戯れ言たれる侏儒
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慢性心不全の生化学指標

戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.25 00:30 / 推薦数 : 1

心不全のバイオマーカーはこのブログで以前に

心不全マーカーとしてのBNPの意義
http://blog.m3.com/reed/20080710/_BNP_
NT-proBNPについて
http://blog.m3.com/reed/20070906/NT-proBNP
(コメントもいただいていますので参照ください)

としてとりあげました。
きょうはちょっと古いのですが、TnTとの関連についての論文で勉強しました。

血中心筋TnTなどで早期発見,病態把握,予後予測が可能に
慢性心不全は左室収縮能が低下する病態で,一般的に進行性ではあるものの,その臨床経過は多様である。
例えば,心不全症状が代償されたまま全く症状の悪化を見ない症例もあれば,急速に悪化して死亡への転帰を取る症例もあり,必ずしも全症例が徐々に悪化していくとは限らない。このような病態を,客観的に血液検査で評価できればたいへん有用である。
そこで,兵庫県立尼崎病院循環器内科の佐藤幸人医長,鷹津良樹部長らは,長年心不全患者において血中心筋トロポニンT(TnT)測定を用いた微小心筋傷害の検出に関する臨床研究を行っている。
TnTは専門施設でなくても簡便に測定できるうえ,臓器特異性が非常に高いことなどから,心不全の早期発見,病態把握,予後予測などの指標として確立されることが期待される。

心不全一般の心筋傷害の検出へ
佐藤医長が心不全の診断指標としてTnTの臨床研究を始めたのは1995年,京都大学から県立尼崎病院に転出した直後のことだ。
同医長は「近隣の開業医から心不全と診断された患者の紹介が相次いだ。
しかし,電話だけでは共通の簡便な指標がないため患者の症状がなかなか把握できなかった」と当時を振り返る。
心不全の診断をするためには,心電図,胸部X線,心臓超音波などによる検査をするのが一般的だが,いずれも主観が入りやすいうえ,心不全の状態を把握するにはある程度の経験が必要である。
したがって,心不全の診断は必ずしも容易ではない。
「例えば,肝臓疾患の患者ならGOTやGPTの数値を聞けば,どのような患者かは想像できる。ところが,心不全に関してはこうした施設間較差のない指標がほとんどなかった」という。 
そこで,同医長はどのような施設でも判定できる客観的な心不全の指標を探すことにした。
心不全のメカニズムを考えながら,いくつかの候補を検討したが,「臓器特異的で,心筋梗塞でなじみがある」という条件で絞り込んでいった結果,TnTが残った。
トロポニンは心筋フィラメント上の蛋白質であり,TnTは傷害された心筋細胞から検出されると推定されている。
TnTは急性心筋梗塞,不安定狭心症などの急性冠症候群患者では多数の報告があるが,同医長は「慢性心不全においても,TnT測定が心筋傷害の指標として有用なのではないか」と考えた。
同医長らの拡張型心筋症患者での検討では,TnTが観察期間中,持続的に高値を示した患者群では,左室収縮能が悪化し,予後不良であった。
一方,TnTが低値であった患者は経過中,左室収縮能の改善が見られ,予後良好であった。
また,非拡張相の肥大型心筋症患者における検討では,約50%の患者で非拡張相であるにもかかわらずTnTが上昇しており,これらの患者では経過中,心臓超音波検査により収縮能低下と中隔の壁厚減少が見られた。
最近では,心筋症だけでなく心筋梗塞後,高血圧性心疾患,弁膜症,先天性心疾患などの心不全一般での検討も行っている。
その結果,これらの患者のなかにもTnTが持続高値を示す予後不良な患者が存在した。
これらの結果を踏まえ,同医長は「予後不良な心不全患者では心筋傷害が生じており,TnTはそれを反映して高値であると考えられる」と結論付ける。

 

BNPとTnTを同時測定
次に,佐藤医長らは心不全における血中脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)とTnTの同時測定を試みた。
心不全で心房あるいは心室に負荷がかかると心房,心室から心臓ホルモンが分泌される。
おもな心臓ホルモンには,心房から分泌される心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)と心室から分泌されるBNPとがある。特にBNPは心不全患者での心室の心不全状態を直接反映して心室から分泌されており,BNP測定により心不全時の心負荷の程度を知ることが可能と考えられている。
1998年からBNP測定は外来患者にも適用が拡大され,その簡便さから需要が急速に伸びている。
BNP測定は,
(1)早期心不全の把握
(2)心不全の重症度の把握
(3)心不全の予後予測
(4)心不全の治療指標

として有用とされている。
   
同医長らのBNP,TnT同時測定と心不全患者の予後の検討では,BNP,TnTはそれぞれ心不全の予後予測の指標ではあるが,異なる意味を持ち,組み合わせることでより予後不良な一群を検出できることが示された(図 1 )。


「理論的にはBNPは現在の心不全の状態を示し,TnTはその心不全状態の原因となった心筋傷害を示している」()という。


現在,同医長らはBNPとTnTの同時測定を,慢性心不全の治療指標として検討を進めている。
治療の第 1 目標は「心不全状態を改善してBNPを低下させること」であり,第 2 目標は「心不全状態の原因となった心筋傷害を改善してTnTを低下させることにある」と考えている。

N末端proBNP,H-FABPなどの新しい指標も
心不全において,心筋傷害が生じる機序の解明も進みつつある。
従来,心筋傷害は心負荷,レニン・アンジオテンシン(R-A)系活性,サイトカイン,交感神経活性などにより生じるとされている(図 2 )。

 

佐藤医長らは微小心筋傷害により上昇するTnTが,心筋線維化の指標であるコラーゲン,炎症マーカーC反応性蛋白質(CRP),交感神経活性を反映するカテコールアミンなどの各液性因子と相関するかどうか解析を行った。
心不全患者を対象に,TnTを高値群と低値群に分けて解析したところ,TnT高値群で微小心筋傷害が見られる症例では交感神経活性,線維化,炎症反応が亢進していることが示唆された。
さらに,最近になって心不全を評価する新しい指標として,N末端proBNPや心臓型脂肪酸結合蛋白質(H-FABP)が登場している。
N末端proBNPとTnTの同時測定により,最も予後不良な心不全患者を検出することが可能であった。
H-FABPは心筋細胞質に比較的豊富に存在する分子量15kDaの小分子蛋白質であり,急性心筋梗塞では同じ細胞質内にあるミオグロビンと同様,鋭敏な遊出動態を示すと言われている。
N末端proBNP,H-FABPについて,同医長は「N末端proBNPはより早期に心負荷を,H-FABPはより微小な心筋傷害を検出できる可能性がある」との見方を示す。

より初期に,より迅速な検出を
今後,人口の高齢化に伴い,心不全患者が増加するのは間違いない。
心不全の危険因子としては,高血圧,糖尿病,高脂血症などがある。
検診が一般化しているわが国では,これらの危険因子を早期に発見することが可能である。
このようにして,医療機関にかかっているリスクの大きい患者の心不全発症を未然に防ぐことが次の課題である。
佐藤医長は「心不全のリスクを背負う高血圧,糖尿病,高脂血症群に対して,それぞれの疾患ごとの検査に心筋傷害や心負荷について鋭敏な生化学指標のスクリーニングを行うことが今後は必要なのではないか。
特に高血圧では生化学指標による治療効果の検討も必要かもしれない」と提言する。
最近では,トロポニン,BNPなどの迅速測定機器も開発されている。全血を用いるので従来の血清,血漿分離が不要であり,15分程度で結果が判明する。
しかも,だれでも簡単に判定できる。
「迅速測定機器の能力が発揮できる場は,慢性心不全ではなく急性心不全である。現在の急性心不全の治療は血行動態指標により行われているが,正確な迅速測定機器の導入が進めば,生化学指標による統一した治療法が確立できるかもしれない。また,外来患者においても,カテコールアミン点滴などの心不全治療も安全に行えるようになるかもしれない」という。
心不全におけるTnT,BNPなどの生化学指標は専門施設でなくても簡便に,再現性,定量性をもって繰り返し測定できるという大きな利点がある。
しかも,臓器特異性が非常に高い。したがって,「将来,心臓病における標準的検査として確立されること」を同医長は期待している。
 
出典 Medical Tribune 2005.1.27
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
「1週間以内に、NT-proBNP,BNP,HANPのうち2項目以上を併せて実施した場合は、主たるもの1つに限り算定する」という保険請求上の制限があります。
したがって実施日の記載が必要になりますが、1週間以上間隔があいていれば他の検査は可能という解釈となります。
(以前、心エコーとBNPの同月内の実施は一定の”しばり”があったのですが、それはなくなったようです)
TnTは保険適応が「急性心筋梗塞、心筋炎、狭心症」ということなので、心不全という病名は適応外です。

<関連サイト>
第72回日本循環器学会レポート(5)
心血管疾患のバイオマーカー,新たな可能性を探る
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0804/080407.html
■NT-proBNPは,前高血圧の段階から異常値を示す
■NT-proBNPは腎機能の影響を明らかに強く受ける

NT-proBNP迅速測定機の臨床的有用性が示される
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr080421.html
■NT-proBNPは心不全の診断,予後予測指標として登場したが,最近では外来での心不全治療のガイドとして用いられたり(Lancet 2000; 355:1126-1130),LIFE(Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension)試験(J Hypertens 2004;22:1597-1604)やCOPERNICUS(Carvedilol Prospective Randomized Cumulative Survival)試験(Circulation 2004;110:1780-1786)などのように,高血圧,慢性心不全の薬剤多施設研究に用いられるなど,その使用頻度は今後ますます高まるものと期待されている。
■本来,NT-proBNPは遠心分離した血清を検査室でエクルーシスという機器を用いて測定するのであるが,Cardiac ReaderRは全血を用いてベッドサイドで使用可能な小型の迅速測定機であり,NT-proBNP測定では最初の簡便な測定機である(いずれもRoche Diagnostics社)。
■今後,従来のエクルーシスによるNT-proBNPとともに,迅速,簡便性を重視した小型測定機のニーズはますます高まると考えられる。わが国ではCardiac Readerをさらに進化させたハンディタイプのコバス h 232(重量650g,充電可能,心筋トロポニンT,NT-proBNP,ミオグロビン,D-dimerが定量可能)が昨年7月より発売されている。携帯可能となったことで,遠隔地,僻地医療における心リスク指標としての用途のほか,災害時の心疾患発生時,さらには在宅医療への応用も可能と考えられ,今後の発展に期待したい。
 

心不全の診断?生化学マーカーを活用する
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M3925801&year=2006&type=article
■ガイドラインに記載されたもののなかでは,ノルエピネフリン,レニン,アンジオテンシン II,アルドステロン,バソプレシン,エンドセリン(ET)-1,腫瘍壊死因子(TNF)α,インターロイキン(IL)-6が心臓刺激因子,心房性(A型)ナトリウム利尿ペプチド(ANP),BNP,アドレノメデュリンが心保護因子である。
■BNPに追加する第 2 のマーカーの 1 つとして注目しているのが,炎症のマーカーだ。BNPとともに高い予後予測能を示したIL-6も有用と考えられるが,測定の煩雑さやコストの点で一般臨床向けとは言えない。
近年循環器疾患を含めた幅広い領域で有用性が報告され,普及が進んでいる高感度C反応性蛋白質(CRP)だ。
ただし,IL-6もCRPも心不全に特異的なマーカーではないため,感染症などの影響を受けやすい。
使用の際は他の炎症性疾患を鑑別する必要がある。
一方,BNPとトロポニンT(TnT)の組み合わせが慢性心不全の予後予測に有用であることを主張している研究者もいる。
■心房細動を合併した心不全患者では,心房への負荷が繰り返されて心房筋が線維化し,心不全の代償機転として亢進するはずのANPの分泌が不十分になる。
このため,BNPの上昇に比べ,ANPの上昇の程度が低く,ANP/BNP比が心房損傷の指標になる可能性がある。
■腎不全合併では,血漿BNP値は“見かけ上”高値を示しやすい。
BNPの一部は腎から排泄されるため,腎機能が低下するとBNP排泄量が減少し,心機能とは関係なく血中濃度が上昇するためだ。

<きょうの一曲> 秋桜
山口百恵  秋桜 Momoe Yamaguchi - Cosmos
http://jp.youtube.com/watch?v=nb-PvxXRsNM&feature=related
山口百恵 「秋桜」 
http://jp.youtube.com/watch?v=SruhoPj97bU&feature=related
山口百恵~最後の生放送出演で「秋桜」を歌う
http://jp.youtube.com/watch?v=loGAMBs-ZkY&feature=related
秋桜  さだまさし
http://jp.youtube.com/watch?v=hslKwT7yzIo
徳永英明 秋桜
http://jp.youtube.com/watch?v=ff32sD1Kdr4&feature=related
秋桜  福山雅治
http://jp.youtube.com/watch?v=v-LPBQPkYNE&feature=related
夏川りみ / 秋桜
http://jp.youtube.com/watch?v=oIheQv633cU&feature=related

(「秋桜」の歌詞の内容は、「認知症」のおばあさんを見事に言い表していると何かで読んだことがあります。さてどうでしょうか。)

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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