戯れ言たれる侏儒
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PCIでは初回治療後の再治療率がCABGに比べ10倍高い:
英国の住民研究より

英・ライセスター大学公衆衛生学部門のIain Squire氏らは,冠動脈疾患(CHD)患者を対象とした住民研究の結果から,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者では冠動脈バイパス術(CABG)を受けた患者に比べ,再治療率が10倍高いことを11月10日付けのHeartオンライン版に報告した。

90年代に比べ複雑な症例が増えた一方で,治療成績は改善
同試験は1995~96年,2003~04年に初めてPCIあるいはCABGを施行された連続症例6,068例を対象に死亡率,再治療率などを調査したヒストリカルコホートスタディ。

両群とも前半期に比べ後半期でより多くの合併症を有する症例が治療の対象となっていた。
また,PCI群の平均年齢はCABG群よりも若い傾向にあったほか,CABG群ではPCI群に比べ心不全,糖尿病,肝疾患や癌を合併している割合が高かった。

上記2期間にPCIを受けた全3,548例について,前半期と後半期における2年間の無再発生存率は73%から83%と明らかに改善していた。

一方で,両群の死亡率は同等であった。
さらにPCI群ではCABG群に比べ,再治療を要した症例の割合がおよそ10倍にのぼっていた(95%CI 8.20~13.60%)。

同氏らはPCI群において,ステント留置の有無による再治療の割合に違いがあるかを解析したところ,ステントを留置していた症例で,非留置例にくらべ再治療の率が低いことが明らかになった(HR 0.61,95%CI 0.49~0.74)。

Squire氏らは「複雑なプロフィールを有するCHD症例が増えているにもかかわらず,90年代に比べ2000年代では治療成績の改善が認められている」と今回の結果を評価。
しかし,ステントの使用頻度が増えている一方で,PCI施行例における再治療率は依然としてかなり高いとコメントしている。

昨年(2007年),報告されたPCI・CABGに関するランダム化比較試験(RCT)を対象としたシステマティックレビューにおいても,両者の死亡率は同等であったが,狭心症状の改善はCABG群で優れていたほか,再治療率がPCI群で有意に高いことが示されている( Ann Intern Med 2007; 147: 703-716)

最近COURAGEや先日のDoctor's Eyeで取り上げられたJSAPといった試験からも,施設あるいは国や地域によって,PCIによる治療成績の評価が異なることが明らかになっており,要因として,術者の習熟度によるところが大きいことも指摘されている。

同氏らは,PCI,CABGともに高度な医療設備と技術を要する手技であり,治療成績や実地臨床における指針の変化を評価することが重要と述べている。
出典 MTpro  2008.11.12
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
低リスク安定型狭心症患者に対する治療戦略はPCIか薬物療法か?
―わが国初の多施設ランダム化比較試験JSAPの意味すること
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人

背景:欧米のガイドラインは薬物療法を推奨,COURAGE研究でもPCI群と同等の長期予後
安定冠動脈疾患(安定CAD;安定狭心症,安定無症候性狭心症)は,
(1)死亡の危険性の高い高リスク(左主幹部病変・3枝病変・左前下行枝分岐部病変)CAD,
(2)相対的に死亡の危険性の低い高リスク以外のもの(低リスクCAD)
―に分類され,大部分(約80%)は後者である。
 
その治療法は,
(1)薬物療法=薬物療法で開始し,コントロールできなければ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を追加,
(2)PCI療法=低リスクCADを対象とし,PCIと薬物療法を同時に開始,
(3)冠動脈バイパス術(CABG)療法=高リスクCADを対象とし,CABGと薬物療法を同時に開始―
である。

欧米のガイドラインでは,低リスクCAD治療の第一選択は多くの多施設共同研究のエビデンスに基づき,薬物療法である。
最近報告された薬物療法とPCI療法の長期予後を検討したランダム化比較試験COURAGE研究(N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)においても,短期の臨床症状の改善はPCI療法が優れていたが,長期予後すなわち死亡も急性冠症候群(ACS;急性心筋梗塞および不安定狭心症)も両者に全く差がなく,長期には臨床症状にも差がなくなり,これまでの欧米のガイドラインの正しさが確認された。

一方,わが国では特殊な例外を除き,これまでエビデンスが全くなかったにもかかわらず,欧米のガイドラインとは異なるPCI療法が一般的に行われてきた。

そこで,低リスクCAD患者を対象に,PCI療法と薬物療法の多施設ランダム化比較試験であるJSAP研究(委員長=藤原久義・兵庫県立尼崎病院院長)が厚生科学研究費と日本心臓財団の補助を受け,わが国ではじめて行われた。
その結果が J Am Coll Cardiol Intv(2008; 1: 469-479)に掲載されたので紹介する。

JSAPの結果:PCI群で有意な予後改善示す
JSAP研究は2002年に始まり,わが国の代表的な循環器科の病院78施設が参加した。対象は低リスクCAD患者384例である。
コンピュータによるランダム化が行われたわが国初の試験でもある。
追跡期間は3.2年。PCI群の76%ではベアメタルステントが留置された。

総死亡はPCI群2.9%,薬物療法群3.9%で有意差がなかった。
しかし,PCI群では薬物療法群と比較し,ACSの有意な減少(PCI群:5.0%,薬物療法群:11.7%,P=0.012)が見られ,総死亡+ACS(P=0.019),総死亡+ACS+脳血管障害,総死亡+ACS+脳血管障害+緊急再入院でも有意な減少が認められた(図1)。
狭心症状も全期間を通じて,PCI群で有意な改善を示した。


 

なぜ両研究の結果が一致しなかったか:PCI技術の相違が関与している可能性も
JSAP研究の結果から判断すると,わが国では欧米と異なり,PCI療法でよいことになる。
さて,どちらが真実を反映しているかは今後の検討課題であるが,問題点は以下のように整理される。

(1)COURAGEの研究者らは同試験の結果について,「ACSがPCIの対象となる有意狭窄病変からではなく,非有意狭窄病変から発生する」というこれまでの定説から,有意狭窄病変のみをPCIで治療しても全体のACSの予防効果に反映しないとし,このためにPCI群と薬物療法群に長期予後の差がなかったと結論している。
 
しかし,JSAPの薬物療法群の冠動脈造影(CAG)所見の解析では,半数以上のACSがJSAP開始時に既に存在していた有意狭窄病変から発生していることを示した。
また,PCI群における試験中のACS減少は,開始時のPCI対象血管病変からのACS発生の減少に由来することを明らかにした。COURAGEなどの欧米の試験ではこのようなデータの解析はなされていない。

(2)COURAGEのKaplan-Meier曲線の特徴は,PCI後,半年以内にPCI群でイベントが多発しているが,逆に慢性期には薬物療法群で多発しており,結果として長期成績では両者は相殺され,両群の差がなくなっている(図2)。
 

一方,JSAPでは初期からイベント発生はPCI群で少なく,期間が長くなるにつれて差は大きくなっている。
慢性期だけ見ればCOURAGE,JSAPともにPCI群でイベントは減少していることになり,COURAGEでも初期イベントがJSAPと同様にPCI群で低ければ長期予後はPCI群が勝ったはずである。
 
初期のイベントがなぜCOURAGEとJSAPで逆かが大きな問題となるが,わが国ではPCI時に一般的に行われている血管内超音波(IVUS)が欧米では一般的ではないなどのPCI技術の相違が関与している可能性がある。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr081006.html

出典 MTpro  2008.10.27
版権 メディカル・トリビューン社


安定狭心症に対するPCI併用・薬物療法単独のQOL改善効果に長期的な差はない
安定狭心症患者に対する初期の至適治療を検討したCOURAGE試験のサブ解析において,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)併用群におけるQOL改善効果は2~3年で薬物治療群との差がなくなることが示された(N Engl J Med 2008; 359: 677-687)。

治療後24か月でQOL評価の差がほとんど消失
COURAGE試験では,安定狭心症において至適薬物治療にPCIを追加しても,死亡や心血管イベントリスクといった予後の改善に有意な上乗せ効果が認められないとの結果が示されている(N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)。

高齢の狭心症患者や不安定狭心症,ST非上昇型心筋梗塞患者に対するPCIが薬物療法よりもQOL改善効果に優れると報告されてきたが,安定狭心症におけるPCIのQOLに対する効果については,明らかになっていない。

今回のサブ解析では,同試験でPCI+薬物治療,薬物治療のみの群にそれぞれ無作為割り付けされ,解析対象となった2,287例に対し,疾患特異スコア(Seattle Angina Questionnaire:SAQ),身体・精神関連QOL調査票(RAND-36)による評価が実施された。

ベースライン時,全症例のうち22%が「狭心症状がない」と回答。試験開始から3か月時点でPCI+薬物治療群の53%,薬物治療群の42%が「狭心症状がない」と答えていた(P<0.001)。
 
両群におけるSAQ(0~100,数値が大きいほど健康状態が良い)については,身体的制約,狭心症状とその頻度,治療への満足度,QOLのすべての指標に関するスコアでPCI+薬物治療群が有意に優れていた。
しかし,試験開始から24か月の時点で身体的制約,治療満足度,QOLに関するスコアの両群の有意差は消失し,さらに36か月ではすべての項目で有意な差が認められなくなった。

今回の結果について,解析を行った米・クリスティアナケアヘルスシステムのWilliam S. Weintraub氏は,追跡期間中の健康状態は両群ともに良好であったとし,安定狭心症患者に対するPCI施行のベネフィットは薬物治療単独に比べ当初有意であったが,さほど大きなものではないと述べている。

出典 MTpro  2008.8.18
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

 

昨日の
ESCAPE試験サブ解析   
http://blog.m3.com/reed/20081126
のブログに”Cardio&VascularProtection Forum 2008”
の際のアナライザーによる会場での回答を追加しました。

<自遊時間>
日本医事新報 (No.4394 2008.7.12)の「お茶の水だより」に「審議会の権限はむしろ強化すべきだ」という内容の記事が出ていました。
審議会は善、厚労相や官僚は悪という図式の論調です。
7月の時点での厚労省改革の問題がとりあげられているわけですが、はたして「審議会」は一般論として善でしょうか。
私は「審議会」の構成メンバーが誰によってどのようにして決まるのか、決定に対して何ら責任をとらなくていい「審議会」の仕組みにいつも疑問を抱いています。
(審議会メンバーは当然選んだ人の考え方を配慮します。選ぶ側には作為が働きます)
審議会
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column030.htm
審議会とは - はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B3%B5%C4%B2%F1
審議会は答申を官庁に提出するが、答申には原則として拘束力はない。答申を政策に反映させるかどうかは官庁の判断による。
審議会の実態
http://www.ops.dti.ne.jp/~makinoh2/official/shingi1.htm  
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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