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リスク安定型狭心症患者に対する治療戦略はPCIか薬物療法か?
―わが国初の多施設ランダム化比較試験JSAPの意味すること
兵庫県立尼崎病院循環器内科 佐藤 幸人
背景:
欧米のガイドラインは薬物療法を推奨,COURAGE研究でもPCI群と同等の長期予後
安定冠動脈疾患(安定CAD;安定狭心症,安定無症候性狭心症)は,
(1)死亡の危険性の高い高リスク(左主幹部病変・3枝病変・左前下行枝分岐部病変)CAD,
(2)相対的に死亡の危険性の低い高リスク以外のもの(低リスクCAD)
―に分類され,大部分(約80%)は後者である。
その治療法は,
(1)薬物療法=薬物療法で開始し,コントロールできなければ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を追加,
(2)PCI療法=低リスクCADを対象とし,PCIと薬物療法を同時に開始,
(3)冠動脈バイパス術(CABG)療法=高リスクCADを対象とし,CABGと薬物療法を同時に開始
―である。
欧米のガイドラインでは,低リスクCAD治療の第一選択は多くの多施設共同研究のエビデンスに基づき,薬物療法である。
最近報告された薬物療法とPCI療法の長期予後を検討したランダム化比較試験COURAGE研究(N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)においても,短期の臨床症状の改善はPCI療法が優れていたが,長期予後すなわち死亡も急性冠症候群(ACS;急性心筋梗塞および不安定狭心症)も両者に全く差がなく,長期には臨床症状にも差がなくなり,これまでの欧米のガイドラインの正しさが確認された。
一方,わが国では特殊な例外を除き,これまでエビデンスが全くなかったにもかかわらず,欧米のガイドラインとは異なるPCI療法が一般的に行われてきた。
そこで,低リスクCAD患者を対象に,PCI療法と薬物療法の多施設ランダム化比較試験であるJSAP研究(委員長=藤原久義・兵庫県立尼崎病院院長)が厚生科学研究費と日本心臓財団の補助を受け,わが国ではじめて行われた。
その結果が J Am Coll Cardiol Intv(2008; 1: 469-479)に掲載されたので紹介する。
JSAPの結果:PCI群で有意な予後改善示す
JSAP研究は2002年に始まり,わが国の代表的な循環器科の病院78施設が参加した。
対象は低リスクCAD患者384例である。コンピュータによるランダム化が行われたわが国初の試験でもある。
追跡期間は3.2年。PCI群の76%ではベアメタルステントが留置された。
総死亡はPCI群2.9%,薬物療法群3.9%で有意差がなかった。
しかし,PCI群では薬物療法群と比較し,ACSの有意な減少(PCI群:5.0%,薬物療法群:11.7%,P=0.012)が見られ,総死亡+ACS(P=0.019),総死亡+ACS+脳血管障害,総死亡+ACS+脳血管障害+緊急再入院でも有意な減少が認められた(図1)。
狭心症状も全期間を通じて,PCI群で有意な改善を示した。
なぜ両研究の結果が一致しなかったか:PCI技術の相違が関与している可能性も
JSAP研究の結果から判断すると,わが国では欧米と異なり,PCI療法でよいことになる。
さて,どちらが真実を反映しているかは今後の検討課題であるが,問題点は以下のように整理される。
(1)COURAGEの研究者らは同試験の結果について,「ACSがPCIの対象となる有意狭窄病変からではなく,非有意狭窄病変から発生する」というこれまでの定説から,有意狭窄病変のみをPCIで治療しても全体のACSの予防効果に反映しないとし,このためにPCI群と薬物療法群に長期予後の差がなかったと結論している。
しかし,JSAPの薬物療法群の冠動脈造影(CAG)所見の解析では,半数以上のACSがJSAP開始時に既に存在していた有意狭窄病変から発生していることを示した。
また,PCI群における試験中のACS減少は,開始時のPCI対象血管病変からのACS発生の減少に由来することを明らかにした。
COURAGEなどの欧米の試験ではこのようなデータの解析はなされていない。
(2)COURAGEのKaplan-Meier曲線の特徴は,PCI後,半年以内にPCI群でイベントが多発しているが,逆に慢性期には薬物療法群で多発しており,結果として長期成績では両者は相殺され,両群の差がなくなっている(図2)。
一方,JSAPでは初期からイベント発生はPCI群で少なく,期間が長くなるにつれて差は大きくなっている。
慢性期だけ見ればCOURAGE,JSAPともにPCI群でイベントは減少していることになり,COURAGEでも初期イベントがJSAPと同様にPCI群で低ければ長期予後はPCI群が勝ったはずである。
初期のイベントがなぜCOURAGEとJSAPで逆かが大きな問題となるが,わが国ではPCI時に一般的に行われている血管内超音波(IVUS)が欧米では一般的ではないなどのPCI技術の相違が関与している可能性がある。
出典 MT Pro 2008.10.27
版権 メディカル・トリビューン社

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「リトグラフ」
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t91430432
<番外編>
都立墨東病院の妊婦死亡で舛添厚労大臣が同院を視察 問題の本質には医師不足と明言
脳内出血を発生した東京都の妊婦が, 今年(2008年)10月4日(土)に都立墨東病院を含む7病院から受け入れ不能の連絡を受け,最終的に受け入れた同院で出産後,10月7日に亡くなった。この件では,同院が都立で唯一,「総合周産期母子医療センター」設置病院だったこともあり,マスコミに大きく取り上げられた。
10月24日午前11時に同院を視察に訪れた舛添要一厚生労働大臣は,同院院長の小林剛氏など病院側スタッフとともに,会議室で状況調査を行ったのち,病棟入り口で短時間の会見を開いた。
舛添大臣は,同院でも産科医不足の状況にあり,休日(10月4日も該当)の当直が1人体制であったことに触れ,改めて問題の本質に医師不足があることを指摘,現在行っている対策などを紹介した。
今後,今回の問題も踏まえ,医師不足問題について検討する意向を示した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0810/081034.html
<コメント>
問題の本質には医師不足と明言・・・・問題の本質は「医師偏在」です。
これを認めると「卒後研修制度による研修医の大病院集中」という施策ミスを認めることになります。
口が裂けても彼らは「医師偏在」とはいいません。
また医師を増やせと旗を振っている医師達。
ちょっと頭を冷やしたほうがよさそうです。
医学部の定員を増やしても今の施策が続く限り、付け焼刃にしかなりません。
そして医師増加による火の粉は、将来自分自身に降りかかってきます。
医師の質と待遇は今まで以上に落ちていくのです。
<番外編>
「医師の手術件数と成績の相関関係調査へ」という内容の記事が
日本医事新報 No.4293 2006.8.5 P4〜5
に出ていました。
ちょうど「医師の技能に応じた診療報酬のランク付け」が新聞報道された直後の頃です。
最近では、施設単位では手術数と医療レベルがほぼ相関するというデータも出されています。
今週の週刊朝日(2008.11.7)に「全国4606病院手術数総覧全編」として東日本の病院のデータがています。
この週刊朝日は毎年春に「出身高校別大学合格者数」を出しています。
昔、サンデー毎日(今でもやっているかも知れませんが)がやっていたお株を奪う勢いです。
一体、朝日新聞社のポリシーって何だろうと半分怒りながらもつい見てしまいます。
販売部数を伸ばすためにはなりふり構わずといったところでしょうか。
朝日新聞社には受験戦争の是非を論じる資格はもちろん、この記事でなくなります。
ゆがんだ競争をあおっているわけですから。
さて、そうはいいながらもこんな記事を読んでいる自分が情けないのですが、北から順に心カテ数(心臓手術数)300以上の医療施設を数回に分けてとりあげてみます。
<循環器関連手術手術数総覧 その1>
北海道
札幌東徳州会病院 982(75)
札幌徳州会病院 322(0)
北海道社会保険病院 359(64)
心臓血管センター北海道大野病院 543(267)
市立札幌病院 305(25)
国立帯広病院 314(109)
青森
弘前大学病院 754(182)
むつ総合病院 502(3)
岩手
岩手県立病院 535(108)
岩手医科大学循環器医療センター 301(312)
宮城
仙台厚生病院 1307(199)
坂総合病院 316(9)
みやぎ東部循環器科 353(0)
みやぎ北部循環器科 805(18)
<コメント>
インターベンションがどれだけか行われているのかということは、このデータからは読み取ることはできません。
手術の数がゼロの病院は心臓外科のバックアップ(スタンバイ)なしでインターベンションが行われているのでしょうか。
中には病床数19という、いわゆる有床診療所もあり施設の規模は実にさまざまです。