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近年,慢性腎臓病(CKD)の概念とともに,心-腎連関の重要性がクローズアップされています。
このこと自体はもう「耳たこ」の感さえあります。
CKDと高血圧は心-腎連関により,互いに発症・進展の悪循環を形成します。
この悪循環を断ち切るために有効なのが,レニン―アンジオテンシン(RA)系制薬です。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の降圧および腎保護作用のみならず心-腎同時保護薬としての心血管事故抑制作用が注目されています。
最近、このあたりがテーマの講演会があり、今回の演者の木村先生がフロアーからの質問に答えてみえました。
よくある質問で「ARBとACEIの使い分け」についてでしたが、答えは「副作用さえなければACEIで何ら問題ない」という、いわば至極ごもっともな返事でした。
ARBの"must"が今回の木村先生のランチョンセミナーで聞かれるかどうか。
第31回日本高血圧学会総会(2008.10.9~11、札幌)
ランチョンセミナー
心-腎連関とARB:今なぜ心-腎連関なのか?
座長
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学
槇野 博史 教授
演者
名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学
木村 玄次郎 教授
高血圧とCKDは,食塩感受性を介して発症・進展の悪循環を形成する
■腎臓が血圧を上げるメカニズムは大きく3つある。
1つは前糸球体(輸入細動脈)の血管抵抗の上昇,
2つ目は糸球体濾過能の低下,
3つ目は尿細管でのナトリウム(Na)イオン再吸収の亢進
である。
2つ目と3つ目は食塩摂取量に関連して生じる病態,すなわち食塩感受性であり,これらにより腎予備能が低下して高血圧が生じる。
■一方で,この食塩感受性高血圧は糸球体高血圧を発症させ,腎障害を進行させる。
つまりCKDと高血圧は,互いに発症・進展の悪循環を形成するのである。
■腎障害の進行により微量アルブミン尿あるいは蛋白尿を生じ,腎不全のみならず,心血管疾患(CVD;cardiovascular disease)の発症に至る。
■実際,木村氏らは追跡調査により,食塩感受性の本態性高血圧患者では非感受性患者の約3倍の心血管リスクを有することを報告している。
■しかし木村氏は,食塩感受性が特にリスクとなっているのは,CVDのなかでも循環器系の圧負荷に関与する脳卒中や心不全などであるとも言う。
■食塩感受性高血圧の代表的な疾患である原発性アルドステロン症患者に関する木村氏らの追跡調査では,先の食塩感受性患者と同等の脳卒中リスクを有することが示されている。
■また,わが国の大規模コホート研究である筑波研究でも,10年間の追跡によりCKD群でのCVDリスクの上昇は男女とも,おもに脳卒中リスクの上昇によるものであることが分かっている。
■さらに,食塩感受性高血圧では夜間の血圧低下を示さないnon-dipper型の日内変動を呈することから,non-dipper型とdipper型の患者での心血管リスクを比較してみると,前者で心不全リスクが高いこと,non-dipper型では1型糖尿病における腎症リスクがdipper型に比して高いことなども報告されている。
心-腎連関は食塩感受性とほぼ同一の病態である
■つまり,心-腎連関の病態生理は,「食塩感受性により食塩が循環器系に貯留し,その結果,食塩感受性に圧負荷が加わって食塩感受性高血圧が発症する。
これが刺激となり,組織の酸化ストレス上昇による一酸化窒素(NO;nitric oxide)と酸化ストレスのバランス異常,組織のRAA系の亢進,交感神経系の活性化,慢性炎症などが引き起こされ,最終的にCVD,腎不全,心不全に至る」ことになる。
■一方,non-dipper型の高血圧は,「Na排泄能低下により食塩感受性高血圧となってNaが貯留するため,夜中も血圧を高く保って圧利尿によりNaを排泄せざるを得ない病態」と解釈される。
■木村氏は,「一部の疾患を除き,non-dipper型の日内変動を呈する病態は,すべて食塩感受性高血圧(腎のNa排泄能低下)に由来する」との仮説を提唱し,心-腎連関は食塩感受性とほぼ同一の病態と捉えられると述べた。
この仮説に基づけば,積極的なRA系抑制がCKD患者において心および腎を保護し,心血管リスクを抑制することが理解できるという。
蓄積されたRA系抑制薬の腎保護エビデンス
■「心-腎連関」が注目されるようになったのは,2001年のHOPEサブ解析による,軽度の腎機能低下が心血管リスク上昇につながるという報告がはじまりだった。
■同試験では,同時にRA系抑制薬が腎機能低下患者の心血管リスク抑制に有用であることが明らかにされ,以降,「腎不全のみならず,CVDも抑制して生命予後を改善するために,積極的なRA系抑制が必要である」との認識が広がっていった。
■LIFEサブ解析では,左室肥大を伴う高血圧ではARBにより微量アルブミン尿が減少した群でCVDがより抑制されること,RENAALからは2型糖尿病性腎症に対する6か月間のARB投与で,アルブミン尿が低値に改善した患者ほど腎不全・CVDのリスクが抑制されることなどが示されている。
■またIDNTサブ解析では,開始1年後に尿蛋白量が50%未満に減少した群では,腎不全リスクが半分以下に低下することが示されている(図1)。
■さらに,RA系抑制薬の腎保護作用に関しても,多くの大規模臨床試験によりエビデンスが蓄積されており,腎障害の早期から末期までのいずれの段階においても,RA系抑制薬が次段階への進行を抑制することがRENAALやIDNT,IRMA2などから明らかにされている(図2)。
■ARBの腎保護作用は用量依存的であり,降圧に依存しない(beyond blood pressure lowering)ものであるということも,IRMA2などから明らかになった。
特に,IRMA2のARB高用量群では投与中止後もアルブミン尿抑制作用が維持されることが報告されていることから,十分量のARBを用いることが腎保護のためには重要である。
■なお,ARBは用量を上げても降圧作用の増強に比べて有害事象の増加が緩やかであるという報告があり,その点からも十分量の使用が推奨される。
RA系抑制の徹底で腎症は回復可能
■糸球体血圧は,全身血圧ならびに輸入細動脈と輸出細動脈の抵抗比(RA/RE)で規定される。
つまり,腎機能が正常で食塩非感受性の病態であれば,全身血圧が上昇しても,輸入細動脈の抵抗が上昇してRA/REが上がるため糸球体内への血液流入は抑えられ,糸球体血圧は一定に制御される。
■しかし,腎炎や糖尿病性腎症などの食塩感受性の病態ではこの制御機構が機能せず,全身の血圧上昇に応じて糸球体血圧も上昇してしまう。このことが,腎炎や糖尿病性腎症が末期腎不全の原疾患となる理由である(木村教授)。
■RA系抑制薬は,輸出細動脈の抵抗を下げてRA/REを上昇させるため,全身性の降圧とは別に糸球体高血圧を是正することで腎保護作用を発揮すると考えられている。
■2006年にFiorettoらは,「膵臓移植を受けた1型糖尿病患者の糖尿病性腎症が,術後10年を経て正常化した」という腎臓病学におけるエポックメイキングな報告を行った。
すなわち,それまで不可逆的に進行すると考えられていた慢性腎不全が,10年という長期間を経れば回復可能なことが,初めて確認されたのである。
■これを踏まえて行われたSteno-2研究では,2型糖尿病患者に対する多種強化療法により,早期腎症から顕性腎症への進行,網膜症,自律神経障害の発症という細小血管障害がいずれも約60%抑制できることが示された。
■さらに,7.8年間に患者の30%で微量アルブミン尿が消失したが,その有意な予測因子が「RA系抑制薬の開始」であったことも確認された(図3)。
■現在では,アルブミン尿が少ない段階でRA系抑制を徹底すれば腎症の消失が得られるということが,世界的コンセンサスとなりつつある。
■現に,糖尿病性腎症の管理が進んでいるデンマークや米国では,近年,糖尿病性腎症に基づいた末期腎不全の年間発症率が減少傾向にあると言う。
しかし,日本ではいまだに糖尿病性腎症に基づく末期腎不全が増加し続けている状況にある。
■木村氏らの研究では,日本国内でのその発症率には地域差が見られ,RA系抑制薬の使用量が少ない地域で発症率の高いことが指摘されており,RA系抑制薬が腎不全の発症を抑制していることがうかがえる。
CKDは二次予防から一次予防へ
■今や「CKD対策は二次予防から一次予防にシフトする必要がある」とする木村氏は, CKDをステージA~Dの4段階に分ける新しい病期分類を提唱した(図4)。
■「腎症はあるが腎機能は正常なステージBの段階で,原疾患の診断・治療を徹底すれば,糖尿病性腎症の消失は不可能ではない」と指摘したうえで,早期治療と心血管リスク軽減によるCVD抑制の重要性,さらに腎症のないステージAでの腎症スクリーニングとリスク管理の重要性を強調した。
■木村氏の所属する名古屋市立大学では,現在「レミッション・クリニック(Remission Clinic)」と名付けた腎臓専門外来を設置し,腎不全の寛解を目指した診療に力を注いでいるという。
■最後に木村氏は,近年,脳卒中や冠動脈疾患が減少に転じるなか,日本の末期腎不全発症数は過去15年間で3倍にも増加していること,特に糖尿病性腎症の増加が著しいことを指摘し,この現状を直視して何らかの取り組みを開始する必要性を訴えた。
「もはや腎症は不可逆性の進展過程をたどる疾患ではなく,治療可能な疾患であることを広く理解していただきたい」と述べ,CKDへの理解と早期発見・予防の重要性を世界的に啓発するために,毎年,3月第2木曜が「世界腎臓デー」に制定されたことを紹介した。
出典 Medical Tribune 2009.2.19
版権 メディカル・トリビューン社

熊谷守一 肥後椿 4号
http://www.art-information.ne.jp/youga/kumagai/
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http://video.google.co.jp/videoplay?docid=-5643623681184321405&ei=6sSjSefVJIqSwgPs6rDCDw&q=シナトラ&hl=ja
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。