戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2008/09 >>
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

レニン・アンジオテンシン系阻害薬を再考する
Evidence-Based Coronary Interventionを目指して
―これからのPCI専門医に求められる再発抑制治療を考える―(続)


PCI患者の生命予後を改善する内科的治療:
ACE-Iの降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果
では,心筋梗塞の二次予防には何が必要か?
図2に示すように,PCIは冠動脈局所の治療,CABGはエリアの治療,薬剤は全身的治療と位置付けられる。
心筋梗塞既往例の生命予後に新規病変の発症が大きく影響しているという事実は,生命予後の改善に全身的治療が重要であることを示している。
 
PCI患者の薬物療法においてRA系阻害薬は重要な位置を占める薬剤だが,2006年のCirculationに「ARBは心筋梗塞の発症を増加させるのではないか」という衝撃的な論説が掲載された(Circulation 114:838,2006)。
その論旨は「ACE-IはARBよりも心筋梗塞と心血管死を低減するとのエビデンスがある以上,冠動脈イベントのリスクを低減するためには,ACE-Iを第一選択にすべきである」というものである。
 
この論説の翌年,降圧薬の大規模臨床試験のメタ解析を行っている世界的なプロジェクトBPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialists'Collaboration)が,ACE-IとARBの心血管イベント抑制効果を検証するメタ回帰分析の成績を発表した。
解析対象となった大規模臨床試験は26試験(n=146,838)で,ACE-Iは17試験(n=101,626),ARBは9試験(n=45,212)であった。
解析にあたっては,臨床試験担当責任者から提供された個々の被験者の生データが使用されている。
果たしてその結果は,脳卒中および心不全に関してはACE-IとARBのイベント抑制効果に差がみられなかったものの,冠動脈イベント抑制効果はACE-Iが有意に優れるというものであった図3)。


両者の差は,対照薬との降圧差(収縮期血圧)が0mmHgであっても,ACE-Iでは9%のリスク減少,ARBでは8%のリスク上昇として現れたことから,ACE-Iは「降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果」をもつと考察されている。
このようにACE-Iが「降圧と独立した冠動脈イベント抑制効果」をもたらすメカニズムとしては,ブラジキニン(BK)-NO系,シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2),マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP),プラスミノーゲン・アクチベータ・インヒビター-1(PAI-1)など動脈硬化の進展に関与するさまざまな因子に対し多彩な作用が示唆されている図4)。


特に最近では,MMPに対し"直接的な"活性阻害作用を有することも明らかにされている図5)。

心筋梗塞の二次予防には,循環器内科医の総合力が問われる
ACE-Iと同様,ARBもエビデンスが増えてきた。
しかし,エビデンスにはその質に応じたレベルがあり,その代表的なものが米国保健政策研究局(AHRQ)による分類である(表2)。

この基準にあてはめると,BPLTTCは I aに分類されるエビデンスであり,ランダム化された大規模臨床試験はI bとなる。
 
また,ACE-IはARBに比べ薬価が安く,医療経済の面でもベネフィットが大きい降圧薬だが,わが国における2007年度の降圧薬市場が約1兆円にも上るなか,実にその半分をARBが占めている(図6)。


 
一方,わが国でのACE-Iの問題点として,通常量が欧米の約半分であることが挙げられよう。
ARBの通常量は国際的な標準投与量とほぼ同じである。ACE-Iの投与量を国際標準にまで引き上げることができれば,その臨床効果をさらに実感できるであろう。
 
われわれが血行再建の手段としてPCIを選択する理由は,CABGよりも治療成績がよいとか,狭心症の症状がなくなるとか,そういうことだけではなく,患者さんの生命予後を向上させることにある。
そのためには,同時に適切な内科的治療を行い,長期予後を包括的に管理することが重要である。
心筋梗塞の二次予防には,循環器内科医は総合力が問われている。

出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
文中の
「PCIは冠動脈局所の治療,CABGはエリアの治療,薬剤は全身的治療と位置付けられる。」
は私にとってまさに目から鱗(ウロコ)でした。

高リスク患者ではDESに固執しないようにということは

第30回欧州心臓病学会
高リスク冠動脈疾患でDESの非劣性は証明されず
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41370012&year=2008
でも発表されています(今週のMedical Tribune 2008.9.11)。

概略は
左冠動脈主幹部(LMT)病変および3枝病変を対象に,薬剤溶出ステント(DES)と冠動脈バイパス術(CABG)を比較したSYNTAX試験でDESの非劣性が証明できなかった
というものです。

内科循環器医は巨視的な見方で冠動脈疾患を把握し、ただの「風船屋(ステント主体の最近では何というのでしょうか。風船はいずれにしても使うわけです)」にはならないようにしなければなりません。

インターベンション以上に地道な内科治療が重要なことは、国内でもかなり以前から、前虎の門病院循環器病センター医長の西山先生(現 千代田区公庫ビル診療所 西山クリニック院長)が発表されていました。
今からして思うと勇気ある発表だったと思い出させられます。

 

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

固定リンク | コメント (0)