戯れ言たれる侏儒
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Lancet誌2008年8月16日の掲載記事の「ARBとACE阻害薬の併用」で勉強しました。
両者の併用は一般的ではないと思います。
支払い基金でカットされる可能性もあるかも知れません。
私自身、両者の併用は「注釈をつけて」CKDの方に1例のみ使用して、レセプトは何とか通っているのが現状です。
JIKEI HEART Studyでは両者の併用が確か30%以上あったように記憶しています。
その時は、この併用効果がいい結果につながったのかなとも思ったのを思い出します。

ARBとACE阻害薬の併用は腎機能を低下させる
ONTARGET試験の結果から
アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬が蛋白尿を改善することは知られている。
これらを併用すれば、さらに高い効果が得られるだろうか。
ONTARGET試験の参加者を対象に、これら2剤を併用した場合の腎機能に対する影響を調べた結果、2剤をフルドーズで併用すると、単剤投与に比べ、蛋白尿の進行は有意に抑制されるが、透析導入、血清クレアチニン値の倍化、死亡からなる複合イベント発生リスクは有意に上昇することが示された。
ポーランドGrochowski病院のJohannes FE Mann氏らの報告で、詳細はLancet誌2008年8月16日に掲載された。

先に行われたメタ分析では、ACE阻害薬とARBを併用すると、それぞれ単剤で用いた場合よりも蛋白尿の改善が大きいと報告されている。
蛋白尿の改善は慢性腎不全の予防において重要だが、分析対象となった個々の研究は、登録者数が少ない上に、試験期間1年未満がほとんどで、腎機能の指標である糸球体濾過率の変化や、透析導入の有無などについては情報が提供されていないという問題点もあった。
また、ARBとACE阻害薬を併用すると、それぞれを単剤投与した場合に比べ、急性腎不全と高カリウム血症を含む有害事象が増える可能性がある。

そこで大規模な集団を対象とする直接比較が必要だと考えた著者らは、ACE阻害薬のラミプリルとARBのテルミサルタンをそれぞれ単独で、またはフルドーズで併用したONTARGET試験の登録者を対象に、これら薬剤の腎臓に対する作用を評価した。

ONTARGET試験は、2001~2007年に、55歳以上のアテローム性動脈硬化症(冠疾患、末梢血管疾患、脳血管疾患)または臓器障害のある糖尿病の患者を対象に行われた。
3週間のランイン期間を経て、2万5620人の患者を無作為にラミプリル10mg/日(8576人)またはテルミサルタン80mg/日(8542人)、これら2剤を併用(8502人)に割り付けた。
追跡期間の中央値は56カ月だった。

血清クレアチニンは、ランイン期間の前、割り付けから6週後、2年後、試験終了時に測定。
これを基に推定糸球体濾過率(eGFR)を算出した。
尿中アルブミン/クレアチニン比も同様に測定した。
3.4mg/mmol以上~33.9mg/mmol未満を微量アルブミン尿症、33.9mg/mmol以上をマクロアルブミン尿症とした。腎機能に関する主要エンドポイントを、あらゆる透析の導入、血清クレアチニン値の倍化、死亡の3つを合わせた複合イベントに設定した。
分析はintention-to-treatで行った。

ベースラインの血清クレアチニン値の平均は93.7μmol/L、eGFRの平均値は73.6mL/分/1.73m2だった。

複合イベントの発生は、ラミプリル群1150件(13.5%)、テルミサルタン群は1147件(13.4%)で、ラミプリル群と比較したハザード比は1.00(95%信頼区間0.92-1.09)と差はなかった。
しかし併用群では1233件(14.5%)発生しており、ハザード比は1.09(1.01-1.18、P=0.037)とリスク上昇は有意だった。

2次アウトカムに設定された、透析導入または血清クレアチニン値の倍化も、ラミプリル群174件(2.03%)、テルミサルタン群189件(2.21%)で、ハザード比1.09(0.89-1.34)と差なし。
しかし併用群では212件(2.49%)、ハザード比1.24(1.01-1.51、P=0.038)と有意に多かった。

透析導入は162人、うち61人が急性透析(次の透析までの間隔が3カ月以上。2カ月以内なら慢性透析と判断した)だった。急性透析患者は併用群で多かった。
慢性透析となった患者の割合については、3群間に差はなかった。

糖尿病、糖尿病性腎症、高血圧、低血圧、微量アルブミン尿症、マクロアルブミン尿症、eGFRなどの有無や値に基づいて患者をサブグループに分け、テルミサルタンとラミプリルの影響を比較したが、すべてのサブグループにおいて複合イベント発生の相対リスクに差はなかった。

次に、2剤併用とラミプリルを比較。併用は、最も腎疾患リスクが高いグループ(糖尿病性腎症有り)や、eGFRが60mL/分/1.73m2未満のグループなどに利益をもたらしてはいなかった。
逆に、腎疾患リスクが低いグループの複合イベント発生の相対リスクは有意に上昇していた。

eGFRのベースラインからの低下は、ラミプリル群(-2.82mL/分/1.73m2)で少なく、テルミサルタン群(-4.12mL/分/1.73m2)(P<0.0001)、併用群(-6.11mL/分/1.73m2)(P<0.0001)との間に有意差が見られた。

尿中アルブミン/クレアチニン比の幾何平均は、時間と共に上昇していた。ラミプリル群では試験終了時にベースラインに比べ31%(26~35)、テルミサルタン群では24%(20-28)上昇しており、ラミプリル群との間に有意差があった(P=0.027)。
併用群は21%(17-25)上昇で、やはりラミプリル群との間に有意差が見られた(P=0.0009)。

蛋白尿の進行(微量アルブミン尿、または、マクロアルブミン尿、もしくはこれら両方の発現)を経験した患者の割合は、テルミサルタン群949人(11.1%)とラミプリル群1018人(11.7%)で、ハザード比0.94(0.86-1.02、P=0.119)だった。
しかし併用群では888人(10.4%)で、ラミプリル群より有意に少なかった。

なお、ベースラインで既に微量アルブミン尿が認められた患者のマクロアルブミン尿症への進行は、ラミプリル群166人(2.12%)、テルミサルタン群138人(1.77%)、併用群125人(1.61%)で、ラミプリル群に比べテルミサルタン群のハザード比は0.83(0.67-1.04、P=0.114)と有意差がなかった。併用群との比較では、ハザード比0.76(0.60-0.96、P=0.019)で有意なリスク低減が見られた。

試験期間中に低血圧症状により784人の患者が脱落した。
ラミプリル群は149人、テルミサルタン群が229人、併用群406人だった。

ONTARGET試験は、腎疾患に対するこれら薬剤の影響を評価するために設計されたものではないが、複合イベントは3500件近く発生していた。
この試験の対象となった心血管リスクが高い人々においては、テルミサルタンとラミプリルの腎機能への影響にはほとんど差がなかった。
しかしこれらをフルドーズで併用すると、蛋白尿の進行は抑制されるが、腎機能の悪化のリスクは、単剤で用いた場合に比べ有意に高くなることが示された。  

原題は「Renal outcomes with telmisartan, ramipril, or both, in people at high vascular risk (the ONTARGET study): a multicentre, randomised, double-blind, controlled trial」

出典 NM Online  2008.8.18
版権 日経BP社

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以前にもコメントさせていただきました。

試験終了時のeGFR低下はramiprilが最も小さく,年あたりのeGFR低下速度も小さいと考えられます。アテロームのruptureで突然発生する心血管イベントと異なり,腎イベントの発生はeGFR低下の積み重ねで発生します。そのたまfollow up期間の延長によりtelmisartan群も予後不良となった可能性が高いと思われます。私は特定の製薬会社とつながりがあるわけではありませんが,CKDにはまずACEIを選択し忍容性がない場合にARBをchoiceするというほうが妥当だと考えます。
written by ドロッポ透析医 / 2008.10.29 11:47
ドロッポ透析医 様。
いつもコメントありがとうございます。
先生のご指摘のように、ACEIに関しては認容性が低いのが何よりの問題だと思います。

私のような開業医は患者さんがACEIの副作用に懲りてしまって、降圧剤自体の認容性がなくなってしまうのを無意識のうちにも恐れてしまいます。

そして薬価が同等やARBの方が安価なら、どちらを投与するんだろうかと考えることもあります。

大規模臨床試験の両者の投与量も気になります。
ACEIの認容性が高い欧米では使用用量が多く、それに対してARBは日本と大きく変わらないということがあります。
要するに、ACEIに有利な結果が出る可能性もあります。

一方、ARBは逆に認容性が高いゆえに使用用量が増やせるメリットがあります(高薬価に対する患者さんの”認容性”が問題ですが)。

今のところ私自身、両者のアルドステロンブレークスルーの頻度の差、ARBのAT2受容体刺激が臨床的意味をどれだけもつか(長期的には悪影響との報告あり)、ACEIの組織BK賦活化などの多面的作用などに興味をもっています。

米国Rush大学のBakris先生は「心・腎保護を考えた場合、ACEIは必須である」と述べておられ、先生と同意見です。

JATOS試験
http://blog.m3.com/reed/20081102/JATOS_


桑島先生の
「高価な新薬をまず処方してみて、降圧しないからといって他剤を併用するというのでは、費用対効果の面からは最も非効率である。」
という箴言をとりあげさせていただきました。
written by 戯れ言たれる侏儒 / 2008.11.02 08:05

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