戯れ言たれる侏儒
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心腎連関

戯れ言たれる侏儒 / 2008.12.21 00:15 / 推薦数 : 0
多くの疫学研究により,腎機能障害が心血管疾患の独立したリスクファクターであることが明らかにされたことで,「心腎連関」への関心が高まっています。
それに伴い,この分野の基礎・臨床研究も盛んに行われ,新たなエビデンスも次々と登場しています。
 
最近では交感神経系や炎症などの関与を示唆する結果も得られてきています。
2008年9月8~10日に東京にて開催された第56回日本心臓病学会学術集会のランチョンセミナーでは,循環器専門医の立場から心腎連関をふまえた心血管疾患の治療戦略について講演が行われ,レニン・アンジオテンシン(RA;renin-angiotensin)系抑制薬を用いた、より早期からの治療の必要性が強調されました。
Medical Tribune誌に掲載された、このセミナーでの記事で勉強しました。

特別企画
第56回日本心臓病学会学術集会 ランチョンセミナー
心腎連関をふまえた心血管病の治療戦略
川崎医科大学内科学(循環器)教授
吉田 清 氏(座長) 
北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学教授
筒井 裕之 氏 
豊富なエビデンスにより認識が広まった心血管リスクとしてのCKD
2003年に米国心臓協会(AHA; American Heart Association)が,「従来の慢性腎臓病(CKD; chronic kidney disease)対策の目的は末期腎不全(ESRD; end-stage renal disease)への進行抑制であったが,実は多くのCKD患者はそれ以前に心血管疾患(CVD; cardiovascular disease)で死亡している」とのステートメントを発表した。
これを契機に,CKDへの関心は一気に高まり,現在では「CKDが非常に重要な心血管リスクである」ことが広く認識されるようになった。
 
AHAのステートメントが指摘した疫学研究のエビデンスに加え,その後は,基礎・臨床も含め数多くの研究が報告されており,今ではCKDが心血管リスクであることを示すエビデンスは豊富である。
例えば日本の久山町研究では,12年間の追跡においてCKDを有する住民は有さない住民に比べ,男女とも心血管イベントが有意に増加することが明らかにされている。
さらに,冠動脈インターベンション(PCI; percutaneous coronary intervention)施行患者を対象にした米国の研究では,糸球体濾過量(GFR; glomerular filtration rate)が60mL/分/1.73㎡未満の患者の約9年間の長期累積死亡率が,有意に増加することも報告されている。
CVD既往にかかわらずCKDは独立した心血管リスクファクターである
心筋梗塞後の左室機能低下患者を対象にした大規模臨床試験Valsartan in Acute Myocardial Infarction(VALIANT)の登録患者を解析したレジストリー研究「VALIANT Post-MI Registry」では,GFRが正常(60.0mL/分/1.73m2超)の患者に比べGFR45.0?59.9 mL/分/1.73㎡では,心不全および心血管死リスクが約2倍,GFR45.0mL/分/1.73m2未満では約3倍に増大することが示された(図1)。
 
このようにGFRの低下は,従来から知られているものとは全く独立したCVDの予後決定因子であり,CKDはCVD既往の有無にかかわらず,その発症リスクということができる。
 
以上のようなエビデンスをふまえ,CKDは従来から多くの循環器専門医が考えていたようにESRDに進行することでCVDを生じるのではなく,CKD自体が直接のCVDリスクであることが広く認識されるようになったのである(図2)。
心腎連関:心不全患者の7割以上がCKDを合併
CVDの最終的な状態は心不全である。
筒井氏らは,慢性心不全を対象とした全国多施設コホート研究 Japanese Cardiac Registry in CHF-Cardiology(JCARE-CARD)を行い,数々のエビデンスを見出してきた。
2,675名を登録し,予後を約2年間追跡した同研究では,まずMDRD簡易式により算出した推定GFR(eGFR)の分布から,登録した心不全患者の約70%がCKDであることが示された。
米国の急性心不全のレジストリー研究Acute Decompensated Heart Failure National Registry(ADHERE)でも80%がCKDと報告されており,「これらの結果から心不全患者の大多数はCKDと考えたほうがよい」と,筒井氏は指摘する。
 
また,GFR低値ほど高血圧,糖尿病を基礎疾患に有する患者が増え,高尿酸血症,貧血なども含めリスクが重積してくることも明らかになった。
 
さらに,
GFR低値群ほどangiotensin converting enzyme(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB; angiotensin II receptor blocker)などのRA系抑制薬,β遮断薬といった心不全に必要な治療薬の使用率が低下していることもわかった。
GFR低下は慢性心不全における予後の規定因子
JCARE-CARDからは,心不全の重症度はGFRが低下するほど増大することも示されている。
また,ADHEREと同様にeGFRの低下が慢性心不全における院内死亡の独立かつ重要な規定因子であることが明らかになった。
 
さらに約2年間の追跡による長期予後を,eGFR60mL/分/1.73m2超群,eGFR30~60mL/分/1.73m2群,eGFR 30mL/分/1.73m2未満群の3群で比較すると,eGFR低下とともに全死亡率の相対リスク(補正後ハザード比)は,約1.5?3倍に増加し,その多くが心臓死によって占められていた。
また心不全の増悪による再入院も,eGFRの低下とともに大幅に増加していた。
 
以上の結果から,GFRが慢性心不全の院内死亡,さらに長期予後の重要な規定因子であることは明らかといえよう。
同様の試験結果は米国やカナダからも報告されている(図3・図4)が,わが国の心不全患者にも当てはまることが証明された。
 
 
CKDでは古典的心血管リスクファクターとCKD特異的リスクファクターが合併
では,なぜGFR低下が心血管リスクとなるのだろうか。
CKDの病期ステージはGFRのみで規定されているが,その背景には高血圧,糖尿病などの古典的な心血管リスクファクターが潜んでおり,CKDステージの進行に伴いこれらが重積する。
さらに,貧血やカルシウム-リン代謝異常など,CKDに特異的な「非古典的な」心血管リスクファクターも加わってくる。
そのうえCKDでは,GFR低下による直接的な血管疾患の発症や,水分・ナトリウム貯留による容量負荷,高血圧による圧負荷などの機械的負荷,心筋リモデリングの増悪がもたらされ, RA系抑制薬などの必要な薬物治療,冠動脈造影,冠動脈インターベンションなどが十分に行えない「治療不十分」に陥っているという実態がある。
「このような機序が複合的に作用して,GFR低下は心血管リスクとなると考えられる」と,筒井氏は述べた。
心不全に対する治療は慎重に:発症前のごく早期からのRA系抑制薬治療が重要
CKD(または腎不全)はCVD(または心不全)の重大なリスクファクターであり,CVDの治療に際しては心腎連関をふまえた治療戦略が重要となる。
その観点から期待されているのがACE阻害薬やARBなどのRA系抑制薬である。
というのも,心腎連関においては,一酸化窒素(NO)バランス,交感神経系,炎症などとともに,RA系が非常に重要な役割を果たしているためである(図5)。

 
現在までに,Irbesartan in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria (IRMA2), Microalbuminuria Reduction with Valsartan(MARVAL), Irbasartan Diabetic Nephropathy Trial (IDNT), Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin II Antagonist Losartan(RENAAL)という4件の大規模臨床試験から,ARBの腎保護作用に関するエビデンスが提供されている。
これらの試験のなかには,腎保護作用とともに心不全の発症や心不全による入院の抑制が示されているものもある。
 
一方で,心不全患者におけるRA系抑制薬の投与には,その病態に伴う注意が必要である。
というのも,輸出細動脈の拡張による糸球体内圧の低下が,かえってGFRを下げ腎機能を悪化させるという現象が生じるからである。
本来,輸出細動脈拡張による糸球体内圧の低下は腎保護にとって悪いことではない。
しかし,心拍出量の低下している心不全においては,「心腎症候群」の引き金になる場合もある。
そこで,最小用量から開始する,利尿薬との併用を行うなどの工夫が求められるという。
 
心腎症候群」とは,心不全患者における腎機能障害の進展のことを指す。
本来は心不全の治療薬であり長期的には腎保護に働くRA系抑制薬や利尿薬が,心拍出量の低下した心不全患者において短期的なGFR低下を引き起こすことが心腎症候群の一因と考えられている。
このため心不全患者の治療においては,心腎症候群の回避を意識した十分な注意と対策を講じる必要があり,さらにCVDとCKDの連鎖を断ち切るために,できるだけ早期の段階からRA系抑制薬の治療を開始することが重要なのである。
 
CKDを合併する高血圧症の第一選択薬はRA系抑制薬
最近,日本腎臓学会・日本高血圧学会が共同で発表した「CKD診療ガイド 高血圧編」においても,同様の勧告がなされている。
同ガイドでは,CKDを合併する高血圧治療の第一選択薬をRA系抑制薬としたうえで,既に腎機能低下がある場合は,急速な腎機能変化や高カリウム血症を避けるために低用量から慎重に投与すること,心不全などRA系抑制薬投与による血清クレアチニンの急上昇が予測される病態においては,減量ないし中止するなどが勧告されている。
 
筒井氏は,CKDとCVDの連鎖である心腎連関にはアンジオテンシンIIが密接に関与しており,心不全が進行し腎機能が低下する前の早期の段階からRA系抑制薬を中心とした治療が重要であることを再度強調して,講演を締めくくった。
出典 Medical Tribune 2008.12.18
版権 メディカル・トリビューン社
 
 

<きょうの一曲>  雪が降る
Salvatore Adamo - Tombe la neige
http://jp.youtube.com/watch?v=K-DKXuWuoYM

(ライブのためか音がちょっと・・・)

<きょうの格言>
人間が人間として生きていくのに一番大切なのは、頭の良し悪しではなく、心の良し悪しだ。(中村天風)

<中村天風 関連サイト>
人生は心一つの置きどころ   中村天風と天風哲学
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/3860/biografias/tempu.html
 

<自遊時間>
山形大、臨床実習で治療に参加
http://wellfrog3.exblog.jp/10387525/

 

他に

ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(3)」2008.12.11~
http://wellfrog3.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)

があります。

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