戯れ言たれる侏儒
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< 肥満とクロピドグレ | メイン | JIKEI-HEART Study(桑島... >

Ca拮抗薬の優れた降圧効果を証明:CASE-J試験

■本試験の結果の最も重要なポイントは、カンデサルタン群ではアムロジピン群に比べて他の降圧薬の併用率が高かったという事実である。
■本試験の結果は、カンデサルタンは多剤の降圧薬を追加して、ようやくアムロジピンと同程度の心血管合併症予防効果が得られる」ということに尽きる。
■ARBカンデサルタンは利尿薬など他の降圧薬の併用がなければ、Ca拮抗薬アムロジピンの降圧効果と脳心血管イベント抑制効果に近づくことができないことを証明しているのである。

■カンデサルタン群は他の降圧薬併用率が多いにもかかわらず、アムロジピンの降圧度に追いついていないことは注目すべきである。
■降圧度が劣っていたにもかかわらず心血管イベントに有意差がつかなかったのは、単に脳卒中や心筋梗塞といった真のハードエンドポイントの発生率が少ないためである。
降圧効果においてCa拮抗薬のほうが優れていたことは、やはりARBバルサルタンと、Ca拮抗薬アムロジピンを直接比較したVALUE試験でも同様であった。
■CASE-J試験、VALUE試験ともARB企業の支援大規模臨床試験でありながら、皮肉にも降圧薬として、Ca拮抗薬のほうが優れていることを証明する結果となった。
しかし、実際には一般臨床医にそのような正確な情報が伝わっていないことに問題がある。
■CASE-J試験の結果は、2006年の国際高血圧学会で発表されて以来、1年半後にようやく論文化された。
その間、本試験の結果は学会以外にも研究会、雑誌座談会、講演会など、いろいろなメディアを通して実地医家に伝えられた。
しかし、本研究の重要なポイントである他の降圧薬の追加率の違いが報道されてこなかった点は、大規模臨床試験の報道のあり方に大きな問題を残すこととなった。
■そのほかにも、本試験の結果は宣伝媒体や講演会を通じて、以下のような報道がなされている。

「カンデサルタンは時間が経つにつれ、じっくり効いてくる」という捉え方をする専門家が少なくないが、これは本当に事実なのだろうか?
本試験のKaplan-Meier曲線(図1)をみると、試験開始から3年くらいまでの間は、カンデサルタン群のほうが明らかにイベント発生率が高いが、3年目にはお互いに近づいていることからやARBは3年目くらいからじっくり効果を発揮すると解説しているのである。
しかし、Kaplan-Meier曲線はイベント発生までの時間を比較する解析方法である以上、後から効果を発揮するといった解釈は成り立たない。
カンデサルタン群に割り当てられた症例では、試験開始早々に脳心血管イベントがより多く発生したために、早々と追跡から除外された結果にすぎないのである。
したがって「後からじっくり効いてくる」などという解釈はあり得ないのである。


 

(コメント:いわれてみればたしかに見慣れたKaplan-Meier曲線とは違っています) 

 

カンデサルタンは左室肥大の退縮率が高いか?
本試験では、宣伝媒体の中で、カンデサルタン群ではアムロジピン群よりも左室肥大の退縮率が有意に高いデータを示している。
しかし奇妙なことに、本試験開始登録時には左室肥大の症例はカンデサルタン群799名、アムロジピン群813名となっているにもかかわらず、グラフでは、それぞれ205名、199名に著減しており、きわめて不自然である。
登録時に決定した左室肥大の基準に従って退縮率を比較するべきであり、後付け解析で基準を変更するべきではない。

「ARBは肥満者に有効である」の誤解
本試験ではBMIを4分画し、カンデサルタン群において肥満者の死亡率が減少したという解析結果も報道されている。昨今流行のメタボリック症候群にARBが有効であるというイメージを植えつけたいとの発表者の意図が感じられるが、きわめて不自然であり、問題である。
すなわち、総死亡数約80例のうち心血管死は20数例にすぎず、その他の大部分の死亡はがんや肺炎などの心血管疾患以外による死亡であり、偶発的な後付け解析にすぎないのである。
 
糖尿病新規発症に関しても、試験開始前の解析計画には含まれていない事項であり、あくまでも後付け解析である。
 
また当初、年代別降圧目標値を設定したが、結果としての年代別達成血圧値の成績が明らかにされていないのも不自然である。
 
このような、企業に有利と判断されるような後付け解析が、企業からの経済的支援を受けた国立大学によって行われ、しかも追加降圧薬の違いといった重要なデータが隠されたままの内容が、ガイドライン作成に深く関わる専門医によって一般臨床医に伝えられるところに問題がある。
このような臨床試験の内容を正しく伝えることこそ、専門医の責務であろう。

出典 日本医事新報 No.4397(2008年8月2日)
版権 日本医事新報社

<コメント>
国立大学によって行われ」は少し余分かも知れません。
しかるべき手続きを踏んでいればなんら問題ありませんし、公立や私立大学によって行われればいいかという問題になってしまいます。
多分、桑島先生はもう少し深い意味で言ってみえるかと思うのですが・・・。

さてJIKEI-HEART Studyもエンドポイントなどが変更になっているという指摘を聞いたことがあります。
間違っていたらすいません。
大規模臨床試験では試験開始時の設定までチェックして後付け解釈がないかを調べる時間は一開業医にはありません。
御用学者の多い中、桑島先生には鋭いコメントを今後も引き続き発信していただきたいと思います。

<文献>
Ogihara T,et al:Hypertension 51:393,2008
Fukui T,et al:Hypertension Res 26:979.2003

<CASE-J  関連サイト>
CASE-J
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002499.html
candesartan群が優位なのは狭心症,TIAといった客観性に乏しいエンドポイントばかりであり,脳卒中などの客観性のあるエンドポイントはむしろamlodipine優位に傾いているのである。狭心症やTIAが試験薬群に優位という傾向は JIKEI- HEART試験でも同じように認められ,ここに企業支援によるPROBE法の問題点が明瞭に浮かんでくるのである。
またトライアル初期から中期にかけてcandesartan群の方の脱落例が明らかに増えており,candesartan群はハイリスク症例で早期にイベントを起こしていることを示している。(桑島先生のコメント)

<Kaplan - Meier 法 関連サイト>
Kaplan - Meier 法による生命表 
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Survival/k-m.html
生存曲線
http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/public_health/ebm/ce307.html
症例数が50程度以上では生命保険数理法 acturial method またはカトラー・エデラー法 Cutler Ederer method が用いられるのに対し、症例が少ない時にはカプラン・マイヤー法 Kaplan-Meier method が用いられます。
(Cutler Ederer methodで統計処理した論文はみたことがありません。勉強になりました。)

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」2008.5.21~
http://wellfrog2.exblog.jp/
「井蛙内科/開業医診療録」 ~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/ 
があります。

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