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昨日(1月19日)、ボジョレヌーボーのノリで2社のMRさんから「刷りたて」の「高血圧治療ガイドライン2009」をいただきました。
一つは保存用に、もう一つは切り抜き用に使う予定です。
保存といっても、今後新しい「高血圧治療ガイドライン20○○」が出れば何の意味もなくなり廃棄の運命となります。
当面の興味はどこが改訂されたかというところです。
しかし、測定するたびに異なる数字の出る血圧測定値。
ウナギやドジョウのようにつかみどころがないと言ってしまえばそれまでです。
そのことには触れないのが、この業界の礼儀のようで、以前に、ある講演会で「そのこと」を質問してしまい気まずい空気を作ってしまいました。
今回のガイドライン作成委員会の一員である自治医科大学循環器内科 苅尾七臣氏教授に,実地診療における意味と今後の展望について聞いたQ&Aの記事で勉強しました。
この中の「降圧目標値」もウナギのような気もするのですが。
家庭血圧の降圧目標値新設の意味は?
「高血圧治療ガイドライン2009」今日発刊
■日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2009」が2009年1月16日に発刊された。
■5年ぶりとなる今回の改訂では,既報のように,糖尿病合併高血圧の治療方針の変更などが注目されるが,家庭血圧の降圧目標値が新設されたことも臨床的に重要な改訂点のひとつである。
エビデンスは不十分だが臨床上の不都合解消を優先
Q.
今回の新しいガイドラインでは,前回明記されていた家庭血圧の診断基準値に加え,降圧目標値が新設された(表1)。これについては,委員会のなかでどのような議論がされたのか。
A.
家庭血圧の具体的な降圧目標値の設定は,今回の改訂作業のなかで,重要なテーマのひとつだった。
前回ガイドラインでは降圧目標値について,診察室血圧に基づいて若年者・中年者130/85mmHg未満,糖尿病・腎臓病患者130/80mmHg未満などとしていた。
一方,家庭血圧については高血圧の診断基準として135/85mmHg以上を設定していたが,降圧目標値は明記していなかった。
そのため,診断基準閾値を降圧目標値と解釈されることもあり,その場合には,家庭血圧の降圧目標値のほうが診察室血圧の降圧目標値より高くなってしまう。
同じ条件で測定すると,家庭血圧は診察室血圧に比べ低くなるのが普通だから,“逆転現象”が生じていたわけで,実地臨床上はなはだ不都合だった。
特に,より厳格な降圧管理が求められる心血管疾患のハイリスク群たる糖尿病・腎臓病合併例では大きな問題であった。
そのために今回の改訂では,診察室血圧に基づく降圧目標値よりそれぞれ5mmHgずつ低い値(若年者・中年者125/80mmHg未満,糖尿病・腎臓病患者125/75mmHg未満)を家庭血圧に基づく降圧目標値として新設した。
ただし,この値は診断基準値における診察室血圧と家庭血圧の差(5mmHg)をそのまま降圧目標値に適用したもので,エビデンスに依拠しているわけではない。
それは,家庭血圧に関する観察研究は豊富で,特に日本の研究は世界に誇れるレベルにあるものの,介入研究の成績は国内外ともに乏しいためである。
診断基準値の設定は観察研究によって可能であるが,降圧目標値の設定には介入研究の蓄積が必要である。
一方,家庭血圧の普及が進むなかで,実地医家からは家庭血圧の目標値を望む声が寄せられており,そうした要望に応える必要もあった。
臨床上の不都合解消を優先したいわば暫定措置である。
ハイリスク群ほど低く―目標値の妥当性検証は今後の課題
Q.
海外のガイドラインで,家庭血圧に関して注目される動向はあるか。
A
2007年に改訂された欧州高血圧学会(ESH)/欧州心臓病学会(ESC)の高血圧管理ガイドラインでも家庭血圧の意義が強調されているし,家庭血圧を軸に診療体制を構築しようというのは国際的な流れだと言える。
ただ,この時も今回の日本と同様の議論が行われたが,やはりエビデンスが不十分ということで,家庭血圧に基づく降圧目標値の設定は見送られた。
Q.
やや見切り発車的ながらも,世界に先駆けて,家庭血圧の降圧目標値を設定したわけだが,そのことは今後どのような影響を及ぼしそうか。
A.
今回設定した値はエビデンスに基づくものではないが,具体的に降圧目標値を設定したことで,実地診療においては,ハイリスク群ほどより低く血圧をコントロールするという意識が高まることが期待され,その意義は大きいと思われる。また,今後の臨床研究にも弾みがつくかもしれない。
今回設定した値はエビデンスに基づくものではないが,具体的に降圧目標値を設定したことで,実地診療においては,ハイリスク群ほどより低く血圧をコントロールするという意識が高まることが期待され,その意義は大きいと思われる。また,今後の臨床研究にも弾みがつくかもしれない。
そもそも,積極的な降圧療法を行えば,糖尿病患者などの多くを家庭血圧125/75 mmHg未満にコントロールすることは可能なのか。
可能だとしたら,その場合,臓器障害改善の面でどのような効果が得られるのか,あるいは安全性はどうか,などを明らかにする必要がある。
観察研究における心血管イベントと血圧レベルの関係を見ると,至適な降圧目標値はさらに低い可能性すら示唆されるが,まずは今回設定した125/75 mmHgの妥当性を介入研究によって検証する必要がある。
125/80mmHgと135/85mmHgの間をどう捉えるか―ABPMの勧め
Q.
診察室血圧より家庭血圧のほうが予後予測能に優れていることは多くの研究によって明らかだと思う。
そのことから考えると,ガイドラインの核心である「血圧に基づいた脳心血管リスク分類」(表2)も家庭血圧に基づいて作成してもよいのではないか,とも思うが,今回の改訂ではそのような議論はなかったのか。
A.
現状では家庭血圧にそこまでのエビデンスがなく,大きな議論にはならなかった。
また,家庭血圧は普及しつつあるとはいえ,測定方法や測定値管理の適切さという意味ではまだまだ不十分である。医師の間でも,前回ガイドラインで明記されている家庭血圧の診断基準値が広く十分に認識されているとは言えない。
このような状況で,今ただちに家庭血圧を軸とした診療体制に移行したら,臨床現場に混乱を来たすことになると思われる。
現段階では診察室血圧に基づいた診療体制を保持し,エビデンスの蓄積,家庭血圧やその測定・管理法に関する知識の浸透を待つべきだと判断した。
測定値の管理・蓄積に優れた,簡便で安価な家庭血圧計の開発・普及も期待される。
そうした条件が揃えば,家庭血圧に基づいたリスク分類を作成することも可能になるだろう。
エビデンスの蓄積という意味では,東北大学の今井潤先生が進めているHOMED-BP研究,私たちが行っているJ-HOP研究など,日本でも家庭血圧を指標とした有望な研究が進行中である。
次回改定では,これらの結果を踏まえ,より突っ込んだ議論が展開できるかもしれない。
Q.
ガイドラインでは家庭血圧に基づく正常血圧の基準として, 125/80mmHg未満を提示している。
そうすると,125/80mmHgと135/85mmHgの間が高血圧でも正常血圧でもないグレーゾーンとなるが,このレベルの患者の管理はどうするべきか。
A.
その血圧レベルの患者では,測定した他の時間帯で高血圧となっている可能性を疑うべきである。
この血圧レベルが診察室血圧のどのレベルに対応するのかを考えることも必要だが,実地臨床上は他の時間帯の血圧を測定することが重要だと思う。
その意味で,そのような患者には一度,昨年(2008年)から保険適用になった自由行動下24時間血圧測定(ABPM)を行うことも有意義だと言える。
家庭血圧を測定することにより,診察室血圧だけではマスクされていた仮面高血圧を発見することができる。
しかし,家庭血圧でもマスクされている高血圧も少なくない。
ABPMによって夜間や動作時の血圧を知ることができ,24時間を通じた完璧な血圧管理を目指すためには不可欠である。
特に,糖尿病合併例などハイリスク患者では行う価値が高いと思われる。
あるいは診察室血圧や家庭血圧で降圧目標が達成できた場合,本当に24時間を通じた降圧が達成できているかどうかを確かめるような場合も,ぜひABPMを試みていただきたい。
ABPMについてもエビデンスの蓄積が必要である。
私たちは,ちょうど今月からJAMPという,ABPMを用いた追跡研究を全国規模で開始したところである。
出典 MT pro 2008.1.16
版権 メディカル・トリビューン社
JAMPについて
ABPMによる追跡研究JAMPがスタート
全国から参加施設を募集中
■自由行動下24時間血圧測定(ABPM)を用いた追跡研究JAMPがこの1月からスタートした。
自治医科大学循環器内科(苅尾七臣教授)に事務局を置き,全国から参加施設を募集している。
心血管疾患ハイリスク患者1万人を5年間追跡
ABPMは24時間を通じた血圧変動を把握でき,今回のガイドライン2009でも心血管疾患の発症リスクを把握するうえでの有用性が強調されている。
そして昨年(2008年)には保険適用にもなった。
これまで実施されたABPM研究は比較的小規模で,対象地域も限定され,日常診療においてABPMをどのような集団に,どの指標を用いて行うべきかは明確でない。
このようなことから,全国ABPMバンクを作成し,ABPMに関するエビデンスの構築を目指そうというのがJAMP研究の趣旨だ。
具体的には,全国で1万人の心血管疾患ハイリスク患者を登録し,心血管イベントの発生の有無を5年間追跡する。「24時間血圧のどの構成成分が,どの心血管疾患の発症予測に重要であるかを明らかにしたい」と苅尾氏は語る。
全国から患者を登録することで,血圧日内変動パターンの地域差などもわかるかもしれないという。
参加申込み
自治医科大学循環器内科内JAMP研究会事務局(電話0285-44-2130,E-mail: abpm@jichi.ac.jp)
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。