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炎症性腹部大動脈瘤については2008年2月4日にこのブログで勉強しました。
http://blog.m3.com/reed/20080204/1
昨日、ある大学病院で「右総腸骨動脈炎症性動脈瘤」と診断されている60代後半の男性が来院されました。
血管外科で上記診断を受けた後、ステント挿入の適応を検討するために放射線科に転科されたようです。
CRPがやや高値、そして白血球増多(1万前後)が続いています。
本人が当院への通院を希望され紹介状を持参して来院されました。
一時期ステロイドを使用していたようですが、今後の治療をどのようにすればいいのか、今まで内科医としてこのような症例を経験したことがないために、今後の治療方針は少し調べてから次回に決定しますと正直に答えました。
持参された画像報告書には以下のように書かれていました。
■右総腸骨動脈は大動脈分岐部下10mmのレベルから腸骨動脈分岐部の遠位13mmの範囲に紡錘状に拡張
■動脈瘤の最大短径は40mmで、全周性の壁在血栓を伴う
■右腎盂、尿管の拡張を認め、瘤に接した部分に狭窄

この症例は白血球は高いのがひっかかりますが、どうやら 「炎症性動脈瘤」よいう診断に間違いないようです。
ただし、このようにCRPや白血球増多がみられる場合、内科的にはどのような方針(処方)がいいのか困っています。
そこで、今日は炎症性動脈瘤とは異なりますが、感染性動脈瘤の勉強をしました。
第32回日本心臓血管外科学会
感染性動脈瘤の外科治療 SIRS合併例には早期手術が大切
感染性腹部大動脈瘤の手術成績は動脈硬化性腹部大動脈瘤に比べて著しく不良であり,術前の感染状態が大きく関与していることが予想される。
福井医科大学第 2 外科の井隼彰夫講師らは,入院時の全身性の過剰な炎症反応(systemic inflammatory response syndrome;SIRS)合併の有無で分けて検討し,「SIRS非合併例では術前に抗生物質による十分な感染制御を行えばよいが,SIRS合併例では何よりもまず早期手術が大切である」と,大阪市で開かれた第32回日本心臓血管外科学会(会長=大阪大学大学院臓器制御外科・松田暉教授)のパネルディスカッション「感染性動脈瘤の外科治療」で述べた。
SIRS合併では院内死亡率75%
対象は2001年12月末までに同科で経験した感染性腹部大動脈瘤10例(男性 8 例,女性 2 例)で,平均年齢71歳(57~84歳)。
感染の誘因は,敗血症が 3 例のほか,感染性心内膜炎,腹膜炎,急性胆嚢炎,腸腰筋膿瘍,肺炎,脊椎カリエス,腰椎椎体炎がそれぞれ 1 例であった。
SIRSの診断基準は,
(1)体温が38℃以上あるいは36℃以下
(2)脈拍90回/分以上
(3)呼吸数20回以上あるいはPaCO2(動脈血炭酸ガス分圧)32mmHg以下(4)白血球 1 万2,000/mm3以上か,4,000 mm3以下または10%以上の幼若球出現
のうち 2 つ以上を満たすものであり,10例中 4 例がSIRSであった。
中略
以上の成績を踏まえて,井隼講師は,感染性腹部大動脈瘤の治療戦略の試案を提示した。
入院時に既に破裂していたり切迫破裂の場合は,緊急手術を行って術後に感染制御を行う。
入院時非破裂症例にはまずSIRS合併の有無を判定し,非SIRS群には感染制御を十分行ったうえで待機手術を行う。
ただし,術前の感染制御が困難な場合には緊急手術を行う。一方,SIRS群には早期手術を行い,術後に積極的な抗生物質投与による感染制御を行うべきとした。
「SIRS合併例に対していたずらに術前の感染制御に時間を費やすと,瘤破裂や全身状態の悪化を招きかねず,得策ではない」と同講師は結論した。
抗生物質投与だけでは感染防げず
薬剤徐放システムは,多孔性リン灰石セラミックとして,β-リン酸三カルシウム(β-TCP)を使用し,抗生物質はテイコプラニン(TEIC)を用いた。人工血管感染モデルは白色日本家兎で,使用菌種は黄色ブドウ球菌,人工血管はgelatin-impregnated knitted Dacron graftを 5 3 mm大のパッチとして使用した。
まず,抗生物質の有効濃度が長時間保ちうるかをin vitroの徐放実験で検討したところ,TEIC濃度は24日目まで測定感度値以上にあった。
また,in vivoの徐放実験では21日目には測定感度よりやや低い値となったため,有効濃度は20日程度持続すると考えられた。
中略
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト移植術
経過中に縮小した瘤が遠隔期に拡大することも
重篤な術前合併症を有する腹部大動脈瘤に対するステントグラフト移植術は低侵襲であり,良好な初期成功率が報告されているが,遠隔期における成績は明らかでない。
大阪府立病院心臓血管外科の上田秀樹氏は,経過中に瘤の縮小を認めても,遠隔期に瘤拡大を来した患者が数例存在したことから,「瘤縮小を来している症例でも術後の厳重なフォローが重要である」と会長要望演題「低侵襲性手術のコントラバーシー」で強調した。
3年以降で大動脈イベント増加
対象は,1994年11月以降に腹部大動脈瘤に対して手術を施行した240例のうち,経カテーテル的ステントグラフト移植術(SG)を行った42例(15.2%)。男性33例,女性 9 例,手術時平均年齢75.77.1歳,平均最大瘤径59.19.5mm。
中略
1 年以上CTで観察できた22例(平均2.30.9年)の動脈瘤径の変化を見ると,「縮小」36%,「変化なし」23%。「拡大」41%であった。
なお,縮小はCT上,5 mm以上のsize down,拡大はCT上,経過中最小sizeから 5 mm以上のsize upである。
この22例の瘤径再拡大の回避率を同じくKaplan-Meier法で検討すると,2 年の累積非発生率は94%,3 年では65%となった。
瘤径拡大症例は 9 例で,そのうち 6 例は経過中,5 mm以上の瘤径縮小が認められていたこともわかった。
瘤縮小後にleak(漏出)を来した要因としては,中枢および末梢側のlanding areaの不足や,瘤の形状変化に対するステントグラフトの長軸方向への柔軟さの不足などが考えられるという。
低侵襲腹部大動脈手術で退院までの日数も大幅に短縮
獨協医科大学越谷病院心臓血管外科の木山宏講師らは,低侵襲を目的に10cm以下の腹部横切開,腹膜外到達法による腹部大動脈手術を試みている。
同法は従来の手術法と比較して,経口摂取や歩行が早く開始でき,退院までの日数も短いなど術後経過は良好であったと,同会長要望演題で発表した。
小切開には適応限界例も
同科において腹部大動脈遮断を必要とした腹部大動脈瘤,腸骨動脈瘤,閉塞性動脈硬化症の症例のうち,昨年 7 月から行っている10cm以下の腹部横切開,腹膜後到達法を小切開群,それ以前の従来の皮膚切開(20cm以上)を対照群として比較検討した。
ただし,逆側内外腸骨動脈への吻合を必要とする症例は除外した。
小切開群14例,対照群10例で,平均年齢や男女比,瘤径,疾患などの術前因子は両群で差がなかった。
小切開の場合は視野が狭く,通常の硬い遮断鉗子では手術操作の邪魔になるため,フレキシブルなものを使用するなど工夫しているという。
手術時間は小切開群のほうがやや長かったが,有意差はなかった。
小切開群の皮膚切開は平均8.21.5cmだが,小切開群のうち 1 例は腎動脈直下に大動脈遮断を必要とし,皮膚切開を延長した。
したがって,腎動脈にきわめて近接している動脈瘤には小切開手術は適応が難しいと考えられた。
また,小切開群のうち,腸骨動脈の性状が非常に悪かった 1 例で右外腸骨動脈閉塞が起こった。
手術死亡や入院死亡は両群で皆無であった。
出血量は小切開群でやや少なく,他家血輸血は小切開群では必要なかった。
術後経過を見ると,経口摂取(食事)も歩行も小切開群のほうが早く開始できており,対照群との差はそれぞれ有意であった。
入院期間も小切開群のほうが大幅に短く,対照群より10日ほど早く退院できており,その差は有意(P=0.0004)であった。
出典 Medical Tribune 2002.3.7
版権 メディカル・トリビューン社
<関連サイト>
大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_d.pdf

三塩清巳 油彩6号『夕映』
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x53997971
<きょうの一曲>
「ワルツ・フォー・デビー」
http://ja.weshow.com/categories/editorial/音楽/video/ビル・エバンス 「ワルツ・フォー・デビー」-154978
"Autumn Leaves / Cannonball Adderley with Miles Davis"
http://jp.youtube.com/watch?v=xvL-i0VE7Co&feature=related
<「ワルツ・フォー・デビー」/ビル・エバンス 関連サイト>http://www.ojihall.jp/topics/interview/jazz/evans1.html
http://www.ne.jp/asahi/matsuwa/home/waltzfordebby.html
http://ameblo.jp/hiroharu/entry-10038973058.html
コメント
コメント一覧
各疾患の一般的な話は以下のガイドラインで参照できます。
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_d.pdf
拙ブログの紹介ありがとうございます。私の弟が循環器の開業医をしています。アクセス数が、多いのは、いい参考になるからだと思います、いつも奇麗な絵画もすばらしいです。これから応援します。
コメントありがとうございました。
「”炎症性”大動脈瘤」の概念が今ひとつ理解できませんが、先生のご指摘のようにタイトルを差し替えました。
感染性腸炎、感染性心膜炎と同様、微生物に起因する動脈瘤が「”感染性”動脈瘤」という捉えかたでよろしいのでしょうか。
いずれにしろ、両者は治療法も予後も違うので峻別する必要があるということがわかりました。
コメントありがとうございました。
またのコメントお待ちしています。
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