戯れ言たれる侏儒
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心房細動(AF)のうち,発作性AFは肺静脈をターゲットとしたカテーテルアブレーションにより,多くの例で根治が得られるようになりました。
一方、持続性AFや慢性AFは肺静脈隔離だけでは効果が不十分なことから,AFの開始機序から持続機序に関して再び関心が高まっています。

きょうは、第25回日本心電学会(会長=新潟大学大学院器官制御医学講座循環器学分野・相澤義房教授 新潟市)のシンポジウム「心房細動の病態と治療の進歩」(座長=弘前大学大学院循環呼吸腎臓内科学講座・奥村謙教授,国際医療福祉大学大学院・熊谷浩一郎教授)の記事で,AFの病態と治療法に関する最新知見を勉強しました。

 

発症・維持に冠静脈洞も関与
AFにおける冠静脈洞(CS)の役割は,これまで十分に解明されていなかったが,岡山大学大学院循環器内科の森田宏氏はイヌ心房組織動脈灌流標本における検討から,CSはAFの持続中にリエントリー回路として関与している可能性が考えられたと報告した。

冠静脈洞の隔離によりAF発症を抑制
■胸郭内静脈系,特に肺静脈はAFのトリガーや基質となることから,カテーテルアブレーションによる隔離がAFの治療に有用である。
一方,CSに対するアブレーションでAF発症が予防されたとする少数の報告はあるものの,AFの維持,誘発に関するCSの関与はいまだ不明である。

■そこで,森田氏らは光マッピングシステムを用いて,動脈灌流を行ったイヌ心房筋組織(CS含む)の多点活動電位を記録し,CS筋層の電気生理学的性質やAFの発症・維持に関する役割を検討した。
 
■16組織においてCSの電気生理学的性質を検討したところ,CS筋層は心房組織と電気的に2か所(25%)ないし3か所(75%)で結合していた。
また,CS筋層とその心房結合部では左房心筋よりも遅い伝導速度を示した。高頻度ペーシングにより16例中14組織(88%)で一過性AFが誘発され(持続時間0.52~113秒),心房~CS間のリエントリーが認められた。CS~心房結合部の伝導遅延はAFを引き起こすリエントリー回路形成に関与していた。
 
■次に,アセチルコリンを投与したところ,心房およびCSの活動電位長は短縮し,高頻度ペーシングにより全例で持続性AFが発症した。
一過性AFに比べてアセチルコリン投与による持続性AFでは,心房?CS間のリエントリー回路としてCS入口部(CSos)~CS近位部(CSp)の連結が関与するもの,およびCSp(またはCSos)~CS遠位部の連結が関与するものが認められたが,さらにマーシャル静脈周辺およびCS内に新たなリエントリー回路が認められた。
このことから,CS筋層および心房との接合部はアセチルコリン投与による持続性AFの発症・維持に関与していると考えられた。
 
■さらに,カテーテルアブレーションによりCSを隔離したところ,AF誘発は困難となり,誘発されても持続時間が著明に短縮した。
しかし,CS隔離後もマーシャル静脈や肺静脈,心房中隔が関与した非持続性リエントリーが認められた。

進展に伴い炎症性マーカーが上昇
■AF患者では血中C反応性蛋白など炎症性マーカーが上昇しており,電気的除細動後の再発率などとの関連が報告されている。
心臓血管研究所(東京都)第三研究本部の山下武志部長は,炎症性マーカーの上昇は心房における炎症を反映するものであり,AFの進展に伴って心房筋への免疫細胞の浸潤が生じ,そのプロセスは動脈硬化に似ていると発表した。

心房内皮機能障害による白血球浸潤で局所炎症が惹起
■炎症性マーカーの変動は,全身に存在する臓器のいずれの炎症でも生じることから,山下部長らは開心術で得られた左心耳標本(発作性AF5例,慢性AF 11例)を用いて,AFを呈する心房筋における炎症の有無を免疫組織学的に検討した。
 
■全例の心内膜にUCHL1陽性白血球の浸潤が認められ,特に慢性AFでは浸潤が著明であった。
また,そのほとんどをCD68陽性のマクロファージが占めていた。これを心内膜側と心筋側に分けて比較すると,心内膜側でUCHL1陽性白血球およびHLA-DRβ陽性の活性型マクロファージが多く,成熟マクロファージのマーカーであるスカベンジャー受容体(MSR)の発現は心筋側に多く発現していた()。


 
■これらのことから,心内膜に単球が接着し,組織内に浸潤してマクロファージへと成熟していくと考えられた。また,発作性AFに比べて慢性AFではマクロファージの浸潤が著明でT細胞の浸潤も認められた。
 
■動脈硬化では白血球の浸潤は血管内皮機能の障害が関与しているが,AFにおいても白血球の浸潤に比例して内皮機能障害を示唆する接着分子(ICAM-1,VCAM-1,MCP-1)の発現が心房内膜に認められた。
特に,MCP-1の発現量は持続性AFで有意に亢進しており,心房内皮機能障害が発作性から慢性に移行するに伴って,血中の単球が心房筋内により浸潤することが示唆された。
 
■さらに,浸潤したマクロファージに一致して,炎症性病変を惹起させるインターロイキン(IL)-1,IL-10,トランスフォーミング成長因子(TGF)-βなどの炎症性サイトカインの発現が認められ,その発現量は持続性AFで亢進していた。
 
■AFの進展に伴って,心内膜側から免疫細胞が浸潤し,心房筋に炎症が生じる。
それは動脈硬化におけるメカニズムと似ている。ただし,免疫細胞が心房筋でどのような働きをしているかは不明である(山下部長)。

ACE阻害薬とスタチン併用療法は発作性AFの再発・慢性化予防に有用
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)がAFの再発予防や慢性化阻止効果を有すること,スタチンもAFの再発予防に有用なことが報告されており,発作性または持続性AFに対するアップストリーム療法として注目されている。

岩手医科大学内科学講座循環器・腎・内分泌内科分野の小松隆准教授は,発作性AF患者を対象としたACE阻害薬とスタチンの併用による長期予防効果の検討から,併用療法で発作性AFの慢性化だけでなく再発も予防しうることが示されたと報告した。

120か月にわたり長期予防効果
■これまでACE阻害薬やARBとスタチンの併用によるAFの長期予防効果を検討した報告はほとんどないことから,小松准教授らは発作性AFにおける両薬併用療法の長期予防効果を再発回数および慢性化回避率から検討した。
なお,AFが6か月以上持続し洞調律維持が確認されない場合をAFの慢性化と定義した。
 
■対象は発作性AF 319例で,薬物的あるいは電気的除細動により洞調律に復帰後,191例にはACE阻害薬およびスタチンのいずれも投与せず(A群),一方,81例(B群)にはACE阻害薬のエナラプリル単独投与を,また29例(C群)にはスタチンであるプラバスタチン単独投与を,18例(D群)にはエナラプリルとプラバスタチンを併用し,平均50.4±34.1か月観察した。

■患者背景は平均年齢でB群(70.4±8.1歳)と,A群(65.0±13.1歳)およびC群(66.8±9.8歳)との間に有意差が認められ,また高血圧患者の割合はB群(74.1%),D群(61.1%)と,A群(32.5%)およびC群(24.1%)との間に有意差が認められた。

■脂質異常症患者の割合は,C群およびD群では全例,A群およびB群ではなし。
左室拡張末期径はB群(48.1±5.3 mm)は,A群(45.0±5.7mm)およびC群(45.7±5.7mm)に比べて高値であった。左室駆出率はB群(65.1±12.2%)は,A群(69.8±10.2%)およびC群(70.6±9.4%)に比べて低値であった。
 
■観察検討の結果,D群のAF再発回数は0.6±0.9回で,A群(1.6±2.0回),B群(2.4±1.9回),C群(1.4±1.8回)のいずれと比べても有意な再発予防効果が認められた。
 
■観察期間120か月時点における各群のAF慢性化回避率は,A群73%,B群75%,C群86%,D群94%で,D群がA群に比べ慢性化回避率が有意に高率であった。
 
以上から,同准教授は「発作性AFにおけるACE阻害薬およびスタチンの両薬併用療法は,抗不整脈療法のアップストリーム療法として有用であり,発作性AFにおける慢性化および再発も予防できる可能性が示された」と結論付けた。

イソプロテレノール投与によるAF停止
アブレーションのエンドポイントになる可能性も
■AFは,加齢や高血圧などに伴うAF基質の増大とともに発症・持続しやすくなる。アブレーションに際し,持続性AFを誘発するためにイソプロテレノール(ISP)が用いられるが,若年者では検査目的などで誘発されたAFがISP投与により停止することもある。
埼玉医科大学国際医療センター心臓内科の原幹氏,松本万夫教授らは,「誘発されたAFがISP投与で停止するかどうかによりAF基質の程度が推定される可能性がある。ISPによるAF停止はアブレーションのエンドポイントとなる可能性もある」と報告した。

アブレーション施行後,ISP投与でAF停止率が有意に向上
■アブレーションを施行したAF 73例(AF群)と,AF以外の不整脈に対する心臓電気生理検査中に持続性AF(5分以上)が誘発された32例(非AF群)それぞれにISPを投与し,AF停止効果を検討した。
 
■その結果,ISP投与によりAFが停止(洞調律または粗動化)したのは,非AF群では32例中15例(47%)で,非心房粗動は45歳以下では91%(11例中10例)と高率に停止したが,心房粗動患者ではAFの停止率は8%(12例中1例)と低率であった。
 
■一方,AF群におけるISP投与によるAF停止率は,アブレーション施行前の5%(58例中3例)に対し,施行後は56%(36例中20例)と有意に増加した()。

 

■アブレーション施行後,ISP投与によりAFが停止した患者について,AFの持続時間別に見ると,発作性AF(1週間以内に自然停止)では73%(15例中11例)と高率であったが,持続性(1週間以上持続,薬剤または電気的除細動で停止)は53%(17例中9例),慢性(1年以上持続)では9%にすぎなかった。
 
■なお,ISP投与によるAF停止率の差は,AFの発症・維持のメカニズムの相違が関与していると考えられる。
すなわち,若年者などでは複数の不安定なリエントリー回路がAF持続に関与すると考えられるのに対して,加齢や高血圧などにより心筋の線維化などのAF基質が形成されると,少数の安定したリエントリー回路がAFを維持するため,ISPを投与してもAFが停止せずに持続するのではないかと推測される。
 
■これに関連し,ISP非投与下でアブレーションを施行した場合,AF停止率は発作性で53%(32例中17例),持続性15%(20例中3例),慢性8%(12例中1例)であったのに対し,ISP投与下で施行すると,AF停止率は発作性で100%(5例中全例),持続性67%(6例中4例),慢性0%(2例中なし)との結果も得られた。

高周波ホットバルーンカテーテルによる全肺静脈を含む左房後壁隔離術
90%が無投薬下でAFが消失
■AFの多くは発症源が静脈洞から派生する肺静脈を含む左房後壁にある。葉山ハートセンター(神奈川県)不整脈センターの曽原寛部長は,AF患者96例に高周波ホットバルーンカテーテルによるPV-PLA領域の隔離(Balloon based BOX isolation)を施行した結果,術後平均11か月時点で約9割が無投薬下でAFが消失したと報告した。

左房・食道瘻など重篤な合併症を認めず

■連続96例のAF患者において,高周波ホットバルーンカテーテルを用いてPV-PLA領域を隔離するBOX isolationを施行し,その有効性および安全性を検討した。
なお術式は,各PV前庭部にバルーンを楔入して全PVの隔離を行い,バルーンをドラッグしながら天蓋部の上肺静脈間とPLA下部の下肺静脈間に連続性ブロックラインを形成するというものであった。
 
■その結果,96例全例でPV-PLA領域の隔離に成功した()。

■アブレーションに要した総透視時間は平均32±9分,総施術時間は平均133±31分であった。
なお,左上肺静脈前庭部初回通電中に一過性の洞停止や洞性徐脈,房室ブロックが出現したケースもあったが,心室ペーシングにより対応した。
また,左肺静脈通電中に食道温度の緩徐な上昇が認められたが,41℃以上に上昇した場合にはバルーンの設定温度の下方修正と食道への冷却水注入により対処した。
 
■アブレーション1セット終了後平均11±4か月の成績は,発作性AFでは63例中59例(93.8%)が無投薬下でAFが消失し,残り4例中3例も投薬下で洞調律が維持され,1例は心房頻拍で再アブレーション(CARTO roof gap)にて根治した。

■一方,持続性AFの33例では,28例(84.8%)が無投薬下でAFが消失し,4例は投薬下で洞調律を維持,1例は心房頻拍で再アブレーション(CARTO LSPV RIDGE)にて根治した。
 
■脳梗塞,症候性肺静脈狭窄,左房・食道瘻などの重篤な合併症は認められなかった。
1例で右上肺静脈前庭アブレーション中に一過性の横隔膜麻痺が出現したが,通電中止により回復した。
 
■以上の成績から,同部長は「高周波ホットバルーンカテーテルによる肺静脈~左房後壁領域の隔離,いわゆるBalloon based BOX isolationは発作性および持続性AFの治療に有用で安全である」と結論付けた。

出典 Medical Tribune2009.2.12
版権 メディカル・トリビューン社

<自遊時間>
臨床研修制度の見直し,新風吹き込むか
魅力あるプログラム作成で研修医獲得を
同検討会では,地域医療に携わる医学部関係者を中心に,卒後2年間の初期臨床研修中に多くの診療科で研修を行うローテーション,あるいは研修医療施設を決めるマッチングシステムなどが招いた問題点が挙げられ,これらの今後のあり方について検討を行ってきた。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0902/090213.html

これが「地域医療に携わる医学部関係者」のお歴々です。

検討会出席者(2009年2月18日の検討会座席表より)
舛添要一厚生労働大臣
塩谷立文部科学大臣
座長・高久史麿氏(自治医科大学学長)
座長代理・小川秀興氏(学校法人順天堂理事長)
飯沼雅朗氏(蒲郡深志病院長)
大熊由紀子氏(国際医療福祉大学大学院教授)
小川彰氏(岩手医科大学学長)
嘉山孝正氏(山形大学医学部長)
齋藤英彦氏(名古屋セントラル病院長)
辻本好子氏(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)
永井雅巳氏(徳島県立中央病院長)
西澤寛俊氏(特別医療法人恵和会西岡病院理事長)
能勢隆之氏(鳥取大学学長)
福井次矢氏(聖路加国際病院長)
武藤徹一郎氏(癌研有明病院名誉院長)
矢崎義雄氏(独立行政法人国立病院機構理事長)
吉村博邦氏(社団法人地域医療振興協会顧問)
<参考ブログ>
かえる切り抜き帖 2008.5.18
http://wellfrog.exblog.jp/tags/医師不足/

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 
 「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~
http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/  (内科医向き)
があります。

 

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