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兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人先生のMTproでの記事で勉強しました。
3枝病変,もしくは左主幹部病変に対する治療はPCIかCABGか? SYNTAX試験より
背景:CABGとPCI,それぞれの進歩
■冠動脈バイパス術(CABG)は1968年に導入され,人工心肺不使用,小切開,心筋保護の改善,動脈グラフトを使用するなどしてグラフト閉塞,死亡率を改善させてきた。
一方,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は1977年に導入され,通過性のよいデバイスの改良,薬剤溶出性ステント(DES)の登場により複雑病変の治療が可能になってきた。
■現在まで多枝病変におけるベアメタルステントとCABGの比較検討がなされてきたが,ベアメタルステントでは再狭窄のため再インターベンション率が著しく高率であることが指摘されていた。
一方,近年臨床応用されているDESは,ベアメタルステントと比較すると再狭窄率が低い。
■今回結果が公表されたSYNTAX試験(N Engl J Med 2月18日オンライン版)では,3枝病変または左冠動脈主幹部病変(LMT)を有する重症冠動脈病変患者について,PCIとCABGが比較された。
PCI群ではDESのTaxusステント(パクリタキセル溶出ステント)が留置された。
研究の概要:再インターベンションはPCIで,脳卒中はCABGで高率
■2005年3月~2007年4月に欧米17か国で4,337例の3枝病変,もしくはLMT患者が登録され,3,075例が試験に組み込まれた。
■SYNTAX試験はランダム化試験とレジストリーに分かれており,症例について循環器内科医と心臓外科医のチームが治療方針についての検討を行い,
(1)CABGでもPCIでもどちらでも血行再建できると評価した場合はランダム化試験に(1,800例),
(2)CABG(1,077例)あるいはPCI(198例)のどちらか一方が適切であると評価した場合はレジストリーに
―割り付けられた。
今回はCABGでもPCIでもどちらでも血行再建できると判断された1,800例についての検討であり,897例はCABG群に903例はPCI群に割り付けられた。
■LMTはCABG群で38.8%であり,PCI群では39.5%であった。CABG群では平均4.4病変,PCI群では平均4.3病変が治療された。
23%が完全閉塞病変であり,72%が分岐部病変であった。25%の患者で糖尿病の合併が認められた。
■完全血行再建率はCABG群のほうがPCI群よりも有意に高かった。
退院時処方ではPCI群で抗血小板薬の使用が有意に多かった。
CABG群では15.0%が人工心肺不使用であり,97.3%に動脈グラフトが使用された。
PCI群では14.1%がPCIを2期的に行う必要があり,63.1%が分岐部病変であった。
■観察12か月後において,総死亡(図,左上),総死亡+脳卒中+心筋梗塞(図,右上)については両群間に差が認められなかった。
しかし,主要心脳血管イベントの発生(図,右下)はPCI群で有意に高率であった。
その理由はおもに,再インターベンションの施行率がPCI群で有意に高かったことによる(図,左下)。
■一方,脳卒中にだけ注目すると,CABG群で発症率が有意に高かった。
症状を伴ったCABG群のグラフト閉塞率(3.4%)とPCI群のステント血栓症(3.3%)の発生率は同等であった。
■病変部の複雑さを示すSYNTAXスコア別に解析した結果では,CABG群では病変部が複雑になりSYNTAXスコアが上昇しても主要心脳血管イベント発生率は変化がなかったが,PCI群では病変が複雑になるにつれ主要心脳血管イベント発生率が上昇し,CABG群との間に有意差が認められるようになった。
■LMT病変の患者だけで検討すると,12か月後の主要心脳血管イベント発生率はCABG群13.7%,PCI群15.8%と両群間で同等であった。
PCI群では再インターベンション施行率が有意に高かったが,これはCABG群で脳卒中発症率が有意に高かったことで,危険度が相殺されたことによる。
佐藤幸人先生の考察:複雑病変ならCABG,LMTだけならPCIに軍配
■SNTAX試験では3枝病変患者またはLMT患者についてPCI群とCABG治療が比較検討された。
12か月後,総死亡については両群で同等であったが,CABG群で脳卒中発生が多く,PCI群で再インターベンション施行率が高かった。
■これらを総合して見ると,主要心脳血管イベントの発生はCABG群のほうが有意に良好であった。
この傾向は病変が複雑になるほど強く,複雑病変ではCABGが適している可能性が高い。
■しかし,LMTのみに限ると主要心脳血管イベント率に差が認められておらず,LMTのみの患者ではPCIが簡便ですぐれている可能性が高い。
またQOLの観点からは脳卒中の発症は重要であり,さまざまな試験においてCABG群で常に有意に発症頻度が高いことは考慮されるべきである(2%以上)。
そういう意味では今回もCABG群,PCI群ともに一長一短という結果とも取れる。
出典 MTpro 2009.2.23
版権 メディカル・トリビューン社
<SYNTAX試験 関連サイト>
DES時代のなかで見直されるCABG
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=SYNTAX%E8%A9%A6%E9%A8%93&perpage=0&order=0&page=0&id=M41410331&year=2008&type=allround
出典 MTpro 2008.10.9
版権 メディカル・トリビューン社
■SYNTAX試験は,世界的に有名な心臓病学者であるPatrick W. Serruys先生が中心になって欧米の有名な80施設以上の心臓病センターが参加して行われた世界初のDES vs CABGのランダム化比較試験(RCT)です。
■対象となった冠動脈疾患患者は,左主幹部病変(LMT)か3枝病変という重症の患者で,PCIでもCABGでも治療可能なものとされており,その意味からもLMT病変の患者に行われているPCIの正当性を論じられるかどうかまでかかっていました。
■内容は,そのいずれかの治療を実施した後,12か月間の主要評価項目(総死亡,脳血管事故の発生,心筋梗塞の発生,再血管血行再建の発生率)を比較するもので,実際は以下のような結果でした。
(1)総死亡の発生率にPCIとCABGの両群に差はなかった
(2)脳血管事故の発生はCABG群のほうが有意に多かった
(3)心筋梗塞の発生はPCIとCABG両群に差はなかった
(4)再血管血行再建の発生はPCI群のほうが有意に多かった
■よって,すべてを合わせた主要心血管・脳血管イベント(MACCE)の発生率は,PCI群が17.8%,CABG群12.1%で,PCI群の再血行再建率が高かったことから,有意差が認められました。
■ここで興味深かったのは,病変がLMT単独,もしくはLMT+1枝病変であれば,PCIの成績はCABGのそれに劣るものではなかったり,また糖尿病を持っているかどうかで分けて見てみると,糖尿病のない患者では同じようにPCIの成績がCABGに劣っていなかったことなど,病変,患者の持つバックグラウンドなどを考慮すれば,PCIは許容される部分があることが示唆されたことでした。
■最終的にはPCIのCABGに対する非劣性は認められず,DES時代の現在でもLMT,多枝疾患の冠動脈疾患患者のスタンダードな治療としてはCABGに優位性があることが証明される結果となっていました。
第30回欧州心臓病学会
SYNTAX試験 ~ 高リスク冠動脈病変でCABGに対するDESの優位性は証明されず
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=SYNTAX%E8%A9%A6%E9%A8%93&perpage=0&order=0&page=0&id=M41410321&year=2008&type=allround
出典 MTpro 2008.10.9
版権 メディカル・トリビューン社
冠動脈疾患ハイリスク症例の治療選択の現状
理想的な内科・外科連携を探る
出典 MTpro 2008.7.24,31
版権 メディカル・トリビューン社
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=SYNTAX%E8%A9%A6%E9%A8%93&perpage=0&order=0&page=0&id=M41300801&year=2008&type=allround
■日本循環器学会の「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン」のなかで原則禁忌とされているハイリスク症例に対してPCIが行われているのが,わが国の臨床の現状である。
デバイスや技術の進歩が速いPCIの分野ではエビデンスが実情に追い付かないという側面があるのは事実だが,真に患者の立場に立ったときの適正な治療選択を模索することは常に考慮すべき視点であろう。
■PCIは狭窄部位,閉塞部位に直接挑む治療であるのに対して,CABGは病巣部に手を付けず別の血流路を創るという全く別の治療法である。
■DES以前はLMT病変や複雑3枝病変などはCABGの適応とされてきたが,内膜増殖を抑制することで再狭窄率を低減させるデバイスの登場により,こうしたハイリスク症例にまでPCIの適応が拡大している過程にある。
■EBM時代と言われるなかで,現在のところ,CABGとDESを完全に無作為で比較した試験は存在しないが,PCI優位の情勢のなかで外科に有利となる韓国発の論文が掲載された(N Engl J Med 2008; 358: 1781-1792)。
論文の要旨は,propensity scoreマッチング※によりLMT病変に対するCABG(1,102例)とPCI(1,138例)を比較すると,死亡率・心筋梗塞発生率に差はないが,再治療率はDESを使用したPCIでもCABGが勝ることを認めたものだ(図1)。
※propensity score マッチング:母集団のうち,交絡因子以外で背景因子が揃った群で比較すること。観察研究において,ランダム化比較試験に近い状態での比較が可能。
同報告については、ランダム化がなされていない観察試験のため,この結果でLMTにはCABGが優位との結論は下せないとする意見もある。
■既存の大部分のRCTは,LMTおよび同近位部が対象から除外されているため,ハイリスク症例の治療法選択の参考にはならない(表)。
■ある外科医の話。
「内科医の講演を聴いたところ,LMT病変の患者に数%の頻度で突然死の報告が見られた。バイパス術での突然死はありえず,外科医にとってはモータリティという単語が出るレベルの話ではない」。
「施設の外科医が力量不足で,成績が悪いからPCIを行わざるをえないという論法が多かった。内科医が指摘するほどひどい状況なのかという疑問を感じるが,もしそうだとしても信頼できる外科医に紹介すべきではないか。外科側としても年間50例以上といった基準の施設集約や技術のボトムアップに努力する必要はあるかもしれない」。
■現段階でPCI側が追い風としているのが多枝病変を対象としたオープンラベル試験のARTS IIである。
このARTS IIはもともとはベアメタルステント(BMS)とCABGのRCTであるARTS I と似通った症例にDESを施行した群との比較のため,症例背景も違い単純比較はできないが,3年目まですべての項目で差がなく,一般的には,PCI がバイパスに追い付いたことを示す成績と解釈されている。
■シロリムス溶出ステントを用いたSIRIUS試験の成績をもとに,糖尿病合併例ではPCIが適さないとされているが,既に理論的にその知見を否定することが可能だという。
SIRIUS試験は18mmのステントしかなかった当時の研究だが,種々の長さのステントを選択できるようになって以降はPCIの劣勢を指摘するデータはあまり見られない。
要はステントがしっかりと動脈硬化巣をカバーできているかが重要であり,血管超音波ガイド下のDES留置がびまん性を除いた糖尿病症例に有用である。
■ハイリスクの代表として透析患者が挙げられるが,透析に関しては,わが国のJapan PMSやJ-CypherからDESの成績が良好でないことは明らかである。
このため,現時点ではCABGで治療されるべきと言えるが,透析患者に対するCABGは感染症や脳卒中の頻度が高いのも事実で,透析に関しては現状では内科・外科ともによい答を出せない状況と捉えるべきである。
■治療法としてダブルオプションを有する冠動脈疾患は特殊な診療領域と言える。
CABG,PCIともに術者個人の技術が立脚する治療法だけに適応が異なるのは必然的な現象であり,この点が説得力のあるRCTが成立しない理由の1つとも指摘できる。
■重要なことは,どちらの治療法が個々の患者にとってメリットがあるかに尽きる。自分たちのフィールド(外科または内科)に引きずり込もうという診療姿勢であってはならない。
外科側意見
LMTでも主幹部の90%狭窄であればPCIがよいかもしれない。
内科側意見
全身状態が良好なLMTに対してステントを2つ使用するような場合や,慢性完全閉塞を複数認める症例は外科に預けるべきだろう。
■内科は外科,外科は内科が何をできるかを知ることが肝要となる。
さらには内科と外科の風通しのよさが個々の患者にとって最善の治療法の選択につながる。
<番外編>
アムロジン・ノルバスクの高血圧における用法・用量が一部変更
高血圧症
通常、成人にはアムロジピン・ノルバスクとして 2.5 ~ 5mg を 1 日 1 回経口投与する。
なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には 1日1 回 10mgまで増量することができる。
http://ds-pharma.jp/medical/product/dbps_data/_material_/product/Infometion/tenpubunnsyo/2009/amlodin_tabodt_kaitei_0902.pdf
<自遊時間>
「血管」拡張剤を「欠陥」拡張剤としたサイトがありました。
故意か間違いかわかりません。
欠陥拡張剤ノルバスクの副作用は?
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa76826.html
<きょうの一曲>
小田和正 −たしかなこと −
http://www.youtube.com/watch?v=I-yHDph56Rk&hl=ja
オフコース小田 小田和正 ものまね
http://www.youtube.com/watch?v=caZaGikdGAQ&feature=related
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ (内科医向き)
があります。