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周知のごとく日本高血圧学会は,高血圧治療ガイドライン2004年版の改訂版として,2009年版(JSH2009)を発表しました。 前回からの5年の間にいくつかの重要な大規模臨床試験が行われ、新たなエビデンスが見つかっています。 おもな改訂点としては,血圧分類に正常高値血圧を,危険因子にメタボリックシンドロームと慢性腎臓病(CKD)を加え,それらを含めてリスク分類を刷新したことが挙げられています。 また,家庭血圧測定の意義がより強調され,家庭血圧による降圧目標が初めて設定されたことも注目されています。 きょうは野田医院(東京都)の野田汎史院長のインタビューを交えた記事で勉強しました。
高血圧治療ガイドラインが改訂 改訂ポイントを踏まえた,これからの高血圧診療への対応
正常高値血圧からリスク層別化し早期の治療的介入を図る
■正常高値血圧をリスク分類に加えることにより,より早期から厳格な降圧を図る姿勢が強く打ち出されている(野田氏)。
実地医家の意見をよく反映
■日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン作成の基本方針は,専門医だけでなく実地医家でも,日常診療で十分に活用できることである。
JSH2009でもこの基本方針は踏襲され,そのために,改訂作業に際しては実地医家の意見がおおいに参考にされた。
■具体的には,ガイドライン作成委員会による改訂案がウェブ上で公開され,それに対して実地医家が自由に意見を述べられるようにしたことである。
■実際に,JSH2009の改訂点の1つである家庭血圧による降圧目標の設定は,実地医家からの強い要望を受けたものである。
正常高値血圧を加えてリスク分類を刷新
■JSH2009における大きな改訂点の1つは,リスク分類が刷新されたことである(表1)。
まず,血圧分類に新たに正常高値血圧(130〜139/85〜89mmHg)が加わり,従来の3群分類が4群分類となった。
なお,従来の血圧分類における軽症・中等症・重症高血圧という名称は,それぞれI度・II度・III度高血圧と変更された。
■血圧以外の心血管病の危険因子としては,新たにメタボリックシンドロームとCKDが加わった。
血圧以外の心血管病の危険因子はリスク第一層〜第三層に分類され,これと血圧分類との組み合わせで心血管リスクは,
(1)付加リスクなし
(2)低リスク
(3)中等リスク
(4)高リスク
−の4群に層別化された。
■正常高値血圧であってもメタボリックシンドロームを伴うリスク第二層は中等リスク,糖尿病,CKD,臓器障害,心血管病などを伴うリスク第三層は高リスクと判定され,治療の対象となる。 特に高リスク群では生活習慣の修正と同時に,直ちに降圧薬治療が開始される。
■現在のところ,正常高値血圧に対する降圧薬治療開始の妥当性を示す確固たるエビデンスは存在しない。
しかし,正常高値血圧が至適血圧(<120/<80mmHg)や正常血圧(<130/<85mmHg)に比べて心血管病の発症率が高いことは,内外の疫学研究から明らかだ。
■心血管病のさらなる予防を期すためには,軽症高血圧(140〜159/90〜99 mmHg)から介入したのでは遅いという感覚は,多くの臨床家が抱いていた。
正常高値血圧をリスク分類に加えることで,より早期からの治療的介入を図る姿勢が強く打ち出された(野田氏)。
正常高値血圧でも高リスク例は臓器障害の把握を
■血圧分類に正常高値血圧が,危険因子にメタボリックシンドロームとCKDが加わったことで,高血圧診療におけるリスク層別化には,これまで以上に留意すべきことが多くなった。
特に正常高値血圧におけるリスク層別化には,とまどう面も出てくると思われる。
■高血圧の診断は,問診,身体所見,臨床検査の組み合わせにより行われる。
問診では,現病歴,治療歴,家族歴などに加えて,できるだけ生活習慣の把握に努めることが重要である。
臓器障害や心血管疾患の病歴を聴取することも忘れてはならない。
■身体所見では,血圧は言うまでもなく,身長・体重を測定し,BMIを算出して,全身性肥満の程度を評価する。
腹囲を測定し,メタボリックシンドロームの存在の把握にも努める。
■臨床検査は個人の心血管リスクの総合評価と,二次性高血圧の診断につながる検査を,費用効果を考慮して行う。
■JSH2009では,高血圧患者の初診時と降圧療法中に少なくとも年1回は実施すべき一般検査として,尿検査,血液検査としては血球検査のほか,血液尿素窒素,クレアチニン,尿酸,Na,K,Cl,トリグリセライド,HDLコレステロール,総コレステロール,LDLコレステロール,空腹時血糖,GOT,GPT,γGTP,eGFR(mL/分/1.73㎡)を挙げている。
■胸部X線写真(心胸郭比),心電図(左室肥大,ST-T変化,心房細動などの不整脈)も必須である。
■正常高値血圧であっても糖尿病や心血管病のある高リスク例では,臓器障害の評価も必要になる。 そのためには,HbA1C測定や眼底検査,微量アルブミン排泄量測定なども推奨される。
■心臓の評価では心臓エコー,血管の評価では頸動脈エコーや脈波伝播速度(PWV)の有用性が非常に高い(野田氏)。
検査を介して治療へのモチベーションアップを
■高血圧の診断では,本態性高血圧と二次性高血圧を鑑別することも重要な課題である。 問診,身体所見,臨床検査などから内分泌性高血圧が疑われる際の精査としては,血漿レニン活性,血中アルドステロン,コルチゾルなどの測定,腹部エコーなどがある。
■最近の研究で,これまで本態性高血圧とされてきたもののなかにも,原発性アルドステロン症(PA)による二次性高血圧が多く含まれていることが明らかになってきた。
■睡眠時無呼吸症候群による二次性高血圧が疑われる際には,夜間経皮酸素分圧モニタリングや睡眠ポリグラフィーの精査が望まれる。
■臨床検査で実地医家が心がけておきたいもう1つのことは,検査をしたら,その意義を患者によく説明することである。
■検査は,それを介して患者さんの病識を高め,治療へのモチベーションを高める絶好の機会。このことに時間を惜しまないことが,結局は患者さんと医師の信頼関係を築き,治療をよりよい方向へ導く(野田氏)。
<関連サイト>
高血圧治療ガイドライン2009 その1(1/2) http://blog.m3.com/reed/20090123/_2009
高血圧治療ガイドライン2009 その2(2/2) http://blog.m3.com/reed/20090124/1
出典 Medical Tribune 2009.1.29
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編> PROBE法の功罪
(東京北社会保険病院臨床研修センター 名郷直樹センター長)
■PROBE prospective randomized open blinded endpointの略
■従来のRCTでは,患者も医師も割り付けが知らされていない二重盲検法が採用されている。
これに対し,最近の日本のRCTでは患者も医師も割り付けを認識しているが,アウトカムの評価者が割り付けを知らないPROBE法が採用されている。
■日本でPROBE法がよく用いられるのは、コストの問題もあるが,既に保険の認可を得た薬剤を用いた介入試験でプラセボとの比較を行うのは制度上無理があるため(名郷センター長)。
■利点は,日常臨床に近い設定であることが挙げられる。
二重盲検の場合は,通常の診療では使用されることのないプラセボ薬が投与されるが,PROBE法では治療群と未治療群に分かれているため,患者の心理効果も含めた実際の治療全体の効果を見極める点では二重盲検より適していると言える。
■PROBE法の問題点は,医師・患者が割り付けを知っているが故の情報バイアスである。
■試験を実施する医師が患者の割り付けを知っているため,イベントの発生を判定する際にバイアスがかかりやすい。
■心筋梗塞や脳卒中,死亡といっただれでも判断できるエンドポイントについては問題がないが,心不全による入院や血行再建術など,医師の判断によって左右されるようなエンドポイントを含めると,バイアスがかかりやすくなる(表)。
■心血管イベントの少ない日本人を対象にした試験で,厳格なイベント設定のみで結果を出すのは難しい。
例えば,スタチン系薬の効果を北欧において検討したWOSCOPSにおける非致死性心筋梗塞(MI)の発症率は5年で6.5%程度だったのに対し,日本で行われたMEGAスタディでは1.5%程度にとどまり,MIのみをエンドポイントにした試験を行うとすると数万規模の試験が必要になってしまう。
日本では,表に挙げられているすべてのエンドポイントを結合して設定せざるをえないのが実状だ。
■日本でPROBE法を行う際に気を付けるべき点は、試験を行う医師側はPROBE法のバイアスリスクを認識し,特に不適切なアウトカムについて公正に評価することである。
■試験を読み解く側も,エンドポイント項目を確認し,不適切なアウトカムが含まれている場合は,全体の結果が個々の「適したアウトカム」でも同じ傾向が認められているのかどうかを確認する必要がある。
MEGAスタディでは,全体のイベント発生数自体は少ないものの,心筋梗塞や死亡といった個々のアウトカムが同様の傾向を示していた。
■日本のようにハードエンドポイントが少なく,絶対的な治療効果が小さい状況では,観察研究ではなくRCTでないと検討が困難なのは間違いないが,現場の臨床から見ると,PROBE法によるRCTでも現実味の少ない環境での結果と言える。

出典 Medical Tribune 2009.1.29
版権 メディカル・トリビューン社
<PROBE法 関連サイト>
PROBE法
http://www26.atwiki.jp/wikijournal/pages/80.html
■PROBE法では死亡、心筋梗塞、脳卒中などのハードエンドポイントでなければ、バイアスの影響を受けやすくなってしまうのである。
バルサルタン(ARB)は心血管疾患のリスクのある患者でリスクを減らす可能性がある(Jikei Heart study) 2007年 Lancet 治療 RCT
http://www26.atwiki.jp/wikijournal/pages/79.html
■この試験ではPROBE法で用いるべきではない、「~の入院」がエンドポイントに含まれているため研究デザインとして不適格である。実際に、たとえば「狭心症による入院」は3.4%→1.2%とかなりの違いがあるが、「心筋梗塞」は1.2%→1.1%とほとんど違いがない。
■この論文にはもう1つ大きな問題がある。
それについては、次の本に詳細が記されている。
名郷直樹.「人は死ぬ」それでも医師にできること.医学書院
[PDF] JIKEI HEART STUDY と PROBE 法(070518)
http://rockymuku.sakura.ne.jp/zyunnkannkinaika/JIKEI%20HEART%20STUDY%20to%20PROBEhou.pdf
大規模臨床試験は治療と医師の意識をどのように変えたか
http://www.ebm-library.jp/circ/roundtable.html
■狭心症やTIA(一過性脳虚血発作)はエンドポイントとしてPROBE法になじみません。
PROBE法を用いるのであれば途中の医師の介入の程度を限定するか,介入度を公表するなどの措置をとる必要があると思います。
(「循環器トライアルデータベース」開設5周年記念座談会ということで斯界の権威が含蓄深いお話をしています)
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
急性冠症候群の発症様式で異なる局所ブラーク破裂の形態が明らかに:高解像度光干渉断層法を用いた血管内視鏡研究
労作時発作と安静時発作では、破裂プラーク繊維性皮膜の厚さに違い
■急性冠症候群の労作時発作と安静時発作では、破裂プラークの繊維性皮膜の厚さなどに違いがある。
和歌山県立医科大学循環器内科講師の田中篤氏らが、光干渉断層法(optical coherence tomography:OCT)を用いた研究で明らかにした。
■労作時発作のほうが安静時発作よりも、プラークの繊維性皮膜が厚い傾向が見られ、また両者間では破裂部位にも違いがあった。
労作時発作のほうがプラーク繊維性皮膜が厚く、ショルダー部位破裂が高率
■同研究グループは、急性冠動脈発作を発症した人の中からOCTでプラークの破裂が確認できた43例について、労作時発作(15例)と安静時発作(28例)に分け、比較した。被験者には、ST上昇がある人もない人も含んだ。
OCTによって、破裂プラークの皮膜の厚さや破裂部位の違いなどについて観察した。
おもな結果は以下のとおり。
●プラークがショルダー部分で破裂したのは、労作時発作が93%(14例)と、安静時発作57%(16例)よりも高率だった(p=0.014)。
●発作時の運動量が多いほど、破裂時に分離したプラーク繊維性皮膜が厚い傾向が見られた。
●破裂時に分離したプラーク繊維性皮膜の厚さの中央値は、労作時発作が90μm(四分位中央値:65μm)と、安静時発作の50μm(四分位中央値:15μm)よりも厚かった(p<0.01)。
●全体で29例(67%)が、破裂時に分離したプラーク繊維性皮膜の厚さが70μm未満だった。
●破裂時に分離したプラーク繊維性皮膜の厚さと高感度CRP値とは、逆相関を示した(r=-0.31、P<0.01)。
<監修者(自治医科大学 苅尾七臣教授)のコメント>
■本研究は現在、10~20μmの高解像を有する光干渉断層法(optical coherence tomography:OCT)をうまく用いて、急性冠症候群(ACS)の発症誘因の違いで局所プラーク破裂の特徴が異なることを明らかにした。
■血行動態的変化によるメカニカルストレスが大きく関与する労作時に発症したACSでは、プラーク皮膜が厚くても、プラークショルダーより破裂する特徴がみられた。
一方、安静時発症のACSでは、皮膜が薄いプラークの中央から破裂する例が多かった。
■これまで、これらの特徴は死亡例での病理所見より推定されていたが、実際の日常診療のACS発症時のリアルワールドで確認した点がユニークである。
■このプラーク皮膜の厚さに関連していたのがCRPで、薄い皮膜のプラークではCRPレベルが高値を示している。
プラークに集積した活性化マクロファージから分泌される、プラスミノゲン・アクチベータやマトリックス・メタロプロテイナーゼなどの蛋白分解酵素により、細胞外マトリックスが分解され、プラーク皮膜が薄くなる。
■心血管疾患のハイリスク群において、スタチンやPPARγアゴニスト・ピオグリタゾン、レニン・アンジオテンシン系抑制薬などにより、プラークの炎症反応を低下させ、その皮膜が厚くなることにより、安静時のACSの発症発症が低下するかもしれない。
<原著 抄録>
Tanaka A et al. Circulation. 2008; 118: 2368-2373.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19015405?ordinalpos=39&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_DefaultReportPanel.Pubmed_RVDocSum
Care Net.com 2008.12.15
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=6829
<コメント>
プラークに集積した活性化マクロファージから分泌される、プラスミノゲン・アクチベータやマトリックス・メタロプロテイナーゼなどの蛋白分解酵素により、細胞外マトリックスが分解され、プラーク皮膜が薄くなる。
・・・これっていったん厚くなったプラーク皮膜が薄くなるということなのでしょうか。
<関連サイト>
Coronary Artery Atherosclerosis
http://emedicine.medscape.com/article/153647-overview
■Tight coronary atheromas rarely cause ACS and MI. In fact, most of the atheromas that cause ACS are less than 50% occlusive as demonstrated by coronary arteriography. Atheromas (plaques) with smaller obstruction experience greater wall tension, which changes in direct proportion to their radii.
■Most plaque ruptures occur because of disruption of the fibrous cap, which allows contact between the highly thrombogenic lipid core and the blood.
■These modestly obstructive plaques, which have a greater burden of soft lipid core and thinner fibrous caps with chemoactive cellular infiltration near the shoulder region, are called vulnerable plaques.
■The amount of collagen in the fibrous cap depends on the balance between synthesis and destruction of intercellular matrix and inflammatory cell activation.
■T cells that accumulate at sites of plaque rupture and thrombosis produce the cytokine interferon gamma, which inhibits collagen synthesis.
■Already formed collagen is degraded by macrophages that produce proteolytic enzymes and by matrix metalloproteinases (MMPs), particularly MMP-1, MMP-13, MMP-3, and MMP-9. The MMPs are induced by macrophage- and SMC-derived cytokines such as IL-1, tumor necrosis factor (TNF), and CD154 or TNF-alpha. ■Authorities postulate that lipid lowering stabilizes the vulnerable plaques by modulating the activity of the macrophage-derived MMPs.
局所ブラーク破裂の形態
http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/doumyakukouka/kandoumyaku_puraku5.html
プラークの破裂と血栓形成
http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/doumyakukouka/kandoumyaku_puraku10.html
[PDF] プラークの脆弱化とマトリックスメタロプロテアーゼ
http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/20034311/699.pdf
冠動脈プラークの破綻・炎症・血小板血栓
http://www.e-clinician.net/vol47/no489/pdf/sp_489_03.pdf
ST上昇型急性心筋梗塞発症前のスタチン投与が血管内超音波によって検出されたプラーク破裂におよぼす影響
http://ww2.ttmed.com/cardiology/jp/acc2008/pdf/12.pdf
VH-IVUSによる不安定プラークの確認
http://tomochans.exblog.jp/2827208/
Mast Cells in Rupture-Prone Areas of Human Coronary Atheromas Produce and Store TNF-
http://circ.ahajournals.org/cgi/content/full/94/11/2787?maxtoshow=&HITS=10&hits=10&RESULTFORMAT=&fulltext=atheroma&searchid=1&FIRSTINDEX=60&resourcetype=HWFIG
Intraplaque Hemorrhage and Progression of Coronary Atheroma
https://content.nejm.org/cgi/content/full/349/24/2316?ck=nck
LDL-コレステロール(LDL-C)と同様にHDL-コレステロール(HDL-C)は動脈硬化性疾患との関連性が示されていますが,HDL-C を増加させるための介入方法や介入意義などについては,依然として不明な点が多くあります。
きょうは、このHDLと動脈硬化の関連性および治療の展望についての座談会の記事で勉強しました。。
動脈硬化とHDLを考える
住友病院
松澤 佑次 院長(司会)
帝京大学内科学
寺本 民生 教授
大阪大学医学部附属病院
山下 静也 病院教授
Heart Research Institute, Australia
Professor Philip Barter
心血管疾患のリスクとなる低HDL-C血症
松澤
最初にBarter 先生に動脈硬化とHDL の関連性についてお話しいただけますか。
Barter
動脈硬化性疾患とHDLの関連性は,すでに1980年代にFramingham heart study で報告されています。
当時,低HDL-C血症の男女では心血管疾患(CVD)のリスクが増加し,HDL-CはLDL-Cから独立したCVDの予測因子であるとして注目を集めました。
また,ストロングスタチンのイベント抑制作用を検討した大規模臨床試験TNTのサブ解析では,LDL-C値が70mg/dL未満と強力にコントロールされている症例であっても,HDL-C が低い患者(<42mg/dL)では心血管イベントが増加することが判明し,低HDL-C血症がCVDの独立したリスク因子であることが示されました(図1)。

松澤
LDL-Cを低下させるだけでなくHDL-Cも上昇させる治療が重要ということですね。
HDL-Cを上昇させるにはどのような方法が考えられますか。
Barter
生活習慣の改善が最も効果が高く,食事,運動,禁煙といった生活習慣の改善で20~25%のHDLC上昇が期待できます。
しかし,現実には生活習慣の改善は容易ではないのが実情で,少なからぬ症例が将来的にスタチン,フィブラート,ニコチン酸などの製剤に頼らざるをえないと思います。
スタチンでは3~
12%のHDL-C上昇が期待できますが,種類や用量によって効果が大きく異なることが特徴です。なぜこのような差が出るのかはまだわかっていません。
日本人におけるピタバスタチンのエビデンス
松澤
スタチンごとに差があるというのは興味深い事実ですね。
スタチンによるHDL-C 上昇作用に関して,日本人の成績はいかがでしょうか。
寺本
ピタバスタチンの大規模プロスペクティブ調査「LIVES Study」から興味深い知見が得られたのでご紹介したいと思います。
LIVES Studyでは日本人の高コレステロール血症患者約20,000例にピタバスタチン1~4mg/日を約2年間投与しました。
LDL-Cは約30%低下し,最終評価時のLDL-C到達値も平均で112mg/dLとなり,動脈硬化性疾患の高リスク症例に対しても優れた脂質コントロールを示しました。
また,HDL-C値は有意に上昇し,さらに低HDL-C血症(投与前値40mg/dL未満)患者ではピタバスタチンによって投与前HDL-C 値35mg/dLが,最終評価時で42mg/dLとなり,変化率も有意に約20%上昇しました(図2)。

Barter
平均で約20%の上昇が認められたというのは低HDL-C血症例ということを差し引いても高い上昇率ですね。
寺本
はい。
特にCVDの発症リスクの高い糖尿病患者などの症例では低HDL-C血症も多く,それがCVDのリスクになりますので,HDL-C上昇は大きな利点と考えています。
LIVES Studyでは患者全体と低HDL-C血症例の両方でHDL-Cの上昇が2年間持続しました。
Barter
従来,スタチンの長期効果を検討した試験では,いずれもHDL-C上昇率は6~12週でピークに達し,その後は一定または低下という結果でした。
HDL-Cの上昇率だけでなく作用の持続性にも差があると考えたほうがよいかもしれません。
スタチンによるHDL-C上昇にアディポネクチンが関与
松澤
スタチンによるHDL-C上昇メカニズムからこうしたスタチン間のHDL-C上昇作用の違いを説明できないのでしょうか。
山下
スタチンによるHDL-C上昇(図3)は,一般に肝臓でのアポA-I産生やコレステロールトランスポーターであるABCA1発現の亢進によるものです。

そのほか,リポ蛋白リパーゼの活性化を介したTG-richリポ蛋白(VLDL,IDL)異化亢進や,マクロファージからのコレステロール汲み出しに重要な役割を果たすスカベンジャー受容体SR-BIおよびABCA1の発現亢進も示唆されています。特に注目したいのは,ピタバスタチンをはじめとする一部のスタチンにおいて血中アディポネクチンが著明に増加する点です(図4)。

アディポネクチンは肝臓でのアポA-I産生やABCA1発現の亢進を介してHDL-C生成を促進し,マクロファージに対してはABCA1発現を亢進させてコレステロール逆転送系を活性化します。さらに,VLDL分泌を抑制して血中TGも低下させることが知られています。
松澤
アディポネクチンを増加させるというピタバスタチンのデータは興味深いです。
こういった作用がスタチンによるHDL-C上昇効果の差に関与している可能性がありますね。
低HDL-C血症の治療ではHDL機能の改善も重要
山下
通常,HDL は抗酸化作用や抗炎症作用を持つ「Functional HDL」ですが,感染,心疾患,糖尿病,メタボリックシンドローム,喫煙,慢性腎臓病などの要因によって「Dysfunctional HDL」に変化する可能性があります。
このDysfunctional HDLは炎症やLDLの酸化を促進しますから,低HDL-C血症の薬物治療ではHDLの質的な改善も必要となります。
松澤
HDLのおもな機能は余分なコレステロールを末梢から肝臓に運ぶ逆転送系ではないのでしょうか。
山下
実際にはHDL-Cが高い患者さんでもCVDの発症がみられますから,抗炎症作用や抗酸化作用などの機能に差があると考えています。
ピタバスタチンではHDL上に存在し,LDLやHDL自体の酸化を抑制するParaoxonase1(PON1)を用量依存的に上昇させることが示されていますが,こうした多面的な機能が重要だと思います。
Barter
HDL機能に対する作用もスタチンによって異なる可能性がありますね。
しかしながら,現時点ではHDLの機能までは評価できないのが悩ましいところです。
松澤
単純にHDLを上昇させても予後を改善できないということがCETP阻害薬の大規模研究から明らかになっていますが,HDLの機能はこの問題を解く鍵になるかもしれませんね。
出典 MT pro 2009.1.22 (一部改変)
版権 メディカル・トリビューン社
<参考サイト>
LDL-C低下療法では「HDL-C同時上昇」を目指す
http://www.m3.com/news/GENERAL/2008/11/28/87691/?pageFrom=m3.com
動脈硬化性疾患にオーダーメード対応するため、「LDLコレステロール(LDL-C)/HDLコレステロール(HDL-C)比」を指標に治療戦略を組む循環器専門医が増えている。1次予防ではこの比率を「2.0未満」に、2次予防では「1.5未満」にそれぞれ下げることで、動脈硬化性疾患の発症抑制が期待されるためだ。LDL-CをHDL-Cで除しただけの簡便な指標であるため、有効なサロゲートマーカーとしてプライマリケアでの普及が望まれる。
■2008年9月にドイツ・ミュンヘンで開かれた欧州心臓病学会(ESC)の学術集会では、北海道のケースコントロール研究(発表者 佐久間一郎先生)が発表されており、日本人においても「LDL-C/HDL-C比」を用いた治療戦略が有用である可能性が示された。
■冠動脈疾患の1次予防は、LDL-C/HDL-C比を「2.0もしくは1.5未満」に下げることにより達成される可能性がある。(佐久間先生)
■AMIを起こした患者群では「LDL-C正常かつ低HDL-C」であったり、「LDL-C/HDL-C比が高値」である割合が、コントロール群に比べて高かった。(佐久間先生)
■ACS患者のうち38%はLDL-C値が100mg/dL未満。(小倉記念病院)
■LDL-C値が低くても、AMIや急性冠症候群(ACS)を発症する人は少なくない。日本人のAMI・ACS初発入院患者のうち、30-40%程度がLDL-C値が100mg/dLを下回っている。
■LDL-C値が100mg/dL未満は、AMI群で30.3%、コントロール群で18.9%。(佐久間先生)
■LDL-Cが低値であっても、一定の割合で冠動脈疾患が起こることが全国的な傾向として知られている。
■従来のようにLDL-Cだけを見ていたのでは、動脈硬化の進行を見落としかねないというのが循環器専門医の間では常識化されつつある。
■LDL-C平均値では両群間に差はなかったが、AMI群のHDL-C平均値は低く(P<0.001)、LDL-C/HDL-C比は高い。(P<0.001)(佐久間先生)
■LDL-C値単独では、男女ともに予測因子としての有用性は見いだせなかった。(佐久間先生)
■動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは高リスク者の1次予防の目標値をLDL-C120mg/dL未満としているが、AMIの初発患者の半数が120mg/dLを下回っていた。(佐久間先生)
■HDL-Cについては40mg/dL以上が目標とされているが、40mg/dL台はすでに危険だと考えるべきである。(佐久間先生)
■LDL-C/HDL-C比は、1次予防で「2.0未満」、2次予防および1次予防でも糖尿病や高血圧に罹患している場合には「1.5未満」を目指すことが望ましい。
<自遊時間>
価格と中身と音色はそれぞれ不等号
http://wwgun.exblog.jp/6170448/
ゴールドムンドGOLDMUNDの真実(おまけ)
http://homepage1.nifty.com/iberia/column_audio_goldmund.htm
先生方の評価はどうかわかりませんが、ARBの降圧効果が実感として未だによくつかめません。
それは単独使用例が少なく、多くはCCBなどの併用例だからです。
最近ARB単独使用例で収縮期血圧200mmHg以上あった患者さんを経験しました。
もっとも高血圧の病態や病因によっては不応(?)例もあるのかも知れません。
私は多くの場合CCBがファーストチョイスで、症例に応じてARBやACE-Iをオンさせます。
「高血圧治療ガイドライン2009」
http://blog.m3.com/reed/20090123/_2009
からすればとんでもない処方といわれてしまいます。
さて、循環器科医なら誰でも経験することに、低血圧の方での狭心症や心不全の患者の薬物療法です。
これらに使用する多くの薬剤は降圧的に作用し、さらなる血圧低下を招き、しばしば治療に難渋します。
きょうは、慢性心不全患者に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタンの多施設試験であるCHARM(Candesartan in Heat failure: Assessment of Reduction in Mortality and morbidity)試験(J Am Coll Cardiol 2008; 52: 2000-2007 )について兵庫県立尼崎病院 佐藤幸人先生の解説で勉強しました。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/19055992
テーマは「低血圧は心不全患者の予後不良因子,降圧薬による治療は可能か」です。
低血圧の心不全患者にもARBは投与すべきか
―CHARM試験サブ解析で心血管イベント抑制効果が明らかに
■心不全を既に発症した患者では末期になるほど低血圧状態になる。
■この現象は慢性心不全だけでなく急性心不全患者でも認められ,急性心不全患者において観察開始時の収縮期血圧(SBP)の低値が予後不良因子であることがOPTIMIZE-HFレジストリーにより報告されている(JAMA 2006; 296: 2217-2226 )。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17090768
■また,慢性心不全患者の基礎治療薬であるACE阻害薬,ARB,β遮断薬はいずれも降圧薬であるため,低血圧の心不全患者ではしばしば投薬が継続不可能である。
■今回CHARM試験のサブ解析として慢性心不全患者を対象に,低血圧の予後に対する影響と,ARBカンデサルタンの血圧に対する影響,カンデサルタンの血圧値別の効果が検討された。
■CHARM試験は
Added(Lancet 2003; 362: 767-771)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/13678869
Alternative(Lancet2003;362:772-776)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/13678870
Preserved(Lancet 2003; 362: 777-781)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/13678871
の3つのアームから成るが,前2者のアームの左室駆出率(EF)40%以下の患者4,576例を対象に検討が行われた。
結果:SBP100mmHg以下では効果はやや劣るが,どの血圧レベルでも心血管イベントを抑制
■観察開始時のSBPが110mmHg以上の患者では,心不全の治療経過中に血圧は低下したが,逆に観察開始時のSBPが100mmHg以下の低血圧の患者では,心不全の治療経過中に血圧は上昇した。
■観察開始時SBPが低いほど予後不良で,心血管死+心不全入院のリスク上昇は観察開始時SBPが110mmHg以下で顕著であった。
■観察開始時SBPがどのような範囲でも,プラセボ群に比較してカンデサルタン群では心血管死または心不全入院というエンドポイントにおいて改善が見られた(図)。
■観察開始時SBPが100mmHg以下の低血圧患者では,低血圧の副作用のためにカンデサルタンを中止する頻度が高かった(表)。
解釈:低血圧に注意しつつ可能な限り投与すべき
■SBPが低いほど予後不良との結果であった。
■観察開始時SBPが100mmHg以下の患者では,低血圧の副作用のためにARB投与が中止されることがしばしばだが,今回の研究でも表のように示されている。
■図にあるように,観察開始時のSBP値に関係なくカンデサルタン投与は有用であると思われるが,その効果は観察開始時SBPが100mmHg以下の患者ではやや劣ることがわかる。
結論として,
■観察開始時SBP 100mmHg以下の患者は,観察開始時100mmHg以上の患者と比較すると,カンデサルタン投与による心血管イベント抑制効果はやや弱く,低血圧の副作用による脱落も多い。
■しかし,それでもプラセボ群と比較してハザード比0.90のイベント抑制効果が期待できることから,可能な限り投与すべきである。
■同様の検討は,β遮断薬カロベジロールについてもCOPERNICUS試験のサブ解析として行われており,観察開始時SBPが低血圧の患者でもカロベジロール投与による心血管イベントの抑制は期待できるため,可能な限り投与すべきであるが,低血圧の副作用が多いとの結論であった。
(J Am Coll Cardiol 2004; 43: 1423-1429)。
出典 MT pro 2009.1.14
版権 メディカル・トリビューン社
N Engl J Med 2009; 360 に発表されたPCI時のFFR測定の有用性についての論文で勉強しました。
冠動脈造影のみでステント設置の適応を決定する場合に比較して、FFR測定の結果を加味した場合にはステント設置数が減り、なおかつ1 年後の死亡,非致死的心筋梗塞,血行再建術再施行の複合エンドポイントの発生率が低下するという内容です。
この結果は、冠動脈造影のみでは無用なステントが留置されている症例があるということを示唆しています。
さらに、冠動脈造影のみの群でステント数が多いのに1年後の予後が良くない理由も知りたいところです。
原著の考察にあたってみないと、そのあたりはどう解釈されているのかがわからないのですが、無用なステントがリスクを上げているということも考えられるのでしょうか。
経皮的冠動脈インターベンションのガイドとしての冠血流予備量比と血管造影の比較
Fractional Flow Reserve versus Angiography for Guiding Percutaneous Coronary Intervention
P.A.L. Tonino and others
背 景
多枝冠動脈疾患患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行時に,ステント留置のガイドとして用いる標準的な方法は冠動脈造影である。
血管造影時に,冠血流予備量比(fractional flow reserve:FFR,正常動脈の最大血流量に対する狭窄動脈の最大血流量の比)のルーチン測定を合わせて行った場合に,転帰が改善するかどうかは明らかではない.。
方 法
米国と欧州の 20 の医療機関において,多枝冠動脈疾患患者 1,005 例を,PCI 施行時の薬剤溶出ステント留置を血管造影の単独ガイド下で行う群と,血管造影と FFR 測定の併用ガイド下で行う群のいずれかに無作為に割り付けた。
無作為化の前に,PCI を要する病変を血管造影所見に基づいて同定した。
血管造影ガイド下で PCI を行う群では適応となったすべての病変に対してステント留置を行い,FFR ガイド下で PCI を行う群では FFR が 0.80 以下の場合にのみステント留置を行った。
主要エンドポイントは 1 年後の死亡率,非致死的心筋梗塞発生率,血行再建術再施行率とした。
結 果
患者あたりの適応病変数の平均(±SD)は,血管造影群 2.7±0.9 個,FFR 群 2.8±1.0 個であった(P=0.34)。
患者あたりの使用ステント数は,血管造影群 2.7±1.2 本,FFR 群 1.9±1.3 本であった(P<0.001)。
1 年間のイベント発生率は,血管造影群で 18.3%(91 例),FFR 群で 13.2%(67 例)であった(P=0.02)。
1 年後の時点で狭心症が認めらなかった患者の割合は,血管造影群では 78%であったのに対し,FFR 群では 81%であった(P=0.20)。
結 論
多枝冠動脈疾患患者に対する薬剤溶出ステントを用いた PCI の施行時に FFR のルーチン測定を行うことにより,1 年後の死亡,非致死的心筋梗塞,血行再建術再施行の複合エンドポイントの発生率が有意に低下した。
(N Engl J Med 2009; 360 : 213 - 24 : Original Article)
<原著>
Fractional Flow Reserve versus Angiography for Guiding Percutaneous Coronary Intervention
Pim A.L. Tonino, M.D.,
http://content.nejm.org/cgi/content/short/360/3/213
<FFR 関連サイト>
Fractional flow reserve
http://en.wikipedia.org/wiki/Fractional_Flow_Reserve_(FFR)
■Fractional flow reserve is defined as the pressure behind (distal to) a stenosis relative to the pressure before the stenosis. The result is an absolute number; an FFR of 0.50 means that a given stenosis causes a 50% drop in blood pressure. In other words, FFR expresses the maximal flow down a vessel in the presence of a stenosis compared to the maximal flow in the hypothetical absence of the stenosis.
Fractional Flow Reserve (FFR)
http://www.metrohealth.org/body.cfm?id=271
Measurement of Fractional Flow Reserve to Assess the Functional Severity of Coronary-Artery Stenoses
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/334/26/1703
(1996年のN Engl J Medの論文です)
冠動脈ステント適用に関するFFR(Fractional Flow Reserve )の有用性
http://intmed.exblog.jp/7817565/
Review
Fractional flow reserve and complex coronary pathologic conditions
http://eurheartj.oxfordjournals.org/cgi/content/full/25/9/723
Better Outcomes for Stents When Fractional Flow Reserve (FFR) is Used
http://www.ptca.org/news/2009/0115_FFR.html
TCT: Fractional Flow Reserve-Guided Stenting Improves Outcomes with Fewer Devices
http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/TCT/11314
Fractional Flow Reserve
A Useful Index to Evaluate the Influence of an Epicardial Coronary Stenosis on Myocardial Blood Flow
http://www.circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/92/11/3183
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人先生のアルドステロンと重症心不全についての記事で勉強しました。
アルドステロン拮抗薬はすべての重症心不全患者に追加投与を検討すべき
死亡率改善と抗心筋リモデリング作用を期待
ミネラロコルチコイド受容体に拮抗する薬剤が心不全治療において重要な意義
■慢性心不全患者の病態生理を踏まえた治療戦略において,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RSS)系の抑制は,交感神経系の抑制とともに重要である。
しかし,慢性心不全患者にACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を投与した場合,一部の患者では一時的に血中アルドステロン値は低下するが,やがて再上昇するアルドステロンブレイクスルー現象が認められることが報告されていた(J Card Fail 1996; 2: 47-54)。
■現在,アルドステロンはミネラロコルチコイド受容体(MR)を介して直接,心筋肥大と線維化に働き,心筋リモデリングを発生させると推測されている(N Engl J Med 2001; 345: 1689-1697)。
このため,スピロノラクトンやエプレレノン(MR選択性が強い)などMRに拮抗するアルドステロン拮抗薬が心不全治療において重要な意義を持つことになる。
■Eur Heart J 2008年12月9日オンライン版に掲載されたアルドステロン拮抗薬に関する報告をまとめた系統的レビューでも,心不全治療における有用性が示されている。
RALES,EPHESUS試験では心不全,心筋梗塞患者への投与で死亡率が15~30%低下
■アルドステロン拮抗薬の代表的な大規模試験にはRALESとEPHESUSがある。
■RALES試験では1,663例の左室駆出率(EF)35%以下の心不全症例を対象に,スピロノラクトン25mg群とプラセボ群に割り付けた結果,心不全死,突然死を含む30%の死亡の減少(P<0.001)がスピロノラクトン群で認められた(N Engl J Med 1999; 341: 709-717)。
■この試験の当時はβ遮断薬の処方率は低く,約10%であった(ACE阻害薬は94%)。
また女性化乳房はスピロノラクトン群で男性の10%に認められた。
■EPHESUS試験では心筋梗塞発症後3~14日,EF40%以下の患者6,632例がエプレレノン群とプラセボ群に割り付けられ,その結果,突然死を含む15%の死亡の減少がエプレレノン群で認められた(N Engl J Med 2003; 348: 1309-1321)。
この試験でのACE阻害薬,β遮断薬の処方率はそれぞれ87%,75%であった。
女性化乳房はエプレレノン群とプラセボ群で差は認められなかった。
アルドステロン拮抗薬の系統的レビューでは総死亡を20%抑制
■アルドステロン拮抗薬には抗線維化作用,抗心筋リモデリング作用が期待されている。
■RALES試験ではサブ解析として心筋間質のコラーゲン合成と分解の指標として血中可溶性コラーゲンが測定され,血中III型プロコラーゲンアミノ末端ペプチド(PIIINP)が予後予測指標であることと,スピロノラクトンが経過中にPIIINPを抑制することが報告されている(Circulation 2000; 102: 2700-2706)。
■この結果から,スピロノラクトンはアルドステロンによる心筋の線維化を抑制することにより致死性不整脈の発生を抑制し,突然死を予防する可能性が考察された。
また少数例の検討ではあるが,スピロノラクトン投与で心室性期外収縮,心室頻拍の減少も報告されている(Am J Cardiol 2000; 85: 1207-1211)。
■薬剤の抗心筋リモデリング作用は,従来ACE阻害薬に上乗せしたβ遮断薬の効果についておもに検討されてきた(Am J Cardiol 2005; 96: 10L-18L)。
抗心筋リモデリング作用がアルドステロン拮抗薬にあるかどうかは,ARBに抗心筋リモデリング効果があるかどうかと同様に,現在検討中の課題である。
■少数例の検討においてスピロノラクトンにEF改善,左室容量の改善が見られることが報告されており(J Am Coll Cardiol 2001; 37: 1228-1233,Circulation 2003; 107: 2559-2565,J Am Coll Cardiol 2007; 50: 591-596),前述のEur Heart J オンライン版掲載論文によると,アルドステロン拮抗薬の投与により総死亡の相対リスクは20%抑制され,EFは3.1%の改善が見込めることが報告された(図)。
■以上から,アルドステロン拮抗薬は重症心不全患者においてACE阻害薬,β遮断薬に上乗せしても,さらなる死亡の減少が期待できる有用な薬剤だと言える。
■心不全の最新のガイドラインである欧州心臓病学会(ESC)の「急性,慢性心不全の診断と治療のガイドライン2008」(Eur Heart J 2008; 29: 2388-2442)では,アルドステロン拮抗薬はEF 35%以下の重症心不全患者では禁忌事項がない限り,高カリウム血症,腎機能に注意して投与を検討すべき(ACE阻害薬,β遮断薬に上乗せ)と記載された(class I,エビデンスレベルB)。
■現在進行中の試験としてエプレレノンの抗心筋リモデリング作用を検討するREMODEL,軽症心不全患者を対象としたEMPHASIS-HF,収縮機能が保持された心不全患者にスピロノラクトンを投与するTOPCATが進行中であり,結果が待たれる。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr090101.html
出典 MTpro 2009.1.7
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
レセプトオンライン請求義務化は違憲」医師ら961人が国を提訴
1人あたり110万円の損害賠償求める
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0901/090110.html
レセプト(診療報酬明細書)のオンライン処理を義務化するという厚生労働省(厚労省)省令は憲法に保障される「営業の自由」の侵害として,全国の医師や歯科医師ら961人が国を相手取り,オンライン化の義務がないことの確認と,1人あたり110万円の損害賠償を求める集団訴訟を昨日(平成21年1月21日),横浜地裁に起こした。
<コメント>
これって本来は日本医師会、日本歯科医師会がやるべきことではないですか。
これらの会が機能不全に陥っていることを正しく物語るものです。
医師不足解消のための僻地での研修が義務化されれば、これも憲法違反のはずです。
<自遊時間>
昨夜、番組表も見ずに何気にチャンネルを回していたらエール大学の風景が写っていました。
なんだか面白そうな番組だなと直感しました。
どうやらドキュメンタリーのようで、ナビゲーターが美人バイオリニストの高嶋ちさ子ということもあり、一杯やりながらつい見続けてしまいました。
番組を見られた方も多かったのではないでしょうか。
タイトルは後で調べて判ったのですが、「歴史ドキュメンタリー 海を渡ったサムライ 朝河貫一 日本に警鐘を鳴らした真の国際人」というBS朝日の番組でした。
高嶋ちさ子女史についてもちょっと調べてみました。
高嶋ちさ子
http://www.starblog.jp/sid-1082.html
■イェール大学音楽学部大学院修士課程アーティスト・ディプロマコース修了。
■父の高嶋弘之は東芝EMIの元ディレクターで、ビートルズを日本に紹介した人物。その兄が俳優の高島忠夫であり、高嶋政宏・政伸兄弟とはいとこの関係にある。
■自動車(特に高級車)の路上駐車が許せず、常に付箋を持ち歩いて、「こんな高級車を買う金があるのに駐車料金払えないんですか」という意味の文を書いて貼り付けるようにしている。また、すぐに通報できるように携帯電話のアドレス帳には各警察署の電話番号が登録してある。
■道ですれ違った人が気に入らない人だと、わざわざ戻ってその人に「あなたのそういうところが気に入らないんです」と言ってから通り過ぎる。
■小さい頃から男の子を泣かせて遊んでいた。小1の時にはクラスの男子全員を泣かすという快挙を達成。泣かす理由は特になく、「あいつ、未だ泣かせてないから、どれくらいで泣くか試してみよう」程度のものだった。
■ミッション系の小学校のため、夜寝る前にお祈りすることが決められていたが、小3の頃はクラス全員が「明日はちぃちゃんに意地悪されませんように」とお祈りしてから寝ていた。
■桐朋学園時代のあだ名は「悪魔」。イェール大学留学中は日本の知り合いがいないにもかかわらず、「デビル」とあだ名がついた事に、当人も驚いた。
さて、番組の中で矢吹晋氏が朝河貫一を語っていました。
中国に関する研究家だったのでどうしてだろうと少し疑問を持ちました。
たまたま、同姓の方がきょう受診されたので、「珍しいお名前ですね」と聞くと、その患者さんは「福島県に多い名前で私も福島県の出身です」という答え。
朝河貫一は福島県二本松市の出身で、矢吹晋氏も福島県の出身。
合点がいきました。
BS朝日 - 海を渡ったサムライ朝河貫一
http://www.bs-asahi.co.jp/asakawa/
朝河貫一・『日本の禍機』とコスモポリタニズム
http://web.sfc.keio.ac.jp/~endo/asakawa_kanichi2.htm
朝河貫一
http://ja.wikipedia.org/wiki/朝河貫一
「「驕る日本」と闘った男−日露講話条約の舞台裏と朝河貫一」
http://www.ifsa.jp/kiji-sekai-asakawa.htm
朝河貫一『日本の禍期』の復刻
http://www.wul.waseda.ac.jp/PUBS/fumi/12/12-14.html
イェール大学
http://ja.wikipedia.org/wiki/イェール大学
■アメリカの大学としては3番目に古い。モットーは"Lux et Veritas"(ラテン語「光と真実」) である。アメリカで最初に設立されたハーヴァード大学では単にVeritas(「真実」)であったが、ハーヴァードの世俗化を批判して創設されたイェールではこれにLux(「光」)を付け加えた。
■US NEWS RANKINGS(学部課程のランキング)では毎年ハーヴァード大学、プリンストン大学と共に3位以内に入り、米国を代表する名門大学として不動の地位を保っている。これら3校はBIG3と呼ばれ、また頭文字を創立年順に並べてHYPと略記されることもある(西海岸の名門スタンフォード大学を加えたBIG4、HYPSという略称も用いられることがある)。
■ニューイングランドの植民地で最初に創設されたハーヴァード大学が堕落してしまった(つまり、「リベラル」になってしまった)と考えてハーヴァード当局に反旗を翻した会衆派の人々により創設された(ちなみに、後にイェールも堕落してしまったと考えた人たちがプリンストン大学を創立する。プリンストン大学総長は初代から第3代までイェール出身である)。現在に至っても、「リベラル」であるとされるハーヴァード大学と比較して保守色が強いと考えられている(ただし、アメリカ全体の中では中西部などと比較してリベラルであると言える)
他に
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(内科医向き)
があります。
フラミンガムスコアでは生涯にわたる心血管疾患リスクを予測できない
■広く利用されているフラミンガムリスクスコアに基づいて10年間の心臓発作または脳卒中のリスクが低いと判定された50歳以下の集団であっても、その半数は生涯的なリスクは高い可能性があるという。
■フラミンガムスコアは、数十年にわたる研究(フラミンガム心臓研究Framingham Heart Study)に基づくもので、年齢、性別、総コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、収縮期血圧、喫煙状況および降圧薬の使用という7つのファクター(因子)から、心臓発作や脳卒中などの心血管イベントリスクを評価するもの。
■米医学誌「Circulation(循環器)」オンライン版に1月12日に掲載された今回の研究では、約4,000人の被験者(いずれも50歳以下)のうち90%が、フラミンガムスコアにより心血管疾患の10年リスクが低いと分類された。
■しかし、年齢以外の因子を慎重に検討した結果、10年間のリスクは低いとされた人でも生涯にわたるリスクについては、高い群と低い群に分かれることが判明した。
コレステロール値や血圧などの古くから用いられる危険因子(リスクファクター)の差は、短期リスクではあまり違いがみられないが、長期リスクには極めて重要なものであったという。
■生涯リスクが高いと評価された群は、冠動脈のカルシウム蓄積量が多く、頸動脈の肥厚が有意に大きいことが判明。
(生涯リスクの高い群はアテローム性動脈硬化症の重症度および進行度が高かった)
■米エール大学(コネチカット州)臨床助教授のKevin M. Johnson博士らは、フラミンガムスコアでは冠動脈性心疾患の既往のない集団の心血管リスクを正確に予測できないことを明らかにした。
■この研究では、プラークによる動脈閉塞の可能性をみるのに、血管のCT検査が用いられた。
Johnson氏は、フラミンガムスコアの考え方に、CTスキャンなどによる新しいリスク評価法をどう組み込んでいくかが課題と指摘している。
■さらに別の研究では、フラミンガムスコアの基準に入らない85歳以上の集団について検討している。オランダ、ライデンLeiden大学メディカルセンターの研究グループによると、女性215人、男性87人を5年間追跡した結果、108人が死亡したが、フラミンガムスコアによる予測では偶然以上の的中率は認められなかったという。
(英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」オンライン版)
Health Day News 2009.1.12
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=7211
Care Net.com 2009.1.23
全世界がフラミンガムスコアで良いのか?
英国人にとってはフラミンガムよりQRISKが有用
■心血管リスク推算には、米国のフラミンガムコホート研究に基づく算出法が広く用いられている。
しかし、人種差や社会環境の差を考えると、最適なリスク推算法は国や地域ごとに異なるのではないだろうか。
■ハイリスク者の同定に広く用いられているフラミンガムアルゴリズムは、ほとんどが白人を対象とした研究のデータを元に開発された。
社会的貧困やBMI、家族歴、高血圧治療などの危険因子候補は含まれていない上、米国で心血管疾患の罹患率が最高となった時期に作製された。
そのため、心血管疾患が少ない北欧の集団の場合、リスクを50%も過剰に推算してしまうという報告もある。
リスクの過剰な検出は、医療費上昇をもたらし、過剰治療と不要な副作用を人々に与えることになる。
■そこでスコットランドでは、社会的貧困度も組み込んだ「ASSIGNスコア」が開発された。
■英国でも、指導や治療の利益を得られる患者を選出し、過剰な治療を防ぐために有用な指標の必要性は高いと考えた著者らは、英国民のための新たな心血管疾患リスクスコア「QRISK」を作製、フラミンガム、ASSIGNと比較して、その有効性を確認した。
フラミンガムはリスクを35%過剰に予測、QRISKは0.4%のみ
■確認コホートの実際の10年リスクは女性が6.60%(6.48-6.72%)、男性が9.28%(9.14-9.43%)だった。
■QRISK、フラミンガム、Assignに基づいて、このコホートの10年リスクを推算、その値に基づいて10群に分け、実際に観察されたリスクと比較したところ、フラミンガムは、リスクを35%過剰に予測していた。
■ASSIGNでは36%過剰だった。QRISKはこれが0.4%で、過剰なリスク推算は最も少なかった。
リスクの過剰な算出は、いずれの方法でもリスクが低い方から3群で顕著だった。
■QRISKは、識別能力においてフラミンガムモデルと少なくとも同等で、校正能力はフラミンガム、ASSIGNよりも高いことを示し、現時点では、英国人の心血管リスク予測において最善の方法と考えられた。
原題「Derivation and validation of QRISK, a new cardiovascular disease risk score for the United Kingdom: prospective open cohort study」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200707/503894.html
<出典> NM online 2007.7.31
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200707/503894.html
<版権> 日経BP社
<参考サイト>
Framingham Heart Study
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2000011.html
(主たる研究成果が詳しく記述されています)
他に
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~ http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/
(内科医向き)
があります。
CKD合併高血圧として指針示す
■今回の改訂ではCKDの定義を明確にし,CKD患者では心血管リスクが高く,早期発見がきわめて重要である点が強調された。
■早期発見のため全高血圧患者で検尿と推算糸球体濾過量(eGFR)の算出を行うべきと明記された。
(日本人のeGFR算出式も盛り込まれた)
■腎疾患合併例に対しては,
(1)降圧目標の達成
(2)RA系の抑制
(3)尿アルブミン,尿蛋白の減少・正常化
―が3原則となる。
JSH2009にはCKD合併高血圧の治療計画が提示されるが,基本的には現行の慢性腎疾患合併例の治療計画と大きな変更はない。
■第一選択薬はACE阻害薬またはARBのRA系阻害薬で,降圧不十分な場合は利尿薬(GFR 30mL/分/1.73㎡以上にはサイアザイド系利尿薬,未満にはループ利尿薬),Ca拮抗薬を併用し,130/80mmHg未満,尿蛋白1g/日以上では125/75mmHg未満を目指す。
■透析患者に関しては,日本での明確な降圧目標はまだ示せないとして,SBP 120~160mmHgで死亡率が最も低いとの表記にとどまった。
■昨年7月に発行された日本腎臓学会・日本高血圧学会による「CKD診療ガイド高血圧編」では,第二選択薬について,
(1)体液過剰(食塩感受性)例には利尿薬
(2)心血管疾患高リスク例にはCa拮抗薬を,
第三選択薬は(1)にはCa拮抗薬,(2)には利尿薬
―と,病態に応じて指示している。
また腎硬化症,多発性嚢胞腎,間質性腎障害では糸球体血圧が全身血圧に依存せず,蛋白尿も軽度なことから,推奨降圧薬の種類を特に問わないという。
―糖尿病合併例―
130/80mmHg以上は原則降圧薬治療,第一次薬はRA系阻害薬
■糖尿病非合併のメタボリックシンドロームでは,(1)140/90mmHg以上の高血圧患者では層別化された中等リスク,高リスクに応じて高血圧治療を開始
(2)正常高値血圧(130~139/ 85~89mmHg)では生活習慣の修正から開始となる。
降圧薬はインスリン抵抗性改善効果の強いARB,ACE阻害薬を中心に用いる。
糖尿病合併のメタボリックシンドロームは,一段リスクの高い糖尿病患者の指針に従う。
■糖尿病合併高血圧の治療計画については,今回大幅な改訂が加わり,130/80mmHg以上では生活習慣の修正,血糖管理と同時に,原則として降圧薬治療を開始することになった。
この点も日本糖尿病学会との協議で焦点となり,「血圧が130~139/80~89mmHgで生活習慣の修正で降圧目標を見込める場合は,3か月を超えない範囲で生活習慣の改善により降圧を図ることができる」との注釈を治療計画の図に加えられた。
■第一次薬からはCa拮抗薬が外れ,ACE阻害薬,ARBのRA系阻害薬2種類となり,第二次薬にCa拮抗薬,利尿薬を同列に位置付けられた。
第一次薬の決定は,腎保護や糖尿病新規発症抑制効果ではCa拮抗薬よりRA系阻害薬が優れるとの判断に基づかれた。
―高齢者―
最終降圧目標は140/90mmHg未満,150/90mmHgは中間目標に
■JSH2009の高齢者高血圧の治療計画では,現行通り最終降圧目標は140/90mmHg未満に据え置かれるが,75歳以上の後期高齢者でSBP 160mmHg以上の場合,暫定的降圧目標とされる150/90mmHg未満を中間目標と改めることを明らかにした。
■合併症のない場合の第一選択薬はCa拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,少量の利尿薬と変更はない。
■高齢者の至適降圧目標を明らかにすべくわが国で実施されたJATOS(2006年発表)では,厳格降圧群(SBP 140mmHg未満目標)と緩和降圧群(SBP 140~160mmHg未満目標)のイベント発生率に有意差はなかった。
■JSH2009で最終目標を140/90mmHg未満とする根拠として,
(1)BPLTTCの解析で,SBP5mmHg低下によるリスク低下は65歳未満と以上の各群10万人規模の比較で有意差がない
(2)JATOSの結果から,高齢者(特に75歳以上)の最終目標が150 mmHg未満でよいとはまだ結論できず,サブ解析をもとに75歳以上の高齢者で140mmHg未満が悪いとも言えない
(3)CASE-Jのサブ解析で,65歳未満,65~74歳,75歳以上の年齢層別に到達血圧とイベント発生リスクとの関係を見ると,いずれの年齢層でも血圧が低いほどリスクが低い傾向が認められ,日常臨床で目指す降圧目標の範囲では過度の降圧によるJ型現象はない
―などが挙げられた。
■これまで,後期高齢者に降圧薬治療を実施すべきか否かは論議を呼ぶところであった。
80歳以上の超高齢高血圧患者を対象に,プラセボと利尿薬±ACE阻害薬を比較したHYVETの成績から,後期高齢者においても降圧薬治療が生命予後の改善に結び付くとのエビデンスが得られた。
一方で後期高齢者では身体的合併症,社会的背景に個人差が大きく,EBMに沿わない側面もあることから,「加療中の後期高齢者には治療を継続するが,日常生活動作(ADL)や合併症に応じて降圧薬減量・中止も考慮するなど,治療方針の決定は個々の患者に応じて主治医の判断に負うところが大きい」との見解が示された。
出典 Medical Tribune 2008.11.13
版権 メディカル・トリビューン社
他に
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(一般の方または患者さん向き)
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(内科医向き)
があります。
昨日ある製薬メーカーのMRが「高血圧治療ガイドライン2009」を持ってきました。
昨年発表された通り1月16日発行された冊子です。
彼いわく、「あちこちの先生を回りましたがもうすでに貰ったから要らないといわえて、どの先生も受け取ってくれません」とのこと。
今週初めに早速配られたようで、ある先生は診察机に3冊も積まれていたとのこと。
私も「2冊持っているから要らないよ」と断りました。
しかし、彼にしてみれば、「捌(さば)く」のが仕事。
裏表紙に書かれた定価2,200円を指さして訴えるような目で私を見ます。
「わかった。今医学部6年生でねじり鉢巻で国家試験の勉強をしている子供がいるから、ひょっとして合格の暁には役立つかもしてないから貰っとくは」。
お互いに何となくしっくりしませんが、一応のところ一件落着しました。
きょうは、そのガイドラインの勉強を少ししました。
「高血圧治療ガイドライン2009」
■リスク層別化と高血圧管理計画の一致を図るべく,リスク分類を刷新。
■新たに血圧分類に正常高値血圧を,危険因子には疾病概念の定着に伴いメタボリックシンドローム,CKDを加え,正常高値血圧であっても糖尿病,CKDなどを合併する場合には,生活習慣の修正と同時に原則として直ちに降圧薬治療を開始とするなど,より早期から厳格な降圧を求める姿勢を強く打ち出した。
■第一選択薬についてはα遮断薬が外れ,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬の5種類を推奨。
■家庭血圧の降圧目標が,若年・中年者で125/80mmHg未満などと初めて盛り込まれた。家庭血圧による降圧目標を設定。
■高血圧の定義では,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)平均値のみ国際基準に合わせて130/80mmHg以上と変わった。
■血圧値分類の閾値は現行通りだが,名称を軽症・中等症・重症高血圧からI度・ II度・III度高血圧に変更された。
■24時間にわたる血圧管理や家庭血圧の重要性が強調された。
■初めて家庭血圧による降圧目標が暫定的に設定された。降圧目標は,
(1)若年・中年者:診察室血圧130/85mmHg未満,家庭血圧125/ 80mmHg未満,
以下同順で
(2)高齢者:140/90mmHg未満,135/85 mmHg未満
(3)糖尿病・腎臓病・心筋梗塞後患者:130/80mmHg未満,125/75mmHg未満
(4)脳血管障害患者:140/90mmHg未満,135/85 mmHg
となった。
リスク層別化に正常高値血圧加わる
■治療方針の決定で,血圧レベルと心血管病のリスク要因をかけ合わせてリスクを層別化する基本方針は従来通り。
■リスク分類が大幅に変更された。
新たに血圧分類に正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)が加わり4群となり,今回からリスク第一層~第三層と呼ばれる血圧以外の危険因子3層と組み合わせて,(1)付加リスクなし
(2)低リスク
(3)中等リスク
(4)高リスク
―に層別化された(表1)。
■正常高値欄の追加以外では,大迫研究の結果を根拠として, II度高血圧でリスク第二層の判定が高リスクに変わった。
■リスク要因には,予後影響因子として新たにメタボリックシンドロームがリスク第二層に,CKDが第三層に加わった。
■リスク層別化ではメタボリックシンドロームを,
(1)正常高値以上の血圧+
(2)腹部肥満+
(3)脂質異常症または血糖値異常(空腹時血糖異常かつ/または糖尿病に至らない耐糖能異常)
―と定義,血圧に加え2個の危険因子から成るとカウントし,糖尿病を伴う場合はリスク第三層に繰り上げられた。
正常高値血圧でも高リスクなら 原則として降圧薬治療を開始
■高血圧管理計画では,層別化された3つのリスクに応じた指針を提示された。
全患者に生活習慣修正を指導し,低リスク群では3か月,中等リスク群では1か月後も140/90mmHg以上なら降圧薬治療を開始,高リスクの場合は原則として直ちに降圧薬治療を開始する。
■正常高値血圧であってもメタボリックシンドロームを伴うリスク第二層は「中等リスク」,糖尿病,CKD,臓器障害,心血管病などを伴うリスク第三層では「高リスク」と判定され,ことに後者では生活習慣の修正と同時に,原則として降圧薬治療開始となる。
■確立された心血管病やCKDのない正常高値血圧の高リスクでは,生活習慣の修正から開始し,目標血圧に達しない場合に降圧薬治療を考慮するとの注釈が入った。
第一選択薬はα遮断薬除く5種
降圧薬による心血管病抑制効果は,基本的に降圧薬の種類ではなく降圧度によって規定されるとのコンセンサスが得られている。
■第一選択薬は,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬,β遮断薬(αβ遮断薬を含む)の5種類を同列に位置付けられた。
■α遮断薬は他薬に比べてエビデンスが不足しており,ALLHATなどで単独療法で劣る可能性が示されたとして第一選択薬から外れ,今後は症例を選択して使用することとなった。
■β遮断薬は,非高齢者に対する豊富なエビデンスを踏まえ第一選択薬にとどまるが,積極的適応は心疾患関連に限定された。
■主要降圧薬の積極的適応に新たに心房細動予防とメタボリックシンドロームが加わったのも目新しい点で,ARBまたはACE阻害薬が推奨された(表2)。
II度以上の高血圧などで初期併用療法も選択肢に
■II度以上の高血圧やI度高血圧でも高リスクで低い降圧目標を目指す場合には,通常用量の単剤療法とともに,低用量の2剤併用が初期治療の選択肢に加わった。
■効果不十分の場合は薬剤変更,増量などにより最終的に3~4剤まで併用して降圧を図る。さらに少量利尿薬の積極的な併用も推奨されるようになった。
第一選択薬5種類の組み合わせとしては,ASCOT-BPLAなどの結果をもとに,現行の利尿薬+β遮断薬が外れ,ACE阻害薬またはARB+利尿薬,Ca拮抗薬+利尿薬またはβ遮断薬,Ca拮抗薬+ACE阻害薬またはARBの6種類の組み合わせが推奨されるという。
心筋梗塞後患者の降圧目標を130/80mmHg未満に設定
■心疾患で,現行の虚血性心疾患を狭心症と心筋梗塞後の2つに分けて指針が示され,心房細動予防の指針が加わった。
■心筋梗塞後患者は,ことに心血管イベントのリスクが高いことから,「慎重に」との注意を促しつつ,ESH-ESC2007に準じ一段低い130/80mmHg未満に降圧目標が設定された。
第一選択薬はエビデンスの豊富なRA系阻害薬(ACE阻害薬,ARB),β遮断薬とし,リモデリングの抑制,予後改善を図る。
■心房細動予防には,RA系阻害薬を中心とした降圧を推奨することになった。
■脳血管障害合併例における,発症1か月以降の慢性期の降圧目標については,現行の一次目標150/95mmHg未満を撤廃し,最終目標であった140/90mmHg未満を治療開始1~3か月後の降圧目標とすることになった。
ESH-ESC2007ではPROGRESSの結果を反映して,脳血管障害慢性期患者の降圧目標をより低く130/80mmHg未満としているが,JSH2009では日本脳卒中学会などとも協議し,140/90mmHg未満に踏みとどまることとされた。
出典 Medical Tribune 2008.11.13
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
高血圧治療ガイドライン2009 家庭血圧の降圧目標値新設
http://blog.m3.com/reed/20090120/_2009_
高血圧治療ガイドライン最終案発表
注目の改訂ポイントは「糖尿病合併高血圧の治療」など
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0810/081015.html
家庭血圧の降圧目標値新設の意味は?
「高血圧治療ガイドライン2009」今日発刊
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0901/090106.html
ABPMによる追跡研究JAMPがスタート
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0810/081015.html
<番外編> 薬剤情報
■平成20年12月22日(月) アクトス錠15・30に「効能・効果」の追加
効能・効果
2型糖尿病
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定
される場合に限る。
①食事療法、運動療法のみ
②食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
③食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使用
④食事療法、運動療法に加えてビグアナイド系薬剤を使用
④のビグアナイド系薬剤との併用が追加されました。
■平成21年1月21日(水)、エカード配合錠LD、エカード配合錠HDの製造販売承認
(昨日、MRがパンフを息せき切って持ってきました。)
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があります。
ちょっと古いのですが、第14回国際動脈硬化学会(ISA2006 2006.6.19~22 ローマ)で発表されたINTERHEART試験の記事で勉強しました。
apoB/apoA-1比が良好な予測因子に
■動脈硬化の進展を表す指標としては,現在LDLコレステロール(LDL-C)値やトリグリセライド(TG)値,HDLコレステロール(HDL-C)値が用いられているが,HDL-Cに含まれるアポリポ蛋白質A(apoA)とそれ以外のコレステロールに含まれるapoBの比が心血管疾患の進行を予測する優れた因子であるとの報告がある。
■スウェーデン・King Gustaf V Research InstituteのG. Warrdius氏はワークショップ「Guidelines and Global risk」において,apoB/apoA-1比の計測が,
(1)空腹時の血液採取を必要としない
(2)凍結サンプルでも分析が可能
(3)TG高値でも影響を受けない
(4)変動係数が 5 %未満で誤差が少ない
ことから,臨床的に優れたマーカーであると述べ,自身のデータからapoB/apoA-1比が高値になるほど心筋梗塞や脳卒中の発症頻度が高くなることを示した。
■また,急性心筋梗塞患者 1 万5,152例と対照群 1 万4,820例を比較したINTERHEART試験では,Population Attributable Risk(PAR)としてapoB/apoA-1比高値が49.2%に相当し,喫煙や糖尿病,高血圧と比べても心筋梗塞発症の予測因子として優れていることを示した(Yusuf S, et al. Lancet 2004; 364: 937-952)。
■同氏は「apoB/apoA-1比と喫煙の有無から心血管疾患の発症が約75%予測できるだろう」と述べた。
合成HDL局注でプラーク退縮
■HDLの抗動脈硬化作用に着目した治療戦略の展望としては,現在HDL内のコレステリルエステルをVLDLやLDLに転送する作用を有するコレステリルエステル転送蛋白質(CETP)を阻害するCETP阻害薬やHDLの抗動脈硬化作用を担うapoA-1の臨床応用を目指した研究が展開されている。
■イタリア・ミラノ大学のG. Franceschini氏はで,自身が開発にかかわってきた合成HDLを動脈硬化巣に局注することによって動脈硬化の退縮が可能であることを示した。
■同氏らは,合成apoA-1であるA-I Mirano 1.0gを90分以上かけてウサギの動脈硬化巣に局注したところ,プラークが約30%退縮し血管内膜肥厚も抑制されたことが認められた。
■さらに,急性冠症候群の患者に対してA-I Miranoの化合物であるETC-216を静注したところ,5 週間後にアテローム容積が約 4 %減少したという。
■スタチン治療によりLDL-C値を60mg/dLにコントロールした場合は24か月後にアテローム容積が 6 ~7 %減少したのに対して,ETC-216は 5 週間で約 4 %低下したことに同氏は言及した。
また,ウサギの心筋梗塞モデルにETC-216を投与したところ,梗塞巣が約57%低下したという。さらに A-I Miranoが再狭窄予防作用や脳卒中における神経保護作用も併せ持つことを示すデータを提示し,今後の臨床応用への展開に期待すると述べた。
出典 Medical Tribune 2006.8.3
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
■非空腹時の血液検体と言うのがユニークなところかも知れません。
■ApoB/ApoA1比とTC/HDL-C比の組み合わせが最強の予測因子かも知れません。
■この調査には日本人も含まれているため、国内でも使用できる指標といえます。
■中間リポ蛋白、酸化LDL、smalldense LDL、ミドバンドなどの動脈硬化促進因子はApoBを構成成分とているためApoBが強い指標となっている。
(千葉大 斉藤康先生のコメント MMJ January 2009)
■ランセット誌に同様の論文が出ています。
Lipids,lipoproteins,and apolipoproteins as risk markers of myocardial infarction in 52 countries (the INTERHEART study ):a case-control study
McQueen MJ, et al. Lancet 372:224 - 233,2008
<結論>
非空腹時のApoB/ApoA1比は急性心筋梗塞のリスク予測においていずれのコレステロール比よりも優れており、これはすべての人種、男性・女性、年齢層に一貫しており、全世界の診療現場に導入すべき有用な指標である。
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(内科医向き)
があります。