| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
| 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
| 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
| 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
| 28 | 29 | 30 |
レニン・アンジオテンシン系阻害薬を再考する
Evidence-Based Coronary Interventionを目指して
―これからのPCI専門医に求められる再発抑制治療を考える―
2008年6月13日,名古屋において「Evidence-Based Coronary Interventionを目指して―これからのPCI専門医に求められる再発抑制治療を考える―」と題した講演会が開催された。
冒頭,オーガナイザーの平山治雄氏(名古屋第二赤十字病院循環器センター部長)は,PCI後の治療標的は「急性冠症候群の回避」にあるとし,そのためにはエビデンスに基づく降圧薬の選択が重要であると述べた。
特別講演では,中川義久氏(天理よろづ相談所病院循環器内科部長)がわが国におけるステント治療の成績を紹介するとともに,心筋梗塞の再発抑制において循環器内科医に求められるものは何かを概説した。
Opening Remarks
PCI後の再発抑制治療の標的は,急性冠症候群を回避すること
平山 治雄 氏
わが国の臨床に冠動脈インターベンション(PCI)が導入されてから四半世紀が過ぎたが,虚血性心疾患の予後は必ずしも改善しているとは言えない。
動脈硬化の進展に大きな影響を与えているのは血管内皮機能の障害だが,加齢,高血圧,糖代謝異常,脂質異常などさまざまな要因が血管内皮機能障害をもたらしている(表1)。

しかし,動脈硬化が進展しても,安定プラークによって狭窄が起こっている場合は臨床的にそれほど大きな影響はない。
問題は,lipid richな不安定プラークの形成である。
実際,心筋梗塞を発症した症例の約60%の発症前狭窄度は,25%程度にすぎない。
つまり,狭窄度が低くてもlipid richな不安定プラークはその被膜が徐々に薄くなり,破綻によって急性冠症候群(ACS)を発症する。
現在,ACSに対する治療の中心はPCIであるが,PCI後の生命予後を改善するためにはACSの再発抑制が最も重要な課題である。
なぜなら,動脈硬化は血管全体に起こり得る病態であり,局所を治療してもほかの冠動脈で新たなプラーク破綻が起こりかねないからである。
PCI後の治療標的はACSを回避することであり,そのためには血管内皮機能を改善し,動脈硬化の進展を抑制する全身的治療が必要となる。
その治療薬の1つがレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬である。
RA系阻害薬にはACE阻害薬(ACE-I)とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)があるが,わが国では欧米諸国に比べARBの使用頻度が高い。
しかし近年,ARBの冠動脈イベント抑制効果に疑問を投げかける報告が相次いでいる。
動脈硬化性疾患のなかでも脳血管障害は降圧によってかなり抑制できるものの,さまざまな要因が複雑に絡み合う冠動脈イベントの発症は降圧のみでは抑制することができない。したがってPCI後の生命予後を改善するには,降圧効果に加え,冠動脈イベント抑制における明確なエビデンスをもつ薬剤を選択することが重要である。
特別講演
DES時代を迎えてPCI専門医が知っておくべき薬剤特性
―レニン・アンジオテンシン系阻害薬を中心に―
COURAGE試験が示したもの
中川 義久 氏
2007年に発表されたCOURAGE試験は,安定冠動脈疾患患者の初期治療として,内科的治療(optimal medical therapy)にPCIを併用した場合の冠動脈イベント抑制効果を検討した大規模臨床試験である。
しかし,内科的治療とPCIの併用群と内科的治療単独群の生命予後に有意差は認められなかった。
だが,この成績から,安定冠動脈疾患には内科的治療だけで十分だと考えるのは早計であろう。
なぜなら,内科的治療群の約3分の1は経過中にPCIを受けており,その実態は「選択的PCI施行群」と呼ぶべき集団だからだ。
すなわち,COURAGE試験によって示されたことは,狭心症や心筋虚血の所見が明確な患者に対して症状改善を目的にPCIを行うのは妥当だが,適応が明確でないPCIは患者には利益をもたらさないということである。
PCI施行医はまず,十分な内科的治療を行い,PCIを施行するにあたっては,これまで以上にその必要性を考慮することが大切である。
BMS時代の長期予後
PCIは,バルーンによる拡張から金属ステント(BMS)留置術,薬剤溶出ステント(DES)留置術へと進歩してきた。
わが国におけるBMSの長期予後は,Kimuraらにより施行後8年間の心臓死発生率が10%,総死亡率が24%と報告されている(Circulation 105:2986, 2002)。
また,PCI再施行の頻度は,再狭窄病変よりも新規病変の方が高い(図1)。

いったん,再狭窄を免れた病変は長期にわたりきわめて安定した経過を辿るが,PCI再施行を必要とする新規病変は年率約4%の頻度で出現し,そのうち1.5~2%はACSを発症,残りは安定狭心症となる。
BMSと冠動脈バイパス術(CABG)の長期予後を比較すると,糖尿病合併例と3枝病変例ではCABGのほうが有意に優れることが知られている(N Engl J Med 335:217,1996)。
わが国のPCI,CABG施行患者を対象としたCREDO-Kyotoでも,糖尿病合併例と3枝病変例に関してはPCI群よりCABG群のほうが長期予後が有意に良好であった。
しかし,これらの患者を75歳を境に層別解析すると,75歳以上の症例ではCABG群のほうが有意に良好であったものの,75歳未満では両群に差がみられなかった(Circulation;in Press)。
DESによって長期予後は改善したか:
J-Cypher試験の成績から
DESの登場によって再狭窄率は明らかに低下したが,その一方で遅発性ステント血栓症(Late ST)が新たな問題となっている。
Late STについては,「まれな現象であり,死亡や心筋梗塞の頻度には差がない」という見方がある一方,「発症頻度は低いが,いったん発症すると高率に死亡や心筋梗塞に至る重大な合併症であり,リスクがいつまで持続するかが明らかでないという点は大きな問題」という意見もある。
そこで,わが国におけるDESの長期予後を検討したJ-Cypher試験の成績を紹介する。
本試験の対象は約13,000例で,80歳以上の高齢者(13%),糖尿病合併例(41%),3枝病変例(14%),CABG施行例(7%)など再狭窄リスクの高い症例も多く含まれていた。
また,合計約19,000病変のなかには,適応外病変もかなり含まれていた。
ステント血栓症の発症率は,1年では0.59%,2年では0.78%,3年では1.2%と非常に低い頻度であった。
本試験には左右の冠動脈をそれぞれBMSと DESで治療した症例なども含まれていたため,ステント血栓症発症率をBMS群(約1,200病変)とDES群(約17,000病変)で比較したが,両群に有意差はみられなかった。
しかし,BMS群では施行1年以降,ステント血栓症の発症は全くみられなかったのに対し,DES群では年率約0.3%の頻度でステント血栓症の発症が続いており,少なくとも3年後の時点で減少傾向はみられていない。
この点はDESの問題の1つと言えるであろう。
一方,13,000例に及ぶ症例数を集めても,施行1年以降に発症したLate STは20例と少なく,その85%は心筋梗塞であった。
しかし,Late ST発症30日以内の死亡率は14%,その後2年間の死亡率は33%にも及ぶことから,ステント血栓症は重大な合併症であると言える。
なお,Late ST発症時に行われていた抗血小板療法は,2剤併用が25%,アスピリン単独が65%であったが,Late STは必ずしも抗血小板療法を1剤にした直後に起こっているわけではない。
一般にDES施行後半年を経過すると,抗血小板療法を2剤併用から1剤に減らす施設が多いが,本試験では半年あるいは1年を超えても2剤併用を続けた方がよいというエビデンスは得られなかった。
また,前述のCREDO-KyotoとJ-Cypherの比較を行ったところ,患者背景に違いがみられたが,総死亡や心筋梗塞の発症頻度にBMSとDESの差は示されなかった。
DESの導入によって再狭窄は劇的に減少したものの,いまだ生命予後の改善には至っておらず,長期予後改善のためには新規病変の予防,すなわち心筋梗塞の二次予防が非常に重要だと言える。
出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
■狭心症や心筋虚血の所見が明確な患者に対して症状改善を目的にPCIを行うのは妥当だが,適応が明確でないPCIは患者には利益をもたらさない
・・・・・ 「PCIの適応」をしっかり見極めることが重要ということですが、「抗生剤の適応」と同じように実際には難しい場合はあるような気もあするのですが。
■ステント血栓症発症率をBMS群(約1,200病変)とDES群(約17,000病変)で比較したが,両群に有意差はみられなかった。
しかし,BMS群では施行1年以降,ステント血栓症の発症は全くみられなかったのに対し,DES群では年率約0.3%の頻度でステント血栓症の発症が続いており,少なくとも3年後の時点で減少傾向はみられていない。
・・・・・この結果では少なくともBMS群の方がいいのではと思ってしまいます。
DESによるPCI施行後の(いつまで続ければいいのかもはっきりとは確立されていない)長期抗血小板療法を免れるだけでも、むしろBMSが有利に思えてしまいます。
患者は将来的に他の疾患に罹患しない保証はないわけです。
出血傾向を伴う血液疾患や大手術や出血を伴う外傷、脳出血、消化管出血などなど。
■本試験では半年あるいは1年を超えても2剤併用を続けた方がよいというエビデンスは得られなかった。
・・・・・
意外とエビデンスが集積されていない分野のようです。
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。