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安定狭心症に対するニコランジルの有用性を証明したIONA studyは英国で行なわれた大規模臨床試験です。
しかしわが国の治療体系とは若干異なるため、同様な結果が得られるかどうかは不明です。
きょうは、わが国のJ-CAD(Japanese Coronary Artery Disease)studyの紹介とそのサブ解析にて明らかになったニコランジルのエビデンスを報告した記事で勉強しました。
周知のようにIONA studyは別に目新しい研究ではありませんが、今となっては温故知新です。
演者は、自らの基礎研究の結果から心血管保護作用が寄与しているかもしれないと結論づけました。
ニコランジルによる予後改善のエビデンスを振り返る-IONAからJ-CADまで-
基礎とエビデンスで見たニコランジルの心血管系保護作用
演者:
獨協医科大学 循環器内科 堀中 繁夫 先生
Sprague-Dawleyラットにおける検討で、ニコランジルは血圧に有意な影響を及ぼさない用量でKATPチャネルのサブユニットであるSUR2 mRNAとecNOS(内皮構成型一酸化窒素合成酵素)mRNAからのタンパク発現を増加させた。
この増加作用はいずれもグリベンクラミド(KATPチャンネル遮断薬)前処置により消失したため KATPチャネルを介する可能性が示唆された。
次にラット心筋梗塞モデルにおいて、ニコランジルは対照群に比べ生存率を改善する傾向を示し、機序として致死性心室性不整脈の抑制が関与していることを示した。
また心臓組織のmRNA発現を検討すると、ニコランジルによりSUR2とecNOSのmRNA発現が増加していた。
結論として「ニコランジルによるKATPチャネル開口作用とともに、ecNOS発現増強を介した心筋NO産生の増加が心保護的に作用するのではないか」と堀中氏は述べた。
またダール食塩感受性高血圧心不全ラットでは心不全期において心臓のecNOS発現が低下していることが報告されている。
このラットモデルにおいてもニコランジルは、血行動態に影響を与えない用量で、左室重量の増加や左室容積の増大を抑制し、左室収縮能および拡張能を改善した。
遺伝子発現の検討では、ニコランジル群で対照群に比べecNOS mRNA発現が増加しており、内皮依存性のNOの増強作用が心不全をも改善させる可能性を示唆した。
J-CAD study:ニコランジルで死亡が35%減少 次に堀中氏は、日本人におけるニコランジルのエビデンスを紹介した。 IONA studyにおいて、ニコランジルは安定狭心症患者の虚血性心イベント(複合エンドポイント)を相対的に17%減少させた(表1)。
ただし、本試験には「対象が日本人以外」、「日本国内承認用量を超える40mg/日を使用」、「SU剤服用例除外」という限界があると堀中氏は指摘。
これらを補うエビデンスとして、わが国で行なわれたJ-CADstudyのサブ解析を紹介した。
The IONA Study Group. Lancet 2002; 359: 1269-1275.
IONA studyにおける複合エンドポイント
J-CAD studyはWeb登録による、わが国の虚血性心疾患患者を対象とした前向きコホート研究である。
2000年に開始され、全国 217施設が参加している。
今回紹介されたサブ解析は、冠動脈造影により75%以上の狭窄を少なくとも1枝に認めた連続13,812例中、ニコランジルを服用していた2,558例と非服用の対照群2,558例の比較である。
対照群の抽出にはpropensity scoreが用いられた。ニコランジルの平均服用用量は15.04±4.74mg/日だった。
これら5,116例の平均年齢は67歳、75%が男性であり、36%がスタチンを、46%がレニン・アンジオテンシン(RA)系抑制薬を服用していた。
平均2.7年間の観察期間中、総死亡のリスクはニコランジル群で相対的に35%有意(p=0.0007,Cox解析)に低下していた(図)。
またニコランジル群では、「心臓死」、「脳血管・血管死」、さらに「心不全発症」も減少していた(表2)。
図. J-CAD studyにおける総死亡リスク
表2. J-CAD studyにおける心血管系イベント
また、これらのニコランジルによる有効性はSU剤併用の影響を受けなかった。
すなわち、SU剤服用の有無にかかわらず、ニコランジル群では対照群に比べ「総死亡」は減少していた。
「わが国の臨床において標準的治療を受けている虚血性心疾患患者に対し、ニコランジルの追加投与は心血管死を減少させ、さらに心不全発症も抑制する。
したがって虚血性心疾患患者には積極的に用いる必要があろう」と堀中氏は結論した。 http://www.carenet.com/cardiology/jcc_fs7_2008/text_04.html
<自遊時間>
医療情勢に関する記事をとりあげてみました。
公立病院閉鎖が現実に。
診療報酬改善の前提は医療側の自律と自治
鈴木寛(参議院議員) http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/mric/200812/508810.html
出典 NM online 2008.12.12
版権 日経新聞社
2006年の医療改革以来、診療報酬は毎年減額。
地域中核病院が閉鎖、縮小、診療所化に追い込まれています。
この流れは昨年12月、総務省の公立病院改革ガイドライン発出から加速。
全国411公立病院中129病院が体制の見直しを迫られています。
公的医療を担う病院の収益が悪くなる理由として、
1)小児科、産科、救急などの非採算部門を他病院が撤退した後も最後の砦として担っている、
2)一部病院では建替え時にハードにお金をかけすぎ返済額が過大、
3)看護師らコメディカルの勤続年数や平均年齢の関係で人件費が割高、
などが指摘されています。
とはいえ産科はじめ医師確保の緊要性と、良質な看護師の確保・定着のため、必要な人件費は確保しなければなりません。
やはり問題は、これら病院の収入源たる診療報酬が十分でないこと。
診療報酬体系の歪みを直すとともに、総医療費を先進国並みに引き上げていかなければなりません。
私も繰り返し訴えていますが、患者さんからの賛同は得られるものの、健康な市民からの反応が芳しくありません。
国民の間には「医者はいい思いをしている」との意識が今なお根強く、医療界が信頼と尊敬を取り戻し理解を得るには、さらなる努力を要します。
過酷な勤務環境の下で病院勤務医の確保が難しくなっている実態を説明していくと同時に、倫理なき医師を放置することなく、医療界が自律的に、その退場を毅然と迫ることも必要かもしれません。
ドイツでは、強制加入の州医師会が「医師職業規則」にもとづいて医師を監督。
「医師職業裁判所」が民事・刑事裁判とは独立して審判・制裁を行っています。
医療界が自浄作用を発揮し、診療報酬の病診配分の見直しなど自発的に提起することで、医療費確保への国民の理解も得られるのです。
医療界のリーダーシップに期待します。 もちろん我々もがんばります。
<コメント>
「診療報酬が十分でないこと」 これは全く同感です。
後半の「倫理なき医師を放置云々」は、この議員の、医師に対する偏見を感じます。
医師の中に倫理観が欠如する人間がいる。
たしかにそんな医師もいるかも知れませんが、それはほんの一部で論点のはぐらかしです。
「医者はいい思いをしている」わけでもなく、多くの医師は真摯に医療に取り組んでいます。
「医療界が信頼と尊敬を取り戻し理解を得るには、さらなる努力を要する」のは施策ミスを犯した医療行政側です。
昨夜もNHKで医療問題をとりあげた特番があり「ながら見」をしました。
案の定、患者サイドが声高の発言をし、医師が悪者扱いになっていました。
厚労省官僚も同席していました。
ターゲットを彼に向けて、医療側も受療側も質問すべきです。
案の定、新しい提言は生まれず不毛の議論でした。
NHKスペシャル「医療再建 医師の偏在 どう解決するか」
チャンネル :総合/デジタル総合
放送日 :2008年12月21日(日)
放送時間 :午後9:00~午後10:50(110分)
http://www.nhk.or.jp/special/onair/081221.html
「必要な時、必要な場所で、必要な医療が受けられない。」救急や産科、小児科、外科など、特定の診療科で深刻化する医師不足。
地方と都会で広がる医療格差。夜間に頼れる医療機関がない在宅の患者たち。
そして、過酷な病院勤務に見切りをつける医師たち。
今、日本の医療が崩壊の危機に瀕している。こうした事態に、政府は医師の増員を打ち出したが、医師の数が増えても、診療科や地域など「医師の偏在」の問題に取り組まないと現状は変わらない、という声が医療現場や専門家から相次いでいる。
“必要な時に必要な医師がいる”安心をどうしたら実現できるのか。番組では、妊娠中の女性や救急患者が受け入れを断られて亡くなるケースが続出する東京都の医療現場や、崩壊の危機に直面し医療体制の全面的な建て直しに乗り出している地方の模索など、全国各地の医療現場の最前線を取材。
医師を計画的に配置しているヨーロッパの事例などを交えながら、「医療再建の処方箋」について徹底討論を通じて考える。
【ゲスト】厚生労働省医政局長…外口崇,日本医師会副会長…竹嶋康弘,中央社会保険医療協議会委員…勝村久司,世界保健機関西太平洋事務局長…尾身茂,
【解説】岩本裕,
【司会】高橋美鈴
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