨している。
出典 Medical Tribune 2009.2.19 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社

五味悌四郎 初秋の静物
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<番外編>
狭心症の初回検査として心電図検査は十分に行われていない
■エビデンスに基づく推奨があるにもかかわらず,狭心症の症状がある患者の初回検査として心電図検査(ECG)が十分に行われていないことが明らかになったと,米マイルズ記念病院などのグループがAmerican Journal of Cardiologyの2月1日号に発表した。
■同グループは,米国の成人人口の2%を代表する保険データベースを用いて,新規狭心症患者に推奨されている初回の循環器系診断検査としてのECGの施行頻度を調べた。
検査を必要とする狭心症状を有する1万8,139例が登録基準に合致した。
■解析の結果,患者の35%がエキスパート・ガイドラインで推奨されている初回ECGを施行されていなかった。
初回ECGの施行率は救急部門で治療を受けた患者では91%と高かったが,外来患者では61%,入院患者では34%と低かった。
男性と64歳以上の患者でECG施行率が若干低い傾向が見られた。
■診断のための総費用は推奨されているECGを行った場合が平均954ドル,ECGを行わなかった場合が平均1,233ドルであった。
<原著>
Frequency of electrocardiographic recordings in patients presenting with angina pectoris (from the Investigation of National Coronary Disease Identification).
Li J, et al. Am J Cardiol 2009; 103: 312-315.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19166681
出典 Medical Tribune 2009.2.19 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
文中のFMCは多分first medical contactの略と思われますが違うでしょうか。
そして
「心筋梗塞患者の30?50%が病院に到着する前に死亡し,その大半は発症から数時間以内に死亡」・・・医療機関に搬送される症例はelectrical deathを免れた謂わば自然にトリアージされた症例ということになります。
このことは医療現場でしばしば忘れ去られそうになることでもあります。
急性心筋梗塞患者の救命には、この超急性期の不整脈死をいかに防止することが大切かということを、高木誠先生をはじめCCUのある医療機関で積極的に取り組んだ時期がありました。
インターベンション一色の現在にあって、これらの試みはどこまで進んでいるのでしょうか。
奇しくも今週の日曜日、タレントの松村邦洋氏がAMIによるVFで倒れました。
東京マラソン中ということもあり、AEDにより救命されたということで、ある面では「朗報」でした。
当院もAEDの設置については悩んでいるところですが、自分自身のためにも購入しようかなと思わせるニュースでした。
<関連サイト>
意識戻った松村邦洋 合併症の危険で予断許さず
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/flash/KFullFlash20090323106.html
松村邦洋(41)が22日の東京マラソン中に前兆なく突然意識を失った原因は、急性心筋梗塞による心室細動(しんしつさいどう)によるものだという。
突然死を回避するため、マラソン事務局スタッフと医師による自動体外式除細動器(AED)で電気ショックを与えるなど迅速な処置を受けて、病院へ搬送された。
搬送中に意識は取り戻したが、検査処置には安静状態が必要なため、現在は鎮静処置を施しているという。
さらに心疾患には今後、合併症を伴う危険性があり、病状が確定しない予断を許さない状態が続いているという。
松村邦洋マラソン挑戦で一時心肺停止に
http://www.daily.co.jp/gossip/2009/03/23/0001770832.shtml
(その時の状況を生々しく報じています)
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があります。
#女性でも、安静時心拍数が冠動脈イベントの予測因子になることを確認
安静時心拍数が冠動脈イベントの予測因子となることは、男性では知られているが、女性ではその関連性が明らかにされていなかった。
そこでジョージ・ワシントン大学のJudith Hsia氏らが、全米の40施設で前向きコホート研究WHI(Women's Health Initiative)を実施。男性同様、独立予測因子になることが確認された。
BMJ誌2009年3月7日号(オンライン版2009年2月3日号)より。
閉経後女性で心拍数が冠動脈イベントの独立予測因子に
■参加者は12万9,135例の閉経後女性で、主要評価項目は臨床上の心血管イベント。
■平均7.8年(SD 1.6)の追跡期間中、2,281例が心筋梗塞または冠動脈関連死と診断され、1,877例が脳卒中と診断された。
■安静時心拍数と心血管イベントとの関連について、共変量調整後のCox回帰モデルを使い多重比較を試みた結果、安静時心拍数の高値が冠動脈イベントの独立予測因子となることが確認された。最大五分位群(≧76拍/分)対最小五分位群(≦62拍/分)のハザード比は1.26。
一方、脳卒中では相関は認められなかった。
■心拍数と冠動脈イベントとの関連は、人種間(白人女性群と他の人種群)、糖尿病の有無でも差は認められなかった(それぞれP=0.45、P=0.31)。
ただしベースライン時において、50~64歳群が65~79歳群よりもより強い関連が認められた(P=0.009)。
ローテクで簡便な測定法でイベント予測は可能
■研究グループは、「安静時心拍数と心血管イベントの関連の強さについて、最小・最大五分位の比較は喫煙や糖尿病との関連ほどではないが、臨床的に十分意味があるだろう」と述べている。
■また、自律神経系の評価をするには、時間とコストをかけられれば、より精巧な方法も利用可能だが、自律神経系の緊張の指標である安静時心拍数を、単純に、ローテクで、安価に測定するだけでも、心筋梗塞や冠動脈死といったイベントの独立予測因子が得られることを証明できたと報告している。
Hsia J et al. Resting heart rate as a low tech predictor of coronary events in women: prospective cohort study.
BMJ. 2009 Feb 3;338:b219. doi: 10.1136/bmj.b219.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19193613?ordinalpos=&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.SmartSearch&log$=citationsensor
出典 Care Net.com 2009.3.20
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中島千波 春夜月光枝垂桜
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心電図検査の予後評価は病歴聴取の域を出ない
狭心症疑いの外来患者への心電図検査(ECG)の予後評価は、病歴聴取で得られる情報に基づく予後評価の域を出ず、将来的に虚血性心疾患を発症するか否かにECGは、ほとんど役に立たない、Newham University Hospital(イギリス)のNeha Sekhri氏らがコホート調査の結果として報告した。ECGはイギリスの胸痛クリニックでは59%の実施率、最近のEuro heart surveyでは76%と臨床現場では慣例化している。
BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)掲載より。
8,176例を登録し追跡
調査はイギリスの6つの胸痛クリニックに狭心症疑いで紹介されてきた、心疾患の既往のない外来患者8,176例を登録し追跡した。
全例に安静時ECGと、年齢、性別、症状の継続期間、喫煙有無、高血圧歴、服用薬など通常の臨床評価を行い記録。
また運動負荷ECGも行った患者(4,873例)については、そのうち4,848例で結果(虚血性:陽性、陰性、不明)の「サマリー」を記録、1,422例では結果の「詳細」を記録し、追跡期間中央値2.46年の間の、虚血性心疾患による死亡、非致死性の急性冠動脈症候群発症との複合を評価した。
もっと効果的な適用患者の層別化を検討すべき
ROC曲線解析によるC統計量での評価で、臨床評価のみのモデルと安静時ECGの結果を有するモデルとはほとんど違いが見られなかった。
運動負荷ECGのC統計量については、「サマリー」記録群は0.74(同群で臨床評価のみの場合0.70)、「詳細」記録群は0.78(同0.74)であった。
しかし、「臨床評価のみ」「臨床評価+安静時ECG」「臨床評価+安静時/運動負荷ECG」のいずれにおいても、1年時点、6年時点の主要エンドポイントのリスク層別化の累積確率はほとんど相違が示されなかった。
Sekhri氏は「安静時ECGと運動負荷ECGの予後評価は、基本的な臨床評価の域を出ない」と結論。
「ECG検査は広く一般的に行われているが、もっと有意義となるよう適用患者の層別化を検討するべきだ」と提言している。
Sekhri N et al. Incremental prognostic value of the exercise electrocardiogram in the initial assessment of patients with suspected angina: cohort study.
BMJ. 2008 Nov 13;337:a2240. doi: 10.1136/bmj.a2240.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19008264?ordinalpos=2&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum
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小倉遊亀 椿
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