戯れ言たれる侏儒
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ESCAPE試験サブ解析

戯れ言たれる侏儒 / 2008.11.26 00:02 / 推薦数 : 0

兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人が書かれた ESCAPE試験サブ解析の解説で勉強しました。

 

急性心不全治療において体重減少と予後は相関しない ―ESCAPE試験サブ解析より
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人

背景:
明確な治療指標がない急性心不全―体重減少の意義は?
2008年10月8日掲載記事のなかで,慢性心不全患者が急性心不全へ悪化する1週間くらい前には2kgほどの体重増加が観察される(Circulation 2007; 116: 1549-1554)ことを解説した。
今回は急性心不全患者において,治療指標として体重減少を用いることが,短期,長期的に意義があるかについてESCAPE(Evaluation Study of Congestive Heart Failure and Pulmonary Artery Catheterization Effectiveness)試験のサブ解析(Am J Cardiol オンライン版)から検討する。

結果:
治療による体重減少と長期予後は無関係
ESCAPE試験自体の概要は,急性心不全患者を対象に,Swan-Ganzカテーテルガイド治療群と,標準検査ガイド治療群とを比較した場合,両群間で6か月後の心血管イベントに有意差がなく,急性心不全患者に対して標準的にSwan-Ganzカテーテルを留置することはあまり意味がないという結論であった(JAMA 2005; 294: 1625-1633) 。

今回の383例のサブ解析によると,平均3.6kgの体重減少が急性心不全の治療により見られたが(図1),その減少は利尿薬の使用量と無関係であり(図2),さらに入院中の有害事象,生存期間,180日後の予後との関連については,急性心不全治療による体重減少は全く無関係であるという結果であった()。

 

 

解釈:
体重減少は短期的な症状改善とのみ相関か
急性心不全患者は臓器浮腫,呼吸困難を主訴として入院する。
急性心不全の治療の主体はまず,呼吸困難を改善することにあるが,利尿薬,血管拡張薬,場合によっては強心薬などの点滴投与により,血行動態の改善と利尿を図ることが多い。
しかし,利尿薬による体重減少が実際の予後と相関するかどうかの報告はほとんどされていない。

一方,急性心不全患者を対象としたこれまでの試験結果はどうであったのだろうか。
EVEREST(Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure Outcome Study with Tolvaptan)試験は,心不全患者を対象にバゾプレッシン受容体拮抗薬tolvaptanの効果をプラセボと比較検討した試験である。
その結果,tolvaptan群では短期的には有意に体重減少が得られたが,長期予後は両群間に有意差が認められなかった(JAMA 2007; 297: 1319-1331,JAMA 2007; 297: 1332-1343)。
したがって,
治療による体重減少と長期予後の相関は認められていない。

一方,限外濾過群と薬剤群を比較したUNLOAD(Ultrafiltration versus Intravenous Diuretics for Patients Hospitalized for Acute Decompensated Congestive Heart Failure)試験では,限外濾過群で有意な体重減少を認め,90日の時点で心不全の再入院も有意に抑制している(J Am Coll Cardiol 2007; 49: 675-683)。

今回のESCAPE試験のサブ解析結果では,EVEREST試験結果と同様に,急性心不全治療中の体重減少と長期予後の間には相関が認められなかった。

これらの結果の違いの原因は,論文の考察にもあるように不明である。
しかし,
ESCAPE試験ではフロセミドの使用量が160mg/日以上,駆出率30%未満,収縮期血圧125mmHg未満といった極めて重症の患者が対象であったために,急性期の短期的な治療では予後が変わらなかった可能性もある。

実際の急性心不全患者の治療現場では,現在でも標準的な治療指標が決定していない。
ほとんどの臨床試験で「自覚症状,呼吸困難の改善」という漠然とした指標が,今でも重要な治療指標のひとつとして使用されている(Eur Heart J 2008; 29: 816-824)。
また,ESCAPE試験の結果同様,PAC-Man(pulmonary artery catheters in management of patients in intensive care)試験でもSwan-Ganzカテーテル指標では予後を改善しないことが示されており(Lancet 2005; 366: 472-477),「血行動態」も標準的治療指標とは言いがたい。
 
今回の試験結果では,「体重減少」という治療指標は呼吸困難の症状改善という短期の治療指標にはなるが,長期予後改善の指標にはならないことが示された。

ESCAPE試験のこのサブ解析結果は,「急性心不全の治療指標は何がよいか?」という大変に基本的な疑問を問題提起した論文といえる。

 

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr081105.html

出典 MT Pro 2008.11.13 2008.11.19
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト> 

2008年10月8日掲載記事
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr081003.html

Circulation 2007; 116: 1549-1554
Patterns of weight change preceding hospitalization for heart failure.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17846286

Am J Cardiol オンライン版
Association of Weight Change With Subsequent Outcomes in Patients Hospitalized With Acute Decompensated Heart Failure
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr081105.html

JAMA 2007; 297: 1319-1331
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17384437

JAMA 2007; 297: 1332-1343
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17384438

J Am Coll Cardiol 2007; 49: 675-683
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/17291932

Eur Heart J 2008; 29: 816-824
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18310669

Lancet 2005; 366: 472-477
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/16084255

 

<番外編>
昨日の
Cardio&VascularProtection Forum 2008
http://blog.m3.com/reed/20081125
の追加です。

 

パネルディスカッションの際のアナライザーを用いた聴衆の先生方の回答

まず最初に練習としてのアンケート
練習Q
先生の専門は何ですか
練習A
内科・循環器 42%
内科・代謝系 13%
内科一般   33%
外科      12%


Q1 日常臨床においてどちらを重視しますか
   1.世界規模のグローバルエビデンス 
   2.日本人を対象にしたエビデンス

A1  1.世界規模のグローバルエビデンス 26%
   2.日本人を対象にしたエビデンス   74%
(檜垣先生のコメント)
LIFE試験でBlackとNon-BlackでARBとβblockerが異なる結果が出た。
したがって人種差を十分考慮する必要があり、国内のエビデンスの集積が待たれる。
(最近おこなわれているPROBE法に対する問題点も指摘された)
<コメント>多くの先生方が海外のエビデンスに辟易としているといった本音が垣間見られたようで興味深いアンケート結果でした。メーカーや大学の医局主導でない、本当の意味での質の高い大規模臨床試験が望まれるところです。

(以下2008.11.27追加) 
Q2 日常臨床において心血管イベント発症高リスクといえば
どのような患者さんをイメージされますか
   1.心筋梗塞・脳卒中の既往  
   2.糖尿病
   3.脂質異常症
   4. CKD
   5.メタボリックシンドローム
A2 1.心筋梗塞・脳卒中の既往 51% 
   2.糖尿病            30%
   3.脂質異常症          5%
   4.  CKD               3%
   5.メタボリックシンドローム  11%
(森先生のコメント)
ONTARGET,TRANSCEND、INNOVATIONでの結果から明らかなようにメタボリックドミノのできるだけ上流でイベント発生を抑制する必要がある。
<コメント>
森先生は5番のMetSが一番多いだろうと予想されて、それに関するスライドを用意されていました。
1番や2,3番は下流であるということをおっしゃりたかったんだと思います。
私は2番を押しました。
生講演の醍醐味を味わうことのできた瞬間でした。
全国から集まった先生方が、PPARγの話をさんざん聞いた後でのアンケートだっただけに1,2番の回答が多かったことが面白かったです。
森先生は1,2番が多かったことについては一切触れられませんでした。

Q3 国内にARBは現在6剤選択することができます。
   各薬剤間に臨床的な差があるとお考えですか
   1.特に差がない  
   2.薬剤によって特徴や差がある
A3 1.特に差がない            19% 
   2.薬剤によって特徴や差がある   81%
(小室先生のコメント)
差があるという回答が多いのは意外でした。
実験レベルでは差がありますが、臨床面で先生方が差があると感じてみえるということになります。
さらにBPLTTCの結果でのACE-IとARBの違いを説明。
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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