戯れ言たれる侏儒
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ESC心不全ガイドライン

戯れ言たれる侏儒 / 2008.11.30 00:22 / 推薦数 : 0

昨夕、開業医を対象とした「心不全」の講演に出席しました。
講師の先生は、β遮断剤による心不全の治療がいかに生命予後を改善するかという内容の話が主体でした。
例によってエビデンスの紹介のオンパレードでしたが、不思議とそのメカニズムについてはいっさい触れられませんでした。
私は2つ質問しました。

1 「RASの嵐から心筋を保護するために急性期の心不全の時期からβ遮断剤を用いるとのことであるが、RAS活性化は心不全に対する生体防御反応の一面があるのではないか。したがって心不全の増悪といったリスクを高める可能性があるのではないか。ある程度落ち着いてからの投与が安全ではないのか」
その質問に対する答えは、矢張り急性期からの投与が予後を改善するとのことでした。

2 「カルベジロールの処方は分2となっているが、そのあたりはきちんと分2で投与されているのか?そしてまたその分2の根拠は?」
その質問に対する答えは、治験が分2で行われており、分1にした場合のことは分からない。したがって添付文書のとおり分2で処方しているとのことでした。
その後座長は10mg投与の場合など面倒なので分1で処方しているとのコメントがあり場内はややしらけました。

さて、きょうは目新しい話題ではありませんがβ遮断剤による心不全治療を復習しました。

ESC心不全ガイドライン

3年ぶりに改訂されたESC心不全ガイドライン
急性・慢性心不全のガイドラインを一本化
欧州心臓病学会(ESC)の心不全ガイドラインは1995年から出版されており,2005年には急性心不全と慢性心不全のガイドラインがそれぞれ出版されていた。
今回3年ぶりの改訂であり,同学会のホームページから無料で入手可能であるが,一番の特徴は急性心不全の原因として慢性心不全の悪化によることが多いため,両者を別々に論じるのではなく,時間経過的に延長線上にある疾患として統一し,「急性・慢性心不全の診断と治療のためのESCガイドライン2008」として発表したことである。

急性心不全は従来,慢性心不全と比較するとあまり注目されていない領域であったが,この方向性を受けて欧州の学会では急性心不全の演題が急に多くなってきている。
また,概してガイドラインは多くのエビデンスを盛り込むために,複雑な内容になりがちであるが,ずいぶんとシンプルで理解しやすい。
内容的にも新しい領域が少なくなってきて,落ち着いてきた感がある。
ガイドラインの最後には心不全領域の未解決問題のリストが掲載してあるのもユニークである。

慢性,急性心不全とも定義,疫学,診断,治療などの項目より成るが,すべての内容を紹介することは不可能であるので,私の視点で興味深い点を以下に述べる。
なお,左室収縮能が保持された心不全患者の治療に関してはいまだエビデンスが乏しく,今回のガイドラインでも左室収縮能が低下した心不全患者についての記載が中心になっている。

中略

左室収縮能が低下した慢性心不全の治療薬としてACE阻害薬,β遮断薬は禁忌がない限り全例に投与し,入院患者の場合,入院中から始めるべきである(class I,エビデンスレベルA)。
 
β遮断薬について以前から議論されていることの1つに,「心不全が悪化して再入院した場合,投与量をどうするか」という問題があるが,「コントロールが困難な心不全悪化中は一度β遮断薬を減量または中断することは可能であるが,心不全症状が安定した後,再び徐々に増量していく」と記載された。
β遮断薬の投与量については,心不全症状の悪化,症状のある血圧低下,徐脈が見られない限り増量すべきとされた。
 
しかし,6月のESC Heart Failureでは医師の怠慢でβ遮断薬が増量されていない患者よりも,副作用のために耐えられず,投与量が増量できない患者が多いことが指摘され,β遮断薬の投与量が不十分な場合,医師側の原因か患者側の原因かを明確にすべきと論じられた。

出典 MT pro 2008.9.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

<関連サイト>
Acute and Chronic Heart Failure (Diagnosis and Treatment)
http://www.escardio.org/guidelines-surveys/esc-guidelines/Pages/acute-chronic-heart-failure.aspx

β-Blocker Therapy Update
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%26beta%3B%E3%80%80%E5%BF%83%E4%B8%8D%E5%85%A8&perpage=0&order=0&page=0&id=M3303241&year=2000&type=allround
(2000年1月のちょっと古い記事です)

急性心不全治療ガイドライン (2006年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_maruyama_h.pdf

慢性心不全治療ガイドライン
http://www.jcc.gr.jp/banner/guideline/guide02.pdf

慢性心不全に対するβ 遮断薬治療
http://jams.med.or.jp/symposium/full/122065.pdf
慢性心不全に対するβ 遮断薬治療の有用性は,1975 年Waagstein らによって最初に報告されたが,それまでの治療方針と大きく異なることから,一般には受け入れられなかった。
しかし,10 年前より大規模臨床試験が行われるようになり,1993 年メトプロロールを用いたMDC 試験を皮切りに,慢性心不全に対するβ 遮断薬の有用性が次々と実証されてきた。
USCP 試験では優れた予後改善効果が示され,その後,MERIT-HF 試験でメトプロロール徐放錠が,またCIBIS II 試験でビソプロロールが,予後の改善,突然死の抑制をもたらすことが明らかにされた。
さらに最近,COPERNICUS試験において,重症心不全においてもカルベジロールが有効性を示したことから, 軽症から重症まで慢性心不全に対するβ 遮断薬の有用性が確立したといえる。
β 遮断薬は通常ACE 阻害薬と併用して用いられるが,予後改善効果のみならず,用量依存的に心機能の改善効果もみられる。
しかし,β 遮断薬は導入期に心不全の増悪を惹起することがあるので,ごく少量から開始し緩徐に漸増する必要がある。
有効性の機序は単一ではなく,β 受容体の情報伝達障害の改善,Ca 過負荷,酸化ストレスによる心筋細胞障害の抑制,心拍数の減少によるエネルギー代謝や拡張期特性の改善,抗不整脈作用など多面的に作用するものと考えられている。
わが国でもMUCHA 試験が実施され,優れた成績が得られたため,最近保険適用が認可された。

心不全ってなに?
http://www.gik.gr.jp/~skj/chf/chf.php3
心不全に伴う交感神経系の興奮により、過剰なカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が動員され、心臓はそれらの刺激を受け続けることにより、逆にそれらの物質への応答性が低下(ダウンレギュレーション、抑制)され、一種の「燃え尽き症候群」の状態になります。
ベータ遮断薬はそれ自体は心臓の収縮力を低下させますが、少量から徐々に薬を増やしていくと、心不全で心筋を鞭打つカテコールアミンのシャワーから心臓を保護する「癒し」効果を示します。

最近の研究では心不全の原因、重症度にかかわらず、生存期間が著明に延長し、入院回数も減少するとの報告がなされています(CIBIS-II研究、COPERNICUS研究)。

循環器大規模臨床試験リンク集-心不全編
http://www.gik.gr.jp/~skj/listlinkdb/mega_chf.php3

慢性心不全の病態と新しい治療戦略 
http://www.m-junkanki.com/lectures/0407chf/Ex-chf1.htm
以前より、心臓が弱り心臓から出る血液量が低下すると元に戻そうとする機構(身体の恒常性を維持する作用:ホメオスターシス)として、交感神経系が亢進することが知られていた。
この過剰に亢進した交感神経系因子が心不全を悪化させることが近年わかってきた。
 
交感神経系以外にも多数のホルモン作用物質が心不全に関係していることがわかってきた。
心不全になると、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン(RAA)、アルギニン・バソプレッシン、エンドセリン、ニューロペプチドYなどの血管収縮因子、他に心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やその関連物質、内皮因子(EDRF、NO)、アドレノメデュリンなどの血管拡張因子の活性も亢進する。
心不全はそれらが複雑に関連した一つの症候群であるとする考え方が生まれてきた。

現在の慢性心不全治療の大きな目標は
1)神経体液因子の是正、
2)心肥大・拡大の抑制、
3)致死的不整脈の抑制
による死亡率低下と生活の質の改善であると言っても過言ではない。

β受容体遮断薬
なぜβ受容体遮断薬が有用なのか、未だ明らかな機序は解明されていない。
最近、日本で初めて、中等度の慢性心不全患者を対象にして、β受容体遮断薬(carvedilol:商品名アーチスト)の有効性をみる臨床試験が施行された。
その結果、偽薬投与群に比べて、心不全の悪化および悪化による入院の頻度(危険率)が約90%も減少した。

β受容体遮断薬としてcarvedilolが本邦で初めて心不全治療薬として保険適用された。
ただし、使用する場合にはごく少量(carvedilol 1.25mg、1日2回投与)から始め、心不全治療に熟練した医師の注意深い観察のもとで増量しなければならない。

新しい心不全治療薬の開発
心不全時に活性化したエンドセリンの拮抗薬、内服可能なBNP製剤、ANP分解酵素阻害薬、バソプレッシン受容体拮抗薬などが開発されている。
また、最近、不全心筋でのCa++過負荷の原因として心筋細胞内節小胞体のリアナジン受容体(RyR)からのCa++リークが証明され、それを阻止する"リアナジン受容体安定化作用薬"の開発も進められている。

重症心不全に対するβ 遮断薬(カルベジロール)
至適投与の指標について
http://www.tokushima-med.jrc.or.jp/zasshi/2007pdf/002.pdf
■中止例では年齢が有意に高かった
■重症心不全患者に対してカルベジロールは安全に導入可能であり,年齢のみが予後不良の予測因子であった
■導入前の左室駆出率やその他の各種パラメータでは,副作用の出現を予測することはできなかったが,導入後に左室拡大を認める症例は予後不良であった
<考案およびまとめから>
■β遮断薬の慢性心不全への応用は,CIBIS- ,MERIT-HF,COPERNICUSをはじめ多くの大規模臨床試験で評価され,生命予後に関するリスク減少は34~35%と良好な成績が示されている.
■β遮断薬の慢性心不全治療における特徴は,アンジオテンシン変換酵素阻害薬の薬効に相乗的に働くこと,アンジオテンシン変換酵素阻害薬では認められないreversed remodeling 効果が認められること,さらに心臓突然死を減少させることなどが挙げられる.
■BNP 値は心不全の診断や治療効果の判定には有用と思われるが,β 遮断薬有効例の予測因子とはならなく,BNP高値の重症心不全であっても慎重な経過観察によりβ 遮断薬の導入は可能であることが示された。
また,これに関してはEF についても同様のことが言えると思われる.
■カルベジロール投与開始後,約半年間は頻繁に心エコーで左室拡張末期径などの計測をしていくことが望ましいと考えられた。

慢性心不全治療時のACE阻害薬とβ遮断薬、どちらの先行投与でも差なし
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200509/396961.html

βブロッカー時代の急性心不全治療-PDEIII阻害薬の新たな役割
http://www.lifescience.jp/ebm/PDEIII/fuzen/fuzen6/1.htm
正常の成人心筋細胞では,β受容体を介して細胞内Ca2+濃度が変化し,アクチンとミオシンの相互作用により収縮する。
一方,不全心筋ではこれらのCa2+ハンドリングに関与する蛋白質が質的あるいは量的に変化し(胎児型心筋細胞に類似),心筋の収縮性が低下している。
そのような状態に対し,β遮断薬を長期間投与すると,亢進した交感神経活性が抑制され,Ca2+ハンドリングに関与する蛋白質が正常化し,心筋の収縮力が回復することがわかってきた。
また,慢性心不全では基礎収縮力のみならず,カテコラミンに対する応答,すなわち収縮予備能も減弱している。
収縮予備能減弱の要因として,β受容体のダウンレギュレーションと心筋細胞内の刺激応答の減弱が重要である。β遮断薬はそのような慢性的な不全心筋において,心筋細胞内の刺激応答を改善し,PDEIII阻害薬の効果を回復させることが報告されている。

[PDF] 高血圧から心不全への進展過程において いつ、どこでβ遮断薬を使用すればよいか
http://medicalkaihatu.nikkeibp.co.jp/medicalkaihatu/02cme/pdf/2008/cme200803-1.pdf
(是非内容を吟味したいところでしたが、残念ながら内容が見れません)

慢性心不全
合同研究班編/医療・GL(05年)/ガイドライン
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0049/1/0049_G0000132_GL.html
β遮断薬
http://minds.jcqhc.or.jp/stc/0049/1/0049_G0000132_0054.html
ここ数年の間にβ遮断薬の心不全予後改善効果を指示する大規模試験の結果が相次いで発表された。
US Carvedilol studyにおいてはカルベジロール,CIBIS IIにおいてはビソプロロール,MERIT-HFではメトプロロールの有意な生命予後および心不全悪化防止効果が明らかにされた。
わが国においては低用量(1日5mgおよび20mg)とプラセボの比較試験,MUCHAにおいては一年弱という比較的短期間の観察であはあるが両投与量ともにプラセボと比較し用量依存性に心血管および心不全入院(71%減少),あるいは死亡または心血管入院(91%減少)を著明に減少した。
以上の臨床試験の対象の殆どはNYHA機能分類II度およびIII度の患者であり,最も重症のIV度患者は少数であった。COPERNICUSではeuvolemicだが左室駆出率が25%以下のNYHA IV度の重症心不全患者においてもカルベジロール従来の大規模試験に匹敵する35%の死亡率低下が得られた。
個々のβ遮断薬の効果を比較した試験は少ないがCOMETではカルベジロールとメトプロロールの効果が比較され,カルベジロール群で死亡率が有意に低かった。
一方心不全症状のない左室機能不全患者に対するβ遮断薬のエビデンスも得られている。
CAPRICORNでは左室駆出率の低下した心筋梗塞患者にカルベジロールを投与することにより死亡率が低下した。
したがって有症状の心不全患者のみならず無症状の左室収縮機能低下患者についてもβ遮断薬導入を試みることが勧められる。
β遮断薬の投与の実際についてはNYHA III度以上の心不全患者については原則として入院とし,体液貯留の兆候がなく患者の状態が安定していることを確認したうえでごく少量より時間をかけて数日~2週間ごとに段階的に増量して行くことが望ましい。
増量に際しては自覚症状,脈拍,血圧,心胸比,および心エコー図による心内腔の大きさ等を参考にし,心不全の増悪,過度の低血圧や徐脈の出現に注意する。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬と同様,欧米の臨床試験での目標用量とわが国の常用量との間にかなりの開きがあり,薬剤認容性をみながらできるだけ増量すべきとの意見もあるが,至適用量についての明確な結論は出ていない。
現在,わが国におけるβ遮断薬の大規模試験J-CHFが進行中である.
β遮断薬の効果を予測する指標として,血漿BNPが有用である。
また,核医学的検査,とくにMIBGシンチグラフィーでのH/M比,washout rateが有用と考えられているがその値に関してコンセンサスは得られていない。
β遮断薬の投与量にはわが国と欧米では大きな開きがある。
これには忍容性も大きく影響していると考えられるが,MUCHA試験から判断する限り,日本人においては比較的低用量のβ遮断薬で有効性が得られることが示されている。
現在さらにわが国ではβ遮断薬の臨床試験J-CHFが進行中である。
なお慢性心不全における大規模試験のエビデンスのあるβ遮断薬はカルベジロール,ビソプロロール,メトプロロールであるが,このうちカルベジロールのみがわが国では保険承認がなされている。

Beta Blockers Help Hospitalized Heart Failure Patients
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/07/11/AR2008071102353.html

<関連ブログ>
ベータ遮断薬の使用で心不全の死亡率が減少
http://tomochans.exblog.jp/3407325/

β遮断薬・心不全改善・炎症・酸化ストレス抑制
http://blog.m3.com/reed/20081119/1

 

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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