戯れ言たれる侏儒
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動脈硬化の発生・進展には,『炎症』が深く関与していることは、今や周知のことです。
そして最近では、そのバイオマーカーとして,高感度C反応性タンパク(hs-CRP)が注目されています。
一昨日もあるメーカーのMRが、きょう勉強するMTのパンフを持って来ました。
開業医レベルでは、hs-CRPが測定できないことや保険が通っていないことを話しました。
MRの話では一部の検査センターでは測定しているようで、どうやら5000円ぐらいかかるとのこと。
保険適応になっていないのに、こんな検査をする開業医はいません。
いっそのこと、患者さんに提案して自費で測定してみとうかとも思いました。
それだけの価値のある検査かどうか、きょうの記事でわかるのでしょうか。
もう一つMRに聞いた質問があります。
それは、風邪などで体調の悪い患者さんの測定は意味があるかということです。
もちろん意味はないはずですが、風邪気味の人はどうやってネグレクトするのでしょうか。
彼いわく、普通のCRP検査で正常値の人を対象として調べるんじゃないですか、という返事。
わかったようなわからないような。
本人も困った顔をしていました。
人間ならまだしも、小動物の実験では、彼らに風邪を引いてるかどうか訊くこともできません。

さて、演者であるPaul M Ridker氏は,心血管イベント発症のリスクファクターとしての『炎症』を10年以上研究テーマとし,多くの研究成果を発表されているとのこと。


Potent Predictor:Paul M. Ridker on CRP and Cardiovascular Disease
http://archive.sciencewatch.com/nov-dec2002/sw_nov-dec2002_page3.htm
Paul M. Ridker, M.D.
Director of the Center for Cardiovascular Disease Prevention
http://www.brighamandwomens.org/mdSearch/MedicalProfessionalDetail.aspx?MPR=4091
Dr. Paul M. Ridker
http://www.crphealth.com/conf/hcp/6,6/doctor.paul.m.ridker.biography.html


Eugene Braunwald Professor of Medicine
(こんな肩書きがあるってことを初めて知りました)


第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会 ランチョンセミナー
炎症マーカーは動脈硬化性疾患の治療Targetとなりえるか?
Inflammation and Atherothrombosis:
Can Lowering Inflammation Lower Vascular Risks?
 
演者:
Eugene Braunwald Professor of Medicine, Harvard Medical School Director, Center for Cardiovascular Disease Progression Brigham and Women’s Hospital, Boston, MA USA

Paul M Ridker 氏 
座長:
千葉大学学長
齊藤 康 氏 

動脈硬化性疾患の予測因子となるhs-CRP
昨今,アテローム性動脈硬化はその根底に免疫異常が存在し,炎症反応によって疾患が進行すると考えられるようになってきた。すなわち,アテローム性動脈硬化は炎症性疾患の一種と言える。
 
初期のプラーク発生や,心筋梗塞に至る急性のプラーク破綻などにおいて,炎症が重要な役割を担うことは明らかである。
そのため,動脈硬化性疾患発症の予測因子として,急性期の炎症性バイオマーカーが注目されるようになった。なかでも,hs-CRPは最も広く使用されている。
 
われわれは1997年に,hs-CRP値の上昇とともに,心筋梗塞および脳卒中の発症リスクが高くなることを報告した1)。
2002年には,健康女性約28,000例を8年間追跡調査し,全心血管イベントや冠動脈イベント(心筋梗塞,冠動脈バイパス術,経皮的冠動脈形成術),虚血性脳卒中の発症,そして心血管死において,hs-CRPは重要な予測因子であることを確認した2)。
 
同時に,hs-CRPおよびLDL-Cの高値群と低値群を組み合わせて4群に層別化し,イベントフリー生存率の推移を検討した。
その結果,hs-CRP低値(1.52mg/L未満) - LDL-C低値(123.7mg/dL未満)群で心血管イベントの発症が最も少なく,最も発症が多かったのはhs-CRP高値(1.52mg/L以上) - LDL-C高値(123.7mg/dL以上)群であった(図1左)。
また,Framinghamリスクスコアで分類したすべての群において,hs-CRP値の上昇に伴い,相対リスクは高くなった(図1右)。
つまり,リスクの高い患者では強い炎症が起こり,LDL-C値が高い傾向にあることがわかった。
 
ここで問題となるのは,図1左のhs-CRP高値?LDL-C低値群で,hs-CRP低値 - LDL-C高値群よりも心血管イベントの発症が多いことである。
LDL-C値が高くなくとも,hs-CRP値が高い症例で心血管イベントが発症していることから,hs-CRPが心血管イベント発症の強い予測因子であるとともに,独立した危険因子であることが示唆される。

日本人でもhs-CRPの評価が重要
炎症の評価は,代謝性疾患の予測にも有用である。
われわれは,hs-CRPとインターロイキン-6(IL-6)が2型糖尿病発症の予測因子になりえることを報告した3)。
また,ATP IIIで定義されたメタボリックシンドロームを有する3,597例を8年間追跡調査して,心血管イベントフリー生存率をhs-CRP値で層別化した結果を報告した4)。
hs-CRP値が高いほど,イベントの発症は増加し,hs-CRPは代謝性疾患を有する患者の心血管イベントを予測する因子としても,非常に重要であることが示唆された。
 
世界中で実施された大規模臨床試験でも,同様の結果が得られている。日本においても,hs-CRPに関する研究が数多く報告されており,hs-CRPは優れた予測因子であることが示されている。
ただし,日本人のhs-CRP値は米国人より低く,hs-CRPが1.0mg/Lを超えるとリスクが高くなることが示されている(図2)5)。


かつて,日本人はコレステロール値が低いと言われていたが,時代とともに上昇してきた。今後,hs-CRP値の上昇にも注意が必要である。
 
われわれは,米国のNational Heart Lung and Blood Institute(NHLBI)から女性のFraminghamリスクスコア改訂の依頼を受け,2007年にReynoldsリスクスコアを発表した6)。
Reynoldsリスクスコアは,Framinghamリスクスコアで使用しているリスク要因〔年齢,血圧,糖尿病の有無,喫煙の有無,総コレステロール(TC),HDLコレステロール(HDL-C)〕に,炎症のリスクとしてhs-CRP,遺伝的なリスクとして両親の若年心筋梗塞既往歴を加えており,10年間の心血管イベント発症率を予測できる。
 
リスク要因を追加した背景として,約25,000例を10年間追跡調査した結果を紹介する。
FraminghamリスクスコアによるATP IIIの10年予測リスクと,Reynoldsリスクスコアの10年予測リスクを比較した。
その結果,ATP IIIによる中等度リスク群の40?50%が,Reynoldsリスクスコアでは,高あるいは低リスク群に再カテゴリー化された。
そして,再カテゴリー化された症例の98%以上で,予測されたリスクと実際に観察されたリスクが適合した。
つまり,hs-CRP値と両親の既往歴を知ることができれば,より正確なリスクの予測が可能になることが示された。
 
リスクスコアの例を示す。
50歳の非糖尿病女性で,喫煙あり,血圧が155/85mmHg,TCが240mg/dL,HDL-Cが35mg/dLの症例では,ATP IIIによる10年予測リスクは11.5%であり,中等度リスク群に分類される。このような症例は,治療対象とすべきか判断に迷う。
しかし,Reynoldsリスクスコアによる10年予測リスクは,hs-CRP 0.1mg/L,両親の既往歴なしの場合で4.9%,hs-CRP 20.0mg/L,両親の既往歴ありでは18.4%となり,治療対象外か治療対象であるかを判断することができる。
なお,Reynoldsリスクスコアは,ウェブサイトで利用できる(ホームページアドレス:
www.ReynoldsRiskScore.org)。

炎症に対するスタチンの影響
スタチンは,血管内皮,炎症性細胞浸潤,血管リモデリングおよびプラーク破綻の各段階において,抗炎症作用を発揮すると考えられている。
われわれは,CARE試験の対象患者において,スタチン治療とhs-CRPの関連を検討した7)。
その結果,hs-CRP値が高く炎症が存在する群では,スタチン治療により,心血管イベント発症リスクは大きく低下し,スタチンはhs-CRP値が高い症例で,効果的に作用することが示唆された。
また,われわれは1999年に,スタチンの投与でhs-CRP値が低下することを初めて証明した8)。
10年前の米国では,非常に論議を呼んだデータであったが,現在では広く認知されている。
 
2001年には,一次予防におけるスタチンの治療ターゲットとして,hs-CRPが重要であることをAFCAPS/Tex CAPS試験で示した9)。
この試験では,LDL-C149mg/dL未満であるが,hs-CRPが0.16mg/dLを超える群において,心血管イベント発症率(/患者・5年)は0.051と高かった。しかし,スタチン治療により,イベント発症率は0.029と低下が認められた。
この論文の最後に,「AFCAPS/Tex CAPSでは,LDL-C値は低いが,hs-CRP値が高い患者におけるスタチンの有用性が認められた。
この結果に関して,われわれは前向き無作為化試験による直接的な検討が必要である」と主張し,これがJUPITER試験の計画につながった。
 
また,われわれは,二次予防試験であるPROVE IT-TIMI 22試験も同時に実施していた10)。
スタチン治療の結果,LDL-C70mg/dL以上の群は70mg/dL未満の群と比較して,心筋梗塞または心血管死の再発率が高かった。
この結果を含む多くの大規模臨床試験の結果から,LDL-Cはlower the betterと考えられるようになり,現在,積極的なLDL-C低下療法は実践されている。
一方,hs-CRPが2.0mg/L以上の群と2.0mg/L未満の群を比較したところ,2.0mg/L以上の群で再発率が高いという結果が得られた。
注意すべきは,スタチン治療でLDL-C値が70mg/dL未満に低下した患者と,hs-CRP値が2.0mg/L未満に低下した患者は,同一ではないことである。そのため,LDL-Cとhs-CRP両方の評価が重要となる。
 
PROVEIT - TIMI22試験では,LDL-C値とhs-CRP値で層別化して,心血管イベント発症率の推移を検討した。
その結果,LDL-C低値(70mg/dL未満) - hs-CRP低値(2.0mg/L未満)群でイベント発症率が低く,LDL-C高値(70mg/dL以上) - hs-CRP高値(2.0mg/L以上)群の発症率が最も高かった(図3)。


また,AtoZ試験でも,同様の結果が得られている11)。
スタチン治療では,LDL-C値を低下させるだけでなく,炎症を抑制することも重要であることが示唆された。
 
日本人では,脳卒中の発症頻度が高いことから,その予防が求められる。われわれはPROVE IT-TIMI 22試験において,脳卒中の発症にhs-CRPが影響を与えることを報告しており12),hs-CRP値を低下させる薬剤は,脳卒中の予防に有用であると示唆される。

今後のスタチンのエビデンスに期待を
JUPITER試験は,LDL-Cが130mg/dL未満かつhs-CRPが2mg/L以上の患者15,000例を対象に,ロスバスタチンによる心血管疾患の一次予防効果を検討した試験である13,14)。
一次エンドポイントは,主要心血管イベント(心血管死,脳卒中,心筋梗塞,不安定狭心症のための入院または血行再建術)初発までの期間とした(図4)。


 
患者背景を見ると,平均年齢が66.3歳で,女性の割合は38.2%であった。BMIは平均28.4kg/m2で,多くが25kg/m2を超えていた。
また,喫煙者は15.8%,冠動脈疾患の家族歴を有する患者は11.5%,アスピリン服用者は15.3%であった。
LDL-Cは108mg/dL,HDL-Cは49mg/dLであり(いずれも中央値),中性脂肪,空腹時血糖,HbA1Cは正常範囲内であった。
そして,hs-CRPの平均値は4.3mg/Lであった()。


 
本試験は,2010年まで実施する予定であったが,ロスバスタチン群はプラセボ群と比較して,心血管イベント発症抑制ならびに死亡率低下に対し,明確なベネフィットが得られたため,独立データ管理委員が2008年3月31日に早期終了を勧告し,予定より早く終了した。
この結果は,心血管イベント発症抑制に,hs-CRPが重要な治療ターゲットになると示唆されるエビデンスであり,今後,動脈硬化性疾患の治療および予防のガイドラインに,大きな影響をもたらすであろうと考えている。
 
現在,日本においても,脳卒中再発とhs-CRPの関連,そしてスタチンの有用性に関する研究が進められており,結果が期待されている。

最後に,Nissenらが2005年に報告したREVERSAL試験を紹介する15)。
本試験では,アテローム性動脈硬化に対するスタチンの有効性を,血管内超音波検査(IVUS)で評価した。
その結果,LDL-C値およびhs-CRP値が低下すると動脈硬化の退縮が認められ(図5),ここでもhs-CRPの重要性が示された。


 
今後,LDL-Cだけでなく,炎症の指標であるhs-CRPのスクリーニングが必要となるであろう。そして,スタチンによりLDL-C 70mg/dL未満かつhs-CRP 2.0mg/L未満を目指した治療が求められるようになるであろう。

<大規模臨床試験の正式名>
CARE:Cholesterol and Recurrent Events
AFCAPS/Tex CAPS:AFAir Force / Texas Coronary Atherosclerosis Prevention Study
JUPITER:Justification for the Use of statins in Primary prevention : an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin
PROVE IT-TIMI 22:Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy-Thrombolysis in Myocardial Infarction 22
A to Z:Aggrastat-to-Zocor trial
REVERSSAL:Reversal of Atherosclerosis with Aggressive Lipid Lowering trial

 

<引用文献>
1) Ridker PM, et al : N Engl J Med 336 : 973-979, 1997
2) Ridker PM, et al : N Engl J Med 347 : 1557-1565, 2002
3) Pradhan AD, et al : JAMA 286 : 327-334, 2001
4) Ridker PM, et al : Circulation 107 : 391-397, 2003
5) Arima H, et al : Arterioscler Thromb Vasc Biol 28 : 1385-1391, 2008
6) Ridker PM, et al : JAMA 297 : 611-619, 2007
7) Ridker PM, et al : Circulation 98 : 839-844, 1998
8) Ridker PM, et al : Circulation 100 : 230-235, 1999
9) Ridker PM, et al : N Engl J Med 344 : 1959-1965, 2001
10) Ridker PM, et al : N Engl J Med 352 : 20-28, 2005
11) Morrow DA, et al : Circulation 114 : 281-288, 2006
12) Mega JL, et al : J Thromb Thrombolysis 22 : 71-76, 2006
13) Ridker PM, et al : Circulation 108 : 2292-2297, 2003
14) Ridker PM, et al : Am J Cardiol 100 : 1659-1664, 2007
15) Nissen SE, et al : N Engl J Med 352 : 29-38, 2005

出典 Medical Tribune 2008.10.16
版権 メディカル・トリビューン社

 

<きょうのブログ>
試験勉強と焼き芋と大統領選
http://www.dryumi.com/?p=339#more-339
(board試験の問題とそれに対する解答。controversialな問題は出ない筈。とても勉強になりそうです。問題集は日本でも入手できるんでしょうね。)

900 Questions: An Interventional Cardiology Board Review (ペーパーバック)
http://www.amazon.co.jp/900-Questions-Interventional-Cardiology-Review/dp/0781773490

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