戯れ言たれる侏儒
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N Engl J Med誌に掲載された心臓MDCTの論文で勉強しました。
いつも思うのですが、インパクトファクターがハイスコアであるN Engl J Med誌やLancet誌に掲載された論文がはたして各専門分野での本当にすぐれた研究なのでしょうか。
具体的に循環器領域で考えた場合に、これらの医学誌に掲載された論文がはたしてJACCなどにアクセプトされるでしょうか。
医学誌にはそれぞれ特徴があると思うのですが、先生方はどう思われますでしょうか。

たとえばLancetに掲載されたJ・・・ Study。
N Engl J Med誌には方法論的にまずは掲載されない、とある講演で聞きました(オフレコ?)。

きょうの論文の結論である「マルチスライスCT血管造影は現段階では従来の血管造影の代替法とはなりえないことが示唆される」。

何だか至極ごもっともな結論のような気がします。

 

Diagnostic Performance of Coronary Angiography by 64-Row CT

J.M. Miller and others

背 景
64 列マルチスライス CT による血管造影の診断精度は十分には明らかにされていない。
方 法
冠動脈疾患の疑いのある患者を対象に,0.5 mm×64 列マルチスライス CT 血管造影の診断精度を,従来の冠動脈造影と比較・検討することを目的として多施設共同試験を実施した。
9 施設において,従来の冠動脈造影を受ける前にカルシウムスコアリングとマルチスライス CT 血管造影を受けた患者を登録した。
カルシウムスコアが 600 以下の 291 例について,独立した中央検査所で直径 1.5 mm 以上の部位を CT と従来の血管造影を用いて分析した。
50%以上の狭窄を閉塞とした.受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を用いて,従来の血管造影と比較した診断精度とその後の血行再建術の施行状況を評価し,修正 Duke 冠動脈疾患指標(modified Duke Coronary Artery Disease Index)を用いて疾患の重症度を評価した。

結 果
計 56%の患者に閉塞性冠動脈疾患が認められた。
従来の血管造影での 50%以上の狭窄の検出・除外に対する定量的 CT 血管造影の患者ごとの診断精度は,AUC 0.93(95%信頼区間 [CI] 0.90~0.96),感度 85%(95% CI 79~90),特異度 90%(95% CI 83~94),陽性適中率 91%(95% CI 86~95),陰性適中率 83%(95% CI 75~89)であった。その後血行再建術を受けた患者を同定する能力は,CT 血管造影と従来の血管造影で同等であり,AUC はマルチスライス CT 血管造影で 0.84(95% CI 0.79~0.88),従来の血管造影で 0.82(95% CI 0.77~0.86)であった。866 の血管を血管ごとに解析したところ,AUC は 0.91(95% CI 0.88~0.93)であった。
CT と従来の血管造影で確認した疾患重症度には,高い相関が認められた(r=0.81,95% CI 0.76~0.84)。
CT 血管造影の施行後,2 例で造影剤に対する重大な反応がみられた。

結 論
マルチスライスCT血管造影により,有症状患者における閉塞性冠動脈疾患の有無や重症度,その後の血行再建術の施行状況が正確に同定される。
しかし,陰性・陽性適中率からは,マルチスライスCT血管造影は現段階では従来の血管造影の代替法とはなりえないことが示唆される。

http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359nov/xf359-22-2324.htm
(N Engl J Med 2008; 359 : 2324 - 36 : Original Article)

<原著>
Diagnostic Performance of Coronary Angiography by 64-Row CT
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/22/2324

 

<関連サイト>
MDCTによる心臓画像診断の進歩
診断・経過観察目的のCAGはCTに移行へ
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=64%E5%88%97%EF%BC%A3%EF%BC%B4&perpage=0&order=0&page=0&id=M4012741&year=2007&type=allround
出典 MTpro  2007.3.22
版権 メディカル・トリビューン社
■ 心臓MDCTは低侵襲性に加えて,血管内腔だけでなく,血管壁のプラークの性状に関する情報が得られる利点が注目され,カテーテル挿入による冠動脈造影(CAG)に代わる診断法となりつつある。
■ 冠動脈有意狭窄に関する陰性的中率が97%以上と高く,急性冠症候群(ACS)の除外診断に優れるが,CAGに比べて空間分解能がやや劣り,被曝線量が多いなど課題もある。
 
CAGは,空間分解能に優れ,診断時に必要に応じて治療に移行できるが,(1)侵襲的で入院が必要な場合がある
(2)血管内腔の情報しか得られない
(3)術者の技量に診断が左右されやすい
など問題点もある。

一方,64列CTは造影剤を経静脈的に急速注入した後,10秒ほど息止めをして,冠動脈が造影されたタイミングで心臓を撮影し,画像再構成により血管内腔を描出する。
(1)低侵襲
(2)血管内腔とともに血管壁のプラークの性状に関する情報も得られる
(3)外来で施行できる
(4)経費も3万円程度と比較的安い
などの利点がある。
しかし,
(1)CAGに比べて空間分解能がやや劣る
(2)被曝線量がCAGに比べてやや多い
(3)血管壁の石灰化が高度な場合は評価が困難
(4)撮影中の心拍変動や不整脈により画質が劣化する
など課題も残されている。

■ 冠動脈CTでは,すべての心時相に対して連続的にヘリカルスキャンを行い,後で必要な心時相を選ぶために,CAGに比べて被曝線量が多くなる。被曝低減の試みとして,一般的に収縮期にX線照射を低減するECGモジュレーションという手法が用いられ,被曝線量を約25%低減できる。
 
■ 近年, ACS発症前30日以内のCAGの結果から,冠動脈狭窄50%以下の患者が全体の約 7 割を占めており,狭窄が必ずしも高度でなくてもACSを発症することが明らかにされている。
ACSのなかでも,ST非上昇型心筋梗塞,不安定狭心症は心筋壊死が生じていないか軽度であるため,非定型的胸痛を呈し,心電図異常やトロポニン値などの血清酵素上昇を伴わない場合が多い。
こうした患者をいかに的確に診断し,心筋梗塞の進展や死亡を予防するかが重要な治療戦略となっている。
ACSの発症機序として,冠動脈プラーク破綻とそれに引き続く血栓形成が考えられていることから,その予防には冠動脈の有意狭窄に加えて,脆弱性プラークの形態学的異常を検出することが合理的と考えられる。

■ 脆弱性プラークの形態学的特徴としては,
(1)脂質コアが大きい
(2)線維性被膜の菲薄化
(3)血管リモデリングの存在
などが知られている。
このうち,心臓MDCTでは,CT値の測定により脂質コアの性状,血管リモデリングが評価できる。
一方,64列CTの空間解像度では薄い線維性被膜(50~100μm)については検出できない。

■ 脂質に富むプラークはCT値が50HU以下,線維質主体のプラークは51~119 HU,石灰化プラークは120HU以上を示すといわれている。

■ 低CT値を有する患者の心血管事故は高度冠動脈狭窄がなくとも高い。

■ 冠動脈内腔が40%以上狭窄すると,冠動脈径が代償的に拡大する陽性リモデリングが生じるが,プラーク容積はむしろ増大し,プラークが破綻しやすくなる。

■ 現在,国内で年間50万件以上施行されているCAGの約 7 割が診断目的と言われており,その大部分はMDCTで代替できると考えられる。
  
■ 心臓MDCTは,放射線被曝や造影剤投与を伴うため,原則として無症状の患者や検診目的に使うべき検査ではなく,胸痛,非定型的胸痛を伴う患者に限定すべきだと考えられる。
その他の胸痛や無症状の患者に対する冠動脈疾患のスクリーニング目的では,放射線被曝や造影剤を必要としない心臓MRAが普及していくと予想される。
心臓MRAは診断精度の高い機種が開発されてきており,腎機能の低下した患者や高齢者も多いため,胸痛患者のトリアージにもMRAが多く使われるようになることが予想される。

■ 冠動脈MDCTあるいはMRA導入後の冠動脈疾患の診断・治療戦略については,胸痛があれば,MDCTでプラーク評価を行い,有意狭窄がなければ内科的治療の適応になる。
胸痛がなく,有意狭窄やプラークが認められる場合は運動または薬物負荷試験を行い,心筋虚血が認められた場合,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)の適応となる。
術後のフォローアップは,MDCTによりステント挿入後の血管内腔も詳細に観察できる。

■ MRIは高い濃度分解能を有し,心筋の性状評価や灌流,梗塞巣の描出などに優れている。一方,MDCTはMRIよりも高い空間解像度を有し,診断能が機種やハード面に依存する部分も少ない。
冠動脈疾患の形態評価には,検査の適応が明確であればMDCTを第一選択とし,MRAを選択するのは腎機能低下,ヨード造影剤アレルギー,高度な冠動脈石灰化を有する場合,被曝により慎重であるべき小児などに限定している。
   
■ 冠動脈MDCTは陰性的中率が非常に高く,冠動脈の有意狭窄がないという否定診断に有用なことが示されている。
多くの文献では,16列CTの検討では感度80~90%,特異度85~95%,陰性的中率97%,評価不能のセグメントが10~15%。64列CTでは診断精度がさらに向上し,感度,特異度が90%以上,陰性的中率は98~100%と報告されており,その応用が拡大している。


<コメント>
残念ながらこの図の中にはスパスムスのような機能的狭窄の概念は盛り込まれていません。

 

 

 

<関連ブログ>
MDCT,電子ビームCTによる石灰化スコア
http://blog.m3.com/reed/20080426/MDCT_CT_

専門医の期待に応える64列MDCTの高画質
http://blog.m3.com/reed/20070930/1
 

心疾患洸リスク患者とCTの活用
http://blog.m3.com/reed/20080731/_CT_

 

MDCTによる不安定プラークの診断
http://blog.m3.com/reed/20080423/MDCT_

今話題のMDCTの被ばく量は?
http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/e/a9a204b8ccc30e34c59a8bf45a5dabb1

 

 

「CT冠動脈造影により、無視できないレベルまで癌リスクが上昇する 」という論文があります。

 

<自遊時間>
医師がいとも簡単に逮捕される時代になりました。
福島県立大野病院の一件もそうでしたが、その際の「逮捕」についてはあまり問題にされませんでした。
法的なことはよくわかりませんが、逮捕の必要性、必然性はどこにあるのでしょうか。
これは決して今回の不正請求を擁護するものではありません。
彼が日医の会員かどうか知れませんが、日医の会員であってもなくてもこのような「医師の逮捕」が続くことに日医は動いているのでしょうか。

元厚生省技官を逮捕、診療報酬を不正請求の疑い 神奈川県警
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081201AT1G3002030112008.html
 

監査官時代に不正知識? ○○容疑者 保険請求指導する立場
http://www.kanematsu-rmn.jp/news/takeda_dia/news2.php?mode=jpview&num=200811210027647

 

逮捕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%AE%E6%8D%95
 

(1)「医師逮捕」心キレた
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20070501ik0e.htm

 

他に

「ふくろう医者の診察室 」
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~ http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21 http://wellfrog.exblog.jp/ 
(内科医向き)

があります。


<医学雑誌斜め読み> 2008.12.2追加
循環器専門医第16巻2号 2008.9
「循環器画像診断におけるCTとMRIを用いたfusion imagingの有用性」
■ 循環器画像診断は、近年multi modality imagingの時代と認識されるようになった。
すなわち複雑な病態の把握のあめに、複数のモダリティーからなる画像情報を組み合わせて診断しようとする試みである。
画像には大きく分けて形態画像と機能画像があり、これらの組み合わせがとくに重要である。
<コメント>
「形態」と「機能」の概念は、病態把握の基本ですが得てして目の前の形態異常に目を奪われて機能の評価が疎かになりがちです。
常々感じるのは、冠動脈造影の際に狭窄に目が行き過ぎて収縮能も評価が疎かになっているのではないかということです。
stunned myocardium, hybernating myocardiumという概念が出てからは、そのことを錦の御旗としているようにも勘ぐってしまう症例もあります。
機能評価といえば、まさしく冠スパスムスがそれに相当します。
■ 予後の改善をエンドポイントとしたメタ解析では、心筋バイアビリティーが認められる症例に対し死亡率が80%低下するのに対し、心筋バイアビリティーが認められない症例に対して血行再建を行っても死亡率が改善しないため、血行再建のリスクだけが増加してしまうことが報告され(J Am Coll Cardiol 2002; 39: 1151-1158)、術前の正確な心筋バイアビリティーの評価の重要性が改めて示唆された。

■ CTCAの最大の特徴は、血管内腔の情報しか得られないCAGと異なり、血管壁の構造が評価できることにある。

 

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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