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高血圧治療の最終目的は,臓器合併症および死亡率の抑制にあります。
降圧治療による臓器障害予防のためには,降圧レベルをどこに設定するかということ以外に,個々の病態によって降圧薬を使い分ける必要があります。
さりとて、十分な降圧が大前提にあることは論を待ちません。
周知のように、ACE阻害薬は降圧効果以外に,心血管保護作用,脳保護作用,腎保護作用,抗動脈硬化作用などの臓器保護作用が知られています。
心保護作用と脳保護作用のそれぞれ2つの観点から,ACE阻害薬の作用メカニズムや臨床的エビデンスについて解説した記事で勉強しました。
ARBではなくACE阻害薬の話題は久しぶりのような気がします。
ACE阻害薬の臓器保護作用を考える
心不全とACE阻害薬
東京慈恵会医科大学教授 吉村 道博 氏
心不全の治療にはACE阻害薬が最適
■アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は,アンジオテンシンII(AT II)の産生を阻害して血管拡張により血圧を低下させるが,一方で,ブラジキニンを増加させ,一酸化窒素(NO)の合成を促進する。
■NOは抗動脈硬化作用を有する善玉因子であることから,ACE阻害薬は広い範囲の循環器疾患に有効である可能性がある。
■心不全においては,交感神経系およびRAA系の活性化により血管収縮と血液量の増加が惹起され,前負荷,後負荷がともに増大する。
心不全の治療では,RAA系抑制薬をはじめ,このサイクルを抑制する薬剤の使用が考えられる。
■心不全においては後負荷軽減が重要でありACE阻害薬もARBも有用と言えるが,あまり直接的にAT1受容体をおさえると血圧低下を起こしやすい。
ACE阻害薬はAT IIの作用を完全には抑制しないところが心不全に使いやすいことと関係しているのかもしれない。
<コメント>
ARBはACE阻害薬より降圧効果が強いと言っているようにも聞こえますが、そういった認識でいいのでしょうか。
■脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が高い拡張型心筋症患者にACE阻害薬を投与し,途中の増量によりBNPのさらなる低下が認められた〔Yoshimura M, et al. Am J Med 2002; 112: 716-720〕。
心不全治療ではACE阻害薬の可能な限りの増量が望ましい。
ペリンドプリルは動脈硬化性疾患にも有用
■EUROPA試験では,心不全のない低リスク冠動脈疾患患者を対象とし,主要評価項目(心血管死,心筋梗塞,心停止)の抑制について検討した。
ペリンドプリル群はプラセボ群に対し,主要評価項目を有意(p=0.0003)に抑制(図1),その後の心不全の発症も有意(p=0.002)に抑制した。
■動脈硬化性疾患にもペリンドプリルは有用である。
■冠動脈疾患イベント抑制効果において,ARBに対しACE阻害薬は優位性がある(BPLTTCによる降圧治験のメタ回帰分析 図2)。
■ACE阻害薬による咳は心不全患者では発現しにくい。
心不全をACE阻害薬で治療すると,かなりよくなってから咳が発現することがある。
咳は言わば心不全治療のマーカーになる。
ACE阻害薬の臓器保護作用
広島大学教授 松本 昌泰 氏
厳格な血圧コントロールにより虚血性脳卒中の制圧を
■虚血性脳卒中はアテローム血栓性疾患の1つであり,日本人においては,心筋梗塞よりも発症率が高いと報告されている。
■同氏らが長期にわたって実施しているコホート研究の成人健康調査(Adult Health Study:AHS)の結果から,「脳卒中の発症予防には,血圧の厳格なコントロールが極めて重要である」と述べた。
ペリンドプリルに認知症の発症予防効果を期待
■高血圧との関連が指摘されているアルツハイマー型認知症の発症抑制に降圧治療,特にRAS阻害薬と利尿薬の組み合わせが有効である。
■80歳以上の認知症患者に対してペリンドプリル+インダパミド(実薬),プラセボを投与し,認知症発症抑制作用を比較したHYVET-COG(Peters R, et al. Lancet Neurol 2008; 7: 683-689)では,実薬群で認知症の発症リスクが14%低下した。
■PROGRESSではペリンドプリルを基礎治療薬とした群で脳卒中再発後における認知症の発症を50%抑制したと報告されている(図1)。
■ペリンドプリルの投与により,脳梗塞患者の脳血流がベースとして増えているとの報告もされている。
■高血圧合併アルツハイマー型認知症患者にペリンドプリルを投与したところ,脳脊髄液中のACE活性は有意に低下し(図2),MMSEスコアの低下率は他のACE阻害薬やCa拮抗薬と比べて小さかったという報告もあり,ペリンドプリルには何らかの脳保護作用の存在が示唆される。
■PROGRESSサブスタディーでは東洋人の誤嚥性肺炎を,実薬群がプラセボ群に対して有意に抑制しており,これはサブスタンスPの分解抑制効果によるという。
■高血圧治療の目的は,まず脳保護,次いで心保護,腎保護であり,脳保護作用の可能性が示唆されているペリンドプリルは,高血圧患者の予後改善に大きく貢献することが期待される。
出典 Medical Tribune 2009.1,8
版権 メディカル・トリビューン社
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
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