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LDL-コレステロール(LDL-C)と同様にHDL-コレステロール(HDL-C)は動脈硬化性疾患との関連性が示されていますが,HDL-C を増加させるための介入方法や介入意義などについては,依然として不明な点が多くあります。
きょうは、このHDLと動脈硬化の関連性および治療の展望についての座談会の記事で勉強しました。。
動脈硬化とHDLを考える
住友病院
松澤 佑次 院長(司会)
帝京大学内科学
寺本 民生 教授
大阪大学医学部附属病院
山下 静也 病院教授
Heart Research Institute, Australia
Professor Philip Barter
心血管疾患のリスクとなる低HDL-C血症
松澤
最初にBarter 先生に動脈硬化とHDL の関連性についてお話しいただけますか。
Barter
動脈硬化性疾患とHDLの関連性は,すでに1980年代にFramingham heart study で報告されています。
当時,低HDL-C血症の男女では心血管疾患(CVD)のリスクが増加し,HDL-CはLDL-Cから独立したCVDの予測因子であるとして注目を集めました。
また,ストロングスタチンのイベント抑制作用を検討した大規模臨床試験TNTのサブ解析では,LDL-C値が70mg/dL未満と強力にコントロールされている症例であっても,HDL-C が低い患者(<42mg/dL)では心血管イベントが増加することが判明し,低HDL-C血症がCVDの独立したリスク因子であることが示されました(図1)。

松澤
LDL-Cを低下させるだけでなくHDL-Cも上昇させる治療が重要ということですね。
HDL-Cを上昇させるにはどのような方法が考えられますか。
Barter
生活習慣の改善が最も効果が高く,食事,運動,禁煙といった生活習慣の改善で20~25%のHDLC上昇が期待できます。
しかし,現実には生活習慣の改善は容易ではないのが実情で,少なからぬ症例が将来的にスタチン,フィブラート,ニコチン酸などの製剤に頼らざるをえないと思います。
スタチンでは3~
12%のHDL-C上昇が期待できますが,種類や用量によって効果が大きく異なることが特徴です。なぜこのような差が出るのかはまだわかっていません。
日本人におけるピタバスタチンのエビデンス
松澤
スタチンごとに差があるというのは興味深い事実ですね。
スタチンによるHDL-C 上昇作用に関して,日本人の成績はいかがでしょうか。
寺本
ピタバスタチンの大規模プロスペクティブ調査「LIVES Study」から興味深い知見が得られたのでご紹介したいと思います。
LIVES Studyでは日本人の高コレステロール血症患者約20,000例にピタバスタチン1~4mg/日を約2年間投与しました。
LDL-Cは約30%低下し,最終評価時のLDL-C到達値も平均で112mg/dLとなり,動脈硬化性疾患の高リスク症例に対しても優れた脂質コントロールを示しました。
また,HDL-C値は有意に上昇し,さらに低HDL-C血症(投与前値40mg/dL未満)患者ではピタバスタチンによって投与前HDL-C 値35mg/dLが,最終評価時で42mg/dLとなり,変化率も有意に約20%上昇しました(図2)。

Barter
平均で約20%の上昇が認められたというのは低HDL-C血症例ということを差し引いても高い上昇率ですね。
寺本
はい。
特にCVDの発症リスクの高い糖尿病患者などの症例では低HDL-C血症も多く,それがCVDのリスクになりますので,HDL-C上昇は大きな利点と考えています。
LIVES Studyでは患者全体と低HDL-C血症例の両方でHDL-Cの上昇が2年間持続しました。
Barter
従来,スタチンの長期効果を検討した試験では,いずれもHDL-C上昇率は6~12週でピークに達し,その後は一定または低下という結果でした。
HDL-Cの上昇率だけでなく作用の持続性にも差があると考えたほうがよいかもしれません。
スタチンによるHDL-C上昇にアディポネクチンが関与
松澤
スタチンによるHDL-C上昇メカニズムからこうしたスタチン間のHDL-C上昇作用の違いを説明できないのでしょうか。
山下
スタチンによるHDL-C上昇(図3)は,一般に肝臓でのアポA-I産生やコレステロールトランスポーターであるABCA1発現の亢進によるものです。

そのほか,リポ蛋白リパーゼの活性化を介したTG-richリポ蛋白(VLDL,IDL)異化亢進や,マクロファージからのコレステロール汲み出しに重要な役割を果たすスカベンジャー受容体SR-BIおよびABCA1の発現亢進も示唆されています。特に注目したいのは,ピタバスタチンをはじめとする一部のスタチンにおいて血中アディポネクチンが著明に増加する点です(図4)。

アディポネクチンは肝臓でのアポA-I産生やABCA1発現の亢進を介してHDL-C生成を促進し,マクロファージに対してはABCA1発現を亢進させてコレステロール逆転送系を活性化します。さらに,VLDL分泌を抑制して血中TGも低下させることが知られています。
松澤
アディポネクチンを増加させるというピタバスタチンのデータは興味深いです。
こういった作用がスタチンによるHDL-C上昇効果の差に関与している可能性がありますね。
低HDL-C血症の治療ではHDL機能の改善も重要
山下
通常,HDL は抗酸化作用や抗炎症作用を持つ「Functional HDL」ですが,感染,心疾患,糖尿病,メタボリックシンドローム,喫煙,慢性腎臓病などの要因によって「Dysfunctional HDL」に変化する可能性があります。
このDysfunctional HDLは炎症やLDLの酸化を促進しますから,低HDL-C血症の薬物治療ではHDLの質的な改善も必要となります。
松澤
HDLのおもな機能は余分なコレステロールを末梢から肝臓に運ぶ逆転送系ではないのでしょうか。
山下
実際にはHDL-Cが高い患者さんでもCVDの発症がみられますから,抗炎症作用や抗酸化作用などの機能に差があると考えています。
ピタバスタチンではHDL上に存在し,LDLやHDL自体の酸化を抑制するParaoxonase1(PON1)を用量依存的に上昇させることが示されていますが,こうした多面的な機能が重要だと思います。
Barter
HDL機能に対する作用もスタチンによって異なる可能性がありますね。
しかしながら,現時点ではHDLの機能までは評価できないのが悩ましいところです。
松澤
単純にHDLを上昇させても予後を改善できないということがCETP阻害薬の大規模研究から明らかになっていますが,HDLの機能はこの問題を解く鍵になるかもしれませんね。
出典 MT pro 2009.1.22 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<参考サイト>
LDL-C低下療法では「HDL-C同時上昇」を目指す
http://www.m3.com/news/GENERAL/2008/11/28/87691/?pageFrom=m3.com
動脈硬化性疾患にオーダーメード対応するため、「LDLコレステロール(LDL-C)/HDLコレステロール(HDL-C)比」を指標に治療戦略を組む循環器専門医が増えている。1次予防ではこの比率を「2.0未満」に、2次予防では「1.5未満」にそれぞれ下げることで、動脈硬化性疾患の発症抑制が期待されるためだ。LDL-CをHDL-Cで除しただけの簡便な指標であるため、有効なサロゲートマーカーとしてプライマリケアでの普及が望まれる。
■2008年9月にドイツ・ミュンヘンで開かれた欧州心臓病学会(ESC)の学術集会では、北海道のケースコントロール研究(発表者 佐久間一郎先生)が発表されており、日本人においても「LDL-C/HDL-C比」を用いた治療戦略が有用である可能性が示された。
■冠動脈疾患の1次予防は、LDL-C/HDL-C比を「2.0もしくは1.5未満」に下げることにより達成される可能性がある。(佐久間先生)
■AMIを起こした患者群では「LDL-C正常かつ低HDL-C」であったり、「LDL-C/HDL-C比が高値」である割合が、コントロール群に比べて高かった。(佐久間先生)
■ACS患者のうち38%はLDL-C値が100mg/dL未満。(小倉記念病院)
■LDL-C値が低くても、AMIや急性冠症候群(ACS)を発症する人は少なくない。日本人のAMI・ACS初発入院患者のうち、30-40%程度がLDL-C値が100mg/dLを下回っている。
■LDL-C値が100mg/dL未満は、AMI群で30.3%、コントロール群で18.9%。(佐久間先生)
■LDL-Cが低値であっても、一定の割合で冠動脈疾患が起こることが全国的な傾向として知られている。
■従来のようにLDL-Cだけを見ていたのでは、動脈硬化の進行を見落としかねないというのが循環器専門医の間では常識化されつつある。
■LDL-C平均値では両群間に差はなかったが、AMI群のHDL-C平均値は低く(P<0.001)、LDL-C/HDL-C比は高い。(P<0.001)(佐久間先生)
■LDL-C値単独では、男女ともに予測因子としての有用性は見いだせなかった。(佐久間先生)
■動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは高リスク者の1次予防の目標値をLDL-C120mg/dL未満としているが、AMIの初発患者の半数が120mg/dLを下回っていた。(佐久間先生)
■HDL-Cについては40mg/dL以上が目標とされているが、40mg/dL台はすでに危険だと考えるべきである。(佐久間先生)
■LDL-C/HDL-C比は、1次予防で「2.0未満」、2次予防および1次予防でも糖尿病や高血圧に罹患している場合には「1.5未満」を目指すことが望ましい。
<自遊時間>
価格と中身と音色はそれぞれ不等号
http://wwgun.exblog.jp/6170448/
ゴールドムンドGOLDMUNDの真実(おまけ)
http://homepage1.nifty.com/iberia/column_audio_goldmund.htm
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