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動脈硬化性疾患の治療戦略
日本人エビデンスに基づくオーダーメードの脂質管理
新たな臨床指標の有用性に高まる期待
CRPやLDL-C/HDL-C比、IMTなどを指標に
欧米人に比べて日本人の心筋梗塞リスクは数分の1と低いことをはじめ、動脈硬化性疾患の疾病構造や薬物動態には人種差があることが指摘されている。
日本人の脂質代謝特性については未解明な部分も多いが、近年は日本人を対象とした臨床試験が相次いで報告されており、エビデンスの集積が著しい。
これに伴い、日常診療における動脈硬化性疾患の管理も目覚ましい発展を遂げている。
血清脂質だけでなく、CRPやアディポネクチン、LDL-C/HDL-C比、IMTなどの新たな臨床指標の有用性に期待が高まっている。
食習慣の欧米化、運動不足、人口の高齢化など、日本の社会環境は動脈硬化の進展を促進する要因に満ちている。
動脈硬化による疾患は、脳卒中・虚血性心疾患から閉塞性動脈硬化症に至るまで広範囲に及ぶ。
日本人の3大死因は、第1位が「がん」、第2位「心疾患」、第3位「脳血管疾患」だ。
年間死亡数110万6000人に対し、心疾患17万3000人、脳血管疾患12万7000人だけを抽出しても30万人(27.1%)に及ぶ(2007年推計値)。
動脈硬化性疾患の治療法は、著しい進歩を遂げている。
PCI(経皮冠動脈インターベンション)、CABG(バイパス手術)をはじめ、日本の治療成績は世界トップレベルにある。
血管内インターベンションの領域では、頸動脈ステントや大動脈ステントグラフト、末梢血管ステントなどの国内承認も相次いでいる。
日進月歩の予防戦略
新たな臨床指標も
しかし、「人は血管とともに老いる」(William Osler)という状況は、今も昔も変わらない。
動脈硬化性疾患の1次予防および2次予防に携わるプライマリケア医の役割は、ますます増大している。
予防のためのストラテジーも、日進月歩だ。
かつては欧米で実施された大規模臨床試験の結果をベースに組まれていた日本人の予防戦略だが、生物学的な違いや社会環境の影響などの日本人の特性を反映した予防戦略が構築されつつある。
日本人は、冠動脈疾患の発症リスクが低く、脳卒中のリスクは比較的高い。日本動脈硬化学会による「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007」は、久山町研究やNIPPON DATA80などの疫学研究、J-LITやMEGA、JELIS、MUSASHI、ESTABLISHなどの臨床試験によって日本人で得られたエビデンスに基づいて編集された。
脂質異常症の診断基準では、高LDLコレステロール(LDL-C)血症をLDL-C値140mg/dL以上、低HDLコレステロール(HDL-C)血症をHDL-C値40mg/dL未満などと定めた。
リスク別に脂質管理目標を示しており、高リスク者の1次予防ではLDL-C値120mg/dL未満、2次予防では同100mg/dL未満を目指すことを推奨している。
ガイドライン2007の発行後も多くの研究が発表されている。
糖尿病や高血圧などの合併症を持つ場合には、LDL-C値を70mg/dL未満に下げる、より厳格な目標も掲げられている。
HDL-Cは高値を維持することがより重視されるようになっており、目標値についても議論の的となっている。
健診データからは、性別や年齢別に脂質動態が解析され、動脈硬化対策のオーダーメード化への期待がかかっている。
食品中の脂肪酸組成の重要性も従来から指摘されており、適切な食事指導による正しい脂質コントロールが求められている。
臨床検査指標についての検討も進んでいる。
ガイドライン2007では総コレステロール値が診断基準から外れたが、CRPやアディポネクチン、nonHDL-C、さらにはLDL-C/HDL-C比などの有用性が相次いで報告され、新たな臨床指標として期待されている。
頸動脈の内膜・中膜の肥厚(IMT)や、プラークの存在や性状をみる頸動脈超音波検査もプライマリケアの現場で普及してきた。
専門医ではCTやMRIでより詳しく病変の性状を見る画像検査も採り入れられている。
日常の脂質管理はプライマリケア医の役割
動脈硬化性疾患の予防には生活習慣の改善が欠かせないが、予防戦略の主力となるのはスタチンやフィブラートをはじめとする薬物療法になる。
低ければ低いほど予防効果があるとする「the Lower, the Better」の概念は明確には証明されていないが、LDL-Cをしっかり下げて、HDL-Cを上げるという基本戦略は変わらない。
動脈硬化性疾患は、死に直結する。
いかに患者の脂質動態をコントロールして、動脈硬化性疾患の発症を防ぐかは、患者のライフスタイルを把握しているプライマリケア医の腕の見せ所だ。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200811/series1.html
出典 Japan Medicine 2008.11.28
版権 じほう社
<コメント>
久しぶりにプライマリケア医のための平易な内容で勉強しました。
内容は分かりやすいのですが何だか物足りません。
そして何を言いたいのかもちょっと分かりにくいのです。
というのも、文中にもある「頸動脈超音波検査」を最近導入した印象では、脂質異常と頸動脈病変が意外と相関がないのではないのかという印象を持ってしまったからかも知れません。
薬剤介入による頚動脈病変の改善が最も期待出来るはずの家族性高コレステロール血症を対象としたENHANCE試験の結果を知った後の空虚感かも知れません。
ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
ENHANCE試験をめぐる論争 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080429/ENHANCE__
脂質異常症のない場合の頚動脈病変は別に珍しくありません。
脂質代謝の研究者は、これらの症例にも謙虚に目を向けるべきと思うのですが、先生方の考えはいかがでしょうか。
これは冠動脈病変にもあてはまることです。
そして、動脈病変と一番相関するのは年齢であるはずです。
そういってしまえば身も蓋もありませんが。
何が言いたいかというと、動脈硬化の成因はまさにmultifactorialであり、「脂質異常症」は多数ある成因の一つに過ぎないということです。
<きょうの格言>
10歳にして菓子に動かされ、20歳にしては恋人に、30歳にして快楽に、40歳にしては野心に、50歳にしては貪欲に動かされる。いつになったら人間はただ知性のみを追って進むようになるのであろうか。(ゲーテ )
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
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