戯れ言たれる侏儒
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< 脳梗塞治療と抗血小板薬 | メイン | 頸動脈狭窄症 >

特異的だが高頻度のSNPの組み合わせが
心血管疾患の独立危険因子に
〔ニューヨーク〕ハーバード大学(ボストン)のSekar Kathiresan博士らは,5,414例を対象に,特異的であるが頻度の高い9個の遺伝子座の一塩基多型(SNP)の組み合わせで構築 される遺伝子型スコアが,心血管疾患リスクに関与するとNew England Journal of Medicine(2008; 358: 1240-1249)に発表した。

コレステロール値に関連
これまでにも,頻度の高いDNA配列の変異と血中のLDLコレステロール(LDL-C)およびHDLコレステロール(HDL-C)とを関連付ける研究は多数あったが,今回の研究では,ベースラインでの脂質値などの共変量で補正したモデルにおいて,遺伝子型スコアが心血管疾患発症と関連付けられた(P<0.001)。
さらに9個のSNPすべてにおいて,LDL-CまたはHDL-Cとの関連性が再現された。
 
Kathiresan博士らは「LDL-CまたはHDL-Cの変化と関連のあった9 個のSNPの遺伝子型スコアは,心血管疾患発症の独立した危険因子であった」と述べている。
 
同博士らは9個の遺伝子座の9個のSNPを調査した。追跡期間の中央値は10.6年で,期間中238例に初発心血管イベントが認められた。
その結果,これらのSNPは,初回の心筋梗塞(MI),虚血性脳血管障害,冠動脈疾患(CHD)による死亡リスクと独立した関連性があると判明した。
 
MIや脳血管障害がなく,多変量Cox回帰分析を行うことができた4,232例のうち,男性137例と女性101例が心血管イベントを発症した(MI 131例,脳梗塞 96例,CHDによる死亡 11例)。
 
受信者動作特性(ROC)曲線下面積の測定法の1つであるC統計を用いた評価では,遺伝子型スコアによりリスクの識別は改善しなかった。
しかし,個々の被験者における臨床的なリスクの再分類については,遺伝子型スコアによって,標準の臨床的因子と比べてやや改善した。
米国コレステロール教育プログラム成人治療パネル(ATP)IIIで中間リスクに分類された者のうち26%は,遺伝子型スコアを他の共変量に追加したところ,それよりも高い,もしくは低いリスクに再分類された。
当初,ATP IIIで中間リスクに分類された者は9%であった。

脂質値を超えるリスク情報
今回の知見からは以下の3つの重要な原理が明らかにされた。
 
(1)LDL-CとHDL-Cのような連続的で正規分布の定量的特性については,複数の高頻度アレルが特性の変化に影響する。各アレルが及ぼす影響は小さい
 
(2)各SNPが及ぼす影響は小さいが,複数のSNPの組み合わせで見ると,全体として脂質値にかなりの影響を及ぼす可能性がある
 
(3)脂質に関連するSNPは,心血管系リスクに関して脂質値を超える情報をもたらす可能性がある
 
(3)は特に重要である。
実際の脂質値がもたらす情報は,脂質関連SNPが与える情報と同じではないのはなぜか。
この疑問を説明しうる理由は2つある。
1つは,脂質値の測定が各種の一過性でランダムな因子の影響を受けるのに対して,遺伝子型は経時変化がなく,1回で正確に測定することが可能で,生涯にわたり脂質値に影響を及ぼしうること。
もう1つは,SNPはLDL-CまたはHDL-Cとは無関係の機序により,アテローム発生に影響する可能性があることである。
 
Kathiresan博士らは「将来は,MIリスクに直接関係するLDL-CまたはHDL-C関連SNPがほかにも同定されるであろう。
そうなれば,SNPパネルがリスク判定や治療標的の特定に有用であることが実証される可能性がある」と述べている。

加重スコアの検討も
Kathiresan博士らは「今回の遺伝子型スコアについては,9個の好ましくないアレルにそれぞれ等しい重みを付けたが,実際にはコレステロールに対する影響力が比較的大きいアレルもあれば,小さいアレルもあるようだ」と説明。
さらに「リスクに対する影響はLDL-CまたはHDL-Cに対する各アレルの寄与と,それらの値および心血管イベントとの関係に基づき,各アレルに重み付けをすることによって,より正確に推定される可能性がある」と述べている。したがって,将来はこの方法での研究も進められる可能性がある。
 
また,同博士らは「各SNPの心血管疾患リスクに対する影響とコレステロールに対する影響は,正相関しないかもしれない。
他リスク分類法のほうが,今回の研究で用いた方法よりも妥当であることが判明する可能性もある」とも指摘している。

遺伝子型スコア増でLDL-C上昇,HDL-C低下
今回の研究では,遺伝子型スコアの増加とともに,LDL-C値が152mg/dLから171mg/dL(3.9mmol/Lから4.4mmol/L)に上昇し,HDL-C値は60mg/dLから51mg/dL(1.6mmol/Lから1.3mmol/L)に低下した。
 
遺伝子型スコアは,患者の各SNPについて,患者が有する好ましくないアレルを計算して構築した。
9個のSNPはそれぞれゼロ,1個または 2個の好ましくないアレルを伴っていた。遺伝子型スコアが9以下の患者(43.2%)と比べて,スコアが11以上の患者(33.6%)は心血管イベントリスクが1.63倍高かった(95%信頼区間1.21~2.19,P=0.001)。
 
各SNPは,個々の関連についての文献報告とゲノムワイド関連研究に基づいて選択した。
5,414例全例が欧州系人種であると自己申告した。対象のSNPのなかには,他の人種集団では多型でないものもある。例えば,PCSK9のrs11591147は,アフリカ系人種では多型性が認められない。
 
5,414例の平均年齢は58±6歳で,59%は女性であった。脂質低下療法を受けている患者は2.3%にすぎず,MIまたは脳卒中の既往を有する者はわずか2.3%であった。
 
出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社


「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)

<コメント>
きょうの内容はほとんど理解できませんでした。
何よりも遺伝子解析の結果、が実際の臨床場面でどのように役立てられるのかということがわかりません。
そして
「受信者動作特性(ROC)曲線下面積」
「C統計」
「高頻度アレル」
もよくわかりません。

<関連サイト>
一塩基多型(SNP : Single Nucleotide Polymorphism)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%A1%A9%E5%9F%BA%E5%A4%9A%E5%9E%8B
SNPのページ
http://members.at.infoseek.co.jp/bunseiri/
千葉大学大学院 循環病態医科学 ~遺伝子解析~
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/cardio/data/iryo/idenshi.html
(以下、このサイトから引用)
遺伝子多型とテーラーメイド医療
 テーラーメイド医療は、個々の患者の遺伝的体質に合わせた処方・治療計画であり、薬物への反応性に対する患者の個体差を考慮した新しい考え方です。
上述した個人個人での薬物に対するresponseの違いの原因として、病態・栄養・生活パターンなどの環境因子とは別に、個人間で身体に発現している蛋白質の量や質が微妙に異なることがあり、これらの大部分は遺伝子の微妙な違いによる遺伝的因子によるものである。
遺伝的因子には人種差も含まれ、個人差ともいうが、動物でも種差や個体差があることも経験することである。
個人個人で微妙に異なる反応性は遺伝子配列の違い(遺伝子多型、Polymorphism)によるものです。
同じ遺伝子のDNAでありながら、個人個人で塩基配列が微妙に異なる場合、きわめてまれな違いはmutation変異ということになるが、一方、人口の1%以上になるものは遺伝子多型と呼ばれています。
これは一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)、挿入(Insertion)、欠失(Deletion)、繰り返し配列(マイクロサテライト)の個数などによって決定されますが、ヒトゲノムは30億bp程度から構成され、99.9%は同一ながら、0.1%程度は異なっていることから、300万bp程度に変異があると考えられます。
SNPなどが疾患遺伝子であることは少ないが、病態形成を修飾したり、治療反応性に影響を与えているものと考えられています。
循環器疾患においても多くの遺伝子多型が明らかにされており、将来的には患者の層別化において重要な情報になるものと考えられます。
  
 現状では、遺伝子多型と、薬物に対する反応性の違いに関してはevidenceが多くはありません。
SNPは現在では膨大なデータベースがありますが、どのSNPが具体的に薬物代謝の機能変化と関連するか、疾患の予後や治療法の選択と関連するのかはほとんどわかっていません。
今後、 SNPを含めた多くの遺伝子多型の中から適切なマーカー選択し、診断・治療・予防に役立てていかなければなりません。
特に、循環器疾患は、死亡原因の40%を占める重要な疾患であり、テーラーメード医療の進歩によって、効果のない薬物の使用や副作用が減少することは、膨張する医療費の抑制にもつながるという医療経済学的な効果もあります。
 
また、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の大部分も、一つの遺伝子の異常によって生じる単一遺伝性疾患というよりは、遺伝情報の変化があっても必ずしも発症せず、生活習慣などの因子に修飾されて発症すると考えられています。

Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III)
http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/cholesterol/index.htm

米国高脂血症治療ガイドラインATPIII
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/atp3.php3

心血管疾患の年齢という要因
http://intmed.exblog.jp/6861338/
C統計(C Statistic)について触れられている。

ROC解析の概要
http://misg.umin.ac.jp/netconf/netconf_3/netconf_3_roc1.html
ROC(receiver operating characteristic; 受信者動作特性)解析とは,医用画像を観察者の視知覚系に刺激として入力し, それに対する反応(出力)からROC曲線を求め,その曲線を解析し,信号(病変)検出能や,診断能を評価するものです。 現在,ROC解析は,医用画像システムの信号検出能・診断能を評価する最良の方法として確立され,世界中で活発に利用されております。

[PDF] ROC Curve
http://www.clg.niigata-u.ac.jp/~tsai/home-page/lecture/617-ikai.pdf
スライド形式で解説。

対立遺伝子
http://www.nch.go.jp/genetics/yougo/yougo-allele.htm

対立遺伝子 アレル (続き)
http://www.nch.go.jp/genetics/yougo/yougo-allele2.htm
色体上、あるいは連鎖地図上の、同一の座(座位)を占めることができる遺伝構成要素が複数存在する場合、その一つの型をいう。

最近では、塩基配列レベルでalleleを規定することが多い。訳語に 遺伝子 とあるが、alleleには 機能単位としての gene の概念は(必ずしも)伴わないことに注意が必要。

遺伝子はどのように疾患に影響するのか?
http://www.shikoku-cc.go.jp/kranke/support/consul/book/page07.html

遺伝子多型の概要
http://www.signpostcorp.com/pdf/snp070131_ver.1.0.pdf

 

<きょうの一曲>
Ma solitude
http://jp.youtube.com/watch?v=qSZKO5K2eTE&feature=related

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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コメント

コメント一覧

御返事ありがとうございます。
実は、今日も夜勤中です。
って、サボってるわけではないのですが、unitのさがといいますか、Ptも落ち着いていて、急患もなく・・・夕方から勤務してますが、当直の顔も見ていないぐらいです。

昨日の記事を読んで疑問に思ったことがあるのですが・・・
以前働いていた都内のHpでも、今の九州の片田舎のHpでもAMIにはバイアスピリン・プレタール・パナルジンの3種でした。
数年前からパナルジン→プラビックスに変わりましたが、プレタールの処方もなくなりました。
プレタールはもう不要なんですか?
自分のとこの医者に聞けばいいとは思うのですが・・・今更聞きづらく・・もし良ければ教えてください。
written by yukinko / 2008.09.17 03:16
yokinnko 様。

バイアスピリン・プレタール・パナルジンの三剤の併用がバイアスピリンとプラビックスに変わったということですね。
AMIに対してBMSかDESは使われた症例でしょうか。
ご指摘の変更はバイアスピリン以外はいずれも薬価が高いということで、プレタールとプラビックの併用がしにくかったということかも知れません。
もしそれなら医学的ではなく、経済的理由になってしまいますね。
私自身、インターベンションをやっているわけではないので(単なる一開業医です)、詳しいことはわかりません。
以前からこの併用療法に、どれだけのエビデンスがあるのか懐疑的でした。
とても的確な質問と思いますので、院内の先生に聞いてみるのがいいと思います。
インターベンションの関連学会で指針があるかも知れませんが、もしあったとしてもおそらくエビデンスはないと思います。
以下の私のブログが参考になるかもと思って書き出しました。
抗血小板剤の併用療法
http://blog.m3.com/reed/20080121/1
DES留置後の抗血小板療法
http://blog.m3.com/reed/20071022/DES_

またのコメントお待ちしています。
written by 戯れ言たれる侏儒 / 2008.09.22 22:15

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